ちっちゃいTS魔女ちゃんによる、異世界ダンジョン探索配信   作:龍翠

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初めてのダンジョン(強制)

 

 そして、翌日。

 

「おはようございます、リオンさん!」

「うん。おはよう。ここはどこ?」

「ダンジョンです!」

「なんで?」

 

 ボクは今、寝起きなわけで。普通なら自分の部屋で目が覚めるはずなんだけど。

 なぜかボクはベッドごとダンジョンの中にいた。本当に意味が分からない。

 その上。その上だ。

 

『リオンちゃんおはよー!』

『銀髪幼女がベッドの上ですよすよ眠る姿は控えめに言って最高でした』

『はすはすしたい』

 

 おもいっきり配信中になってる。カメラになってるという光の球も浮いてる。コメントも聞こえてくる。いつの間に配信したんだこれ。

 

「アスティ」

「はい」

「いつから配信を?」

「一時間ぐらい前から寝顔配信をしています!」

「死ね」

「ひどい!?」

 

『無許可だったんかいw』

『リオンはかなり控えめに言ってると思うよ』

『ガチギレされても文句言えねえw』

 

 気持ち的には本気で怒ってるけど、アスティに言っても意味がないとも思ってる。諦めの境地ってやつだね。笑えない。

 

「ベッドは戻しておいてもらえるんだろうね?」

「お任せあれ!」

 

 アスティが指を振ると、すぐにベッドが消えてしまった。アスティの言葉を信じるなら、ボクの部屋に戻してくれたんだと思う。きっとそうだ。さすがにそれは裏切らないと信じたい。

 

「それで? ボクに何をしろと?」

「ダンジョン攻略しましょう! 第二層行きましょう! 異世界人さんに会えますよ?」

「断る」

「ええ!?」

 

 かなり驚いてるみたいだけど、どうして驚くのか分からない。だって、アスティが言ってたじゃないか。

 

「ボスのヒュージスライムは死にかけることもあるんでしょ? 痛いのはいやだから拒否だ」

 

『根性無しだな』

『いや当たり前の感想だろ。痛いのは嫌だってのは』

『しかもメリットが異世界人に会えるってだけだし』

『その上、異世界人が安全かもわからん』

 

 そういうことだね。百害あって一利なしってやつだ。いや、一利ぐらいはあるかもしれないけど、メリットがデメリットを上回ってない。そんなんでボスと戦いたいとは思わないよ。

 けれど、アスティはなぜかにやにやと笑っていた。

 

「そんなリオンさんにプレゼントです!」

「嫌な予感しかしない……!」

「そう言わずに! はい!」

 

 アスティがまた指を振る。何が起こるのか警戒したけど、少し予想外な変化だった。

 ボクの服装が変わっていた。変わった、というか、シャツとズボンの上にローブが増えてる。真っ黒なローブで、なんだか不思議な飾りがいくつかついてる。

 さらに手にも何かを握ってる感触があって、見ると身長ほどもある大きな杖だった。赤い宝石が杖の先端に取り付けられてる。ちょっとかっこいいかもしれない。

 

『魔女っこだあああ!』

『ちっちゃい銀髪魔女!』

『リオンちゃんこっち向いて手を振って!』

 

「うるさい……!」

 

 こいつらはちょっと騒ぎすぎだと思う! ボクの気持ちも考えてほしい!

 

「アスティ。これはなに?」

「リオンさんのために用意した装備です! 名付けて! 神気のローブと神気の杖! 神の気と書いてしんきです!」

「だっさ」

 

『アイタタタ』

『神が厨二とかないわー』

『中学生レベルの神様』

 

「ひどくないですか!?」

 

 妥当な評価だと思うよ。神気て。いや、アスティからすれば、そのままの意味なのかもしれないけど。

 

「じゃあ……。極夜!」

「えっと……。実際にある言葉だからましだとは思うけど……」

 

『白夜の対義語だっけ』

『太陽が昇らずにずっと夜の場合のやつだな』

『白夜も極夜もアイテムの名前としてなら十分痛い気がするな!』

 

 おっと、アスティがちょっと泣きそうな顔になってる。神様なのに感情豊かだね。さすがに言い過ぎかな?

 

「じゃあ……。夜のローブと夜の杖で……」

「う、うん。なんか、ごめんね」

「もういいです……。それよりも!」

 

 落ち込んでいた様子から一変して元気になった。ただの演技だったのかと思ってしまう。

 

「そのローブと杖の効果ですが!」

「うん」

「ローブは結界の魔法がこめられていて、あらゆる攻撃的な干渉を防ぎます! 杖は魔力を超強化! 向かうところ敵なしです!」

 

『なんやねんそれ!』

『ずるっこだー!』

『チートやチート! チーターや!』

 

 チートは少し意味が違う気もするけど、言いたくなる気持ちは分かる。さすがにちょっとずるすぎると思うけど……。でもこれなら安心して探索できるのも事実かな。

 

「でも絶対防御って変な穴をつかれて負けちゃうのが定番の気がする」

 

『それな』

『ボスがその能力を持ってたらあるあるやな』

『完全に身動きできなくされたり、とかな』

 

 そうそう。そんな感じ。

 ボクの懸念をアスティも理解してくれたのか、それなら、と指を立てて、

 

「私に、ギブアップ、と念じてください。安心安全にリオンさんのお部屋に転移してあげます!」

「わー。至れり尽くせりだー」

「えっへん!」

 

 胸を張るアスティはかなりあざとい。いや、実際のところ、かなりかわいいんだけど、中身がこれだからなあ……。正直、関わり合いになりたくない、というのが本音です。

 まあ、逃がしてくれそうにないから諦めてるけどさ。

 

「分かった。ボクも異世界人には興味があるし、がんばってみるよ」

「期待してます!」

 

『がんばれリオン!』

『ぶっちゃけ最速探索になるだろうからめっちゃ楽しみ』

『ちなみに自衛隊はこれからダンジョンに潜る準備をしてるっぽいぞ』

 

 あまりにも遅すぎる、と言いたいところだけど、正直アスティがおかしいだけだから全然責められない。むしろちゃんと準備しないといけないだろうから。

 もしかしたらどこかで自衛隊が保護してくれるかも、なんてあり得ない希望をちょっぴり抱いて、ボクはダンジョンの奥へと進んでいった。

 




壁|w・)探索開始、なのです。
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