IFすば   作:来世カズめぐ部屋の観葉植物になりたい者

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再掲
前回の内容が納得できなかったので書き直し。
後半大幅に変更してます。

それと一章の一話付近もかなり変更してます。
よかったら見てね⭐︎


第九話 この理不尽な要塞に終焔を!

屋敷に戻ると、そこは既に阿鼻叫喚と化していた。

 

「逃げるのよ!遠くへ逃げるの!」

 

色んな物をひっくり返し、ワタワタしながらアクアが言った。

先ほどまでここにいて部屋に戻ったのか、机の上にはまだ湯気の立っているダクネスのマグカップが置いてある。

先ほどまで一緒にいたはずのめぐみんは、いつの間に用意したのか小さなカバンを足元に置き、アクアを慰めている。

え、なんで皆荷物をまとめてるんだ?

 

「もうじたばたしたって始まりませんよ。大丈夫、私たちにはベルディアを討伐して得た賞金があるのです。また新天地でやり直せばいいじゃないですか」

 

部屋で装備を整えてギルドへ向かおうとしていた俺は、二人の様子を見て唖然としていた。

 

「……えっと、どうしたお前ら。何だこの状態は?緊急の呼び出しを受けてるんだぞ、装備整えてさっさと行こうぜ」

 

その言葉に、二人は信じられない者を見る様な目で俺を見てきた。

 

「カズマったら何を言っているの?ひょっとして起動要塞デストロイヤーと戦う気?」

 

アクアが呆れた様に言ってくる。

脇に、大事そうに枕と酒瓶を抱えて。

この感じだとダクネスも荷物をまとめに部屋に戻った感じか。

 

というか、まだ緊急の呼び出しを受けたというだけで、俺は状況が理解できていない。

ヤバいのが近づいているというのはわかったが、そんな逃げるほど完全に諦める様な相手なのか?

 

「カズマ、今この街には、それが通った後にはアクシズ教徒以外、草の根一本も残らないとまで言われている最凶の『国家指定特別賞金首』起動要塞デストロイヤーが迫ってきています。アレと戦うのは、流石の私たちでも不可能です…!」

「ねえ、私の可愛い信者たちがなぜそんな風に言われているの?どうして皆ウチの子達にそんなに怯えているの!?皆普通の良い子たちばかりなのに!!」

 

アクアが何かを喚いているが、めぐみんの説明だけではピンと来ない。

なんだ国家指定特別賞金首って。

物騒にも程があるだろう。

 

「なあ、それはめぐみんの爆裂魔法でどうにかならないのか?名前からしてデカそうだし、遠くから爆裂魔法をぶっ放す、とかじゃ無理か?」

「無理ですね。デストロイヤーには強力な魔法防御の結界が貼られています。爆裂魔法の一発や二発、防いでしまうでしょう」

 

何その化け物。

 

「ねえ、ウチの信者たちは良い子達よ!めぐみん聞いてよ、巷で悪い噂が流れているのは、心無いエリス教徒の仕業なのよ!みんなエリスの事を美化しているけど、あの子、あれで結構やんちゃな所があるのよ!?悪魔相手だと私以上に容赦ないし、結構自由奔放だし!案外暇な時とか、地上に遊びに来てたりしてるかもしれないわ!アクシズ教徒を!アクシズ教徒をよろしくお願いします!!!」

「アクア、日頃神の名を自称しているだけじゃ飽き足らず、更には女神エリスの悪口まで言うなんてバチが当たりますよ?」

「自称じゃないわよ!信じてよー!!」

 

半泣きのアクアにガクガクめぐみんが揺さぶられていると、ガシャガシャと大きな音を立てながら、見たこともない重武装に身を包んだダクネスが俺達の元までかけてきた。

 

「———遅くなった!……ん、どうしたカズマ。早く支度してこい。お前なら、きっとギルドへ行くのだろう?」

 

そう俺に言ってくるダクネスは、普段の全身鎧の上に鎖を編み込んだ重いマントを羽織り、左の籠手には着脱式の盾まで着けている。

そこまでしても兜をつけないのは、女としての譲れない何かがあるのだろう。

どうやらダクネスは逃げる為に部屋に荷物をまとめに行ったのではなく、装備を取りに戻っていたらしい。

流石、聖騎士なだけはある。

 

街の住人を放って、逃げるという選択肢は無いようだ。

 

「おいお前ら、ダクネスを見習え!長く過ごしたこの屋敷とこの街に愛着はないのか!ほら、ギルドに行くぞ!」

 

そうだ、この街を壊される訳には行かない。

この街には俺の、いや、俺達の夢が詰まっているのだから…!

 

—————————

 

 

「おっ!やっぱり来たかカズマ!お前なら来るって信じてたぜ!」

 

完全武装でギルドに入ると、そこには同じく重装備のダストの姿。

俺も、きっとお前達がいると信じていたさ。

その隣には、キースにテイラーとリーンの姿も。

俺は改めてギルドの中を見渡した。

そこには様々な冒険者達が、それぞれが考えられる限りの重装備ではせ参じていた。

きっと、彼らもこの街が好きなのだろう。

 

…何だか男性冒険者の比率が多い気がするが、きっと気のせいだ。

というか、見知った顔が大体いる。

 

……と、ある程度の冒険者達が集まった所で、

 

「お集まりの皆さん!本日は、緊急の呼び出しに応えて下さり大変ありがとうございます!只今より、対起動要塞デストロイヤー討伐の、緊急クエストを行います。このクエストには、レベルも職業も関係なく、全員参加でお願いします。無理と判断した場合には、街を酢て、全員で逃げる事になります。皆さんがこの町の最後の砦です。どうか、どうかよろしくお願いします…!」

 

ギルド内がやかましくざわめく中、ギルド職員が声を張り上げた。

そして、職員たちが酒場になっている部分のテーブルをギルドの中央に寄せ集め、即席の会議室みたいな空間を作り出す。

…空気が尋常じゃないな。絶望感と、それでも希望に縋りつこうとしている感じが半端なく感じられる。

それほどまでに、デストロイヤーがヤバいということなのだろう。

 

「それではお集まりの皆さん、只今より緊急の作戦会議を行います。どうか、各自空いている席にお着きください」

 

俺達は職員の指示に従い、パーティで固まって席に着く。

しかし、どれだけの人数がいるのだろう。

広いギルドとはいえ、ここにいる人の数は百ぐらいではきかないだろう。

テーブルに着くと、他の冒険者達の顔が良く見える。

 

「さて、それでは。…まずは、現在の状況を説明させていただきます!……えっと、まず、起動要塞デストロイヤーの説明が必要な方はいますか?」

 

その職員の言葉に、俺を含む数名の冒険者が手を挙げた。

それを見て、職員が頷き、

 

「機動要塞デストロイヤーは、元々は対魔王軍用の戦略兵器として魔道技術大国ノイズで造られた、超大型のゴーレムの事です。国家予算から巨額を投じて造られた巨大なゴーレムは、外観はクモのような形状をしております。小さな城ほどの大きさを誇っており、魔法金属がふんだんに使われ、外観に見合わない軽めの重量で、八本の巨大な脚でリザードランナーをも超える速度が出せます」

 

デストロイヤーはよほど有名なのか、ほとんどの冒険者達はそんなことは知っているとばかりに頷いている。

 

「特筆するのは、その巨体と進行速度です。すさまじい速度で動き、その八本の脚で踏まれれば、大型のモンスターとてひき肉になります。そしてその体には、ノイズ国の魔道具技術の粋により、魔王城の結界を模して作られた強力な対魔法結界が常時貼られています。これにより、まず魔法攻撃は意味をなしません」

 

それを聞いている冒険者達の表情が微妙に暗くなっていく。

段々、いかに自分たちが無謀な戦いをしようとしているのかが分かってきたからであろう。

 

「魔法が効かない為、物理攻撃しか無いわけですが…。接近すると、轢き潰されます。なので、弓や投石などの遠距離攻撃になりますが、元が魔法金属性のゴーレムであるため、弓はまず弾かれます。攻城用の投石機も、起動要塞の速度からして運用が難しいと思われます。また、空からのモンスターに備えてか、デストロイヤーの一定範囲内…具体的には、デストロイヤーから半径100メートル程に入ると、装備されている魔法兵器の光線によって消し炭にされる恐れもあります。それに、内部に入られた場合に備えて、自立型の中型ゴーレムが跋扈しているという情報もあります」

 

…ほほう。

 

「そして、その機動要塞デストロイヤーがなぜ暴れているのか、ですが…。研究開発を担った責任者が、この起動要塞を乗っ取ったと言われています。そして、現在も起動要塞の中枢部にその研究者がおり、ゴーレムに指示を出しているとか…。速度が速度ですので、この大陸において、すでに荒らされていない地はほとんどなく、そのクモの様な脚で、どれほどの悪路でも踏破してしまいます。現在の所、人類、モンスター合わせ、平等に蹂躙していく起動要塞、それがデストロイヤーです。これが接近してきた場合は、街を捨て、通り過ぎるのを待ち、そして再び街を建て直すしか方法が無いとされています。正に、天災として、周辺国家から国家指定特別賞金首として扱われております」

 

あれほどざわついていた冒険者達は、今はシンと静まり返っていた。

 

「現在、起動要塞デストロイヤーは、この街の北西方面からこちらに向けて真っ直ぐ進行中です。……では、ご意見をどうぞ!」

 

なんだその化け物。

俺は脳内に無理ゲーという文字が浮かび上がった。

……と、ある冒険者が手を挙げる。

 

「…あの、その魔道技術大国ノイズって国はどうなったんです?造った国なら、それに匹敵する何かを造るとか対策が打てなかったんですか?あと、デストロイヤーの弱点ぐらい知てったりとか…」

「滅びました。デストロイヤーの暴走で、真っ先に滅ぼされました」

「……他にありませんか?」

 

また別の冒険者が手を挙げる。

 

「街の周りに巨大な落とし穴でも掘る、とか」

「やりました。多くの『エレメンタルマスター』が寄り集まって他の精霊に働きかけ、即席ながらも巨大な大穴を掘り、デストロイヤーを穴におとしたまでは良かったのですが…。機動性脳が想定以上に高く、八本の脚を巧みに使い、ジャンプして脱出したそうです。上から岩を落として蓋をする作戦だったそうですが、その暇もなかったようで…」

「……」

 

思わず、場が静まり返る。

 

「……他にありませんか?」

 

また一人の冒険者が手を挙げた。

 

「魔王軍の連中はどう対処してるんだ。魔王の城は蹂躙されてはいないのか?連中はどうやってデストロイヤーから身を守っているんだ。連中だって困るんじゃないか?」

「あの城は強力な魔力結界が貼られているようです。人類の力ではとても貼れない規模の物が。現在、魔王城に被害は無い様なので、彼らがデストロイヤーを破壊しようとしてくれる気配はありませんね。彼らにとって、野良モンスターが蹂躙されることは、取るに足りないことでしょうから」

 

職員が、静かに言った。

 

「他に、ありませんか?」

 

 

—————————

 

 

その後も会議は続いていた。

要塞にロープか何かで乗り込めないかという意見や、バリケードを貼って街を守ればいいという意見が出るが、速度の面から無理、壁は迂回した記録が残っているため無駄という反対意見が出る。

魔法は聞かない、接近したらビームで焼かれる。それを回避しても踏まれる。しかも、それらが迅速に行われる。

なるほど、アクアとめぐみんが逃げようとするのも仕方ない。

これは、ベルディアと違い物理的に攻略が不可能に近い。

 

難航する会議を静かに見ていたダクネスが、

 

「カズマ、お前なら機転が利くだろう。何かいい案はないのか?」

 

突然俺にそんな無茶ぶりをしてきた。

……そんな事言われても。

 

離れた所から爆裂魔法でぶっ放そうにも、結界で阻まれる。俺と合わせても打てる爆裂魔法は二発。最初の一発で結界が破壊できなければ詰みだ。そもそもめぐみん本人が一発で結界の破壊は不可能だと断言している。

せめて結界の解除さえできれば……結界の解除…

 

結界の、解除!

 

「なあアクア。アークプリーストのスキルに、魔法効果を破るやつがあったよな!?あれって結界も破壊できるか?ベルディアの能力を全部打ち消せる程の性能のお前なら、デストロイヤーの結界も破壊できるんじゃないか!?」

「え?ま、まあ確かに私なら出来るかも知れないけど、でも、やってみないと分からないわよ?結界を敗れる確約はできない…」

「破れるんですか!?デストロイヤーの結界を!?」

 

アクアが言い切る前に、職員が大声を上げる。

その言葉に俺とアクアは冒険者達の衆目に晒される。

 

「いや、確約はできないみたいですが…」

「やるだけやってもらえませんか?それができれば魔法による攻撃が…!いや、でも起動要塞相手には、下手な魔法では効果がないですし、駆け出しばかりのこの街の魔法使いでは、火力に欠けますね……」

 

職員が悩みだし、また静まり返る中。

ある冒険者がぽつりと言った。

 

「火力持ちならいるじゃないか、頭のおかしいのが」

 

その言葉に、再びギルド内に喧騒がよみがえる。

 

「そうか、頭のおかしいのが…!」

「いたなあ、おかしいのが…!」

 

「おい待て!それが私のことを言っているなら、その略し方はやめてもらおう!!!さもなくば、いかに私の頭がおかしいかを今ここで証明することになる!」

 

めぐみんが杖を手に立ち上がると、冒険者達が一斉に目を逸らした。

魔王軍幹部、ベルディアの罪は重い。

あいつがめぐみんを、頭のおかしい紅魔の娘呼ばわりして連呼してから、冒険者達の間にそのフレーズが定着してしまったらしい。

勢いで立ったものの、人々のまなざしを受けためぐみんの顔は、みるみる赤くなり。

 

「う、…わ、我が爆裂魔法でも、結界が無かったとしても、流石に一撃では仕留めきれないと思われ、ます。精々、片側の脚を四本吹き飛ばすのがやっとでしょう。なので、せめてもう一人、私と同等の威力がなければ…」

 

そうぼそぼそと告げて、再び座った。

俺の爆裂魔法は、めぐみんのそれよりも威力が半分程度しかない。めぐみんの一撃で倒せないなら、俺の攻撃が加わったところで削り切れない。

あらゆるサポートが可能な俺の魔力が無くなったらそれこそ終わりだ。

 

クソッ、せめてあと一人。

あと一人、めぐみんと同等の火力を出せる強力な魔法使いがいれば…。

 

————ギルド内の空気がそんな雰囲気になった時、突然入口のドアが開けられた。

 

「すいません、遅くなりました…!ウィズ魔道具店の店主です。一応冒険者の資格を持っているので、私も防衛に参加を…」

 

ギルド内に入ってきたのは、何かの作業中に慌てて飛び出してきたのか、黒ローブの上に、店で使うエプロンをつけたウィズだった。

その恰好は、まるで炊き出しの手伝いにでも来た娘の様な姿だ。

そのウィズを見た冒険者達は…。

 

「店主さんだ!」

「貧乏店主さんが来た!」

「店主さん、いつもあの店の夢でお世話になってます!」

「店主さんが来た!勝てる!これで勝てる!」

 

と、途端に熱烈な完成を上げた。

俺はウィズがリッチーだと知っている。

だが、冒険者達の、この勝てるといった騒ぎは何だ?

 

「なあ、なんでウィズってこんなに有名なんだ?人気ありそうだが、どうなってるんだ一体…?」

 

俺が近くに座っていたテイラーに尋ねると。

 

「知らないのか?ウィズさんは、もとは氷の魔女って二つ名の、高名な魔法使いだったんだ。凄腕アークウィザードとして名をはせたが、引退して、しばらく姿を表さなかったかと思うと、突然この街に現れて店をだしたんだよ」

「なるほどな。…あの貧乏店主ってのは?てか可哀想だからやめてあげろよ…」

「あの人の店、駆け出しには見合わない高レベル冒険者御用達な高級アイテムばっかり取り扱ってるんだよ。だから皆、美人店主さんを見に、店をこっそり覗きには行ってるらしい。買わないだけで」

 

いや、買ってやれよ。

 

「ど、どうも、ウィズです。ウィズ魔道具店をどうぞよろしく…!また赤字になりそうで…」

 

そういって、ウィズは歓声を上げる冒険者達にぺこぺこと頭を下げている。

こ、今度また何か買いに行こう。

 

「ウィズ魔道具店の店主さん、これはどうもお久しぶりです!ギルド職員一同、歓迎いたします!さあ、どうぞこちらへ」

 

職員に促されるまま、ウィズは周りにペコペコと頭を下げながら中央のテーブルの席に座らされた。

ウィズが席に着くと、冒険者達は期待を込めた目で、進行役の職員を見る。

職員はそれに応える様に、

 

「では、店主さんにお越しいただいた所で、改めて作戦を!ええと、店主さんが来たのでもう一度まとめます。……まず、アークプリーストのアクアさんが、デストロイヤーの結界を解除。そして、おかし……めぐみんさんが、結界の消えたデストロイヤーの片側の脚に爆裂魔法を打ち込む、という話になっておりました」

 

それを聞いたウィズが、口を開く。

 

「なるほど、では私とめぐみんさんでデストロイヤーの脚を片側ずつ担当し、破壊するのがよさそうですね。私も爆裂魔法が扱えるので。機動要塞の脚は何とかなると思います」

 

ウィズの提案に、職員もコクコクと頷いた。

 

てかマジか。いや、流石はリッチー、爆裂魔法も使えるのか…。

脚さえなんとかしてしまえば、後はどうにでもなるであろう。

 

光線兵器も、射程外なら問題ない。

 

複数の魔法使い職で畳み掛けて兵器を潰すでもいいし、リフレクトが使えるやつを盾にして突入して破壊するでもいい。

 

そうすれば俺達が中に突入して、内部にいるらしい開発責任者を捕縛することもできるだろう。

 

その後、まとめられた情報を元に、作戦が組まれた。

 

万が一を考え、ダメ元で、街の前に罠を張る。バリケードを造る等、色々な案が出され。

 

「では、結界解除後、爆裂魔法により脚を攻撃。万が一脚を破壊し尽せなかった場合に備え、前衛職の冒険者全員は、二人一組で動き、片方はハンマー等を、もう片方は大型の盾を装備し、デストロイヤー通過地点を囲むように待機。

予想される光線攻撃を片方が防ぎつつ、魔法で破壊し損なった脚を攻撃し、これを破壊。

予想される光線による攻撃は、リフレクトのスクロールをクルセイダーの方々に支給しますので、クルセイダーの方々に請け負ってもらいます。

もし片方がダメージを受けた場合はすぐ後方に撤退、最優先で回復職から回復を受けてください。クルセイダーの方々が攻撃を引き受けている間に、その他の冒険者の皆さんが突入。まず真っ先に光線兵器の破壊をお願いします。

また、内部には多数のゴーレムやデストロイヤーを開発した研究者がいると思われますが、この研究者が何かをするとも限りません。万が一を考え、光線兵器攻略の後は迅速な攻略と見つけ次第捕縛をお願いします。本体内に突入出来るようにロープつきの矢を配備し、アーチャーの方はこれを装備。身軽な装備の人たちは、要塞への突入を整えておいてください!」

 

 

—————————

 

 

街の前には冒険者だけでなく、街の住人達も集まって、突貫作業で即席のバリケードがくみ上げられていた。作業に従事している人達の中には、俺がこの街に来た当初お世話になっていた土木工事の親方の姿もある。デストロイヤーを迎え撃つ予定の場所は、街の正門の前に広がる平原だ。そこには、罠を設置できる職種の者が、無駄とは知りつつも即席の罠を仕掛けている。

街の前のバリケードの前には、『クリエイター』と呼ばれる職業の連中が集まり、あーでもないこーでもないと言い争い、地面に魔法陣を描いていた。

 

「おいダクネス、お前、悪い事言わないから下がってろよ。お前の硬さ知はってるが、流石に無理がある。ここはお前のどうしようもない趣味は置いといて、バリケードの内側に戻るぞ」

 

俺は、街の正門の前のバリケード、その更に前にジッと立ちはだかるダクネスに、再三をの説得を続けていた。

この変態クルセイダーが、ここから動かないと言って聞かないのだ。

最悪テレポートで逃がすかと画策するも、それを察したのかテレポートを使っても抵抗するからなと言い放ってきたダクネスは、新品の大剣を地面に刺し、柄に両手を掛け、遠く、まだ姿も見えないデストロイヤーの方を見ながら動かない。

 

…こいつの異常なまでの魔法抵抗力の高さって、こういう時厄介だよな。

 

ダクネスは、じっと黙っていたが、やがて口を開いた。

 

「……カズマ。私の普段の行いのせいでそう思うのも仕方が無い。……が、この非常時に、この私が自分の欲望にそこまで忠実な女だとでお思うか?」

「思うよ、当たり前じゃん」

「なぁっ!」

 

俺の即答に可笑しな声を上げたダクネスが、ちょっと頬を赤らめた。

 

「冗談だよ。流石にこんな時まで自分の欲望に従う大馬鹿だとは思ってない。何か理由があるんだろうなって思うけどな。…だとしても、命を軽く扱う理由にはならない。ここにいたら最悪死ぬんだぞ。いい加減下がれよ」

「……私は聖騎士だ。そして、それ以外にも、私にはこの街を守る理由がある。その理由は、いずれお前には話すかも知れない」

 

その言葉に俺が押し黙り、ゆっくりと頷くのを横目で見ると、ダクネスは話を続けた。

 

「今はまだ言えないが、私にはこの地の住人を守る義務がある。この街の住人達は気にしないだろうが、少なくとも私はそう思っている。だから……無茶だと言われても、ここからは何があっても一歩も引かん」

「……何があっても、ここからは動かないのか?」

「ああ。…ここは最終防衛ラインだ。もしここを越えられたら、街がやつの攻撃範囲に入ってしまう。なら、できる限りその攻撃を請け負いみなを守るのが、クルセイダーの務めだろう?」

 

俺の疑問に即答するダクネス。

…これは、無理に動かしても無駄だろうな。

 

「お前って、たまにどうしようもなく我儘で、本当に頑固なところがあるな」

 

俺が呆れた様に言うと、ダクネスが少しだけ困った様な、不安そうな顔で。

 

「………我侭で頑固な仲間は嫌いか?」

「どこかのアークプリーストの我侭は、聞いているとイラッとして引っ叩きたくなるけど。でもまあ、今のお前みたいなやつの我侭は、嫌いじゃないよ」

 

俺のその言葉に対し、

 

「…そうか」

 

少しだけ、安心した様にダクネスが呟いた。

 

 

——————

「説得には失敗した。あの頭の固い大馬鹿を守るためにも、確実に成功させるぞ」

 

入れがデストロイヤー迎撃地点、街の正門の見晴台の片翼に待機しているめぐみんの隣に立つと、緊張技位のめぐみんにそう告げた。

 

「そ、そそ、そうですか…!や、やらなきゃ!わ、わわわ私が、絶対やらなきゃ……!」

「お、おい落ち着け、いざとなったらあいつの下に仕込んだテレポートの魔法陣を機動して、無理やりこっちに下げるから!」

 

————それよりも…。

 

「ねえちょっと、あんた頭から煙が上がってるけど大丈夫なの?なんなのそれ?この私相手に芸でも披露する気なの?」

「ち、違いますよアクア様…。これはその、この良く晴れた天気の中、長時間お日様の下に晒されているので…」

 

俺らがいる反対の見晴台では、アクアがウィズにかがみこみ、何やら話し込んでいる。

見晴台の下、正門周辺にはゴーレムに効果が高そうな、ハンマーなどの打撃武器を持った冒険者達が寄り集まり。

そして、アーチャーの連中は、先端がフック状になった、尻の部分に細かいながらも頑丈なロープのついた矢に弓をつがえ、もしもの時には、何時でも動きを止めた起動要塞に乗り込める様、ロー王を張れる準備を終えていた。

 

『冒険者の皆さん、そろそろ起動要塞デストロイヤーが見えてきます!街の住人の皆さんは、ただちに街のに遠くへ離れていてください!それでは、冒険者の各員は、戦闘準備をお願いします!』

 

 

——————機動要塞デストロイヤー

 

それはどこかのチート持ちの日本人が適当につけた名前らしい。

適当に名づけるなと言いたいところだが、その姿を見た者なら納得できると言う。

遠く離れた丘の向こうから、最初にその頭が見えてきた。

感じるのは軽い振動。

まだほんのわずかなものだが、確かに大地が震えている。

 

「なんっだあれ…」

 

千里眼により、周囲の冒険者よりも遠くが見える俺は、ポツリと呟いた。

デカい。

言葉にすれば一言だが、その大きさは一言で言い表せないものだった。

いや、日本に居たころはあの大きさの建造物だってあった。あったが…、問題は、その巨大建造物がもの凄い速度で動いていることだ。

 

遠くに見えるデストロイヤーは、その速度からぐんぐんこちらとの距離を縮めている。

 

「オイ、これ無理じゃねえか?いけるのか?無理だろこれは!!!」

 

同じく千里眼でヤツの姿を見たのであろう、下にいる誰かが慌てて言った。

 

「来るぞ!作戦開始!!!」

「「「「「「『クリエイト・アースゴーレム』!」」」」」」

 

デストロイヤーが視界に入ったため、作戦開始の合図を送ると同時、クリエイターの冒険者達が、地面の上でゴーレムを作り出す。

生み出されたゴーレムは、街を守護する様に立つダクネスの背後へとつき従うように整列した。

『クリエイト・アースゴーレム』は、強いゴーレムを造るためには魔力をかなり削る。しかしその魔力は活動時間を削ることで補えるため、駆け出しで魔力がそこまで高くないこの街のクリエイター達は、このギリギリになってゴーレムを生み出したのだ。

 

「でけえ!それに速え!!予想外に怖え!!!」

 

近づいてくるその巨大な姿に、冒険者達がパニックを起こしかけていた。

 

「来たぞ!全員頭を低く!踏みつぶされないように、絶対にデストロイヤーの迎撃圏内にはいるんじゃないぞ!!!!!」

 

誰かの激が飛ぶが、ほとんどの冒険者に、それを聞く余裕がない。

それほどに、目の前の起動要塞は圧倒的な威圧感を誇っていた。

無機質で悪意も何も感じないゴーレムにも関わらず、その威圧感はあの時戦ったブラックオーガロードを超えている。

 

俺が少し気圧されている中、爆裂魔法発射の合図を送る準備のために、反対側に居るアクア達を見ると…。

 

「ちょっとウィズ!大丈夫なんでしょうね?本当に大丈夫なんでしょうね!?」

 

半泣きになったアクアが、ウィズの胸倉をつかんで何度も何度も確認を取っていた。

…おい。

 

「大丈夫です、任せてくださいアクア様。これでもリッチー、最上位のアンデッドの一人ですから。アクア様が魔力結界を打ち破ってくれれば、あとはお任せを!…あの、だからこの手を離してほしいです!アクア様の涙が当たるたびに、体がビリビリしますのでえ!!!」

 

会話は聞こえないが、見た感じ大丈夫そうだ。そんな二人を見ながら、俺は隣でがちがちに緊張しているめぐみんに。

 

「おい、ちょっと落ち着け。失敗しても誰も責めないさ。失敗した時は街を捨てて、皆で逃げればいいだけだ。あんまり深く考えるな」

 

震えるめぐみんの頭に手を置き、俺は諭すように言った。

 

「だだだ、だい、大丈夫です!わわわ、我が爆裂魔法で、消し、消し飛ばしてくれますからっっ!!」

 

めぐみんが、噛みまくりながら言ってくる。

だが無理もない、めぐみんだけでなく、ここにいる多くの冒険者はまだ駆け出しばかりなのだ。

あんな怪物を前にして狼狽えない方がおかしいってもんだろう。

 

「来るぞー!戦闘準備ー!!」

 

あの声は…テイラーだろう。

下に控える突撃部隊の指揮はあいつが受け持っているらしい。

俺は、アクアやめぐみん、ウィズが魔法を放つ指示や、突撃後の指揮を一任されている。しかもギルド職員の人に、指示を出すための拡声器の様な魔道具まで預けられてしまった。

俺が、今回の作戦の主要人物である。ベルディアを倒した実績と、めぐみんやアクアのパーティーリーダーである事が大きいらしい。

 

いつの間にか、デストロイヤーが直ぐすこまで接近していた。

それは見上げんばかりの圧倒的な存在感。

上の部分を空母の甲板の様に平らにし、そしてその上に、まるでヤドカリの様に砦みたいな建造物を載せ、それ以外にも甲板の部分の所々にビーム兵器だろうか、鉄砲の砲身を覗かせた、クモの様な外見の巨大ゴーレム。

 

———機動要塞デストロイヤー。

 

そのふざけた名前とは裏腹に、まるで山が脚を生やして歩いている様な巨大な機動要塞は、仕掛けられた数々の罠を者ともせずに、地面を踏みしだく轟音を響かせながら、

 

『アクアッ、今だ!やれ!!』

 

俺達の街を蹂躙すべく、迎撃地点へと突っ込んできた!

 

「『セイクリッド・ブレイクスペル』ッ!!!」

 

アクアが、俺の合図で魔法を放つ。

アクアの周囲に複雑な魔法陣が浮かび上がったかと思うと、その手には白い光の玉が浮かんでいた。

アクアはそれを前にかざすと、デストロイヤーに向かって撃ち出した。

撃ち出された光の玉がデストロイヤーに触れると同時に、一瞬デストロイヤーの巨体に薄い膜の様な者が張られて抵抗したが、それがガラスでも割られる様に粉々に砕け散る。

めぐみんが指示を仰ぐように、杖を握ってかすかに震え、不安そうな表情で俺の顔を見上げてくる。

多分はじけ飛んだあの幕が、魔力結界とかいうものなのだろう。

 

「『インフェルノ』!」

 

俺は試しにデストロイヤーに向けて魔法を放つと、特に阻まれることなく放たれた炎塊がデストロイヤーの甲板を焼き尽くした。

魔法が届いた!

 

「めぐみん!もうヤツには魔法が届く!撃つ準備を…めぐみん?」

 

魔法が届くことを確認した俺は、すぐさまめぐみんに爆裂魔法の発射合図を送ろうとするが、

 

「大丈夫、私は強い、私は強い、我は紅魔族一の天才にひて…」

 

ダメだ完全に緊張で固まってやがる。

 

「どうしたんだよめぐみん。いつも爆裂爆裂言ってるのにこんなとこでへこたれるのか?」

「っ!こ、ここで私が失敗したらみんなが、カズマが…!」

「自分の爆裂を信じろ!大丈夫、誰よりもお前の力を間近に見て、誰よりも理解してる俺が保証する!お前ならあんな鉄の塊、簡単に破壊できる」

 

俺の言葉に、一瞬沈黙しためぐみんは、

 

「ど、どうしてカズマはそんなに堂々としていられるんですか…?怖くないんですか…?」

 

なんてことを聞いてくる。

 

「私は、怖くて仕方ないんです。私の一撃で、もしかしたら大切な皆を守れないかもしれない。未熟でダメな私では、あれに通用しないかもしれない、期待された成果を出せない。そんな、嫌な想像が頭を埋めつくして…」

 

決まってる、そんなの…

 

「怖いよ?当たり前じゃん。あんなデカブツが迫ってるんだ、すごく怖い。でも…」

 

でも?と、未だ震えながらも、真っ直ぐ俺を見るめぐみんに、俺は正直に心の内を継げる。

 

「でも、俺の事を守ってくれる最強の魔法使いがいるからさ、心のどこかで安心してるんだよ」

 

 

 

「……………カズマはズルいですね」

 

少しの沈黙のあと、そう、呟いためぐみんは、その瞳を深紅に輝かせ、覚悟を決めた顔でこちらに迫るデストロイヤーを見ると…!

 

「貴方の信じる魔法使いの力、その目に焼き付けてやります!!!」

 

そう高らかに宣言し、その杖をデストロイヤーに向けた!

 

『ウィズ、頼む!そっち側の脚を吹っ飛ばしてくれ!』

 

拡声器を使ってウィズへの指示が終わると同時、バット立ち上がっためぐみんが、浪々と力強く詠唱を…!

 

「「『黒より黒く、闇より黒き漆黒に、我が深紅の混淆を望みたもう…』」」

 

俺達の待機する目の前を、デストロイヤーが轟音と共に通り抜けようとする中。

かつては凄腕のアークウィザードの名をほしいままにした、今は経営難に苦しむ小さな魔道具店のリッチーと。

 

「「『覚醒の時来たれり。無謬の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて現出せよ!』」」

 

そして今、頭のおかしい爆裂娘の名をほしいままにしている、ただ一つの魔法に全てを捧げた、紅魔族随一の天才。

 

「「「『万象等しく灰燼に帰し、深淵より来たれ!!!』」」

 

二人の操る人類最強の攻撃魔法が、難攻不落の賞金首へと放たれる。

 

「「『エクスプロ―ジョン』ッッッ!!!!!」」

 

 

———全く同じタイミングで放たれた二人の魔法は、機動要塞の脚を一つ残らず粉砕した!

 

 

——————————————

 

 

 

 

突然脚を失った機動要塞が、とんでもない地響き、轟音と共に、平原のど真ん中に底部をぶつけ、そのまま歓声の法則に従って街の方へと地を滑る。

その滑り続ける巨体は街の前のバリケードに届くことはなく、最前線で立ち塞がるダクネスの、ほんの目と鼻の先で動きを止めた。

 

轟音となって爆砕した巨大な脚が、破片となって冒険者達の頭上に降り注ぐ。

ウィズが脚を吹き飛ばした向こう側は、欠片も残さず吹き飛ばされたのか、ほとんど欠片は振ってこない。

だが、こちら側にはパラパラと大きめの破片が降り注いでいる。

 

「お疲れさん。本当によくやってくれた」

「ありがとうございます。…ウィズの爆裂魔法には届きませんでしたが、デストロイヤーの脚は破壊できたみたいですね」

 

魔力が尽きて倒れ伏しているめぐみんは、次こそは…と呟いていた。

相変わらずだな。

 

「まだめぐみんは成長途中だからし、仕方ないさ。しかも相手はリッチーだしな。…これからは俺たちの仕事だ。後はゆっくり休んでいてくれ」

「行くのですね。…気をつけてくださいね、要塞の中には、何がいるかわかりませんから」

 

そう、こちらに対し心配の眼差しをむけてくるめぐみん。

俺はその心配を吹き飛ばすように、ニヒルな笑顔でサムズアップする。

 

「俺を誰だと思ってるんだ?魔王の幹部と渡り合ったカズマさんだぞ。大船に乗ったつもりでいろって」

 

言いながら、こちらに駆け寄ってきたギルド職員にめぐみんを預けると、デストロイヤー攻略に参加すべく、外壁の角に立つと、

 

「いってらっしゃい」

 

そんなめぐみんからの言葉を胸に、俺は戦場へと飛び降りた————

 

 

————————

 

 

 

 

『光線兵器がまだ生きているかもしれません!長距離攻撃が可能な魔法職は光線兵器への攻撃を最優先にお願いします!突入部隊は必ずリフレクトのスクロールを持ったタンク職と行動を共にしてください!アーチャー部隊はフックの矢を射かけて突撃する動線を!クリエイターはゴーレムに重装備連中を上に運ぶよう指示をお願いします!それでは、突入開始!!!』」

「「「「「「了解っ!!!!」」」」」」

 

俺が下に降りると、職員からの指示を受けた冒険者たちが既にデストロイヤーにむけて攻撃を開始していた。

デストロイヤーは脚が失くなったことで移動ができなくなっているが、どうやら搭載している光線兵器は生きているらしく、突入を開始した冒険者たちに光の雨を降らせている。

更に本体が行動を止めたら出てくるよう仕込まれていたのか、中にいたであろうゴーレムたちが大量に湧き出してこちらにむけて突き進んでいた。

 

「ッ!『リフレクト』ー!なんでゴーレムどもには当てないんだよおかしいだろ!!」

「おいこのゴーレムたちもめちゃくちゃ強いぞ!ハンマー持ちはまだか!?」

「『ライトニング』ッッ!かった!脚は止まったのにあの兵器止まらないんだけど!しかもめちゃくちゃ硬いし!?」

 

侵攻するゴーレムたちを前衛職が戦闘を繰り広げているが、光線が邪魔で攻めあぐねている。対象を選別しているのか、本体からの攻撃はゴーレムたちには当たらないらしい。

後方では、魔法による攻撃で光線兵器を破壊しようとしているが、予想外に硬いのか中々破壊できないようだ。

 

「『リフレクト』ー!『ハイネスヒール』!ちょ、ダクネスー!なんでこんな爆撃の中1人でガンガン進んじゃうの!?バカなの?バカなんじゃないの!?それ以上行ったら届かなくなるから一旦止まって…ああもうカズマさーん!カズマさんなんとかしてー!!!」

 

デストロイヤーに向かって突入する冒険者たちの最前線には、デストロイヤー直前で光線の集中砲火と複数のゴーレムに押しつぶされている聖騎士と、その光線を青色のバリアで防ぎ、聖騎士を回復している青髪のプリーストの姿が…って!

 

「何やってんだお前ら!」

 

状況を察するにガンガンダクネスが突き進んで、アクアがそれをフォローしているのだろう。アクアが半泣きになって攻撃を防ぎつつダクネスを回復している。

あんのバカ!

 

助けに行きたいが、あいつらまでの距離と、その間にいる無数のゴーレムが邪魔だ。

広範囲を一気に削る必要がある。

なら、お披露目も込めてこの魔法が最適だな。

 

「おいお前ら!デカイの撃つから全員下がれ!」

「は?デカイのってお前何言って…」

「!なんかやべー魔力を感じる!今はとりあえず引くぞ!」

 

前方にいる冒険者たちに退くよう叫び、前方を埋め尽くすゴーレム達を消し去るため、腰に携帯していたちゅんちゅん丸を抜き放つと、

 

「『クリスタル・トルネード』!!!」

 

ゴーレムが密集するど真ん中に、巨大な竜巻を解き放った!

これは、俺がブラックオーガロードとの戦いで得たスキルの一つ。

大量の氷の刃を内包した竜巻を生み出す範囲型の攻撃魔法だ。

 

その風力は圧倒的で、竜巻付近にいたゴーレムたちを空に攫い、天高く舞い上げた末に地面に叩き落とし鋼鉄の体を叩き潰す。

一つ一つの氷に少なくない魔力が込められかなりの強度を誇り、竜巻から放たれる氷刃はその速度も相まっていとも簡単に竜巻から離れているゴーレムたちの体を貫いていく。

ゴーレムたちの大半を破壊した末、ついでと言わんばかりに竜巻は内包する氷塊をデストロイヤー本体に向けて放ち、まだ生きている光線兵器をも破壊する。

戦場の形勢を一気に逆転させると、俺は魔法を解いてダクネスたちの元へと駆け出した。

 

「え、ちょ何これ…」

「上級魔法?いやでもこんな魔法みたことも…」

 

突然の強力な魔法に冒険者たちは困惑しその動きを止めている。

他の冒険者たちが動きを止めたことに加え、さっきの攻撃で俺を脅威とみなしたのか、残ったゴーレムたちとデストロイヤーの光線兵器が一斉に俺に向かって攻撃を仕掛けてきた!

さすがにこの数はキツイ!!!

今まで舐められてた分溜飲が下がる気持ちもあるが、今は戦闘中だから放心するのは後にしてくれ!

そんな気持ちを知ってか知らずか、動きを止めた冒険者たちにテイラーが発破をかける。

 

「おいお前ら!カズマがやってくれたぞ!ゴーレムどももかなり減った!ここで俺たちも漢見せなくてどうすんだ!!」

 

その言葉に呆然としていた冒険者たちも我に帰り、再び攻撃を開始していく。

 

ナイスだテイラー!

テイラーの方を向くと、俺の気持ちを察したのか小さく頷くテイラーの姿が。

…かっこ良すぎないかアイツ?

 

冒険者たちが再び動き出したことで、ゴーレムたちの視線も霧散した。

それでも向かってくるゴーレムを切り伏せながら、ようやく俺はアクアたちのもとに駆け寄ると、

 

「おっそいわよカズマさん!ダクネスが、ダクネスがゴーレムたちにもみくちゃにされちゃってるー!」

 

そこにはゴーレムに泣かされたのか、半泣きになってダクネスを回復するアクアと、ゴーレムに攻撃されながらもそれを意に返さず、ズンズンと歩みを進めるダクネスと、それをなんとかフォローしようとダクネスを巻き込まないようゴーレムたちを削っているウィズの姿が。

 

「ああもうほんとしょうがねえなあああああ!!」

 

 

—————————————

 

 

なんとか周囲にいるゴーレムを全て倒し、ダクネスを救出した俺は乗り込む前の作戦会議という名目でそのまま突入しようとするダクネスを引き止め、3人を集めていた。

 

上では光線兵器と地上に出てきたゴーレム達を全て破壊し、内部に突入した冒険者たちが暴れる声を響かせている。

機動要塞中枢にいるとされる開発者の捕縛のため突入しているのだ。

 

「ねえダクネス、1人で突っ走るのもどうかと思うの!私とウィズがいたからなんとかなったけど、1人で突っ走ってたら危なかったんだからね!」

「ぐ、面目ない…。だが、私のこの強敵をかぎ取る嗅覚が、まだ戦いは終わっていない、まだ危険が残っていると告げてきたのだ。守るべき街が真後ろにある状況で、いてもたってもいられなくてな…」

 

珍しくアクアに説教されているダクネスが、申し訳なさそうに頭を下げている。俺が合流し余裕ができたことで、自分がいかに危険なことをしていたのかわかったようだ。

まあ、ダクネスの気持ちも正直分かるし、本人も反省しているようだからこれ以上とやかくいう必要はないな。

 

「いいか?これからは必ずパーティーで行動するぞ。上の連中が既に突入しているが、何がいるかわからない。俺も敵感知にまだピリピリきてるんだ。ダクネスじゃないが、まだ何かあるかもしれない。ウィズは基本俺たちと行動してくれ。突入次第、俺らも攻略に加わる。基本ダクネスと俺で前衛、アクアとウィズは後衛だ。敵の攻撃はダクネスが引き付け、俺とウィズで処理をする。アクアは全体の援護を頼む。何かあれば都度指示を出すから、その時は俺の指示に従ってくれ…それでいいか?」

 

「任せなさいな!/問題ない/それで大丈夫です」

 

全員が頷くと、

 

「それじゃあ、いくぞ!」

 

俺たちはデストロイヤー内部へと繰り出した———!

 

 




クリスタル・トルネード
カズマさんのオリジナルスキル
修行中に見せたトルネード+フリーズがスキルに昇華したもの。
魔力操作により風向きを操り、内包する氷を自在に発射できる。

原作以上にめぐみんが自信を持っていないのは、ホースト以前落ち込んでた時にバカ騒ぎしてたカズマ達を見ていないため。原作では落ち込んでもカズマとアクアのやり取りを見て元気を取り戻していたが、今作ではそれがないため自分の力に心の底から自信が持てていない。


無双描写って思ったより書くの難しいんですね。
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