ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男   作:路地裏の作者

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少し遅れましたが何とか投稿!


013 シールドクエスト8~争乱

 

(――これは、マズイかな)

 

 争乱の中、アスナは歯噛みした。ユウキに決闘会場から連れ出されてから、≪スリーピング・ナイツ≫の皆と会い、単独パーティーでのアインクラッド・フロアボス攻略に挑戦することになった。偵察を兼ねた第一戦の後、その場に紛れ込んでいた攻略ギルドに先を越されないようにと急いで戻ってきたが、悪質なブロック行為を受けた後、戦闘に発展。フロアボス攻略のために集められたレイドの半数と戦うことになっていた。

 

 勿論その行動に後悔などないし、ユウキに諭された「ぶつからなければ、伝わらないこともある」という言葉も間違っているとは微塵も思っていない。

 

 マズイのは、目の前に広がる圧倒的な戦力差だ。ようやく扉前の大規模パーティー(レイド)を片付けたところで、残り半分のレイドが到着してしまったのだから。

 

(この戦力差は覆しようがない……)

 

 今この場にいるメンバーは、間違いなく手練れだ。自分やユウキは勿論、シウネーをはじめとする≪スリーピング・ナイツ≫の皆も間違いなくトッププレイヤーに並ぶほどの実力がある。それでも――勝てない。

 

「ゴメン、アスナ」

 

 不意に背中合わせとなったユウキが呟いた。肩越しに振り返ると、こんな時だというのに、ほんのわずかに笑みを浮かべながら、ユウキは申し訳そうにした。

 

「ボクの我が儘につき合わせちゃって……」

 

「……いいのよ。この層はダメかもしれないけど……でも、次の層は必ず私たちで攻略しましょう!」

 

「……うん! そうだね!」

 

 覚悟を決め、それぞれが背中合わせのまま姿勢を低くする。後続部隊の到着とともに、ユウキは前、アスナは後ろの部隊へと突進するためだ。

 

「よし、行――!?」

 

 そのとき、アスナの眼に、黒い影が飛び込んできた。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 時は数分前に遡る。

 

 はしる、奔る、走る。薄暗いダンジョンの中を、只々目的地に向けてひた走る。

 

「――――僕にはそれを遠くで見守ることしか出来ない、のだった……」

 

「…………」

 

「「見守ってねえで、乗せやがれ!!」」

 

 今叫んだのはキリトとクラインさん(リーダー)。まあ、『馬』に乗って並走してる相手からそんなこと言われたらそうなるか。

 

「そう言われたって、長旅で疲れてるのに、いきなり呼び出して手伝わせたのは自分だよ? キリト」

 

「う……それは悪かったと思ってるけどさ……」

 

 ここは第27層のボス部屋近く。東京への帰還早々、キリトにメールで呼び出され、ALOにログインした。何でも、アスナさんが≪絶剣≫ユウキのギルド仲間と一緒に、単独パーティーでのフロアボス攻略を目指すのでそれに協力してほしいとのこと。それだけなら、特に問題でもなんでもなかった。

 

「けどよお、レイジ……情報の通りなら、急がなきゃヤベエぜ? 最悪、数に物言わせてPKってことも……」

 

「…………リーダーもそう思いますか」

 

 厄介ごとに発展したのは、偶然通りかかったリーダーの情報。何でも最近、どの領地にも属さない大規模混成ギルドの専横が目立つというのだ。特にひどいのが、新生アインクラッドのフロアボス攻略。いくつかの大型ギルドが手を組んで、他勢力の攻略へのスパイや妨害、その他マナー違反を平気で行っているというのだ。しかもそいつら、狩場の独占や通行のブロック行為、ときには不意討ちでのPKまで行うと言う。

 

「一応連絡したアルゴ――いえ、アルフさんからは、既にボス部屋の封鎖が行われてるって話なんでしょ?」

 

「……アスナさんが≪バーサク・ヒーラー≫になってる図しか浮かばないな」

 

「……いや、アレでアスナは普段は温厚なんだぞ。うん、ホントに」

 

「キリトよお……今言っても余計逆効果になるだけだぜ?」

 

 そんなことを言いながら全力ダッシュで馬に並走する男二人と、横座りしたシノンを後ろから支えるように座るレイジ。

 

「乗せてくれたっていいじゃないか……」

 

「い・や・だ。僕以外の男がシノンに密着するのを許すわけないでしょ?」

 

「ならよう……オメエの後ろでもいいからよお……」

 

「それはそれで、絵面がマズくなるからお断りです」

 

「「ひでえ……」」

 

 そんなことを言いつつ、前を向くとそこには件のギルドの集団があった。一応ギルドタグでも確認するが、やはり間違いない。

 

「扉の前を囲んでるっつう話じゃなかったか?」

 

「いや、多分援軍でしょ」

 

「やっぱりアスナが暴れてるってことね……」

 

「そっか……なら、オレはアスナを確認してくる!!」

 

 そう言うとキリトがスピードを上げ、ギルド集団の斜め後ろをすり抜け、そのままダンジョンの壁を≪壁走り(ウォールラン)≫スキルによって走り始めた。

 

「ふむ……なら、この集団は分断した方がよさそうね」

 

「なるほど。僕とシノンが上空から集団の中央を攻めて……」

 

「前と後ろはオレとキリトで挟み撃ちっつうわけだな? 乗ったぁ!」

 

 叫ぶと同時にリーダーは抜刀し、ギルド集団の最後尾へと斬り込んで行く。

 

「遅れるわけにはいかないね」

 

「ええ。手綱変わるわ。しっかり捕まって!」

 

 シノンの言葉とともに、闇天馬(ナイトメア)のメアが急上昇。ギルド集団の頭上を猛スピードで滑空していく。そしてちょうど集団の真ん中くらいのところで、ぐるりと背面飛行になった。

 

「ホラ、行きなさい!」

 

「イエス、マム!」

 

 爆撃機から投下される爆弾よろしく、集団のど真ん中へと勢い任せに突っ込んでいく。右手にはすでに、体術スキル≪エンブレイサー≫の光。

 

「ひとおおおおつ!」

 

「がああっ?!」

 

 集団ど真ん中にいたサラマンダー戦士の顔面に、手刀を突き入れる。落下の威力もあってサラマンダー戦士は一瞬たりとも耐え切れず、その身を散らした。

 

「て、てめえ!?」

 

「――オイオイ、テメエ正気かぁ? どれだけ戦力差あると思ってんだよ?」

 

 激昂する者、距離を取る者、嘲笑する者…………色々いるみたいだけど、どれも余り関係ない。

 

 勢いに呑まれた方が負ける…………それが分かっているからこそ、この集団の真ん前で余裕を見せているキリトと同じく、これ以上ないくらいの凶悪な笑みを浮かべる。それにシノンも同調する。

 

 

「――――さあ諸君、楽しい楽しい『戦争』のお時間だ」

 

「『殲滅』の間違いでしょ?」

 

 

 さあ、戦おう。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 ボス部屋の扉前では、目の前の光景に思わず手を止める者が多くいた。

 

「ぎゃあああああッ!?」

 

「ひいいいいいいッ!!」

 

 拳が、蹴りが、相手に当たるたびに、ポンポンと人間が飛ぶ様は、もはや台風か何かのようだ。

 

「く、くっそおおお!」

 

「ブラッキィイイ!!」

 

 そして、あっという間に相手を細切れにしていく彼も、まるで斬撃で出来た竜巻のようだった。

 

「ア、アスナ、すごい人と知り合いだったんだね……?」

 

「は、ははは……」

 

 その光景にユウキをはじめとする≪スリーピング・ナイツ≫のメンバーはおろか、アスナまで若干引いていた。……しかも片方は自分の恋人だ。

 

「――ホラ、何やってるのよ、アスナ」

 

 呆然とする彼女のすぐ横に、メアにまたがったシノンが降りてきていた。話しながらも片手間といわんばかりに目についたプレイヤーを射抜いていく。

 

「ここは任せて行きなさい。そっちの子たちも用があるんでしょう?」

 

「……! うん! ありがとね、しののん!」

 

 すぐさま身をひるがえし、ユウキの手を取って扉の方へと駆け出していく。

 

「……しののんはやめて欲しいんだけど」

 

 最後にボソッと言いつつ、弓に一気に三本の矢を番え、アスナたちの向かった方向へと同時に放った。オレンジのライトエフェクトを伴って飛んだ矢は、狙いたがわず敵プレイヤーの頭部や胴体へと突き刺さった。

 

「行くわよ、ユウキ!」

 

「! うん、『姉ちゃん』!」

 

 ≪閃光≫と六人の眠れる騎士たちは、力強い支援を背に、扉へとひた走っていった。

 




悪質攻略ギルド、『殲滅』の回。実際大手のMMOではこういう集団ホントにいたりします。数にモノを言わせて狩場の独占したり、通行の邪魔したり……正直楽しむこと前提で無課金でやってたので、非常に幻滅したのを覚えてます。そして、『無双』したいと思ったこともww

これにて原作の戦闘パートは終了。原作では、残りはドラマとダイジェストでしたが、実はドラマ部分をどこまで描写するか決まってなかったり……
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