憧れを、越えていけ。ーー侍達の軌跡ーー 作:パス谷翔平
憧れを、越えて進め
――決勝進出チームがこの回、決まる。
最終回、ノーアウト1,2塁。1塁には代走。……早い話、ここで点をとれなきゃ、もうチャンスはない。
WBC2023準決勝第二試合、日本対メキシコ。この試合は、数々のドラマを生みながらも、5対6という日本が一点ビハインドで9回裏へとやってきた。……そして、俺の出番がとうとう回ってきた。
ノーアウト。長打がでれば同点の逆転もある。ホームランが出たら、文句なしに勝利。そんな中、熱狂の渦中になっているのが俺だった。
だが、不思議と気遅れはしていなかった。監督からの言葉を胸にし、打席へと向かっていく。一歩一歩、踏みしめながら。
監督、すいませんでした。ここまで不甲斐ない俺で。不甲斐ないバッティングで。
正直、俺には4番も5番も、荷が重いとすら思っていた。
それでも信じてくれた、皆の事を思い浮かべる。何度も叱咤激励し、俺の事を気遣い、引っ張り上げ、ここまで繋いできてくれた皆の事を。
吉田さんのスリーラン、山川さんの犠牲フライ、そして大谷さんと吉田さんによるこのチャンス。
源田さんのファイト、佐々木の苦しみながらの投球、リリーフ達の奮闘。
負けかけ、絶望しかけ、それでも諦めずに食らいついた。バトンを繋いだ。
皆で繋いだバトンは、とうとう俺の手に届けられた。
『さあ、この男はまたもチャンスに恵まれた!今日は3三振、村上!ここ一番で決めきれるのか!?』
実況、そして会場のボルテージが上がっていく。観客も、どちらのチームも熱気は最高潮になっているのが雰囲気だけで感じ取れた。ここが、本当に分岐だということも、強く実感した。
――だが、そんなこと俺にとってはどうでもよかった。
大歓声で沸き立っているのだろう球場の音も、相手ピッチャーの顔も、何故だか不思議と気にならない。
『お前が決めてこい、ムネ!』
代打も、バント支指示もなかった。この大会、一本もホームランを打ってもいない、この俺に。今日、3三振をしている俺に。
――すべてはこの、大一番のために。
さあ、勝負だクローザー。今の俺は……日本の三冠王で、侍ジャパンの主砲だ。
1球目、空振り。
2球目、ボール。砂が舞った。
そして、3球目――奇跡は、その瞬間に現実となった。
――これは、侍達、そして各国の代表達による、夢のような物語。
数々のドラマ。友情、熱血、共闘、苦難。
誰もが主人公で、ファンタジーだ。
世界の頂を侍達が取り戻す、現実とは思えないストーリーだ。
遅い上に駄文ですが、よろしくお願い致します。