こうしたほうがいいとか、意見感想お待ちしているので良ければ是非ください。
「『ライトニング』!『ワイヤートラップ』!……っち、敵感知に反応があるな。そっちの通路はやめておこう。こっちは…罠だけっぽいな。ちょっと待ってろ、直ぐに罠解除スキルを使うから」
俺とダクネスは作戦通り、デュラハンの居城に侵入し、敵感知と罠探知、罠解除を駆使してなるべく接敵しないようなルートで攻略を進めていた。
ダクネスがどこからか仕入れてきたこの城の間取り図のおかげで、当初の想定より大分楽に攻略が進められている。
この間取り図をどうやって入手したのか聞いたら物凄く怪しい挙動で領主がとか当家がとか呟いて誤魔化していたが、まあ見逃してやるのが仲間というものだろう。
そんなことを考えていると、ダクネスがこちらをみて呟く。
「……恐ろしいほどの手腕だな。本当にカズマは駆け出しなのか?」
これまでの道のりで色々とあったが、ダクネスが居て本当に助かっている。
俺だけでは囲まれたとき限界があるし、直前でもダクネスのレベル上げになっているのもデカい。防御力は少しでも上がるに越したことはないのだ。
……剣は当たらないのに拳は当たるのを見て、これからも剣じゃなくて拳で戦えばいいのにとか思ったのは内緒だ。
「そうか?こんなの廃人共にくらべりゃまだまだだと思うが」
「ハイジン?というのはよく分からんが、まだ数時間も経っていないのだぞ?よくそこまで謙遜できるものだ」
そんなこんなで俺とダクネスはデュラハンの城の攻略を進め、通ってきた道にはアクアから貰った聖水を引いて目印にしつつ遂に四階層までやってきていた。
この聖水を引いた箇所にはアンデッド共が近づいてこず、とても重宝している。
また、この聖水を使って分かったのだが、アンデッド共は水に弱いらしい。
確かにゲームとかで水が弱点になってることがよくあるし、完全に盲点だった。
アクアの聖水のおかげでルートの確保も盤石な物となり、既にこの城の特定の箇所はアンデッドが近づけなくなっている。
「この分だと、今日中にはデュラハンがいるところまで行けそうだな」
この城は全部で六階層からなり、頂上である六階層には大きな部屋が一つあるだけらしい。
ならばベルディアは頂上にある第六階層で俺たちを待っているはずだ。
「……なあカズマ。昨夜お前は、本気で魔王を倒そうと思っていると言ったな」
俺が罠解除を発動し、階段へと続く通路の罠を除去しているとダクネスが突然そんな事を言ってきた。
「…言ったけどどうした。なんだ、今更怖くなったのか?」
「茶化すな。昨夜も言ったが、そんな訳がないだろう。お前が魔王城に単身で突入するとしても、私は無理矢理にでも着いていく覚悟だ。……いやな、まだ仲間になってさほど時間も経っていないのにこんなことを言うのはおかしいかもしれんが、これでもカズマの性格はある程度理解している。それを踏まえて言うが、カズマは、そんな真面目に魔王討伐を目指すような性格ではないのではないか?」
…確かに、言われてみればその通りだ。
元々俺はニートをやってただけに、怠け者で人生ダラダラ過ごしたいと思っている舐めた奴だったはずだ。
だが…。
「なんだお前。俺が金さえあれば引きこもって昼間から酒を飲む、人生舐めきったダメなやつとでも思ってんのか?」
「ち、違う!というか誰だそいつは!私の好みどストライクではないか!そんなやついるなら紹介しろ!……ってそうじゃない!いや、カズマはモンスターとの戦いに興味はあるが、それは戦闘が好きと言うよりどちらかと言うと好奇心から来るものだろう?」
真面目な雰囲気だったのにいきなり何時ものダクネスに戻った気がするが、直ぐに気を取り直して俺にそんなことを聞いてきた。
「…まあ、戦いが好きかって聞かれたらノーと答えるな」
「だろう?そもそもお前は危険なことや、仲間が危機に陥ることに対し強い抵抗があるように見える。にも関わらず何故魔王を倒すという理由で冒険者になった?どうして、魔王討伐を志している」
ダクネスの言葉に、俺は少し悩んだ。
俺が魔王の討伐を目指す理由は幾つかある。
まず一つはアクアの帰還だ。
アイツが堕天したのは、殆ど俺のせいだ。ならば、アイツを天界に帰すのは、俺の役割だと思ったこと。
一つは、仲間達のためだ。
この世界は魔王が居ることで、魔物達が一段階強くなるという理があるらしい。そして、魔王が死ぬと魔物達の力が一段階落ちるという理も。魔王が討伐されれば、俺が居なくてもこの世界は過ごしやすいものになる。そうすれば皆が死ぬ可能性がグンと減るのだ。それだけでも目指してみる価値はあるだろう。
…そして最後に、魔王討伐の報酬だ。
俺は、魔王を討伐すれば神々から何でも一つ、願いを叶えられるという権利が贈られる。
未だ俺の心の奥で燻っている過去に、決着を…。
「……まあ、いい。お前がいつか、自分の過去も含め私達に打ち明けられるようになるまで、今の質問の答えは待とう。だが、めぐみんでは無いが突然私達の前から居なくなるようなことはするな。それだけは、誓ってくれ」
俺が悩んでいるのを見て気を使ってくれたらしい。ダクネスは優しい顔をして俺が答えを出すのを止めてくれた。
「…すまん。そうだな、いつか、いつか皆に言うよ。俺が魔王をどうして倒したいのか、そして倒したらどうするのかを」
俺がそう言うと、ダクネスは一瞬不安そうな顔を作るが、直ぐに気を取り直し、何時もの雰囲気に戻った。
「そんな不安そうな顔すんなよ。お前もめぐみんも似たようなこと言いやがって。安心しろ、いきなりどこかに居なくなる、なんてことはないからさ」
「ああ、待っている」
俺の言葉にダクネスは微笑むと、再び気を引き締め俺に背を向けた。
「……魔王を倒してから、か」
俺は小さな声でそう呟くと、拳を握りしめるのだった。
ーーーーーー
城の攻略は順調に進み、大したイレギュラーもなく俺とダクネスは、ベルディアが待ち構えるだろう六階層の大広間がある扉の前までやってきていた。
「ダクネス、作戦のおさらいだ。突入して最初は、お前が前衛で俺が後衛になってベルディアの能力を確認する。もし隠れた能力がありましたとかだったら洒落にならんからな。ヤツの能力が情報通りなら、そのままヤツの気を引いてくれ。もし何かイレギュラーがあったら撤退だ。テレポートのスクロールは用意してあるから、ダメージを負ってでも俺の所まで来い。イレギュラーがなければ、俺のスキルでできるだけヤツを弱らせるから、それまではなんとか耐えろ。タイミングが来たら合図を送るから、合図と同時にこっちに戻ってこい。いいな?」
「心得ている」
現在時刻は一時を過ぎた頃だろうか。
当初の予定通り、俺とダクネスはベルディア直前まで来れた。
装備も用意していたアイテムも無事だ。最短ルートで来たため、気力も体力も魔力も、特に問題ない。
「よし、それじゃあ行こうか!」
そして、俺たちは目の前の扉を勢いよく蹴り開けた———!
——————
「……速かったな………予想以上だ」
この城で最も広く、大きな部屋のある最上階。
魔王軍幹部のデュラハン…ベルディアは広間の最奥にある邪悪な椅子に、鎮座していた。
その邪悪で堂々とした姿は、魔王軍の幹部としての圧倒的な貫禄がある。
そしてデュラハンは部屋に入った俺とダクネスを見て、愉快そうに首を揺らす。
……既に死の宣告は解かれているのだが、それは言わぬが仏だろう。
「あの紅魔族の娘とアークプリーストはいないようだが……。ふむ、どこかに隠れて俺の隙を狙っているのか…?小賢しいことだ」
ベルディアはこの前いためぐみんとアクアの姿が見えないことに対し不信感を抱いたのか怪訝そうに辺りを見渡すが、二人を見つけられず諦めて俺たちに視線を向けなおした。
「では約束通り、そのクルセイダーの呪いを解いてやろう。……それにしても、呪いをかけてもうここまで辿り着くとはな。ククククククク、クハハハハハハハハハハ!!面白い!面白いぞ!まさか駆け出しの冒険者にこんなにも早く我が城を攻略されるとは思わなかった!貴公らに敬意を表し、名乗らせて頂こう。我が名はベルディア。魔王軍幹部が一人、勇者殺しのベルディアのベルディアだ!」
豪快に笑うベルディアは、名乗りをあげるとダクネスに向かい指を向ける。
するとその指先から黒い光が飛び出し、一瞬、ダクネスの体を包み込んだ。
「そこのクルセイダーの呪いは、これで完全に解けた。これで貴様らは俺を倒すことのみに注力できるはずだ。さあ、ここまで来た勇敢な冒険者よ!この俺自ら相手をしてやろう!!」
そう言ってベルディアは黒色のオーラを解き放った。
これが死のオーラかっ!
強風の様にこちらを包む黒色のオーラは、見ただけで萎縮してしまいそうな禍々しさがあった。
しかし……!
「ほう?俺のことをよく調べてきたらしい。中々に強力な加護を受け取ったようだな」
俺たちを黒いオーラから守る青みがかった光を見て、ベルディアは関心したように呟いた。
死のオーラは無駄だと悟ったのか、ベルディアはオーラの放出を止めた。
「ならばこれはどうかな?…『カースド・フォール』!!!」
次にベルディアは俺たちに向け黒紫のオーラを飛ばす。
その瞬間、アクアの支援で軽くなっていた体が、ズシンと重くなった。
これが呪いによるデバフか!?
体が重くなるのを感じ、俺はその凶悪な効果に慄いた。
だが、
「ダクネス、そっちは」
「特に問題ない。普段通りに戻っただけだ」
強力な呪いを受けた俺たちは、ただ通常通りの能力値に戻っただけだった。
俺たちは予めアクアから支援魔法を受けていた。どうやら、やつのステータスを低下させる値と、アクアの支援魔法によって上昇する値はほぼ同じだったらしい。
「ダクネス、支援魔法をかけるぞ!」
「頼む!」
戸惑っている俺たちの姿を見たいのか、何もせずこちらを見ているベルディアを端目に、俺は自分とダクネスに対し支援魔法をかけた。
……さあ、ここからが正念場だ。
「ダクネス、お前は計画通り、ベルディアの相手を頼む!攻撃は気にすんな。お前は耐えることだけ考えろ!」
「任せろ!守ることを生業とするクルセイダーの名に懸けて、カズマには指一本触れさせはせん!……ああ!魔王軍の幹部というのはどれほどの攻撃をしてくるのだろうか…!は、早く!その攻撃を味わいたい……っ!!では、行ってくりゅ!!!」
途中までカッコよかったのに、どうしてコイツは最後にこう締まらないんだっ!
だがしかし、士気は十分のようだ。
期待と興奮のオーラで満ちたダクネスが満面の笑みを浮かべながら大剣を構えベルディアの元に駆けていった。
「ほう、来るか!呪いを受けたにも拘わらず、怯まずこの俺に向かってくるのか!首無し騎士として、相手が聖騎士とは是非もなし!全力で受けて立つ!」
ダクネスが両手で握る大剣を見て、ベルディアが受けの構えを見せる。
そのベルディアに、ダクネスは体ごと叩きつけるように大剣を降り下ろすが……。
「ふぁっ?」
その鎧にすらかすりもしない剣を見て、ベルディアから気の抜けた声が上がった。
……ちょ、ダクネスってば動かない相手にも外してるんですけど!
素人が刀を思い切り振ると、自分の足を切りつけることがあるとか聞くが、これは流石に……。
やっぱりコイツは剣ではなく拳で戦ったほうがいいんじゃないだろうか。
的を外したダクネスは、当たらないのは何時ものことだと言わんばかりに、一歩前へと踏み出し、今度は大剣を横に払う。
あれだけ恰好つけた後で外したのは流石に恥ずかしかったのか、ダクネスの頬がほんのりと赤くなっている。
今度の攻撃は当たる角度だったが、ベルディアは身を更に低くし、すんなりとかわす。
「なんと稚拙な剣だ……。貴様は期待外れだった。もういい!」
ベルディアがつまらない者を相手にしたとでも言いたげな口調で、袈裟懸けにダクネスに対して無造作に剣を一閃させた。
「さて、どうする小僧。お前の頼りのクル…セイ、ダ―……は?」
確実に討ち取った自信があったのだろう。
だが、ベルディ阿の攻撃は金属を引っかくような鈍い音を建て、ダクネスの鎧の表面を派手に引っ掻いただけに終わった。
……スキルは所持している武器や鎧にも効果があるが、魔王軍幹部の一撃をその程度で抑えるとか、お前はどんだけ硬いんだよ。
ダクネスが、一旦ベルディアから距離を取り。
「その程度か?魔王軍幹部の攻撃は…!って、ああ!?せ、折角新調した鎧がっ!?」
鎧に出来た傷を悲しげに見つめた後、キッとベルディアを睨みつける。
余裕そうだし、まだまだ行けそうだ。
「なんだ貴様は……?俺の剣を受けてなぜ斬れない……?その鎧か?その鎧が相当な業物なのか?爆裂魔法といい、短期間での攻略といい、貴様らは……」
何かぶつぶつと呟いている隙をつき、俺はベルディアに向かって魔法を放つ!
「『カースド・ライトニング』ッッ!!」
「なにっ!?」
ベルディアに向かって突き出したワンドから、黒い稲妻が解き放たれる。
隙だらけだったベルディアは回避が間に合わず、その体に直撃するが…。
「ほう…中々いい攻撃だ」
「なっ……!?効いていないだと!?」
上級魔法が直撃したはずのベルディアは、特にダメージを食らった様子もなく、そこに立っていた。
「残念だったな。俺は魔王様からの特別な加護を受けたこの鎧がある。これは弱点の補填のみならず、一定レベルの魔法ダメージを抑えてくれるのだ。……しかし驚いた。貴様、そのなりでアークウィザードなのだな。完全に油断していたよ」
世間話でもするように言うベルディアは余裕しかない。
即死とかデバフとか与えてくる挙句、本体性能も馬鹿みたいに高いのに上級魔法すら軽々防ぐ防御性能とかさすがにインチキだろ…!
しかし、まだまだ手は残っている。
「だったらこれはどうだ!『クリエイト・ウォーター』ッ!!」
俺はかなりの魔力を使い、大量の水を呼び出した!
呼び出された水は部屋に溜まり、俺たちの周囲を水浸しにする。
「ぬおっ!?」
俺の水を大袈裟に回避したベルディアを見て、俺はアンデッドモンスターの弱点が水であることを完全に確信する。
水は避けられたが、奴の足元は水溜まりになっている!
「『カースド・クリスタルプリズン』!!!」
俺はベルディアの足元目掛け、氷の上級魔法を発動した!
狙い通り足元を水浸しにしているベルディアの足を完全に氷に閉ざす。
「ダクネス!」
「分かっている!はあああああ!!!」
足元を氷漬けにされたベルディアに向かって、俺とダクネスは剣を持って駆け出す。
魔法がダメなら物理で殴るまで!
「…グッ!?させん!!」
その瞬間、ベルディアの赤い目が輝き、俺たちを捉えた。
邪眼の発動か…!!
しかし!
「『ライトオブセイバー』!!……『ルーンオブセイバー』!!」
「くらえッッ!!」
「バカな!俺の眼が効かないだと……グハァッ!?」
一切動きを止めない俺たちを見てベルディアが驚愕する中、俺とダクネスはベルディアに向かって剣を振るった!
俺たちはアクアの魔法によって守られている。
正真正銘女神の護りだ、如何に幹部とはいえそれを貫通することは出来ない。
漸く攻撃が効いたようで、俺とダクネスの同時攻撃によって遂にベルディアの鎧にヒビが入った!
「ダクネス!お前は畳みかけろ!……おいデュラハン、お前にはこれが効くだろう?『クリエイトウォーター』!!」
「なっ、ちょ、水はやめっ……ごぼぼぼぼぼぼ」
俺の氷結魔法によって足が動かせず、ダクネスからの攻撃への防御でこちらに対し無防備になっているベルディアの顔に向かって俺はクリエイトウォーターを放ち、水攻めにする。
「ちょっぼぼぼ!きばま!びびばべんぼぼぼぼぼ!!!!」
止まらない俺の水攻めにベルディアが悲鳴を上げるが、俺は勿論攻撃の手を止めず水攻めを続ける。
その間にもダクネスの攻撃は続き、大半が当たらずもそれがうまい具合にフェイントとなり、幾つかの攻撃をベルディアの鎧に当てていた。
……これでかなり弱ったはずだ!
「ダクネス、一旦離れろ!!……『カースド・ライトニング』!!『ライトニングストライク』!!!」
ダクネスが退避したことを確認した俺は、クリエイトウォーターの放出を止め、雷撃と落雷を放った。
まだ終わりじゃない!
「『セイクリッド・ターンアンデッド』!!!!」
ダメ押しと言わんばかりに俺は対アンデッドの最強魔法を解き放つ。
水浸しで雷が通りやすくなっているはずだし、魔王の加護が付与された鎧も所々砕けていた。
これでやられてくれたら最高だが……。
「やったか!?」
あっ、バカ野郎!!!
「それフラグ………!??!!」
言い終わる直前、敵感知スキルがこれまでにない程反応し、俺に危機を伝えてくれた。
俺は本能のままダクネスを抱えて飛びのくと、先ほどまでいた地点に闇色の渦が発生し、周囲を空間ごと削り取った。
今のは…呪いの魔法か!?
「…………やってくれたな、貴様ら」
声がする方向へ顔を向ける。
俺の目に映ったのは、いつの間にか足元の氷を粉々に砕き、こちらに指を向けているベルディアの姿だった。
クソッ!あれだけ弱らせてまだこんな強力な魔法使えるのかっ!
「駆け出しの街にいる冒険者が、まさかここまでやるとは思わなかった。だが、残念だったな小僧。如何に鎧が破損していようと、魔王様の加護は絶対。水を浴びせられた時はひやりとしたが、多少弱まりこそすれ、貴様の様な駆け出し冒険者がどうこうできる程甘くはないわ!……それにしてもどういうことだ?小僧、貴様はなぜ上級魔法と神聖魔法が同時に扱えるのか。それに、その後ろに下げているのは弓か?先ほどはソードマスターが扱う剣戟スキルまで使って見せたな……。貴様一体……勇者………?まさか、アクセルの街に落ちてきた光とは……」
ベルディアが俺を見つめ、良く分からないことを呟いている。
「……」
俺は隙を見せないベルディアに対し警戒を怠らないまま、俺はベルディアの勇者という発言に反応したかのように体を揺らす。
ベルディアはそんな様子の俺を見て、心の底から愉快そうに笑い、
「駆け出し冒険者の街の調査に何故『勇者殺し』の俺が選ばれたのか疑問だったが、これで納得がいった。ククク…中々に楽しめたが、どうやら貴公にはトドメを差さなければならないらしい。貴公らと手合わせできたことに、魔王様と邪神に感謝を捧げよう。さあ、これで……」
そう言って俺に対し指を向けようとするベルディア。
ヤバいな、急になぜ心変わりしたのか分からないが、こいつはもう戦いを止めて死の宣告を使うつもりみたいだ。
死の宣告に関してはアクアがいるので問題ないが、ここで死の宣告を撃たれたら最後、こいつは魔王城に逃げてしまうだろう。
こいつを討伐するのは、配下が少ない今が最大のチャンス。
……よし。
「やっぱり俺達じゃ勝てないかー!というわけでで、逃げるぞダクネス!」
「…………は?」
首無し騎士が呆気に取られたような声を出す中、俺とダクネスは扉に向かい全力で走り出した。
「『クリエイトウォーター』!『スティール』!!」
「!????!」
俺は一瞬だけ振り向いて水を巻き、呆けているベルディアに向かって窃盗スキルを炸裂させた!
ベルディアを弱らせ、隙を作り、呆けていて回避ができない最高のタイミングで放った俺の『スティール』は、
「バカな!?俺の武器がスティールごときで奪われただとっ!?」
狙い通り、ヤツの剣を俺の右手にもたらした!
…ぐ、結構重いな。
「じゃあなデュラハン!この剣は折角だし貰っていくぜ!これ、魔王に誓いを立てたとかで貰った剣だよな!?折角だし土木作業のおっちゃんにでも売ってやるよ!デカい剣だし、どぶ攫いとかで人気出るだろうからなァ!!」
俺は挑発も込めてベルディアに向かって高らかに宣言すると、ダクネスと共に全速力で走り出した!
――――――
「貴様あああああああ!!!!勇者としての誇りはないのか!?今目の前に、貴様が倒すべき魔王軍の幹部がいるのだぞ!!!」
そう言って俺達を追うベルディアの背後には、大量のアンデッドの姿があった。
逃げた俺達を捉えるため、あの後ベルディアは自身の全ての軍勢を召喚したようだ。
奥の方では狭い通路に押しつぶされそうになりながらも、必死に主人に尽き従うドラゴンゾンビの姿が見える。
……なんて哀れな。
「誇り?なんだそれ知らん!!っていうか勇者とか知らんし、お前俺達に死の宣告振りまいて魔王城に逃げる気だったろうが!騎士道精神の欠片もない戦法取りやがって!やっぱ魔王軍の幹部となると精神まで腐りきるのか!!!?」
「お、己貴様言わせておけばァ!!!!」
俺の挑発に面白いように乗ったベルディアは、俺達を追いかけるスピードを更にあげ、こちらに迫ってくる。
やはりあいつは自分が勇者殺しであることに誇りを持ち、勇者に対して強い感情を持っているらしい。
それが怒りであれ憧れであれなんであれ、挑発材料にはもってこいだ。
「挑発に弱いってのは本当だったな……『罠設置』!」
「いや、あれでは挑発に弱くなくても怒ると思うのだが……」
ダクネスがドン引きした様子で何か言っているような気がするが、俺は気にせずスキルを使いベルディアが通るであろう道に罠を設置した。
「おのれぇ、ちょこまかと!アンデッドウィザードよ!奴らに魔法を……って、ぎゃあああああああ!み、水がっ、いや違う!これは聖水かっ!!??」
俺達が通った箇所に設置した罠に引っかかったのだろう。背後でベルディアが悲鳴を上げている。
「散々虚仮にした駆け出しの冒険者に、罠にはめられるってどんな気持ちだ?おい、元は俺達がお前の罠に挑んできたんだ。幹部なら罠を仕掛けてきたならその知識で、精々俺の罠を回避して見せろよ!」
「き、貴様ァ!こんな小賢しいわぬぁつ!?なんだこの聖水は!?体が、体が焼ける!!!???」
俺が設置した聖水をぶっかける罠にはまりまくっているらしい、ベルディアの悲鳴がどんどん小さくなる。
「カズマ!もうすぐ出口だがベルディアの配下の数は!?」
「あんまし減ってねえ!マジかよアイツあの聖水殆ど自分で受けたのか!?」
手持ちの聖水を全て使い切ったのだが、それでも敵感知で感じられる奴らの数は殆ど変わらなかった。
本来の予定では今の罠でベルディアの軍勢を三割程削る計算だったんだが……。
「この程度ではまだ俺は倒せんぞ!貴様らがどこに逃げようと、必ず追い詰め、確実にその命を絶つ!特にそこの男っ!貴様だけは絶対に逃がさん!勇者だとかはどうでもいい!貴様を生かしておくと魔王軍にとんでもない被害をもたらせる気がしてならんわ!!!」
おお、こっわ。
余程挑発と罠が堪えたのか、ベルディアの声色は激怒しているのがすぐわかるほどに怒りに満ちていた。
心なしかベルディアの発言もどんどん早口になっている。
確かにこの城を出れば、ヤツの軍勢を合わせ数の暴力で俺達を見つけだすことは容易いだろう。
あれだけの数だ、幾らチートを貰ったとて、一人であの数を捌き、あのデュラハンを相手にするというのは不可能だ。
しかし!
「全軍を召喚したことを悔いるんだな。俺の挑発に乗った時点で、お前の負けは確定したんだ」
俺とダクネスは城の外に出ると、ベルディアに向き直りそういうと、空に向けて一つの魔法を放つ。
「『ライトニング』!」
「?なんだ、貴様何をして……」
それは、とある合図だった。
空に打ちあがる稲妻を見た紅い瞳を持つ少女が、既に爆裂魔法の詠唱を完成させてこちらに杖を構えた!
「なっ!まずい、これは…!」
膨大な魔力を感じ取ったのだろう、ベルディアは躊躇いなく城に戻ろうとするが、大勢の配下たちが邪魔で上手く逃げ込めない。
辺りの空気がビリビリと震えている。周囲一帯は魔力の渦で暗くなり、目が痛くなるほどの輝きを帯びている。
「『バインド』ッ!『テレポート』!!」
「しまっ!?」
俺は未だ逃げようとするベルディアに向かいバインドスキルを放つ。
ベルディアの足がロープで縛られたことを確認し、俺はダクネスを連れてテレポートで退散した。
「クソがッ!!おい、お前早くテレポートを……!」
諦めの悪いベルディアが配下にテレポートの指示をだしきる直前に、
「――――――『エクスプロージョン』ッッッ!!!!!」
めぐみんが放つ、人類最大威力の攻撃魔法をその身に受けた!!
―――――――――
「――――――『エクスプロージョン』ッッッ!!!!!」
「ヒィヤァアアアアアアアアアア―――――…!!?????」
如何に魔力抵抗力が高いと言っても、爆裂魔法の直撃には耐えられないだろう。
人類最大威力の魔法を受けたベルディアの悲鳴は、その魔法の放つ爆音によって途中から聞こえなくなった。
更にベルディアの背後にいた大量のアンデッド達も、ベルディア諸共に爆裂魔法を喰らい霧散していく。
配下はこれで一掃できた!あとはベルディア本人だが……。
「お、オノレェ……魔王様より授かりしこの鎧がなければ危なかった…………」
これだけの攻撃を受けてもなお、その身は朽ち果てずしぶとく生き残っていた。
……が、流石に鎧の方は耐えきれなかったようで、ボロボロに砕けている。
俺とダクネスによる数多くの攻撃に加え、罠による聖水を受け大幅に弱体化してもなお、爆裂魔法に耐えるその姿はまさに魔王軍の幹部として相応しすぎる風格であった。
「鎧がなくとも、貴様程度の破魔魔法は効かんぞ…!今度こそ、終わりにしてくれる!」
本来であれば逃走する場面だろうが、テレポートを使う部下は先ほどの爆裂魔法で消し飛ばされたため、撤退したくても出来ないのだろう。
そう言ってなおも俺達に呪いを振りまこうとするベルディア。
そうか、俺の魔法では無理なのか。
「よし、アクア。ヤレ!」
「任されたわ!」
鎧がボロボロに砕け、爆裂魔法を喰らい、俺達から数々の攻撃を受けたベルディアへ、アクアの片手が向けられた。
「貴様あの時いたプリーストか!だが、貴様の様な駆け出しプリーストの破魔如き俺に効くはずなかろう!貴様もろとも、この場全員を呪い殺してくれる……いや、待て、なんだこの神聖すぎる空気は。体が焼ける…?最上位のアンデッドである俺の体が、たかが駆け出しプリーストの醸し出す魔力に充てられて……?さっきからなんだ、この全身が、全力で逃げろと言っているかのように感じる悪寒は…なんだこれは……天敵の気配がする…ま、まさか貴様!」
「『セイクリッド・ターンアンデッド』ー!!」
「ちょ、待っ……!ぎゃああああああああー!」
アクアを見たベルディアは何かに気づいたようであったが、有無を言わさずアクアによって最強の破魔魔法がかけられる。
流石に本物の女神による破魔魔法は効いたみたいだ。
ベルディアの身体が白い光に包まれ、やがて薄くなって消えてゆく。
こうして、魔王軍との長い歴史の中、数々の勇者候補を屠り、魔王軍の力を盤石なものとしていた『勇者殺し』と呼ばれる首無し騎士は、初心者の街付近にて、たった四人のパーティーに打倒されたのだった。
良かった。これで倒せなかったら、流石にヤバかった。
「ふふん!ベルディア討伐よ!」
アクアが冒険者カードをひらひらと振りながら、笑顔でそう宣言した。
本当に倒せて良かった…!
あれ…?安心して気が抜けたからか、何だか力が……。
「やったなカズマ!!……カズマ?」
「魔力切れみたいね。特に怪我はないから大丈夫!それよりほら、私はめぐみんを背負うからダクネスはカズマさんを背負って!」
「相手は魔王軍の幹部、魔力切れになるのも無理ありません。お疲れ様です、カズマ」
そんなめぐみんの声と共に、頭に温かな感触があった気がした。
「さあ帰りましょう!今日は宴会よー!!」
意識が落ちていく中、アクアの楽しそうな声が響き渡る。
皆が歓声を上げる中、俺は意識を落としたのだった。
漸く……、漸く第一章の最終話まで来た…!次回はやっとこさ第一章のエピローグです。気長にお待ちくださいな。
辻褄合わせコーナー
どうして城の攻略にアクアを連れて行かなかったの?
→アクアの正体を隠すため。ベルディアには配下のテレポートという最悪な撤退手段があるため、万が一アクアの正体がばれてその情報を持ったままベルディアを見逃したら、それこそ終わりです。そのためカズマは、アクアを城の攻略メンバーにせず、めぐみんの爆裂魔法によって配下を全て消し飛ばし、逃げられる可能性を潰してからアクアを登場させたんですねぇ。