ちっちゃいTS魔女ちゃんによる、異世界ダンジョン探索配信   作:龍翠

7 / 65
ふぁいあ!

「さあ、リオンさん! ファイアでヒュージスライムをやっつけましょう!」

「確かにボクが使えるのはその魔法だけみたいだけど……。いくらなんでも一人だと時間がかかると思う」

「大丈夫ですって! 襲われてもローブがありますから!」

「そういう問題かな……」

 

 もしも人間を取り込んで溶かすようなスライムだったら。スライムの中でちくちく攻撃するしかなくなるかもしれない。それは、とても嫌だね。不安しかない。

 でも魔法を使ってみたいという気持ちもある。最悪、逃げればいいだけだし、一度使ってみよう。

 そうしてボクは大きいスライムに杖を向けて、魔法を放った。

 

「ファイア」

 

 その瞬間、業火が部屋を満たしてしまった。

 

「え」

 

 前を見ても上を見ても左右を見ても炎しかない。灼熱の業火が部屋を埋め尽くしてる。ボクは半透明の青色の球体、おそらく結界に囲まれて炎は届いてない、けど……。

 もはや地獄だ。

 

「えええええ!?」

 

『やっべえええ!』

『大災害じゃねえか!』

『これ、最弱の魔法なんだよね?』

『どこぞの大魔王様の名セリフが聞こえてきそう』

 

 そんなこと言ってる場合か! とんでもないことになってるんだけど!

 

「たーまやー!」

「楽しそうだなクソ女神ぃ!」

 

『女神様www』

『リオンはちょっと落ち着けw』

『俺らは落ち着きすぎだけどな!』

『言うて他人事だし』

 

 いいなあ、ボクも他人事と言える方になりたいもんだよ!

 たっぷり一分ほど燃え続け、そしてさっきまでの業火が嘘のように一瞬で炎は消え去った。後に残ったのは。ボクとアスティだけ。ヒュージスライムは跡形もなく消し飛んでしまった。

 なにこれこわい。

 

「これ、実質的にボクは魔法を使えないってことでは……?」

 

『せやな』

『もし誰かが巻き込まれたら、即死だろうなこれ』

『ダンジョン配信なのに魔法を使えない配信者がいるらしいw』

 

 下手に使うと誰を巻き込むか分かったものじゃないからね……。よほどのことがない限り封印した方がいいかもしれない。

 それはまあ、仕方ない。安全のためとはいえ、望んでしまったのはボクだから。

 でも。

 

「いやあ、とてもすごい魔法でしたね! 最上級魔法を使ったらどうなっちゃうんでしょう……! 楽しみです!」

「こいつは殴っても許されると思う」

「なんでえ!?」

 

『当たり前なんだよなあ』

『諸悪の根源な女神様はちょっと反省するべき』

『無邪気に破壊を楽しんでるからなこの邪神w』

 

 炎を見てはしゃぐ女神は邪悪そのものでした。

 まあ、でも。倒したのは倒したわけだし……。奥に進んでみよう。ここまで来たら、開き直らないと。楽しもうぜ、ボク!

 

「よっしいくぞー!」

 

『二層目だー!』

『マジでさくさく攻略だな!』

『異世界人楽しみ!』

 

 ボクもそれが楽しみだ! むしろそれしか楽しみがない!

 ボス部屋の奥に見える部屋に向かう。そこは小さな部屋になっていて、階段があった。この階段を下りれば二層目なんだと思う。

 

「それじゃあ、下りるけど……」

 

 振り返る。アスティがいる。にこにこと、満面の笑みだ。

 

「嫌な予感しかしない」

 

『それな』

『わかる』

 

「なんでですか!?」

 

 自分の胸に手を当ててよく考えてほしい。アスティの笑顔は信用できない。

 ボクは小さくため息をついて、階段を下りていった。

 

 

 

 階段の先に広がっていたのは、街でした。

 

「いや、なんで……?」

 

 正確に言うと階段の先も少し洞窟だったんだけど、短い通路を歩いて出口らしき光を出てみると、そんな街並みが広がっていた。

 地面は石畳で舗装されて、たくさんの家々が並んでる。洞窟の中のはずなのに暗くなく、むしろとても明るい。太陽でもあるのかと思うぐらいに。

 そして、人が多い。たくさんの人が歩いているのが見える。人間だけじゃなくて、いわゆる獣人みたいなのもいるね。

 

「ケモナーが歓喜しそう」

 

『けものっこだあああ!』

『ロリなけもっこはおられますか!?』

『ちょっとダンジョン行ってくる!』

『おいお前らこいつら絶対ダンジョン入れるな!』

 

 ここまで来たら日本人が原因で変な犯罪が多発しそうだね。マジでやめてほしい。来ないでほしい。どうにかしないといけないんじゃないかな。

 いや、でも。

 

「どっちみちヒュージスライムに負けるでしょ」

 

『それは確かに』

『よしお前ら逝ってこい!』

『いやだあああ!』

『ちくしょうけもっこが手の届く場所にいるのに……!』

 

 こうして異世界の秩序は守られた、なんて。

 




壁|w・)これは上級魔法ではない、初級だ……!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。