ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男   作:路地裏の作者

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今年は、バレンタイン特別篇はやりません。以前以上の甘さとなると……確実にR18指定になりそうで……



011 シールドクエスト6~そして、すべては動き出す

「……結局、アスナさんでもダメだったか」

 

 たった今まで、目の前で繰り広げられていたのは、SAO最強剣士の一角、≪閃光≫アスナとALOに舞い降りた最強剣士、≪絶剣≫ユウキの一戦。スピードタイプの剣士同士の戦いは、終始攻防が切り替わる文字通りのハイスピード・バトルとなり、観客を沸かせた。同時に、これでまた、彼女の≪バーサク・ヒーラー≫という二つ名が有名になるだろうが……。ちなみにレイジ以下一部の≪風林火山≫メンバーは、先日サチに酒場で歌ってもらおうと、『バーサク・ヒーラーの歌』を自作して持ち込んだら、ものすごく微妙な顔をされた挙句、歌う前に本人にバレ、危うく『圏内事件』に突入しかけるという事件も起こしていたりする。

 

 ……嫌な事件だった。

 

(やっぱりあの≪絶剣≫と戦うなら……円形盾(バックラー)が絶対必要だな)

 

 それも間に合わせではない、正真正銘の相棒が。それさえあれば、戦う方法も、そして勝つ方法も――実は存在する。

 

 彼女の使用する仮想体(アバター)は、恐らくはコンバート。今まで名前を聞かなかったのも、他のゲームで馴らしてからALO(ここ)に来たのだとすれば説明もつく。そして、そうしたコンバートキャラには、共通した弱点が存在し、それはある意味SAO(アインクラッド)からのコンバートともいえる自分たちも感じていた。

 

(とはいえ、そこをつこうにも…………結局は、ねえ……)

 

 そこでやはり、盾が間に合わせであることからの防御力不足に戻るのだ。あの怒涛のようなハイスピード攻撃を防ぐには、盾は絶対必須だ。

 

「どうやったら、盾が手に入るものか……」

 

「いや、レイジ? 絶賛現実逃避中のところ悪いが、そろそろ現実に戻ってくれ」

 

 僕の隣のキリトが煩いが、現実に戻ったところで、結論は一緒。目の前に何が広がるかというと――

 

 

 ――――アスナさんが、≪絶剣≫にお持ち帰りされていた。

 

 

「……NTR? 哀れ、キリト」

 

「違う! しかも何で憐れまなきゃならないんだ?!」

 

「じゃあ、変えよう。昔、とある映画で結婚式から花嫁を連れ去るという場面(シーン)が――」

 

「何時の時代だ! しかもそっち方面のボケなのは、継続なんだな!」

 

 状況的に変わらないんだから、仕方ない。

 

「まあ、でも……本当はキリトも分かってるんだろ? あのユウキって()のこと」

 

「む……」

 

 あの()には、何かある。それも他人においそれといえない事情が。それは僕もキリトも戦いの中で感じていた。

 

「多分、アスナさんの何かが彼女の心の琴線に触れたんだろ。なら大丈夫さ」

 

「いや、そっちの方の心配は、実はあまりしてないんだが……」

 

 そう言うキリトの顔は、未だすぐれない。その瞳は真っ直ぐアスナさんたちが消えた方を向いていた。

 

「アスナ……何か家庭の方で問題を抱えてるみたいなんだ。だからしばらく近くにいて、力になってやりたいんだけど……」

 

「……」

 

 こっちでもか。僕もキリトも、仮想(この)世界ではともかく、現実では未だ寄る辺なき高校生に過ぎない。何の権力(ちから)もないし、何の地位もない。だからキリトはアスナにそこまで踏み込んでいいか二の足を踏んでいる、と……。ああ、もう!

 

「僕もシノンとのことがあるから言うけど……そう言うのって、力があろうと無かろうと、二人で乗り越えていくものなんじゃないの?」

 

 全然出来ていない自分が、何を言っているのか、って感じだが。

 

「二人で、か……」

 

 その言葉にキリトは何か考え込んでいる。まあ、二人なら大丈夫だろ。そう思い、アスナさんがいなくなって騒いでいるリズさん達に背を向け、そっと人ごみに紛れ、逃げ出す。どちらにしても今日のイベントは終わりだろう。

 

「さて、防具店でも覗いてからログアウトを――

 

「あ、いた! オーイ、レイジ」

 

 ――ん?」

 

 不意に名前を呼ばれ振り向くと、そこには≪月夜の黒猫団≫が全員集合(フルメンバー)で駆け寄ってきていた。

 

「……どうしたんだ、皆?」

 

「はあ、はあ……いや、あのな、レイジ!」

 

 息せき切って近寄ってきた黒猫団の男子勢が、一斉に頭を下げる。

 

「「「「頼む! 協力してくれ、レイジ!!!」」」」

 

「――は?」

 

「あはははは……」

 

 後ろで苦笑を浮かべ続けるサチは、何の説明もしてくれなかった。

 

 ◇ ◇ ◇

 

「――――≪キュクロプス・トーナメント≫?」

 

「そうそう! 何でもこの間解放された新生アインクラッド27層な、テーマはギリシア神話で、所々に巨人系のボスがいただろ?」

 

「……フィールドのあちこちにね。中々絶望感を煽る光景だったなあ……」

 

 普通に森の探索に出たら、木の天辺をはるかに越えたところに、棍棒担いだ巨人が歩いていた光景は印象的だ。もちろんその後、殴り飛ばしていたりする。

 

「俺達はあまり詳しくないんだけど、ギリシア神話の巨人の中に、キュクロプス、もしくはサイクロプスっていう細工が上手い巨人がいるんだってさ」

 

 ダッカーの言葉を引き取ったのは、ササマル。その顔にも他のメンバー同様、興奮を抑えきれない感じがあった。

 

 ギリシア神話の巨人、キュクロプス。伝承は色々あるが、中でも有名なのは鍛冶を司る下級の神であったという記述。オリュンポス十二神の鍛冶神ヘパイストスに仕えたともいわれたその鍛冶の腕前は、神々の武器を作ることすらあったという。

 

「それで、その巨人キュクロプスが27層解放とともにレプラコーン領地近くの村の闘技場(コロッセオ)に突如として現れ、その場にいたプレイヤー達にメッセージを残したんだってさ」

 

 かの巨人キュクロプスの残したメッセージは、こうだ。

 

『勇気ある妖精たちよ、汝らその勇気と力を証明せよ。頂点に立つ者に我が恩恵を授けよう――』

 

 テツオのその言葉に、僕も大分話にのめり込んできた。キュクロプスの、『恩恵』。鍛冶の下級神であるキュクロプスの褒章ともなれば、大体予想もつく。

 

「つまりこれは『望む武器・防具を与える』一大イベントではないか、と見られてるってことさ。しかも『集団戦』のね」

 

 ケイタの言葉は正解だろう。そして、この場に≪月夜の黒猫団≫全員がおり、そして自分が呼ばれた理由も理解(わか)ってきた。

 

「……このイベントに一緒に参加しよう、ってことか?」

 

「うん。公式サイトにもイベント報酬は載っていないんだけど、日程と方式だけは載ってたんだ。それによると、参加人員は、最大7人の1パーティーごと。基本的には、予選・決勝戦を行う勝ち抜きトーナメント方式なんだって。私たちじゃメンバーが後二人足りないからね」

 

 サチの言葉に、この場にいるメンバーを改めて見回す。サチ、ケイタ、テツオ、ダッカー、ササマル……確かに、5人。ここに僕が加わるとして……1人足りない。

 

「あと一人は――もしかして、シノン?」

 

「あ、うん……そうなんだけど」

 

 そう言ったサチの表情が、少し陰った。その表情に胸中が不安で一杯になる。

 

「シノンが、どうかしたの?」

 

「あ……えっとね、シノン、明るく振る舞ってたし、参加もOKしてくれたんだけど……」

 

 サチはほんの少し迷うような表情の後、やがて言った。

 

 

「電話口で、少し、涙声でね……不安を隠すみたいな声だったんだ」

 

 

 そう聞いた瞬間、イスを蹴るように立ち上がり、直近の宿屋に入って、急いで外へとログアウトしていった。

 




アスナVSユウキは、描写外で終了!いや、実際あのシーンは変更のしようがないですからねw

そして!シールドを手に入れるため、参加は半ば決まった≪キュクロプス・トーナメント≫!!一度こういうドラゴンボールやネギまのような、『武道会』イベントはやってみたかったんですよwwしかも、7対7のチーム戦トーナメント!戦術だけでなく戦略も必要なあたり、予想外な結末も用意できますし、メンバー総登場でお送りします!

一方、シリアス度が増してきたレイシノ。シノンに一体何が起こったのか、そのあたりは次回に……
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