IFすば   作:来世カズめぐ部屋の観葉植物になりたい者

22 / 26
オリジナル設定のオンパレード


第六話 この素晴らしい仲間たちにただいまを!

「ッぶねえ!?」

 

突然の奇襲に対応出来ず死を感じた瞬間、自動回避スキルが発動して俺の体は左へ吹っ飛んだ。

俺のありえない体の動きにその影は少し驚くような顔をするが、直ぐに気を取り直して鎌を振り下ろす。

攻撃が鋭い!だが、一度認識してしまえば直ぐに対応できる。

俺は最低限の動きでワンドを左手に持ち替え、右手に剣を構えて鎌を受け止める。

 

「クッソなんだコイツ!」

 

俺の暗視スキルは周囲がサーモグラフィーのように見える。

そのため形は分かるが色までは把握できず、その正体を捉えることができない。

俺の目の前にはボロボロのマントを羽織り、大きな鎌を携える人影がいる。

雰囲気からしてアンデッド系か?

俺の敵感知や潜伏に引っかからなかった訳だし、その可能性が高い。

何度も振り下ろされる鎌による一閃を交わし、受け流しながら俺は相手の正体に見当をつけ、破魔魔法を撃つためワンドを向けるが…。

 

「オイオイナンノサワギジャゴラ!!ジカンヲカンガエロジカンヲヨ!!!」

 

背後からの突然の気配に、俺は魔法を放つのを中断して飛びのいた。

直後、俺が居た地点に拳が突き抜け、轟ッと風を斬る音が鳴った。

戦闘の音でオーガ達がこちらに気付きやってきたようだ。

ふと気配を探ると、オーガ達が周囲を取り囲んでいるのが分かる。

 

囲まれたか…。

 

「オイ、テメエカラハドウホウノチノニオイガプンプンシヤガルナア!」

 

この群れの長だろうか、そう言ってこちらに拳を突き出したオーガが、俺をまじまじと見ると殺気を放ち始めた。

 

「同胞?同胞って……あ」

 

一瞬オーガを倒したことなんてないと思ったが、この前のブラックオーガもこいつらにとっては同胞になるのだろう、心当たりができてつい声を出してしまった。

 

「オボエガアルミタイジャネエカ!エエ!!オイコラテメエノムクロをサラシテケモノノクソ二シテヤル!ソレデオレタチノドウホウヲトムラッテヤルゼ!!オイ!!!」

 

俺の様子にオーガ達は更に怒り、各々が俺に向かって攻撃を仕掛けてくる。

剣、槍、斧、鎖つきの鉄球と…多種多様な武具が牙を剥く。

背後には鎌を持った影のようなモンスター、正面にはデカいオーガ。

完全に多勢に無勢だ、しかもこの陣形だと大魔法を使えば俺も巻き込みかねない。

そう考え、俺は目を瞑る。

数の差で勝ちを確信しているのか、目を閉じていても目の前のオーガが油断しているのが感じ取れる。

影やオーガ達が各々武器を振るい俺に攻撃を仕掛けてくる中、俺はその状態のまま、ワンドを天に掲げて…。

 

「『フラッシュ』!!」

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

叫ぶと同時、暗い闇に包まれた森の一部を、快晴の昼よりも眩しい白が満たした。

 

「クソガッ!ヤッテクレヤガッタナテメエ!!」

 

突然の強い光に目をやられ、オーガ達が蹲る。

 

「ワレニメツブシナドキカヌ!」

「だろうな!」

 

目潰しを食らい蹲るオーガ達の中、鎌を持った影は構わず俺に刃を振るう。

アンデッドに目潰しは効かないため、そのまま攻撃してくると読んでいた俺は超回避スキルで背後から迫る刃を躱し、

 

「!?キサマナニヲオオオオオオオオ!!????」

 

勢いのまま影の頭を掴むと、ドレインタッチを発動した。

俺が魔力を吸い出すと、影は悲鳴をあげて苦しみ出す。

やはりこの手のアンデッドは魔力吸収攻撃が有効のようだ。

 

「オノレハナレロオオオオ!!」

 

影は頭を掴まれたまま鎌をめちゃくちゃに振るい離れようとするが、俺は手を離さないまま魔力吸収速度も一切落とすことなく鎌を全て避ける。

魔力の大半を失い魔力不足に陥ったのか、段々影の動きが鈍くなり、遂には動きを止めた。

 

「『セイクリッド・ターンアンデッド』!」

「カラダガ、キエ……」

 

魔力を吸い続け、動かなくなった影の隙をつき、俺は空いた左手でダメ押しと言わんばかりに破魔魔法を放つ。

放たれた破魔魔法は影の体を浄化し、鎌とマント諸共に影は神聖な光の中に消えていった。

 

「まずは一体……ッ!」

 

影のアンデッドを浄化した直後、背後から拳が飛ぶ気配を感じ、俺は右へ飛びのいた。

どうやら光に目をやられたオーガ達が復活したようだ。

俺が飛びのいた先にも、複数のオーガが各々持つ武器を俺めがけて振るおうとしているのが敵感知から感じ取れた。

オーガは暗い中でも目が利くためか、その攻撃は完全に俺を捉えているのが分かる。

剣、槍、斧、こん棒と俺めがけて振り下ろされる武器を前に、俺は天眼スキルを発動し…。

 

「ナンダコイツ!」

「コウゲキガアタラネエ!!」

「チョロチョロシヤガッテ!?」

 

オーガ達の動き、武器の軌道を読み切り、超回避、逃走、自動回避スキルを駆使してその攻撃を躱しきる。

空を切って地面に振り下ろされたオーガ達の攻撃はその凄まじい威力から地面に亀裂を作り、陥没させている。

一発でも当たったらアウトだな…。

 

「『ウインドブレス』ッ!!!」

 

俺はオーガ達から距離を取るため風を作り、風に乗って後退、こちらを取り囲むオーガ達の間をすり抜け全てのオーガを前方に捉えると、

 

「『トルネード』!!!」

 

オーガ達めがけ、巨大な竜巻を生成した。

森の中に突如として現れた竜巻により、周囲の木々は空に舞い、土は捲られ一帯が更地に変えられていく。

山勘か、それとも俺から吹き荒れる魔力に恐怖を感じてか何体かのオーガは後退し巻き込まれなかったようだが、逃げ切れなかった三体のオーガは抗うことも出来ず空高く打ち上げられる。

しかし相手は強靭な肉体を持つオーガ。あの高さから大地に激突したとして、生き残る可能性は高いだろう。

 

「『クリエイトウォーター』!『フリーズ』!!」

 

だから俺は天高く吹き荒れる竜巻に向かい大量の水を放ち、風に乗った水をガチガチに凍らせ、やがて氷の刃となり竜巻に巻き込まれたオーガ二体を襲う。

 

「ガアアアアアア!??」

 

かなりの魔力を込めて作られた氷刃は、強風に乗り勢いを付けたこともあいまって、オーガ達の体を簡単に貫いた。

強風に攫われたことで防御する術もないオーガ達は、体中に風穴を空けられ悲鳴を上げる。

体に沢山の穴が空いたオーガはやがて静かになり天空に打ち上げられると、そのまま重力に従い大地に激突して動かなくなった。

 

「オドレキサマアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

竜巻を逃れたオーガ達は仲間の死を前に怒り狂い、強風に巻き込まれないよう大回りして俺に向かって駆けだすが……。

 

「『ボトムレス・スワンプ』!『カースド・クリスタルプリズン』!!」

 

巨大な沼に足を取られ、更に腰まで氷漬けにされていく。

 

「…ガッ!?」

「ウゴケネエ!ッテ、ナンダコレハ!?」

「アグッ!?カラダガツラヌカレ…」

 

氷の沼によって完全に動きを止めたオーガ達に、未だ吹き荒れる竜巻から飛び出した氷の礫が襲い掛かった。

魔力操作によって風の流れをコントロールし、オーガ達に氷の刃を飛ばしたのだ。

霰の様に降り注ぐ氷の刃をオーガ達は必死に避けるも、その数の多さから三体のオーガが体を貫かれ倒れ伏す。

 

これで残るオーガは後三体!

 

「「クソガアアアアアアアアアアアア!!!!」」

 

と、何時の間にか俺の元に近づいていた武器持ちのオーガ二体が、左右に分かれその手にもつ剣とこん棒を構え、俺に振り下ろそうと…。

 

「『ライト・オブ・セイバー』!!」

 

魔力消費を抑えるため咄嗟に俺はトルネードを解除、左手でワンドを構え光の剣を出し、こん棒を振り下ろさんと持ち上げるオーガをその武器ごと切り裂くと、右手で構えた剣を使い、振り下ろされたオーガの剣を受け流す。

天眼スキルにより加速した思考によって、オーガ達の動きを完全に捉えることが出来たからこその動きであった。

流れる様な動作で軌道を変えられたオーガの剣は俺の髪をかすると、そのまま地面に突き刺さる。

 

「!?」

 

仲間の死と自分の攻撃が簡単にいなされた事実に、剣を持ったオーガは現実を受け入れられず困惑し、

 

「『ルーン・オブ・セイバー』!!!」

 

その隙を突いた俺によって真っ二つにされる。

大量の血が吹き出し、俺の体に雨の様に降り注ぐ。

 

これで残るはあと一体!

 

「オンドリャアアアアアアア!!!!!!」

 

最後に残ったのは、群れの中で一際大きい武器を持たないオーガだった。

奴は鬼気迫る猛烈な勢いで迫り、その丸太のような拳を振るう。

 

「オドレヨクモワシノドウホウヲ!!!!」

 

その顔は怒りに満ちており、暗闇にも関わらず顔中に血管が浮き出ているのが見える。

その余りの迫力に、少し前の俺なら逃げていたかもしれないと考えつつ俺はおかしな名前の剣を構える。

俺は驚くほど冷静であった。いや、違うな。これはどちらかというと高揚しているんだ。

それは、この前から掴めそうで掴めなかった何かが、この戦闘中で掴めるという確信があるからだろう。

 

俺は迫りくるオーガの動きをしっかりと捉えると、剣先を向けて目を閉じる。

集中し、魔力の流れを掴み、やがて俺は口を開く。

 

「『カースド・ライトニング……」

 

俺が口にした魔法を知っているのか、オーガは魔法が放たれる前に動きの軌道を変える。

カースド・ライトニング黒い稲妻を一つ放つ雷の上級魔法。雷速で放たれるそれは撃たれてから躱すことはほぼ不可能だが、撃たれる前に軌道を読んで躱すことなら可能だ。

それが分かっているからだろう、オーガは走る軌道を滅茶苦茶に変えながら、口角を上げて更に加速しつつこちらに迫る。

どうやら魔法を放った後の隙を狙っているようだ。自分が魔法を避けることを確信しているらしい。

だが…。

 

「…・トリオ』!!!」

 

俺が魔法の名前を叫ぶと同時、三つの稲妻が生成され、ばらばらの方向に放たれる。

俺の前方をを三方向に進む稲妻は、その二つが空を切って木々を焦がすだけに終わるが、内一つが動き回るオーガに直撃し、その胸に風穴を開けた!

 

「アリ、エネエ…」

 

魔法の同時発射。スキルの合体技を使っているうちに掴んだ新しい奥の手。

今の俺では同じ魔法を三つまでしか同時に撃てないが、これから先四発、五発と数を増やしていくこともできるだろう。

しかし何故だろう。強力な力なのにこれじゃない感が凄い。俺が掴めそうだったのは、もっとこう……。

 

そう考えていたその時だった。

俺は魔力の消費を感じながら地に伏せるオーガ達の中心でひとり立ち尽す中、不意に視界の中で何かが動いた。

見れば、先ほど俺の魔法で腹に風穴を開けられたオーガが、まだその意識を保ち、必死に俺から離れようとしているところだった。

先程の一撃で致命傷を逃れたのか、体はボロボロになりつつも、確かにそいつは生きていた。

 

「はあ、はあ、はあ……オーガってのは、本当にタフだな…」

 

息もつかせぬ攻防が終わり、緊張が解けた俺は肩で息をしながら刀を構え、まだ息絶えぬオーガにトドメを刺そうとするとーー。

 

「なんだ!?」

 

突如周囲が黒い霧に覆われ、俺の視界が遮られる。

背筋が凍るような雰囲気、胃が重たくなる錯覚を覚える程の濃密な魔力。怨念の様な、呪詛のような気配を感じる。

 

まさかこれは……瘴気か!?

でもなんで!?オーガ達の死体があると言っても死んだのはついさっきだし、瘴気が発生するのがあまりにも早すぎる!

いや、まさかあのアンデッドが原因か!?確か、瘴気発生の元になる霊体系のアンデッドがいるって聞いたことが…。

 

突然の事態に俺が困惑し、思考がぐちゃぐちゃになる中、突如として表れた瘴気が一か所に収束し、黒い閃光を迸らせる。

 

「嘘だろ…?」

 

やがて黒い閃光が消え去ると、そこには黒い靄を纏い、肌を黒く光らせる一体の鬼が立っていた。

その胸には穴が開いていた痕の様な傷があり、こいつが先ほど倒し損ねたオーガであることを証明している。

しかし先ほど戦ったオーガよりも、こいつは数割増しで大きくなり、角が一本増えている。

髪も長く伸びており、その圧倒的な風格から唯のオーガやブラックオーガではないことが示されている。

そいつは白目を血走らせ、そいつは大きく息を吸うと、

 

「galalalalalalalalalalalalalalalalalalalalala!!!!!!!!」

 

巨大な雄たけびを上げ『災害指定モンスター』ブラックオーガロードの誕生を世界に刻みつけた。

 

 

——————

 

 

「おいおい…。俺の幸運値は高いんじゃなかったのか?…いるか知らないけど、恨むぜ幸運の神様」

 

月明かりが雲に隠れ、周囲は闇に閉ざされている森の中。

木々が無くぽっかりと開いた地で、俺は左右の手でワンドと剣を持ち悪態をつくと、目の前の存在に向き直る。

 

目に映るのは、怨念と強大な魔力を内包する漆黒のオーラで身を包み、鋼の如く強靭で圧倒的な筋肉。

白目を剥き、顔には涙のように赤い線が伸びる。

鋭い爪と牙を持ち、額からは黄金に光る三本の角が生えている。

 

「guruguruguruguru……」

 

唸りを上げるそいつは、拳を握り強大な魔力を噴出する。

困惑している場合じゃない、今はコイツを倒すことを考えろ!

残存魔力が五割を切っている、体力も落ちてるし、回復が必要か…。

俺は魔力回復、体力回復のポーションを飲み、剣に魔力を篭めて構えると、愛用している戦闘スキルを全開にした。

 

「来い!」

 

俺が叫ぶと同時、ソイツ——ブラックオーガロードが、こちらに向って拳を振るう。

俺とブラックオーガロードとの距離は五十メートル程度。幾らヤツが巨体でもここまで拳が届くわけないだろと思った瞬間、俺の危機察知スキルが最大限のアラートを鳴らし俺に危険を伝えてくる。

俺は天眼スキルで思考力を加速し、超回避と逃走、自動回避スキルを発動すると、横に回転し飛びのいた。

直後、オーガが拳を突き出したことで発生した拳圧が放たれる。

それは大地を抉り強風を発生させ、俺が先ほどいた地点を通過していった。

 

何だ今のどんな威力してるんだよ!?

俺は過去最大級の死の危険を隣に感じながら、俺はすぐさま反撃に転じる。

 

「『セイクリッド・ハイネスエクソシズム』!!!」

 

最強の破魔魔法を使いブラックオーガロードの瘴気を剥がしにかかるが、俺の破魔魔法が弱すぎるのか、奴の纏う瘴気が余りにも大きすぎるのか、瘴気を剥がすことが出来なかった。

しかし、一瞬だけやつの瘴気が剥がれたのを俺は見逃さなかった。

 

「『セイクリッド・ハイネスエクソシズム』!『カースド・ライトニング・トリオ』!!!」

 

ワンドを構え、今度は破魔魔法を放ち、間髪入れず上級魔法を撃ち込む。

 

「gurulalalalalalalalalalalalalalalal!!!!???」

 

浄化の光を浴びて一瞬瘴気が剥がれた所に、三重の稲妻を受けブラックオーガロードは悲鳴を上げる。

ダメージは与えられてる様だが、一発でオーガの胸を簡単に貫く魔法はアイツの腹を火傷させただけで倒すことは疎か致命傷にすらなっていない。

ダメだ、幾ら多重で上級魔法を当てた所でアイツは倒せない。あまり近づきたくは無かったんだがしょうがない!。

 

「『ライト・オブ・セイバー』!!」

 

俺は光の剣で刀身を覆い、俺に向かって何度も拳を振るうブラックオーガロードの元へ駆けだした。

 

「golalalalalalalalalalalalalalalalalalalalala!!!!!」

 

拳を突く度に大きくなる拳圧による衝撃波。回避スキルを全開に使い、奴との距離を縮めていくが、近づくにつれその拳はより鋭く、速くなる。

頬や服に拳圧が何度も掠る。

しかし俺は構わず距離を縮め、遂にオーガの足元にまで辿り着く。

猛スピードで自身の足元に来た俺をオーガは捉えきることが出来ず、こちらに注意を向けきれていない。

取った!

 

「『ルーン・オブ・セイバー』!!!」

 

俺はオーガの胸めがけ、最強の合体技を使い稲妻が迸る光の剣を振るった!

 

 

――――――

 

 

今ので確実に倒す自信があった。

ライトオブセイバーには俺の魔力の七割を使ったし、ルーンオブセイバーを振るったタイミングも完璧だった。

オーガも俺の速度を捉えられずに俺の攻撃に対応出来ないと思ってた。

俺の持つ手札で最強の攻撃方法だ。確実に仕留めたと、そう思っていた。

しかし、現実は非常だった。

 

「嘘、だろ…」

 

俺は受け止めたくない現実を前に呆然と呟く。

目の前には、両腕で胸を守るブラックオーガロードの姿。

俺の剣は、俺の攻撃を受け止めた片腕、その骨を断つことすら出来ず肉に止められている。

 

「gulululalalala…」

 

不味い、今は戦闘中だ気を抜くと…ッ?!

俺は直ぐに気を取り直し、次の手を実行すべく後退しようとした直前。

ほんの一瞬だけ、こちらを見つめるオーガの目玉のない目と、目が合った気がした。

俺と目が合ったオーガは、何を思ってかニヤリと笑みを浮かべ……

 

「golalalalalalalaalalalalalalalala!!!!」

 

大きく口を開き、図太い光線を浴びせてくる。

 

「『リフレクト』……ゴハァッ!?」

 

俺は突然の攻撃に反射的に動き、リフレクターを展開して何とか防ぐが、死角から来ていたオーガの蹴りを受けて吹き飛ばされる。

自動回避スキルによりなんとか致命傷を免れたが、突然の攻撃にリフレクトが破れ、ワンドが粉々に砕け散った。

蹴りの衝撃でビームは回避できたものの、吹き飛ばされた俺はそのまま背後にあった木に衝突し、その勢いの強さから何本かの骨が折れる感覚と、一部内臓が潰れたような激痛に襲われる。

 

「ぐ、あがぁっ!!??」

 

大量の血が口から出てくる。血が足りないのか頭がぼーっとして目がぼやける。

俺は段々と視界が暗くなるのを感じながら、ふと、昔の俺を幻視した———。

 

 

 

 

 

—————————

 

 

それは、中三の部活帰りの日の事だった。

 

部活の練習終わり、近所に住んでいる同じ部活の友人達との帰り道、夏休みで夜も暑く、じめじめした気温が帰り道を歩く俺達を襲っていた。

 

「なあ、流石に一旦すずまんと死ぬって……お、ちょうどいいしあそこで涼んでかね?」

 

余りの暑さに耐えきれなかった友人に、涼んでいこうと提案されて俺達は帰り道のコンビニに立ち寄った。

 

「すずしー!」

「生き返るわぁ。…っと、折角だから漫画読んでかね?今週のジャンフまだ買ってなかったんだよ」

「せんせー。今週分はおもしれーぞ!特にワン◯―スがさ…」

「ネタバレしたら殺す」

 

コンビニで冷を取っていた俺達は、折角だからと雑誌コーナーに行き雑談しつつ漫画を読んでいたのだが…。

 

「…ん?なあ、あれ和真の幼馴染の××ちゃんじゃね?」

「んー?あ、ガチじゃん。和真の彼女だよな?」

「いいなー、幼馴染で彼女とか勝ち組かよ」

「あれ?でもあの一緒にいる人って…」

 

雑誌コーナーで立ち読みをする中、ふと窓の外を見た一人が呟くと、他の奴らも外を覗き始める。

面白そうに見ている友人たちとは逆に、俺は幼馴染がいると聞いて気が気ではなくなっていた。

夏休みに入っていこう、一切連絡が取れなくなったからだ。

共通の友人経由で事情を聞いたところ、普段通りでよくわからんとしか聞けず、どうして連絡をとってくれないのか分からずじまいだった。

直接会って話がしたいと思っていた中、今彼女がこんなにも近くにいる!

俺ははやる気持ちを抑えながらも、足早に外へ出ると、

 

「ぶわはっはっはっは!ガチ?流石××じゃね?」

「お前マジかよwwww。やっぱやってんな~」

 

黒い制服に身を包み、バイクに乗りタバコをふかした男たちと共に笑っている××の姿があった。

え?

 

「じゃあ早速イクベ!」

 

あれはここらで有名な不良の先輩だ。

どうして彼女が一緒にいる?なんでバイクの後ろに跨っている?どうして首に絡まっている?

幾つもの疑問が頭を埋め尽くすが、彼女の姿を見た瞬間からその答えは出ていた。

しかし現実を受け入れられず、俺はその答えを否定した。実際に聞かなければ分からないだろうと。だが、相手はあの先輩たちだ、実際に聞く勇気はないし、怖くて俺は動けなかった。

 

「××…?」

 

先輩たちのバイクが発車する直前、俺は困惑からか、衝撃からか彼女の名前を呟くと、

 

「———和真?」

 

どうやら、俺の呟きが聞こえていたらしく、彼女は俺の方を振り向いた。

彼女の瞳と目が合い、一瞬彼女は呆けた後、

 

「ねえちょっと!一旦降ろして!ねえ!はやく!!」

 

俺を認識した彼女は、突然焦りだして先輩の肩を揺らし、降ろしてくれと訴えていた。

しかし動き出して直ぐそんな事が出来るわけもなく、更に肩を揺らされたて制御が困難になったバイクは———

 

——————ドオン!!!!!

 

———と、大きな音と共に、道路を走っていたトラックにぶつかり、爆発したのだった。

周囲から聞こえる悲鳴や罵声。誰かが呼んだ救急車のサイレンが聞こえてくる。

そんな中俺は目の前で何が起こったのか理解できず、ただ茫然とつっ立っているだけだった。

 

 

そうだ、これは俺のトラウマ。最悪の過去。

もしかして走馬灯か?死ぬ前にみるのがこれって、めちゃくちゃ最悪じゃねえか……。

俺は何もできなかった。怖くて、動けなくて、でも、もし俺があの時少しでも動いていたら、きっと幼馴染が死ぬことは無かったかもしれない。こんな悲劇はなかったかもしれない。そもそも彼女が俺を捨てた事くらい、分かっていたじゃないか。肝心な所で何も出来ない俺が、必要とされるわけなかったんだ。

ああ、やっぱり、俺は何にもできないダメなやつなんだ……。誰も、俺を必要となんて…。

 

俺は、目の前で呆然と立つ昔の自分を見ながら、そっと意識を手放そうと——

 

『カズマ!』

 

した時、どこからかとても見知った声がした。

 

『おいカズマ!』

『カズマさーん!』

 

更に二つ、俺を呼ぶ声が聞こえた。俺は声がする方へ振り返る。

 

『カズマカズマ、爆裂散歩に行きましょう!また採点してくださいよ!』

 

するとそこには、俺を待っている仲間たちの姿が…。

ああ、そうか。俺には帰りを待ってくれている奴らがいるんだった。 

そうだ、こんなナイーブになるなんて俺らしくない。こんな一番見たくないクソみたいな過去を見てから死ぬなんて真っ平ごめんだ!

というか、俺には信頼できる仲間達がいるんだ、こんな記憶何時までも引きずってんじゃねえ!

俺はこちらに手を差し伸べるとんがり帽子を被った相棒の手を掴むと、

 

「俺はアイツらの元に帰るんだ!」

 

そう叫んだ瞬間、何か、ピースのような物がはまったような感覚と共に、俺の意識は消えていった———

 

 

 

 

 

 

 

———————

 

 

ああ、俺はこんなところで死ぬわけにはいかないよな!

 

血が流れる感覚から、今の幻想はほんの一瞬だったことが分かる。

意識は現実に戻り、体中の痛みがここが現実であることを教えてくれた。

肋骨が折れたのか、胸からとんでもない激痛が走る。余りの痛みを抑えるため歯を食い縛ろうとするが、口から溢れる血に邪魔されて上手くいかない。

頭に傷ができたのか、目に血が流れ視界を塞ぐ。

……まずは回復からだ。

 

「…『セイくりッど、はイねすヒーる』」

 

今にも途切れそうな意識を何とか奮い立たせ、がくがくする口を無理矢理動かし、手で胸を押さえつけて魔法を唱える。

魔法を唱える声はちぐはぐで上手く詠唱すら出来ていないにも関わらず、魔法は驚くほど完璧に発動し、折れた骨や潰れた内臓が修復されていく。

痛みが和らぎ、何とか戦闘に戻れる状態になるが、回復魔法で失われた血は戻らないためか頭がボーっとしているのを感じる。

俺は血が足りず視界が霞む中なんとか立ち上がると、こちらを見つめるオーガを見た。

本来自我がないはずのブラックオーガであるが、ロードとして格が上がったため自我を残しているのだろうか。奴は苦しむ俺をみて楽しんでいるのか、ニヤニヤと笑みを浮かべていた。

 

「クソったれめ…」

 

俺は心の中で悪態をつく。が、なぜだろうか、死の可能性に最も瀕している、いや、たった今瀕していたばかりにも関わらず、俺は少し、いやかなり高揚感を感じていた。

最悪のトラウマに踏ん切りを付けられたからか?

いや違う、確かにそれもあるかもしれないが、そうじゃない。

俺はこちらをみて笑うオーガを見ると、ニヤリと笑い返して刀を両手で真上に構える。

そして俺は、死に際で掴んだ力を発動する。

さっき、死にかけていた時に、俺の中で今まで燻っていたものが晴れた瞬間、これを掴んだ感覚があった。

まるで、遺伝子の根底から変化したような感覚だった。

俺は新たな力——一つの新たなるスキルと化した合成スキルの名を発する、

 

「『セイクリッド・ライトセイバー』」

 

新たに得たスキルを叫ぶと同時、俺の刀の刀身が、巨大な光の剣で覆われる。

どこか神聖さを感じさせるその刃は、稲妻を走らせ、周囲に大量の魔力を迸らせる。

 

「g、gulula!?」

 

俺の持つ刀が発する膨大な魔力に当てられてか、先ほどまでの余裕そうな笑みを消したブラックオーガロードは後ずさる。

残り魔力量的に、あと数発スキルが使えるとは思うが、体の方が限界だ。

新たに取得したスキルを撃てるのもこの一発で最後になる。

向こうもこの一撃で雌雄を決しようとしているのか、その身に纏う瘴気を拳に集中し、正拳突きの構えを取っている。

向こうも準備万端のようだ。

 

「……」

 

一瞬の沈黙の後、俺とオーガは互いに攻撃を仕掛ける。

 

この一撃で決める!

 

「おらあああああああ!!!!!!!!!!!」

「gululalalalalalalalalalal!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

————————————

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ………」

 

両断された巨体が横たわる隣で、俺は一人仰向けになって空を見上げていた。

いつの間にか空は明るくなっており、日が昇っているのが見える。

俺は魔力不足から倦怠感を覚え、疲労から肩で息をしつつ、ポケットに入れていた冒険者カードを取り出す。

 

「…!ははっ」

 

そこに書かれたレベルやスキル欄を見て、俺は思わず笑いを零す。

討伐欄にはブラックオーガロードの名前が刻まれており、奴を確かに討ち取ったことを示してくれていた。

 

「レベル、37…!」

 

22だったレベルは十五も上がっており、ステータスも全体的にかなり向上している。

それに…

 

「新スキル、か」

 

スキル欄には、新たに四つのスキル名が刻まれており、うち一つが習得済みとなっていた。

さっき使ったスキルの正体は、これか。

確認すると十五もレベルが上がりスキルポイントも相応入っているはずが、俺の残りスキルポイントは十となっており五ポイントほど行方不明となっていた。

 

これはつまり、オーガやらアンデッドやらを倒して手に入ったスキルポイントを消費してこの合体スキルを習得したってことか?

で、ブラックオーガロードを倒して新たに上がったレベルで手に入ったスキルポイントが残ったと。

 

俺がうんうんとこの仕組みについて考えていると、敵感知スキルに反応があり、何体ものモンスターがここへ向かってきているのを感じ取った。

戦闘の音が止んで片方が倒れたのを察知したのだろう。

漁夫の利を狙ったモンスター達が動き出したのだ。

…潮時だな。

 

「『インフェルノ』!」

 

俺は最後の魔力を使い、ブラックオーガロードの死骸を燃やし切ると、

 

「『テレポート』!」

 

内ポケットに収納していたテレポートのスクロールを手に取り、俺は皆が待つ家に帰還したのだった。

 

 

————————

 

 

魔法を唱えてから光が収まったのを確認し、俺はゆっくり目を開けると、見慣れた屋敷が目に映る。

ちゃんとスクロールは正常に発動してくれたようだ。

時間的に、もう皆朝食を取り終わった頃だろうか?

俺は帰還を実感しつつ、皆にただいまをいうためにドアを……。

いや待て、今のこの血まみれでボロボロな姿を見せて大丈夫なのか?こんな姿見せたらそれこそめぐみんが怒髪天を衝くどころの騒ぎじゃなくなる位怒るような…。

いや、魔力不足でだるいし、今から大衆浴場に行く元気もない。一旦潜伏スキルで先に風呂へ……。

そう考え、スキルを使おうとした時、俺は全く動いていないというのに、突然ドアが開き、

 

「いつまで、そこにいるつもりなんですか?」

 

見るだけでとても不機嫌なことが分かる、ジト目でこちらを見るめぐみんが、ゆっくりと出てきた。

 

「…!?……!?」

 

気配を感じ取れず突然出てきためぐみんに、俺は困惑から言葉が出ない。

そんな俺の様子を見て、めぐみんが呆れからかため息を吐いている。

 

「ほんっっっとうに遅かったですね。心配しているっていって直ぐこれとは、カズマは私を怒らせたいのですか?ダクネスもうすうす気づいていますし、皆怒っていますからね!もちろん私だって……」

 

どうやら相当心配かけてしまったようだ。

まくし立ててくるめぐみんを見て、俺は平静を取り戻して漸く帰ってきたと実感する。

 

「ちょっと!聞いているんですか!?今日という今日は…」

 

俺の顔を見てより怒りだしためぐみんを俺は優しく抱きしめると、

 

「ただいま。めぐみん」

 

なんてことを言ってみた。

俺の言葉にめぐみんは驚いた顔を作り、困ったような、怒ったような、嬉しいような顔を作りってから、

 

「おかえりなさい、カズマ」

 

そう、満面の笑みを浮かべて出迎えてくれた。

 




カズマさん覚醒回でした。
トラウマを乗り越えて漸く勇者らしくなりましたね。こんだけ強化しないとこの先の戦いで死ぬので必要強化でした。


裏設定
新スキル発現条件
・既存スキルの枠組みを超えた効果のあるスキルを持つ
・一定以上の魔力操作技術
・一定のスキルポイントを所持していること
・新スキルの元となるスキルの熟練度が一定値を超えていること
カズマさんは特訓を開始して三日目あたりで上記条件を達成していました。
しかしトラウマによる自己嫌悪から自分自身の成長を阻害し、本来達成していた新スキルの取得を押しとどめていました。今回走馬灯で見たトラウマを乗り越え、自己嫌悪がなくなったために新スキルを発現、死を回避するために脳が既にあったポイントを使ってこの状況を打開するスキルを取得しました。
他新スキルの設定も既に出来ているので次回以降に期待してください。

カズマさんの過去について
完全オリジナル設定です。
第六話でちょろっと出た通り、本作カズマさんは原作のトラウマが爆増したものとなっていました。この手の描写は初すぎてめちゃくちゃ難しかったですわ。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。