ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男 作:路地裏の作者
何か、この時間に一話投稿するのが一番やりやすいみたいです。
後、なぜかプロローグしか投稿してないのに、あっという間に閲覧数でブッチぎったもう片方の作品、『闇の剣と星の剣』も明日には投稿予定です。
プロローグだけ、投稿してみることにしました♪
SIDE:キリト
「…で、まあ、サチの特訓にレイジが付き合ってくれることになってな」
「ふうん……レイジ君がねえ…」
アスナは顎に手を添えているが、何と言うかアイツらしいとでも思っているんだろう。アイツは基本、ギルド内のメンバーのフォローやら、攻略組でのメンバー間の意見の調整やらを、気が付いたら行っていることが多いから、そういうサポート・フォロー役としては最高の人材だ。実際≪風林火山≫は結構アイツに頼っていることも多いし。
「でも…コーチ役ともなれば、厳しさも必要よ? レイジ君、攻略組でのイメージからすると、そこらへんが足りないイメージあるけど……」
――――あ~、そうか。アスナのイメージは、よく考えたら攻略組でのイメージだけか。
「……その点は、問題ない。いや、むしろコーチ役としてのレイジの適性は高いからな」
「ふうん、そうなんだ………って、どうしたの、キリト君? そんな、あからさまに顔を青ざめさせて?」
…確かにレイジのコーチ役としての適性は、高い。ただむしろ―――
「
◇ ◇ ◇
クラインとその仲間である≪風林火山≫の面々に会った翌日、俺と≪黒猫団≫の面々は、十層の主街区にいた。何でも特訓自体はアンチクリミナル・コード圏内の何処でも行えるとのことだったので、こっちのホームに近い此処にしたのだ。
「それにしても、ビックリだよな! キリトが『攻略組』のギルドリーダーと知り合いだったなんて!」
「ああ、それにそのギルドのタンク・リーダーからコーチしてもらえるなんて、これ以上ない幸運だよ」
ダッカーはいまだ自分達が届かない『攻略組』を見られることにはしゃぎ、ケイタもまたそれに応じた。…ちなみに、黒猫団の皆には、ただ自分のフレンドの攻略組にコーチしてもらえる旨だけ伝え、風林火山には、自分が『攻略組』であることは隠してくれるよう頼んであった。
「で、でも、大丈夫かな? 私みたいな初心者盾剣士(タンク)の為に、わざわざ呼びつけて特訓なんて……」
皆の中で唯一、サチだけがまだ見ぬ攻略組にオドオドしていた。まあ、自分の特訓に付き合わせた形になっているから仕方ないか。
「大丈夫大丈夫。向こうのリーダーもタンク・リーダーも、いい奴だったからさ。そんなこと気にする奴らじゃないって」
「そ、そうかな……あっ」
サチの言葉に転移門の方に視線を向けると、赤地の武者鎧姿の一団が目に入った。ギルド≪風林火山≫の到着だ。
「オーイ、こっちだクライン!」
「オウ、キリト!」
俺のあげた声に、此方を見つけたクラインがメンバーを連れて近付いてきた。横に目を向けると、さっきまではしゃいでいたダッカーなども若干緊張した面持ちだ。
「それじゃみんな、紹介するよ。こいつが攻略組ギルド、≪風林火山≫のリーダー、クラインだ」
「オウ、よろしくな!」
そう言ってクラインは、近くにいたケイタに気さくに握手を求めてきた。…ホント、こういう対人スキルは、俺も見習わなきゃいけないなあとつくづく思った。
「≪月夜の黒猫団≫のリーダー、ケイタです。今日はお忙しいところを……」
「あー、いい、いい。堅苦しいのはナシにしようぜ。それで今日、特訓を受けるのは……?」
「あ、わ、わたしです」
クラインの言葉に反応したサチが近付いていくと、クラインの顔が若干曇った。
「そうか、アンタがサチって名前の嬢ちゃんか。………オイ、キリトよお」
「なんだよ?」
サチの顔をまじまじと見ていたクラインが此方に声をかけてきた。何か問題でもあったのか?
「…なあ、今からでもこの特訓中止出来ねえか? 正直、この嬢ちゃんが心配でよ……」
「? 何言ってんだ? サチが心配だって言うなら、しっかり盾の使い方を……」
「そうじゃねえ、そうじゃねえんだよ……この嬢ちゃんが
「……へ?」
そう言われて周りを見ると、ようやく風林火山メンバーが一様に、何と言うか気の毒そうな空気を漂わせていた。何なんだ、一体?
「それじゃあ、はじめよっか。……まずは、盾での防御方法から」
「あ、はいお願いしま………………え?」
コーチ役のレイジから声をかけられ、それに応じたサチの言葉が、妙なところで止まった。それについついレイジの方に目を向けると…
「…………え?」
コーチ役のレイジは、円形盾を左手に付け、泰然と佇んでいた。それはいいんだが……その右側には、人の胴体くらいの大きさのトゲつき鉄球が置かれていた。
「あ、あの~」
「あ、初めまして。今回のコーチ役を仰せつかりました、風林火山の盾戦士(タンク)リーダー、レイジといいます」
「あ、どうも…それで、その右側にあるのは?」
まあ、最初に訊くよな。あんなこれ見よがしに置かれてたら。
「あ、これですか? モーニングスターという、鈍器系武器です」
「いえ、それは見れば分かりますが……」
確かに、見れば分かる。割とオーソドックスな鈍器だから店にも売ってるし。ただそれにしたって、大きさは精々人の頭より少し小さいくらいだ。あんな胴体よりデカイ鉄球見たこと無いぞ?
「今回の特訓は、盾の使い方を覚えると言うものです」
「あ、はい。それはそうですが……」
「そして、人間という生き物は、身の守り方を案外生まれた時から分かっているものです」
「ま、まあ、それはそうかも知れませんけど………」
「これから、ギリッギリまでそれを引き出してあげましょう♪」
「…………」
サチの沈黙と共に、俺や黒猫団の皆にも、沈黙が下りた。……かつて、これほど『嫌な予感』というものが、目に見える形で下りてきたことはあっただろうか?
「あ、あの~……具体的には、どうやって………」
「防いでください」
「……何、を?」
「ですから、この鉄球を」
「盾で、防げ、と?」
「はい」
…………その瞬間、サチが蒼白な顔になりながら数歩後ろに下がった。…まあ、無理もない。
「あ、あの~、ちょっといいですか、レイジさん」
「レイジで結構ですよ、ケイタさん。ウチはリーダーがああですし、堅苦しいのは苦手なので」
「あ~、じゃあレイジで。…その、サチは少し臆病なところがあって、今回それが原因で盾を使いこなせないって話なんだけど」
「ええ、伺ってます」
「……その当人を、ギリギリまで追い込むのって、逆効果なんじゃ…………?」
まあ、普通の感覚ならそうだよな。
「ん~、僕や攻略組の面々から言わせると、その『臆病さ』っていうのは、前線を進むために貴重な『強さ』なんですよ」
「……え?」
前線を突き進んでいる攻略組の一人にしては、その発言が相当意外だったのか、ケイタは思わず目を瞠った。
「この世界…アインクラッドでは、アバターの死は、そのまま現実での死です。これが、全ての前提なんです」
「まあ、そうですけど……」
「『臆病』ということは……自分を、弁えているという事です。決して自分にとって無理はしない、無茶はしない。そうやって行動することが、前線を進む上で、一番必要なことなんです」
「…………」
「ですから、彼女の『臆病』さは、この先を進むのであれば、絶対に必要になる『強さ』なんですよ」
……なるほど。確かに前線を進む上で、無理をすることは厳禁で、今の話も為になる話だ。―――しかし。
「……それで、結局、どうして『ギリギリまで追い込む』って結論になるんですか?」
…そう、その問題に回答されていない。思い切り、論理のすり替えだった。
「そうですね、あえて理由を述べるとするなら…………この内容が、僕の『趣味』だからです!」
「「「「「「最悪だーーー!!」」」」」」
力強く拳を握って言うレイジに、俺以下黒猫団全員がツッコんだ。…サチまでツッコむとは思わなかったな。
「いや、もちろん理由はありますよ? 『臆病さ』や『恐怖』をセンサー代わりに使えるようになれば、戦いの中できっと役に立つとか、何とか」
(……明らかに、とってつけた理由だし)
「まあ、では始めますか…………
「「「「「…………え?」」」」」
言った途端、レイジの視線が俺達にも向いた。え、何? Why?
「いや、皆さん攻略組を目指していると言うお話ですし…此処は一つ、
…………それはつまり、ここにいる、全員に殴りかかる、と? さっきの鉄球で?
「皆さん、武器か盾で防いでください……ちなみに避けたら、3倍の数の鉄球が襲い掛かりますので」
その言葉に、俺も黒猫団の面々も、一斉に五歩は後ずさった。…成程、臆病さは必要不可欠だな。
「頑張れよー、キリトよう」
見ると、クライン以下風林火山の面々は、既に巻き込まれないよう近くの茂みに避難していた。アイツ、知ってたな?!
「では、スターーート!」
「うおおおお?!」
「きゃあああああ!」
「ひいいいい!?」
……こうして、夕方の街に実に多くの悲鳴が響き渡った。
◇ ◇ ◇
「…………」
「…………」
「……なにやってんのよ、レイジ君…………」
まあ、そういう感想になるよなあ。実際あの特訓、流石に精神に負荷がかかりすぎるって事で、ケイタがクラインと交渉して、三日で終わったし。
「で、でも効果はあったんだぜ? サチは攻撃を必死に盾で防ぐようになったし、他の皆も防御を懸命にするようになったし」
「そりゃあそうよ。命がかかったら、誰でも一生懸命になるわ」
実際には『圏内』だから、HPは減らないんだが。それでも命の危険を感じるほどに最悪な特訓だった。
「ちなみにあの特訓、クラインたちがフロアボス戦に初参加したときに、皆の生存能力を上げるために考え付いたらしい。終了した後、皆涙を流したそうだぞ」
「……そういえば、クラインさん達が初参加のボス戦で、終わった途端抱き合いながら叫んでたわね………」
「ボス戦が長引くようなら、特訓をさらに激しいものにすることも考えてたそうだからな…」
あの涙は、特訓から解放されたことの喜びだろう。
「……で、レイジの奴の特訓から解放されて一週間くらい経って―――」
そこで、一度語るのを止める。やはりあの事件は、自分に余りにも重い感情を抱かせる。
「―――あの事件が、起きたんだ」
SIDE OUT
特訓編終了です。今回の話は完全オリジナルで、正直『必要か?』と賛否両論でしょうが、ちょっとしたフラグ立てに必要でして、入れてみました。
感想は、どうかフラグ回収までお手柔らかに♪
ところで話は代わりますが、文庫版SAOPの『儚き剣のロンド』に出てくる『モーモー天国』……あれって、往年の名作ゲーム『Diablo』シリーズのオマージュじゃないですよね? リアルDiabloとか怖すぎる…(ブッチャーとかレオリックとか)