ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男   作:路地裏の作者

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 恒例の、土曜更新です。

 何か、この時間に一話投稿するのが一番やりやすいみたいです。

 後、なぜかプロローグしか投稿してないのに、あっという間に閲覧数でブッチぎったもう片方の作品、『闇の剣と星の剣』も明日には投稿予定です。
 プロローグだけ、投稿してみることにしました♪


006 特訓と地獄と

 

SIDE:キリト

 

「…で、まあ、サチの特訓にレイジが付き合ってくれることになってな」

 

「ふうん……レイジ君がねえ…」

 

 アスナは顎に手を添えているが、何と言うかアイツらしいとでも思っているんだろう。アイツは基本、ギルド内のメンバーのフォローやら、攻略組でのメンバー間の意見の調整やらを、気が付いたら行っていることが多いから、そういうサポート・フォロー役としては最高の人材だ。実際≪風林火山≫は結構アイツに頼っていることも多いし。

 

「でも…コーチ役ともなれば、厳しさも必要よ? レイジ君、攻略組でのイメージからすると、そこらへんが足りないイメージあるけど……」

 

 ――――あ~、そうか。アスナのイメージは、よく考えたら攻略組でのイメージだけか。

 

「……その点は、問題ない。いや、むしろコーチ役としてのレイジの適性は高いからな」

 

「ふうん、そうなんだ………って、どうしたの、キリト君? そんな、あからさまに顔を青ざめさせて?」

 

 …確かにレイジのコーチ役としての適性は、高い。ただむしろ―――

 

 

高すぎた(・・・・)から、ああなったんだよな……」

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 クラインとその仲間である≪風林火山≫の面々に会った翌日、俺と≪黒猫団≫の面々は、十層の主街区にいた。何でも特訓自体はアンチクリミナル・コード圏内の何処でも行えるとのことだったので、こっちのホームに近い此処にしたのだ。

 

「それにしても、ビックリだよな! キリトが『攻略組』のギルドリーダーと知り合いだったなんて!」

 

「ああ、それにそのギルドのタンク・リーダーからコーチしてもらえるなんて、これ以上ない幸運だよ」

 

 ダッカーはいまだ自分達が届かない『攻略組』を見られることにはしゃぎ、ケイタもまたそれに応じた。…ちなみに、黒猫団の皆には、ただ自分のフレンドの攻略組にコーチしてもらえる旨だけ伝え、風林火山には、自分が『攻略組』であることは隠してくれるよう頼んであった。

 

 

「で、でも、大丈夫かな? 私みたいな初心者盾剣士(タンク)の為に、わざわざ呼びつけて特訓なんて……」

 

 

 皆の中で唯一、サチだけがまだ見ぬ攻略組にオドオドしていた。まあ、自分の特訓に付き合わせた形になっているから仕方ないか。

 

「大丈夫大丈夫。向こうのリーダーもタンク・リーダーも、いい奴だったからさ。そんなこと気にする奴らじゃないって」

 

「そ、そうかな……あっ」

 

 サチの言葉に転移門の方に視線を向けると、赤地の武者鎧姿の一団が目に入った。ギルド≪風林火山≫の到着だ。

 

「オーイ、こっちだクライン!」

 

「オウ、キリト!」

 

 俺のあげた声に、此方を見つけたクラインがメンバーを連れて近付いてきた。横に目を向けると、さっきまではしゃいでいたダッカーなども若干緊張した面持ちだ。

 

「それじゃみんな、紹介するよ。こいつが攻略組ギルド、≪風林火山≫のリーダー、クラインだ」

 

「オウ、よろしくな!」

 

 そう言ってクラインは、近くにいたケイタに気さくに握手を求めてきた。…ホント、こういう対人スキルは、俺も見習わなきゃいけないなあとつくづく思った。

 

「≪月夜の黒猫団≫のリーダー、ケイタです。今日はお忙しいところを……」

 

「あー、いい、いい。堅苦しいのはナシにしようぜ。それで今日、特訓を受けるのは……?」

 

「あ、わ、わたしです」

 

 クラインの言葉に反応したサチが近付いていくと、クラインの顔が若干曇った。

 

「そうか、アンタがサチって名前の嬢ちゃんか。………オイ、キリトよお」

 

「なんだよ?」

 

 サチの顔をまじまじと見ていたクラインが此方に声をかけてきた。何か問題でもあったのか?

 

「…なあ、今からでもこの特訓中止出来ねえか? 正直、この嬢ちゃんが心配でよ……」

 

「? 何言ってんだ? サチが心配だって言うなら、しっかり盾の使い方を……」

 

「そうじゃねえ、そうじゃねえんだよ……この嬢ちゃんが耐え切れる(・・・・・)かが心配でよ」

 

「……へ?」

 

 そう言われて周りを見ると、ようやく風林火山メンバーが一様に、何と言うか気の毒そうな空気を漂わせていた。何なんだ、一体?

 

「それじゃあ、はじめよっか。……まずは、盾での防御方法から」

 

「あ、はいお願いしま………………え?」

 

 コーチ役のレイジから声をかけられ、それに応じたサチの言葉が、妙なところで止まった。それについついレイジの方に目を向けると…

 

 

「…………え?」

 

 

 コーチ役のレイジは、円形盾を左手に付け、泰然と佇んでいた。それはいいんだが……その右側には、人の胴体くらいの大きさのトゲつき鉄球が置かれていた。

 

「あ、あの~」

 

「あ、初めまして。今回のコーチ役を仰せつかりました、風林火山の盾戦士(タンク)リーダー、レイジといいます」

 

「あ、どうも…それで、その右側にあるのは?」

 

 まあ、最初に訊くよな。あんなこれ見よがしに置かれてたら。

 

「あ、これですか? モーニングスターという、鈍器系武器です」

 

「いえ、それは見れば分かりますが……」

 

 確かに、見れば分かる。割とオーソドックスな鈍器だから店にも売ってるし。ただそれにしたって、大きさは精々人の頭より少し小さいくらいだ。あんな胴体よりデカイ鉄球見たこと無いぞ?

 

「今回の特訓は、盾の使い方を覚えると言うものです」

 

「あ、はい。それはそうですが……」

 

「そして、人間という生き物は、身の守り方を案外生まれた時から分かっているものです」

 

「ま、まあ、それはそうかも知れませんけど………」

 

「これから、ギリッギリまでそれを引き出してあげましょう♪」

 

「…………」

 

 サチの沈黙と共に、俺や黒猫団の皆にも、沈黙が下りた。……かつて、これほど『嫌な予感』というものが、目に見える形で下りてきたことはあっただろうか?

 

「あ、あの~……具体的には、どうやって………」

 

「防いでください」

 

「……何、を?」

 

「ですから、この鉄球を」

 

「盾で、防げ、と?」

 

「はい」

 

 …………その瞬間、サチが蒼白な顔になりながら数歩後ろに下がった。…まあ、無理もない。

 

「あ、あの~、ちょっといいですか、レイジさん」

 

「レイジで結構ですよ、ケイタさん。ウチはリーダーがああですし、堅苦しいのは苦手なので」

 

「あ~、じゃあレイジで。…その、サチは少し臆病なところがあって、今回それが原因で盾を使いこなせないって話なんだけど」

 

「ええ、伺ってます」

 

「……その当人を、ギリギリまで追い込むのって、逆効果なんじゃ…………?」

 

 まあ、普通の感覚ならそうだよな。

 

「ん~、僕や攻略組の面々から言わせると、その『臆病さ』っていうのは、前線を進むために貴重な『強さ』なんですよ」

 

「……え?」

 

 前線を突き進んでいる攻略組の一人にしては、その発言が相当意外だったのか、ケイタは思わず目を瞠った。

 

「この世界…アインクラッドでは、アバターの死は、そのまま現実での死です。これが、全ての前提なんです」

 

「まあ、そうですけど……」

 

「『臆病』ということは……自分を、弁えているという事です。決して自分にとって無理はしない、無茶はしない。そうやって行動することが、前線を進む上で、一番必要なことなんです」

 

「…………」

 

「ですから、彼女の『臆病』さは、この先を進むのであれば、絶対に必要になる『強さ』なんですよ」

 

 ……なるほど。確かに前線を進む上で、無理をすることは厳禁で、今の話も為になる話だ。―――しかし。

 

 

「……それで、結局、どうして『ギリギリまで追い込む』って結論になるんですか?」

 

 

 …そう、その問題に回答されていない。思い切り、論理のすり替えだった。

 

「そうですね、あえて理由を述べるとするなら…………この内容が、僕の『趣味』だからです!」

 

「「「「「「最悪だーーー!!」」」」」」

 

 力強く拳を握って言うレイジに、俺以下黒猫団全員がツッコんだ。…サチまでツッコむとは思わなかったな。

 

「いや、もちろん理由はありますよ? 『臆病さ』や『恐怖』をセンサー代わりに使えるようになれば、戦いの中できっと役に立つとか、何とか」

 

(……明らかに、とってつけた理由だし)

 

 

「まあ、では始めますか…………皆さん(・・・)

 

「「「「「…………え?」」」」」

 

 

 言った途端、レイジの視線が俺達にも向いた。え、何? Why?

 

「いや、皆さん攻略組を目指していると言うお話ですし…此処は一つ、全員(・・)を強化しておいた方がいいでしょう?」

 

 …………それはつまり、ここにいる、全員に殴りかかる、と? さっきの鉄球で?

 

「皆さん、武器か盾で防いでください……ちなみに避けたら、3倍の数の鉄球が襲い掛かりますので」

 

 その言葉に、俺も黒猫団の面々も、一斉に五歩は後ずさった。…成程、臆病さは必要不可欠だな。

 

「頑張れよー、キリトよう」

 

 見ると、クライン以下風林火山の面々は、既に巻き込まれないよう近くの茂みに避難していた。アイツ、知ってたな?!

 

「では、スターーート!」

 

「うおおおお?!」

 

「きゃあああああ!」

 

「ひいいいい!?」

 

 ……こうして、夕方の街に実に多くの悲鳴が響き渡った。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「…………」

 

「…………」

 

「……なにやってんのよ、レイジ君…………」

 

 まあ、そういう感想になるよなあ。実際あの特訓、流石に精神に負荷がかかりすぎるって事で、ケイタがクラインと交渉して、三日で終わったし。

 

「で、でも効果はあったんだぜ? サチは攻撃を必死に盾で防ぐようになったし、他の皆も防御を懸命にするようになったし」

 

「そりゃあそうよ。命がかかったら、誰でも一生懸命になるわ」

 

 実際には『圏内』だから、HPは減らないんだが。それでも命の危険を感じるほどに最悪な特訓だった。

 

「ちなみにあの特訓、クラインたちがフロアボス戦に初参加したときに、皆の生存能力を上げるために考え付いたらしい。終了した後、皆涙を流したそうだぞ」

 

「……そういえば、クラインさん達が初参加のボス戦で、終わった途端抱き合いながら叫んでたわね………」

 

「ボス戦が長引くようなら、特訓をさらに激しいものにすることも考えてたそうだからな…」

 

 あの涙は、特訓から解放されたことの喜びだろう。

 

「……で、レイジの奴の特訓から解放されて一週間くらい経って―――」

 

 そこで、一度語るのを止める。やはりあの事件は、自分に余りにも重い感情を抱かせる。

 

 

「―――あの事件が、起きたんだ」

 

 

SIDE OUT

 




 特訓編終了です。今回の話は完全オリジナルで、正直『必要か?』と賛否両論でしょうが、ちょっとしたフラグ立てに必要でして、入れてみました。
 感想は、どうかフラグ回収までお手柔らかに♪

 ところで話は代わりますが、文庫版SAOPの『儚き剣のロンド』に出てくる『モーモー天国』……あれって、往年の名作ゲーム『Diablo』シリーズのオマージュじゃないですよね? リアルDiabloとか怖すぎる…(ブッチャーとかレオリックとか)
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