屋敷を手に入れてから数日後。
「なんだと?」
「あ?聞こえなかったのならもういっぺん言ってやるよ。上級職の集まったパーティーで?なんでお前みたいなひ弱そうなやつが紛れ込んでるんですかー?おう、なんとか言ったらどうなんだよ、最弱職さんがよお?」
そう言って、同じテーブルにいた他の仲間と笑い合う戦士風の男。
……そうか、ついに表にも出てきたのか。
このパーティーで一人だけ最弱職に就いているという、解決のしようがない問題が。
如何に俺自身のスペックが高かろうと、俺の就いている職業は最弱職である冒険者だ。
傍から見たら俺が浮いているのは客観的に見て事実だし、実際外聞も悪い。
ベルディア討伐の際も、冒険者カードの記載から、討伐したのはアクアで、その他三名が何をしたかというのは第三者から見たら何も分からない。
三人が俺も大活躍だったと言っても、上級職であるダクネスとめぐみんの活躍ならいざ知らず、最弱職の冒険者が魔王の幹部との戦いで役に立ったと信じる者はまずいないだろう。
実際、俺があらゆるスキルを使いこなし、上級職とも引けを取らないというめぐみんたちの話も、仲間の贔屓目だと断じられ碌に信じられていない。
軋轢を生み出さないためにも、デュラハンの討伐報酬を得た際にはギルドに居た冒険者達全員に奢ったし、酒場でたまに飲む仲になった冒険者も増えてきている。
そのため冒険者達の間では、俺の悪い噂よりも良い噂の方が意外と広まっている。
そういった理由から、こうも直接的に妬みの言葉を言ってくるやつは居ないだろうと思っていたのだが……。
―――無言でいる俺を、その男は俺が萎縮して何も言えないでいると受け取ったらしい。
「おいおい、何か言い返せよ最弱職。ったく、いい女を三人も引き連れてハーレム気取りってか?しかも全員上級職だと?冒険?クエスト?ハッ、上級職に囲まれながら命の危険もなく楽しく冒険ですーってか?やってることが貴族の道楽的なお遊びじゃねーか!さぞかし毎日、このお姉ちゃん達相手にいい思いしてんだろうなあ?」
それを受け、ギルド内に爆笑が巻き起こった。
しかし、俺達と仲良くしてくれている者の中には、その言葉に顔を顰め、注意しようとする奴もいた。
さて、ここからが難しい。
こいつを適当にあしらって受け流すことは簡単だ。
しかしそれをすれば、俺が『最弱職の癖に上級職におんぶに抱っこされている情けないヤツ』という評判は更に広まり、当分この問題を解決することは出来なくなる可能性がある。
冒険者達からの嫉妬の的となり、街に居ずらくなる可能性すら出てくる。
また、前に他の冒険者達から聞いたのだが、この酔っ払いはこの街でも有名で、冒険者の中で最も顔が利き、噂を流したり、噂を得たりするのが得意だという。
ならばこの酔っ払いを一時的にパーティーに加え、クエストをこなし俺の評価を改めさせればこの問題を解決できるかもしれないが、そうはいかない。
こちらからクエストの誘いなどしてしまえば、『暴言を吐かれても言い返さず、媚びようとする情けない男』の烙印を押されてしまうかもしれない。
最悪の場合禄でもないやつらが同じような手で、高難易度のクエストを共に受け甘い汁をすすろうとしてくる可能性すら生まれてしまう。
ここは待ちの段階だ。こちらからは何も提案せず、向こうから俺の実力を知れるような機会が出来る提案が出てくるよう、待つのだ。
そんな俺の考えとは裏腹に、ダクネスが酔っ払いに殴りかかろうとしてアクアに抑えられているのが見える。
暴力沙汰は不味いと判断して取り押さえてくれているのだろうが、アクアの額にも小さな青筋が浮かんでおり、頭に来ているのが分かる。
やばいなあ……、酔っ払いから何か言われる前に、うちのメンバーがアイツをボコボコにしちゃうかも…。
どうしようかと悩んでいると、俺の背後にいるめぐみんがそっと耳打ちしてくる。
「カズマ、冒険者には決闘というものがあります。実力を周知させるなら、決闘というのが一番手っ取り早いはずです。いい加減私も、カズマが過小評価されていることは頭に来ていますし、ここいらで一発かましてやりませんか?」
そう言って提案してくるめぐみん。
中々に過激な提案だなと思ったが、めぐみんも口をひきつらせ目元をぴくぴくさせ怒りを抑えているようだ。
しかし、今の提案は中々にアリなものだと思う。
確かに決闘をすれば、俺の実力を周知させることも出来るし、手っ取り早くこのチンピラをのばすことも可能だろう。
しかし、それではこのチンピラとの空気が悪くなってしまう可能性がある。
この男はこの街では顔の利く有名冒険者、ならば後々のことを考えれば関係を悪化させるよりも良好な関係を築いた方が良いに決まっている。
しかしこのまま待ち続けていたら、チンピラがダクネスによって殴り倒されるかもしれない。
どうするかな…と思い頭を悩ませている中、酔っ払いが遂に、俺が待ち望んでいた言葉を言った。
「上級職におんぶに抱っこで楽しやがって。苦労知らずで羨ましいぜ!おい、俺と代わってくれよ兄ちゃんよ?」
勝機!
「良いぜ、代わってやるよ」
透き通るような、それでいてこの場に響き渡るような声に、冒険者ギルドの中が静まり返った。
「……えっ?」
俺に絡んでいた戦士風の男が、ジョッキを片手に思わずマヌケな声を出す。
「聞こえなかったのか?代わってやると言ったんだ。お前も楽して稼ぎたいんだろ?だったら今日一日、パーティーを代わってやる」
「か…カズマ?」
俺の突然の提案に、めぐみんが驚いたような、混乱したような声でこちらを見る。
「だが、一つだけ条件をだそうか。今日、俺とお前を入れ替えて、それぞれのパーティーがクエストを達成して戻ってきたら、それぞれの評価を入れ替わったメンバーにしてもらう。……正直俺も、最弱職だから弱いってイメージを払拭したいんだよ。仲間たちの話も、身内の贔屓目ってことで全く信じられてないから、ここいらで俺の能力を知らしめておきたいんだ。ほら、お互いパーティーを交換することでそいつがどれだけ凄いのか、別のパーティーの人間から贔屓目なしの客観的な意見が貰えるだろ?他パーティーのやつからの評価なら、俺が本当に雑魚なのかそうじゃないのか皆信じてくれるだろうしな。……どうだ?お前は上級職に囲まれ楽に稼げて幸せ、俺もイメージを払拭する機会が得られて幸せ。お互いwin-winの提案じゃないか?」
俺がそう言うと、めぐみんは俺の考えを理解して納得の表情を見せると、安心したようにホッと息を吐いている。
アクアとダクネスも唐突な展開に驚いた様子を見せるが、俺の考えを理解して落ち着いてくれたようで暴れるのを止めていた。
そして、俺の言葉を受けた当のチンピラは、信じられない物を目にした顔で俺を見ると、ニヤリと笑い…。
「おいおいマジかよ!その提案乗ってやる!おい、お前らもいいか!?」
そう言って、テーブルの仲間たちに確認を取った。
「ま、まあ今日請けるのはゴブリン狩りだし、俺は構わないけどよ」
「私もいいよ?でもダスト、あんた、居心地がいいからもうこっちのパーティーに戻ってこないとか言い出さないでよ?」
「俺も構わんぞ。噂の真偽がどちらにせよ、冒険者が一人増えた所でゴブリンぐらいどうにでもなる。その代わり、そっちのパーティーでの土産話、期待してるぞ?」
絡んできた男――ダストと同じテーブルにいた、そいつの仲間たちは口々に言った。
「じゃあカズマ、今日は私達はこの人とクエストを受ければいいの?」
「ああ、すまんな、勝手に話すすめちゃって」
「いえ、別に構いませんよ。カズマの評判を良くする絶好の機会ですからね。でも、勝負というからには全力でいきますよ!」
「うむ、普段からカズマには迷惑をかけっぱなしだからな。私達もカズマ抜きでどれほどできるのか確認するという意味でも良い機会だろう」
「サンキューな皆。分かってると思うけど、最悪の場合はテレポートのスクロールを使うんだぞ?」
俺は三人が心得ていると頷くのを確認すると、ダストの仲間のいるテーブルまで向かう。
「おい、俺の名はカズマ。今日一日だけだが、どうぞよろしく」
「「「は、はあ」」」
ダストの三人の仲間は、若干戸惑い気味の返事をした。
――――――
それからというもの。
ギルドでは俺が勝つかダストが勝つかでの予想をする賭けが行われていた。
オッズはダストが二倍で俺が五倍。
どうやらダストの方が人気らしい。
そんな賭けが行われているギルドの中、俺は今日加わるパーティーのメンバーと、自己紹介をするため席に着いている。
剣と盾を携え、重い装甲鎧を着こんだ男が俺を値踏みする様に眺め回しながら言ってきた。
「俺はテイラー。見ての通りクルセイダーだ。獲物は片手剣で、このパーティーのリーダーみたいなもんさ。ダストの言い出した事とは言え、今日一日は俺達のパーティーメンバーになったんだ。リーダーのいう事はちゃんと聞いてもらうぞ」
「当然だ。むしろ普段は俺が司令塔だからな。楽が出来るし新鮮でいい。よろしく頼むよ」
その言葉にテイラーは驚いたのか軽く目を見開いた。
「何?あの上級職ばかりのパーティーで冒険者がリーダーやってたっていうのか?」
「そーだよ」
当たり前の様に頷く俺に、三人が絶句した。
続いて、緑のマントを羽織、まだどこか幼さを残しつつも今時な感じの服を身にまとった女の子が笑顔で自己紹介をしてくる。
「あたしはリーン。見ての通り《ウィザード》よ。魔法は中級魔法まで使えるわ。まあよろしくね、ゴブリンぐらい楽勝よ。あたしが守ってあげるわ、駆け出しくん!」
多分俺の方が年上だろうけど、経歴的には間違いなくこの子の方が上だろう。
年下の女の子に後輩扱いされるのはちょっとむず痒いな。
次に弓を背負った軽薄そうな男が笑いかけてくる。
「俺はキース。《アーチャー》だ。狙撃には自信がある。ま、よろしく頼む。……てかよ、さっきからきになってたんだが、あんたが背負ってるのって弓、だよな?」
「取り合えず先に自己紹介させてくれ。俺はカズマ、クラスは冒険者だ。まあ信じてくれてないだろうけど、基本なんでもできる。それとこの背中に背負ってるのは弓だな」
俺の言葉に三人は微妙そうな顔を作る。
やはり冗談だと思われてるみたいだ。
「ま、まあいい。……そうだな、カズマは荷物持ちでもやってくれよ。ゴブリン討伐くらい三人でどうとでもなる。心配するな、ちゃんと報酬は四等分してやるし、ゴブリン退治には全力でやるからな」
テイラーが気を遣うようにいうが、そういうわけにはいかない。
これは俺の今後の評価に関わるのだ。
しかし手を出し過ぎると逆に良く思われないか…。
邪魔にならない範囲で、全力のフォローをするとしよう。
俺がそう決意すると、少し離れた席から聞きなれた声がした。
「道すがら私たちのスキルについて話すので、あなたについても後で教えてください。それと、基本的に私たちはリーダーの指示に従って動くので、それを踏まえた上で作戦の立案をお願いします。また指示するときは全員に聞こえるようはっきりと指示をだしてください。報酬は五等分、各々の装備の損害は自己負担ですが、リーダーのあなたに従う以上、パーティー共有財産である消費型アイテムや、我々に損害があった場合、その責任はとってもらいます。証明のためこちらにサインを……ありがとうございます。さて、取り合えずまずは山道へ行きましょうか」
どうやらダストに契約書を書かせているらしい。.
消費型アイテムもってことは、もしテレポートのスクロールを使った場合はそれの負担金をダストに請求するってことだよな…?
あれ結構高いけど、大丈夫なんだろうか。
まあゴブリン討伐だし、テレポートのスクロールを使う緊急事態など、早々ないと思いたいが……。
ダストは軽く契約書を読むと、へらへら笑いながらサインしている。
「まあ、アークプリーストにアークウィザードにクルセイダー。こんだけ揃ってれば大した問題は起こんねえだろ。ま、心配すんなって」
俺は少し向こうの様子を気にしていると、テイラーが立ち上がった。
「本来こんな時期にクエストは請けないんだが、ゴブリン討伐は美味しいからな。今から出れば夜には帰れるだろ。それじゃあ新入り、早速行こうか」
――――――
「しっかし、なんで冬前にこんな所に住みつくのかなゴブリンは。まあ、おかげでゴブリン討伐なんてこの時期には滅多にない美味しい仕事が出てきたわけだけどさ!」
ゴブリン一匹で二万エリス。
初めてダクネスを仲間にした日、ゴブリン討伐に出たことがあったからその美味しさはよくわかる。
上級魔法どころか中級魔法で簡単に倒せるし、遠距離から狙撃すれば簡単に打ちぬけるモンスターだ。
キースがアーチャーなわけだし、確かに俺がいなくても楽に討伐は出来そうだ。
しかし普通は森などにすむゴブリンが、今回隣町へと続く山道に住み着いたのは気になるが…。
「にしてもカズマ、お前その腰にぶら下げてるのは剣と杖だよな?弓も高そうだし、ホントに全部使えんのか?」
「まあな。高いのは、まあ命に関わるもんだし、妥協はできないだろ?」
「確かにそうだけどよ…。でもそんな金あるなら冒険者なんか止めて好きに生きた方がいいんじゃねーのか?聞いたぜ、あの幹部の報酬って十億だったんだろ?四人で分けても二億は入るし、後は趣味とかにパーッと使うでも良いと思うんだが」
ふむ、まあ一理ある。
「確かに一理あるけど、目標があるからな。それを達成するまでは、真面目に冒険者やろうって決めてんだよ」
「カズマは真面目だねー!キースもダストも、カズマを見習って欲しいんだけど…」
リーンが言い掛けた時、テイラーが足を止めて地図を広げる。
「ゴブリンが目撃されたのはこの山道を天辺まで登り、やがてちょっと下った所らしい。山道の脇にゴブリンが住みやすそうな洞窟もあるのかもしれない。雑談もいいが、ここからは気を引き締めてくれ」
そんなテイラーの指示に、全員が視線を合わせ、無言でコクリと頷く。
この山は自然が生い茂った緑豊かな山ではなく、殆どを茶色い岩肌が占めた禿山だ。
その分視界も開けていて、敵が来るとすぐ分かるような場所なのだが……。
ふと、敵感知に反応があるのに気づいた。
「何か山道からこっちに向かって来てるヤツがいる。敵感知に反応があった。潜伏スキルも持ってるから、一旦近くの茂みに隠れよう。一撃熊とかだったら洒落にならんし」
「カズマお前、敵感知スキルなんて持ってるのか?それに潜伏も?……いや驚くのは後か。一旦カズマのいう通り隠れよう」
三人は驚きながらも俺の提案に従って茂みに隠れた。
用心深いのに越したことはない。
普段だったらダクネスが突っ込んで俺がフォローに回ってと、そんなことになっていただろう。そしてアクアが場を引っ掻きまわして俺が二人を回収し、最後はめぐみんの爆裂魔法で――。
と、そんなことを考えている中、それは来た。
それは、この前に討伐した初心者殺し。
それを更に一回り大きくさせ、角の様な毛を生やし、背骨のラインだけ毛の色が違う、虎のようなモンスター。
そいつは俺達がさっきまで居た山道の地面を、クンクンと神経質に嗅いでいる。
リーンがその姿を見て、慌てて自分の口を手で押さえた。
恐怖で悲鳴でも上げそうになったのだろう。
潜伏スキルを発動している俺に触れる三人の手に、緊張のためか力が入る。
―――そいつはしばらく辺りを嗅ぐと、やがて俺達が登ってきた、街へと向かう道へと消えていった。
「こ、ここここっ、怖かっあああっ!中級者殺し!中級者殺しだよ!!」
「し、心臓止まるかと思った!た、助かった……。あれだ、こんな時期、こんな街に近い山道にゴブリンが引っ越してきたのは、中級者殺しに追われたからだぜ」
「あ、ああ……。しかし厄介だな、よりによって帰りの道の方に向って行ったぞ。これじゃ街に逃げ帰ることもできないな」
キースやテイラーが口々にそう言ってくる。
「すまん、さっきのヤツ知らないんだけど……初心者殺しじゃないのか?」
俺の言葉に三人が、何故知らないんだと信じられない物を見るかの様な目で見つめてきた。
「あれは中級者殺し。一説では初心者殺しが多くの経験値を得て進化した姿だとも言われている。実際習性は全く同じだからな。初心者殺しの能力を数段引き上げたような奴で、中級魔法くらいは簡単に耐えちまうらしい。本来ならこんな駆け出しの街近くにいるようなヤツじゃないんだが、この前の幹部騒動の時に強者の気配につられてこっちに来たのかもしれん」
初心者殺しの上位版、か……。
いつものメンバーでなら戦ってみるのもアリだが、流石に人様のパーティーで危険度の高いモンスターと戦うのは不味いな。
「とりあえず、ゴブリンの討伐を済ませよう。中級者殺しは初心者殺しと同じ習性を持つってことは、釣りの餌になるゴブリンを守るってことだろ?なら、もしゴブリンを討伐している俺達に気づいたとしても、俺の敵感知に引っかかるし、潜伏で隠れてやり過ごせるはずだ。最悪の場合、俺のテレポートで逃げればいいしな」
俺がそういうと三人は、大きく目を見開き、
「お、お前テレポートまで使えるのか…?」
「あの噂って、もしかして本当だったの……?」
キースとリーンが呆然と呟いている。
「カズマの提案通り、先にゴブリン討伐が一番良いな。カズマの敵感知があれば安心だし、まずは目的地に向かうとしようか」
テイラーの発言から、俺達は茂みから出る。
……と、リーンが俺の背負っていた荷物の一部を手に取ると、
「もし中級者殺しに会ったら、皆で逃げるとき、カズマも身軽な方がいいからね。あたし持つよ。そ、その代わり、潜伏スキルも敵感知スキルもテレポートも、頼りにしてるよ?」
リーンは自分の荷物を背負いながら、おどおどと言ってきた。
そのリーンの言葉に、テイラーとキースも、慌てた様に俺の背中から荷物を取る。
「「べ、べつに俺達はカズマを頼りきってる訳じゃないからな?」」
おっと、ツンデレ頂きました。
…ツンデレになるならリーンの方が良かったとか思ったのは内緒だ。
――――――
中級者殺しが引き返してくる気配もなく、俺達が山道を登っていると、テイラーのもつ地図通り、山道が下り坂になる地点に出た。
ゴブリンが目撃されたのはこの辺りらしい。
テイラーがこりらを振り返る。
「カズマ、どうだ?敵感知に反応はあるか?」
「この山道を下って行った先の角を曲がると、いっぱいいるな。逆に中級者殺しの気配は全く感じない」
しかし、気配が異常に多い気がする。
この前討伐に来た時の数倍はいるような…?
「いっぱいいるってならゴブリンだな。ゴブリンは群れるもんさ」
「いや、ゴブリンと一回戦ったことはあるけど、この数は異常だぞ?探知できる数だけでも把握しきれないし…」
少しばかり警戒心を強めながらキースに尋ねた。
そんな様子に、リーンも不安になったのか、
「ね、ねえ。そんなにいるの?カズマがこう言うんだし、ちょっと何匹いるのかこっそり様子を窺って、勝てそうなら……」
リーンがそこまで言い掛けた時だった。
「大丈夫だって!カズマばかりに活躍されてちゃたまんねえ!おっし、行くぜ!」
叫ぶと同時に、ゴブリンがいるであろう下り坂の角から飛び出すキース。
それに続いてテイラーも角から飛び出し、そして二人同時に叫んだ。
「「ちょっ!多!!」」
テイラーは兎も角、なんでアーチャーが前に出るんだ!
叫ぶ二人に続き、俺とリーンも角を曲がる。
そこには、三十やそこらはくだらないゴブリンの群れがいた。
それを見て、ひきつった顔のリーンが叫ぶ。
「言ったじゃん!だから言ったじゃん!あたし、こっそり数を数えたほうがいいって言ったじゃん!!」
泣き声を上げるリーンと、そしてアーチャーのキースを後ろに庇う形で、山道の角の部分にテイラーが前に出た。
「ゴブリンなんてふつうは多くても十匹ぐらいだろ!なんだってこんな大量のゴブリンがいるんだ!…おいカズマ!お前のテレポートで…」
テイラーが叫び、俺に撤退の指示を出そうとしている中、ゴブリンたちが奇声を上げてこちらに向かって駆けだしてきた!
「痛ってぇ!畜生、矢を喰らった!おい、弓を構えてるゴブリンがいる!テレポートの詠唱なんて待つ時間ねえし、もうやるしかねえ!リーン、風の防御魔法を!」
「ダメだ、リーンの詠唱が間に合わん!全員なんとか…」
躱せ!とテイラーがいう直前。
俺は全員の前に出て、ワンドを持って魔法を放ち、
「『トルネード』ッ!!」
数十単位で固まっているゴブリンの群れのど真ん中に、巨大な竜巻を発生させた。
…余計な行動は控えるつもりだったが、こればかりは仕方ないだろう。
ここで俺が行動しないと、数の差で押し切られてしまうかもしれない。
命を助けるんだ、良く思われないなんてことはないはず。
突然現れた強風が、こちらに向ってくる矢諸共に多くのゴブリン達を空に打ち上げていく。
空に打ち上げられたゴブリンは、重力という法則に従い勢いよく地面へ落下し、そのままこと切れていく。
「じょ、上級魔法…?」
詠唱も忘れたリーンが、突如目の前に現れた竜巻を見ながら呟いた。
強風に襲われ、何匹もの仲間が空に打ち上げられたことでゴブリンたちが混乱している中、テイラー達までもが俺の魔法を見て呆然としている。
「おいテイラー!これでテレポートの詠唱をする時間は稼げたがどうする?このままゴブリンたちを見逃してアクセルに逃げ帰るか?」
俺はそう言って呆然としているテイラーに挑発気味に聞くと、ハッと意識を取り戻した三人は、気を取りなおして武器を構える。
「いや、今のでかなりの数が削れたんだ、残りのゴブリンたちも片付ける!ゴブリンの討伐クエストを失敗したなんて言って帰ったら、ダストの奴に笑われちまうからな!」
「ちげえねえや!っし、援護は任せろ!」
「私の魔法も頼りにしてね。カズマにばっかり活躍されるわけにはいかないからね!」
そう言ってテイラーは未だ慌てているゴブリンたちに向かっていく。
テイラーの発言を受け、キースとリーンも攻撃の準備を始めた。
ならば俺は俺はサポートに回ろう。
「この地形だ。だったらこの手が一番いいだろ!『クリエイト・ウォーター』ッッ!」
俺は初級魔法でなるべく魔力を節約しつつ、広範囲に水をまき散らした。
ゴブリンたちがいる地点の地面を水浸しにするために。
「カズマ!?一体何やって……」
背後からリーンの疑問の声を聞きながら、
「『フリーズ』ッ!」
続けて俺は凍結魔法を使い、ゴブリンたちの足元の地面を凍らせた!
「「「おおっ!!」」」
俺以外の三人が驚き、叫ぶ。
以前ベルディアに使ったものの初級魔法版だが、相手がゴブリンならこれで十分効果を発揮するだろう。
ゴブリンたちは足が凍り付き、身動きが取れなくなっている。
弓持ちは先ほどのトルネードで全滅している。あとは近距離武器持ちのゴブリンのみ。
この状況なら傷を負わされることも無いだろう。
俺は剣を引き抜くと、テイラーの隣に並びたち…。
「テイラー!身動き取れないゴブリンたちは俺達でしばこうぜ!今のを逃れたゴブリンたちは、遠距離攻撃ができる後ろの二人に任せた!」
「でっ、でかしたカズマ!おいお前らやっちまえ!これならどれだけ数がいたって関係ないぞ!」
「うひゃひゃひゃ、なんだこれ、楽勝じゃんか!ハチの巣にしてやんよ!」
「よーしいくよ!普段は溜が長くて使いない強力な魔法、ど真ん中に撃ち込むよーっ!」
――――――
「コイツで最後っ!っと」
テイラーがそう言いながら、最後の一匹となったゴブリンに剣を突き刺した。
「にしても……おいカズマ、お前上級魔法なんて使えたんだな」
「本当に吃驚したよ!しかもその後の初級魔法も凄い使い方してたし!あたし、魔法学院じゃ初級魔法なんて取るだけ無駄って教わったのに!」
最後のゴブリンの討伐を確認し、キースとリーンがこちらに歩いてくる。
ゴブリンを倒したテイラーも俺のもとまで足を進め、三人が俺の前までやってきた。
そして俺に向き直ると、
「剣の腕も相当なものだった。……悪かったなカズマ、お前を見縊ってたよ」
「うん、正直私も侮ってた。ごめんねカズマ。今日は本当に助かったわ」
「まさかあの噂がガチだったとはよ…その、なんだ、悪かったな」
そう言って、口々に謝罪してきた。
「え?いや、なんで謝るんだよ。別に怒ってるわけじゃないし、最弱職なのも本当だから侮られても仕方ないって思ってるしさ。………あ、そうそう。戦闘も終わったことだし荷物よこせよ。冒険者は荷物持ちが基本だろ?」
口元をにやけさせた俺の軽い皮肉に。
「ちょっ、悪かった、いやほんとに悪かったよカズマ、謝るよ! これからは冒険者だからってバカにしねえ! そりゃ魔王軍を倒すパーティにいるわけだわ!」
「ご、ごめんねカズマ! てか、何で冒険者が一番活躍してるのさ! おかしいよ!」
「おいカズマ、荷物よこせ! MVPなんだから、お前の荷物も持ってやるよ! てゆうか持たせてくださいカズマ様!」
途端に慌てた三人に、俺は思わず吹き出した。
吹き出した俺を見て、冗談だと気付いた三人も笑い出す。
ああ、いい奴らだなぁ。なんでこんな素晴らしい仲間たちがいるってのに、ダストは俺を妬んだんだろうか。
少し贅沢過ぎないか?
「さて、そろそろ街に帰ろうか。中級者殺しに遭遇でもしたら」
大変だからな。
俺がそう言おうとした瞬間だった。
その獣は何の脈絡もなく空から突然、俺達の眼前に降ってきたのだ。
黒い毛並みに、サーベルタイガーの様な鋭い牙。そして、巨大な体躯。
「中級者殺し…!」
俺の叫びを合図に、全員の表情が一転、絶望へと変わった。
――――――
「くそっ、最後の最後でこれかよ!」
「一体どこから来たんだ!?というかカズマ、敵感知は発動しなかったのか!?」
「こいつが空に現れるまで全く反応がなかった!どうなってやがる…」
俺の敵感知スキルは三百メートル以上先まで感知が効く。
直前になっても反応がないなんてことはありえないはず……。
まさか、潜伏スキルかそれに準ずる能力でも持っているのか……?
と、そんな事を考えている場合じゃない!
「カズマ!俺が出来る限り抑えるから、お前は急いでテレポートを!リーンとキースだけでも街に連れ帰ってくれ!街に戻ったら応援を呼んでくれればいいから、ここは任せろ!」
そう言ってテイラーが、俺達を庇うように前へ出た。
おいおい何だよそれ。
何を、ここは俺に任せて先に行けみたいなこと言ってんだ。
「何言ってんのテイラー!私も戦うし…!」
「ダメに決まってるだろう!それに、お前じゃ足手まといだ!さっさと三人で逃げろ!…おいカズマ何してる!早くテレポートを!」
テイラーを助けにいこうとしてキースに取り押さえられるリーンと、俺が何もしないのを見て怒鳴るテイラー。
美しい仲間の絆だ。本当に素晴らしい仲間たちだと思う。
本当に、ダストはよくこんな仲間がいて俺のトレードに乗ったなとしみじみ思う。
テイラーをおいてテレポートを使えば、ここで逃げるのは簡単だ。だが、今日一日とはいえ、こいつらは俺のパーティーメンバー。つまり仲間だ。
俺の見えている範囲で仲間を死なせるという選択肢は、俺にない。
目と鼻の先まで迫っていく中級者殺し。
その標的は立ち塞がるテイラーだ。
「ちょ、おいカズマ!?逃げないのか!??」
その場から動こうとせず、詠唱も始めない俺を見て戸惑うキースの声を聞きながら、俺は中級者殺しに向ってワンドを突き出した。
「来いよ毛玉が。ベルディアにくらべりゃ、お前なんか全く脅威には思わねえぜ!『カースド・クリスタルプリズン』!!!」
テイラーの目の前に生成される、地面から突き出した巨大な氷塊。
だが、唐突な攻撃を中級者殺しは後退しながら完璧に躱すと、俺に向って駆けだしてくる。
俺から吹き出す魔力を見て、脅威と感じ標的を俺へと変えたようだ。
「『カースド・ライトニング』ッ!!」
俺は再び中級者殺しに向けて魔法を放つが、予測していたのか中級者殺しは雷撃の魔法を躱すと、そのまま俺に突っ込んでくる!
やはり一筋縄ではいかないか!
「ガァァァウ!!」
「くっ!!」
爪を立て、俺に向かってその前足を振り下ろしてくる中級者殺し。
俺は右手で剣を構え、その攻撃を受け止める。
そのまま互いに持つ武器を使い、斬り結ぶ。
それはまるで複雑な輪舞を踊っていると見まがうほどに、互いに身体全てを使ってその刃をぶつけようとするが、俺の刃は届かない。
やがて俺の剣と中級者殺しの爪がぶつかり合い、鍔迫り合いになった。
予想以上に重い!
その鋭い爪をなんとか剣で受け止めるが、その攻撃は予想以上に重く、段々と押され始める。
そんな俺の様子に、勝利を確信したのか中級者殺しは、その獰猛な瞳をにやりと歪めると、更にその腕に力を込めだした。
確かに凄い強さだ。俺がただの剣士であれば、このまま負けていただろう。
今の俺は単体で、剣だけでも初心者殺しを倒せる、中級冒険者程度の力を持っている。
にも拘らず、俺の剣はやつに届かなかった。
その中級者殺しという名前にも恥じない強さであることは確かだ。
だが、俺は剣士でも、魔法使いでもない。あらゆるスキルを持ち、それを使いこなす冒険者だ。
俺は中級者殺しと鍔迫り合う中、空いた左手をその巨大な体躯へと向けると……。
「『ライト・オブ・セイバー』!!!」
「ガウッ!?」
左手に刃を発生させ、そのまま中級者殺しの腹を抉った。
突然の衝撃と痛みに、中級者殺しは顔を歪ませ、俺への攻撃の勢いを弱めた。
今だ!
「『ルーン・オブ・セイバー』!!」
俺はそのまま右手の剣でルーン・オブ・セイバーを使い、左手のライト・オブ・セイバーと共に中級者殺しへと振りかぶった―――!
――――――
中級者殺しを何とか仕留めた帰り道。
街までもう少しというところまで、誰もが口を開かなかった。
あの後中級者殺しを倒した俺は、俺の切り札の一つであるライト・オブ・セイバーとルーン・オブ・セイバーの合わせ技をやったことで転移魔法を使えるほどの魔力がなくなり、こうして歩いて帰っているのである。
そして街まで歩いている中、全く口を開かない三人を見て、俺は、それを中級者殺しへの恐怖によるものだと思っていたら、
「……ふっ……。ふふっ……。ふへへへっ……」
唐突にキースが変な笑い声をあげ始めた。
大丈夫か? 恐怖でおかしくなったのか?
だが、キースの笑いにつられた様に。
「くっ……くっ、くっくっくっ……!」
「あはっ……。あはははっ……。あははははははっ!」
あの化け物を倒したことに、いつの間にか俺を含めて皆が笑っていた。
「ちょ、何だよさっきのアレ! カズマ、何しやがったんだよっ! ぶははははっ!」
テイラーが背中をバシバシ叩いてくるが、その乱暴な痛みが心地いい。
「合体技だよ合体技!上級魔法と剣戟スキルのな!バカみたいに魔力を喰う分めちゃくちゃ強力だったろ?わははははっ!!」
「こ、こんな冒険者が居てたまるかよっ! うひゃひゃひゃっ! は、腹いてえっ! 生きてるよ、俺達中級者殺しに出会って生きてるよ、おいっ! しかも逃げ帰ったんじゃなくて、きっちりぶっ倒してだぞ!」
「有り得ないよー! この人有り得ないよ、色々とー! 一体どんなステータスしてんのさ!ねえカズマ、冒険者カードちょっと見せてよ!」
俺は言われるままにリーンにカードを差し出した。
「た、たっか!?全体的に高いけど、魔力と知力がすっごく高いんでけど…。なんでアークウィザードにならなかったの?」
「色んなスキルを使いたかったってのが一番の理由かな。ほら、折角冒険者やるからには、魔法だけじゃなくて剣とかも使いたいし」
「…言いたいことは分からなくもないけどさあ………、って何これ!?この人、幸運値が文字化けしてるんですけど!?」
リーンの言葉に、二人もどれどれとカードを覗く。
「うおっ、なんじゃこりゃ!ステータスの文字化けとか始めてみたぜ……」
「お、おい、今回こんなに都合良くクエストが上手くいったのは、カズマの幸運のおかげじゃねえか?おい、お前ら拝んどけ拝んどけ!ご利益があるかもしれねーぞ?」
冒険者達からは、冒険者には幸運なんてあまり必要無いって話をよく聞くが、こうしてみるとすごく役に立っているような気がする。
アイツと会えて俺の冒険者生活も順調なわけだし、やはり幸運で良かったと思う。
テイラーの言葉に、三人は俺に手を合わせて拝み出した。
「や、やめろよお前ら、拝むなよ……。そんな事よりコーヒーでもどうだ?綺麗な水も出せるし、火だって使えるぞ?」
俺は三人に笑い掛けながら、マグカップを取り出した。
――――――
冒険者ギルドへに着いた頃には、時刻はすでに夜半前となっていた。
ゴブリンの討伐依頼達成の報告以外にも、中級者殺しが街周辺に現れたこと、そして討伐したことの報告もしなくてはならない。
「つ、着いたあああああっ! 今日は、なんか大冒険した気分だよ!」
リーンの声を聞きながら、俺達は笑いながらギルドのドアを開け――――
「ぐずっ……。ふぐっ…、ひっ、ひぐぅ……っ。あ……っ、か、がじゅまさあああんっ……!」
泣きじゃくるアクアを見て、俺はそっとドアを閉めた。
「おい!気持ちは心底よーく分かるが、ドアを閉めないでくれっ!」
ドアを開け、半泣きで食って掛かってきたのは今朝俺に絡んできたあの男。
名をダストとか言った、アクア達のパーティの臨時のリーダーだ。
酷い惨状だった。
ダクネスは白目を向き、ギルドの椅子に寝かされ、めぐみんはダルそうにアクアに背負われながら、ことの成り行きを見守っている。
よく見ればアクアは頭に大きな歯型を残し、涎か何かは知らないが、何となく湿っぽい。
「……えっと、なにこれ。マジで意味が分からないんだけど」
「聞いてくれよ!聞いてくれよっ!!俺が悪かったから聞いてくれ!!!ちょっと遠くの山でゴブリンが出たから、それのクエストを請けたんだよ!そんで実際行ってみたら大量のゴブリンがいたんだ!いや、ここまではいい!そんで数も数だし撤退しようっていったら、そこの子が我が爆裂魔法でまとめて吹き飛ばすやらなんちゃら言って、全魔力を込めた爆裂魔法とやらを、そのゴブリンたちに向ってぶっ放して……」
半泣きで訴えてくるダストの言葉を、俺はうんざりした表情を浮かべながらも黙って聞いてやる。
「おい、聞いてくれって!そしたら初心者殺しだよっ!爆発の轟音を聞きつけたのか、ゴブリンたちを連れてきた原因かしらんが、初心者殺しが来たんだ!でも肝心の魔法使いはぶっ倒れるわ、逃げようって言ってんのにクルセイダーは突っ込んでいくわ、挙句の果てにはこのアークプリーストが……」
そろそろ聞くことが億劫になってきて、思わず俺は目を逸らした。
「頼むから聞いてくれ!でさぁ!このアークプリーストが、初心者殺しに突っ込んでったんだよ!その時に聖なるグーだとか言って初心者殺しに殴りかかったはいいものの、簡単に避けられるし運悪くクルセイダーの人に当たって気絶させちまうしで……」
話のオチは読めた。俺は、ダストの話を半分聞き流しながら、アクアの頭についている涎をタオルで拭きはじめた。
「お願いします聞いてください!アークプリーストの子がなんとかクルセイダーを連れて逃げてきたんだが、二人気絶状態じゃ逃げられるわけないし皆が持ってるっていうテレポートのスクロールでなんとか逃げたんだよ!そしたらテレポートのスクロール代払えってこいつらから請求されるし、しかもあの爆発で土砂崩れが起こったらしくて、幸い怪我人はいなかったけど、賠償金を払えって言われてその額が……」
「おい皆、互いにクエストは無事に終わったみたいだし、まずはのんびり飯でも食おうぜ。二つのパーティの親交が深まったことに乾杯しよう!」
「「「おおおおおっ!!」」」
俺の言葉に、テイラーとキース、リーンの三人が喜びの声を上げてくれた。
「待ってくれ! 謝るから! 土下座でも何でもするから、俺を助けてくれ! な、金なら持ってるんだろ? もうあんな舐めたこと言わないからさ!」
本気で泣くダストに、俺は心底同情すると。
「頑張って借金返済しろよ。良い女におんぶにだっこで甘い汁をすすらせてもらって、ハーレム気分で苦労もせずに金稼ぎができるはずの上級職パーティのリーダーさん」
「俺が悪かったからっ!! 今朝の事は謝るから助けてくださいっ!!」
今回の一件で中級者殺しをほぼ単独で倒したという話をテイラー達が色んな所で話してくれたらしく、俺の評価は漸く改まったのだった。
ルーン+ライト以外でもカズマの切り札はいくつか考えていますが、披露される機会はもうちょっと先になりそう。