童貞が女の子と飯食ってたらハーレム築いてたんだが。 作:小魔神
ナデシコと一緒に食事をした数日後。
やることも無いので家の掃除をしていると、豪快にドアが開かれる。
「あー、ハルキ。相変わらず辛気臭い顔してるなぁ」
「よう。久しぶりだな」
開口一番失礼なこいつはツバキ。たまに家に来ては厄介事を持ち込む大変なやつだ。ちなみに少年みたいな成りをしているがれっきとした女だ。一度、勘違いで大変な目にあったからな。詳しいことは割愛するが。
「ところでナデシコとの仲は進展したの?」
でたよ。この世界のやつはそういうことばっかり聞いてきやがる。特にツバキはナデシコと知り合いだってことだし余計に気になるんだろうけどな。なんでこう、どこの世界でも女ってのは恋ばなが好きなのかね。
「なんだよ急に。別に何もしてないし、相変わらず俺は童貞だよ」
「そ、そう。まぁ、童貞だって気にしなくていいよ、私も同じだし」
馬鹿にしたのか憐れんだのか知らんがニヤリと笑ってツバキが言う。それに何が同じだよ。
「お前は女だから当然童貞だろうが」
一部の性癖の人を除いて女は大抵童貞だわ。馬鹿にしやがって。
「いや、まぁそうなんだけど。そうじゃないっていうか…」
「何をごちゃごちゃ言ってるんだ。それより用事はなんだ?」
「用事がないと来ちゃだめなの?」
「別に来てもいいが、お前の場合は大概厄介事とセットだろうが」
ツバキが来るときは基本的に何かしらの頼みごと絡みだ。こいつに恩がある俺としては毎度断れずに、拘束されちまうってわけ。
「き、今日は違うし」
「あっそ。じゃ何しに来たんだ?」
「い、いや、やっぱりいい」
こいつが言い渋るなんて珍しいな。いつもは開口一番、何かしらの頼みごとしてくるくせに。
ついこの前なんて、落とし物を探せとかなんとかで海にまで連れていかされたからな。ビーチでヤリまくってアホどものせいで大変気まずかったことを思い出す。そういえば横のこいつもずっと下を向いてたな。
とにはともかく、ツバキの頼みはできる限りは叶えてやりたい。
「なんだ、らしくないな。お前と俺の仲じゃないか、何でもとは言わんが、多少のことならしてやるぞ」
「ほんとだね。男に二言はないから」
「ん? あぁ」
まどろっこしいな早く言ってくれよ。
そんな念が通じたのかようやくツバキが本題に入る。
「お、お前って料理上手いんだよな」
「まぁ、それなりのことはできるとは思うけど。あれだったら食っていくか?」
どうせ、ナデシコあたりに聞いたんだろう。まぁ、何度も言うが1人で食べるより相手がいた方が楽しいしいいんだけどな。
「ば、ばか。なに言ってんの!?」
「なんだ、てっきり食いたいのかと思ってたけど違うのか」
「ち、違うなんて誰が言ったの!」
めんどくさいやつだな。こういうときナデシコのやつは口では一応ゴニョゴニョ言うけど、食べない選択肢は取らないわけだから楽なんだよなぁ
どうせツバキも食べていく前提で話を振ってきてるんだろうけど。
「じゃあ、食っていくんだな? とはいっても今は何にも無いから夜にでもまた来てくれ」
「だからぁ」
強引に話を決めてツバキを追い出す。こうでもしないと話が終わりそうにないからな。
そして、向かえた夜。
「ちょっとハルキさん。なんでコレがここにいるんですか?」
「…え、えと」
空気が重い。修羅場にでも迷い混んだのか?
いつもの馬鹿みたいに愛想のいいナデシコが嘘のように、その表情には無の仮面が張り付いている。
「お前ら友達なんだよな?」
「私がコレとですか? そんなの誰が言っていました?」
「い、いや俺の勘違いかな。ハ、ハハ」
流石にこの状況で空気の読めない発言をするほど、俺も馬鹿じゃない。
「ハルキさん。私は結構寛容な方だとは思いますけど、ゲテモノ好きも大概にしてくださいよ。癪ですけど、今日のところは帰ります」
「ん、あ、ああ。悪かった?」
一応謝罪はする。でも、考えてみればあいつが勝手に来ただけだし、俺は全く悪くないよな?
そうやって、心の中で毒づいてみるもののナデシコは振り返ることもせずドアを開け去っていく。あんな機嫌の悪いあいつは初めてだ。
そして、ドアの閉まる音が響き、暫くの静寂のあとツバキが口を開く。どことなくその声は震えていた。
「ハルキ、どうしてナデシコがいるのさ」
「知らん、あいつが勝手に来たんだ。まぁよくあることではあるけどな」
「だ、だってナデシコとの仲は進展してないって言ってたじゃん」
そう言えば昼にそんなこと言っていたな。てっきり俺のことをからかうために言っていたのかと思って適当に返事してしまってたな。
「いや、本当に何もしてないんだって。一緒に食事したくらいで」
「ハルキのばか! おたんこなす」
「な、泣くな。俺の地元じゃ、食事は家族とかみんなでするのが当たり前だったんだよ。俺が悪いかもしれんが、本当に何もないんだよ」
ナデシコのやつとよく飯を食べるせいか、勘違いしがちだが、この世界だとある程度の仲にならなければ一緒に食事はしない。そこら辺の感覚がまだアップデートできていないんだよなぁ。そういう意味だと今回のは完全にこっちの落ち度だ。
そうして、ツバキをなだめること数分。
「落ち着いたか?」
「…ごめん」
「もしかして、お前とナデシコって仲悪いのか?」
聞いてもいいものか迷ったけど、質問させてもらった。場合によっては仲裁に入れるかもしれないしな。
「仲が悪いっていうか、私が一方的に嫌われてるだけ。私って根暗だし」
「そうか? お前が根暗なんて想像もできんが」
ツバキと出会った日を思い出す。
少なくとも根暗なやつは、あんなトラブルを持ち込まないとは思うんだけどな。
「ハルキの前ではカッコつけてたんだよ。何も知らない、よその人だから」
まぁ、その気持ちは分からなくもない。俺も高校デビューでやらかした経験があるからな。俺の場合は同じ中学のやつのせいでおじゃんになってしまったけど、今のツバキも似たようなもんか。
でも、そんなことはどうでもいい。俺にとっちゃ、俺の知っているツバキが全てだしな。
「なぁ、ツバキ。俺はお前のこと嫌いじゃないぜ。こっちに来て、お前がいなけりゃ俺は終わってたしな。お前さえ良ければ食事の続きをしようぜ」
「…うん」
少しの沈黙のあとツバキが返事をする。そうこないとな、せっかく作ったんだ、美味しく楽しく食べてやらないとな。
あぁ、それと1つ言い忘れてた。
「ツバキ、その服似合ってるな」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「楽しかったし、美味しかった」
今日の食事は人生の中でも一番のものかもしれない。うんうん間違いなく一番だ。
ナデシコのバカがいたのは予想外だったけど、却ってラッキーだったかも。
「きっとハルキ、私のこと可哀想だと思ってくれたよね」
今は憐れみの感情でもいい。ハルキと一緒に居られることに変わりはないし。
そういう意味だと、あの家柄だけがいいだけの能力もないクズだって役立つ。
精々、私のことをバカにしていればいい。
「私を幸せにしてねハルキ」
私なりに一生懸命したお洒落、それでもいつもの服とそこまで違いはなかっただろうに彼は褒めてくれた。
「大好きだよ」