ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男   作:路地裏の作者

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先週は、いきなりの休日出勤でお休み。ようやく彼女が登場です!



009 シールドクエスト4~絶剣

「はああ…………」

 

 シノンの実家から帰って、しばらく。レイジはキリト・アスナ夫妻のプレイヤーホームで突っ伏していた。

 

「はああ~~……」

 

 もうなんて言うか、完全に生ける屍。しかもストッパーのシノンがいないせいで、非常に暗鬱な空気を醸し出している。

 

「――あー、もー! いい加減鬱陶しいわよ!」

 

 そんな空気を霧散させたのは、同じ室内で冬休みの課題をしていたリズ。具体的には、部屋の隅で頭を抱えていたレイジ相手に、愛用の戦槌(メイス)を思いっ切り振り下ろした。

 

「ぐお?!」

 

 当然ゲーム内なので痛みは感じないし、何より≪圏内≫なので直前で障壁に弾かれる。しかし…………さすがに衝撃と反動で、仮想の首から上がシェイクされれば、誰でも不快だ。

 

「ちょっと、リズ?!」

 

 その行動に抗議したのは、家主の一人であるアスナ。先程まで一緒に課題を行っていたシリカとリーファは苦笑していた。

 

「流石にひどいわよねぇ……」

 

「あはは……」

 

「壁にあたったら、キズがつくじゃない!!」

 

「「………………」」

 

 全く殴られた人間の心配を、していなかった。

 

「アスナさん、ヒドイです……」

 

「反論できないなあ……」

 

 ちなみにもう一人の家主であるキリトは、揺り椅子で熟睡中。しかし彼が起きていたら、こう言っていたことだろう。「アスナは、SAO(むかし)からこうだ」、と。そしてその時代、被害にあっていたのは、他ならぬキリトだ。主な原因も、キリトだったが。

 

「で、どうしたのよ? シノンに婚約者でも現れたの?」

 

「………………ごめん。今はその鋭すぎる冗談には、返せない」

 

 リズは、昔からこういうところがあった。ギルド≪風林火山≫でプレイヤーショップを訪れたときも、何度かメンバーで女性プレイヤーに振られた人間を言い当てていた。本人曰く、ある程度第一印象でキャラ構成(ビルド)や相手の特徴を掴めなければ、商売にならないとか。これがMHCPの能力すら超えるのだから、人間の、いや女性の第六感は凄まじい……。

 

「え? 何? じゃあ本気(マジ)でシノンに婚約者が? 悩んでたのは駆け落ちの方法?」

 

「そこまで切羽詰まってるわけじゃないけどね……」

 

 そうして話したのは、シノンの実家での顛末。割とフランクに迎えてくれたお祖母さんと、頑固一徹だったお祖父さん。

 

「…………まあ、シノンのお祖父さんからすれば、純粋に孫娘が心配なんだろうけどね」

 

「そうね……」

 

「はい……」

 

「あー。私に剣道教えたお祖父ちゃんも、そんな感じだったなー」

 

「へ?」

 

「リーファも、お見合いとか勧められたことあるの?」

 

「いや、そうじゃなくて、「あんまりお転婆が過ぎると、嫁の貰い手がなくなるぞ」って何回も言われて……」

 

「「「あ~~」」」

 

 一同、納得。

 

「みんな、ヒドイ!」

 

 とりあえずリーファは自業自得な気もするので、放置。部屋の隅で未だに悩んでいるレイジに向き直った。

 

「結局、何に悩んでるのよ?」

 

「え? どうやったらお祖父さんを説得できるかなあ、と」

 

 先程から頭を埋め尽くしているのは、ソレである。

 

「とりあえず、第一案。今度は、前よりは豪華なお土産でも持ってあいさつに行く」

 

「学生の身分で買えるものじゃねえ……」

 

「それにそれだと、お土産のカタに孫娘を貰っていくような……」

 

「第二案。お祖母さんを中心に説得して、お祖父さんは間接的に説得する」

 

「ソレ、下手したら余計こじれるわよ?」

 

「お祖父さん、話だけでも頑固そうですもんね……」

 

「キュクー」

 

「第三案。……………………『曾孫』と一緒に帰郷」

 

「「「「ブッ!!」」」」

 

 およそ年頃の乙女らしからぬ反応だった。いや、正しいのか?

 

「アンタ、何言ってんの!?」

 

「出合い頭に、お祖父さんに殺されるわよ!!」

 

「はわわわわ……」

 

「ウチのお祖父ちゃんなら、日本刀で追っかけるなあ……」

 

 ……まあ、この反応も当然だろう。実のところレイジも、第三案にはBADENDとDEADENDしか見えてこない。

 

「まあ、第三案は高校生の身分じゃ無理だよね。シノンの生活に、負担になるだろうし」

 

「分かってるなら言うんじゃないわよ……」

 

「びっくりしたあ……」

 

 実際、シノンには少しばかり男性恐怖症の気もある。それを考えれば、将来的にはともかく、今のところレイジは無理に彼女に手を出すつもりはなかった。

 

「となると……第四案。時間をかけて、少しずつ説得」

 

「一番妥当よね……」

 

「それ以前に、それしか選択肢無いじゃない」

 

「そうですね……」

 

「答え、半ば出てたんだ……」

 

 ……問題は、そこではなかった。

 

「でも、それだと時間がどのくらいかかるか不透明なんだよね……」

 

「確かにね。でも仕方ないんじゃない?」

 

「けどそっか。確実に説得できる保証もないんだね」

 

「それはキツイですね……」

 

「でも、シノンなら待ってくれるんじゃない?」

 

「それ、精神的に一番キツイ……」

 

 仮に駆け落ちしても幸福にはなれそうにないし、出来れば説得する方法を取りたい。けどそれだとシノンに負担がかかってしまうのだ。そのあたりのジレンマがレイジの悩みだった。

 

「あー、もう、ヤメヤメ! それよりさっき話してた『≪絶剣≫VSアスナ』の話しましょう!」

 

「ああ、次の挑戦者はアスナさんなんだ?」

 

 悩みに頭を占領されて話を聞いていなかったレイジは、ここで初めて話題を認識した。

 

「そういえば、レイジ君もキリト君の後で対戦したのよね? その時どんなだったの?」

 

「……あー」

 

 思い出すのは、紫と黒に彩られた天真爛漫な女性剣士。

 

「なんて言うか……この世界で生まれたMHCP(ぼくたち)以上に、仮想(この)世界の申し子だったよ……」

 

 ◇ ◇ ◇

 

 新生アインクラッド、湖の中に位置する小島の中央。そこで二人の戦士が対峙していた。

 

「ギルド≪風林火山≫所属、壁戦士(タンク)部隊隊長レイジだ」

 

 片方の戦士の印象は、紅。赤系統に染め上げた革鎧の各所に鋲や輝石が打たれ、背中にはファイアパターンのマントをたなびかせていた。

 

「ふーん。ボクはユウキ! よろしくね!」

 

 もう片方の印象は、紫。スカートのように広がる腰外套(マント)とキラキラと輝く瞳が、彼女の好奇心と純粋な闘志をみなぎらせていた。

 

 ALOでは、12月から一つの噂が流れていた。曰く、「どの勢力にも属さない、最強無敵の剣士がいる」。曰く、「その剣士は、魔法だろうと、ソードスキルだろうと叩き伏せる」。曰く、「その剣士の動きと速さは圧倒的。まるで本物の妖精のようだ」。

 

 曰く、「絶対無敵の剣士」。その名は――――

 

 

 ――――――≪絶剣≫。

 

 

「それじゃ、いこうか?」

 

「そうだな。ウチはリーダーが武士道重んじるヒトだから、掛け声もそれっぽく。『いざ、尋常に――――』」

 

 カウント、ゼロ。

 

 

「「『勝負』!!」」

 

 

 仮想世界の申し子たちの、戦いが始まった。

 




≪絶剣≫ユウキ、推☆参!だけどバトルは次回です!キリト以上の仮想世界の申し子と、仮想世界生まれのレイジ。勝負の行方は次回。

今回初めて書いたレイジのALO装備。モチーフはROのチャンピオンです。もはやレイジはROのモンク系列とは、完全に別キャラ化してますが……
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