ソードアート・オンライン 心優しき阿修羅の男   作:路地裏の作者

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今回、少し短いかもです。


015 シールドクエスト10~前夜の語らい

 

「――――成程ね。キリトが開発してた遠隔地アクセスに使えるプローブを使って、学校の体験入学を行ってるんだ?」

 

「うん。キリト君やクラスの皆は知ってるんだけど、学年が違う人とかには知られてなくて、時々戸惑う人もいるみたい」

 

『先生方にはちゃんと話してるんだよ。古文の先生とか良い先生だよね!』

 

「へー…………」

 

 昼休み。廊下でアスナさんに出会ってから、肩に乗っかったカメラと、そこから聞こえる≪絶剣≫ユウキの声に戸惑って事情を聞いたところ、返ってきたのはそんな答えだった。レイジもアスナも、食事中の小さな話題程度だったので、それには特に問題はない。そう、問題はない。

 

 問題なのは――――。

 

「――で? 目の前のこれは何時おわるの?」

 

 目の前で食事そっちのけで話し続ける知り合いと、その仲間たち。

 

「だから、もうちょっと情報フィードバックを高めたほうが――」

 

「いや、それだとプローブの感度が上がりすぎるだろう。それより――」

 

「ハードの追及はこれ以上厳しいんじゃないですか? むしろプログラムで――」

 

 ……MHCPだから何とかついていけるが、ずっとこんな感じでキリトとメカトロニクスを勉強している学生数人が話し合っているのだ。本人たちをそっちのけで。

 

「……実は初期設定のときも、昼休みギリギリだったんだよね」

 

『……それからずっと、昼休みはこんな感じなんだ』

 

 ……毎日、だったようだ。

 

「そう言えば聞きたかったんだけど、≪スリーピング・ナイツ≫はやっぱりアスナさんも入れて今度のトーナメント出るの?」

 

「うん。ユウキに誘われてね」

 

『うん! ボク楽しみなんだ。自分にピッタリな武器作ってもらうの!』

 

 これで優勝候補の参戦は確定、と。後はこっちがどこまで抗えるか、か……。

 

「…………」

 

『? 難しい顔してるね? どうしたの?』

 

 その質問に、レイジは正直どう返していいか分からなかった。目の前にいる彼女について、先程聞いた病状は、『難病による長期入院』というだけだった。しかし、ユウキに出会った時の印象、更に未完成のプローブまで使って、アスナさんが学校に連れてきているという状況が、彼の中に一つの仮説を生み出した。

 

 …………彼女は、長くないのではないか、と。

 

「……いや。僕と僕の彼女も大会に出る予定なんだ。だから、どうやって≪スリーピング・ナイツ≫を攻略しようかな、って」

 

 その推測を誤魔化すために、あえて全く関係のない話題をふる。

 

『え、そうなの?! へー、でも負けないよ! 今回の優勝は、ボクら≪スリーピング・ナイツ≫だからね!!』

 

 目の前の彼女は、天性の明るさを持ち、会話を楽しくする。多分これは、彼女が昔から持つ資質だろう。

 

『でも、『彼女』かー……そういう相手がいるのって、なんかいいね』

 

「……そう言えば、レイジ君はあれからしののんのお祖父さんは説得出来たの? なんか揉めてたはずだけど」

 

「……あー、実はあんまり。お祖母さんには何度か電話する機会あったんだけど」

 

 シノンの電話に便乗して話す機会はあったが、未だに彼女の祖父とは話し合いが出来なかった。どうにも避けられている印象がある。

 

『どういうこと?』

 

 ユウキが興味を持ったので、詳しく説明した。彼女の実家へ挨拶に行ったが、彼女の祖父に認められなかったことなど、かなり細かくだ。

 

 で、その説明に対してのユウキの反応は。

 

『んーー……? んん~~~~……』

 

 プローブの向こうで長考することだった。どこかに深く考える要素はあっただろうか?

 

『それって…………お祖父さんは、お孫さんが心配ってだけなんじゃない?』

 

 …………いや、それは皆分かる。むしろ心配したからあの『別れてくれ』発言なわけで。

 

『質問だけど、その彼女さんは東京出てきて一年経ってないんだよね』

 

「……ああ」

 

『初めての里帰りで、恋人同伴だったんだよね』

 

「…………ああ」

 

『しかもその彼女さんは、今の段階では結婚とか考えてないって言ったんだよね』

 

「………………ああ」

 

『フツーは、東京の悪いオトコに騙されてるって思うんじゃない?』

 

「……………………」

 

 ぐうの音も、出なかった。そうだ。どう考えてもそうだ。あの状況なら誰だってそう考える。第一その男は、里帰り初日に実家にアポイントメント無しの訪問だ。殴り飛ばされなかっただけ、まだ温厚といえよう。

 

『それに終始沈黙していたみたいだけど、きちんと対応してくれたんでしょ? むしろ誠意を見せてる方だよ』

 

 いきなり雪の中訪問した時も、泊めてくれた。相手の迷惑を一切考えていなかったともいえる。

 

『とはいえ、今はどうやってお祖父さんを説得するかなんだけど……方法は一つしかないんじゃない?』

 

「へえ……ユウキ、何か方法があるの?」

 

 興味を引かれたのか、横合いから挟まれたアスナさんの質問への彼女の回答は。

 

『当たって、砕けろ!』

 

 シンプルだった。

 

「「……ええ~~」」

 

 ものすごく微妙な反応。ちなみにこうした場面で心情を共有してくれる真っ黒黒助な友人は、未だにパソコンの前で数字の羅列を弄っていた。

 

『いや、でもそれくらいしか方法ないよ? 要はこれからレイジがどう誠意を見せていくかが、重要なんだし』

 

「……成程」

 

『それにねー……』

 

 そこで一旦溜め、一言。

 

 

『ぶつかってみないと、分からないことだってあるよ』

 

 

 その言葉は、レイジの心に、何故かすとんと落ちた。

 

「そっか。そうだな……」

 

 動くしかない。ぶつかるしかない。結局、思いを徹すにはそれしかないのだ。

 

『まあ、お祖父さんがヘソ曲げてたら無理かもしれないけどね?』

 

「最後に台無しだよ……」

 

 見事にオチを付けた彼女の言動に苦笑しつつ、その日の昼休みは終わった。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 そして、数日後。多くの妖精が集まる闘技場。その中に、彼ら、彼女らの姿はあった。

 

『――――集いし勇者たちよ、よくぞ来た。汝ら己が最強を証明せよ。証明せし者に、我が祝福を授けよう――――』

 

 ≪キュクロプス・トーナメント≫が、始まる。

 




前夜終了。いよいよ大会……思ったほど進まなかったな?これもスランプなのだろうか……

次回からはしばらくバトル展開が続きます!このトーナメント編では、出来る限り戦略とか戦術を重視して書いていきたい!『出来る限り』!大事なことなので、二回です!筆写しきれるかなあ……
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