第二章の十話、長らくお待たせいたしました。
次回エピローグは近いうちにやります。
既にデストロイヤーに乗り込んでいた冒険者たちの後に続き、俺らも甲鈑に乗り込むと…。
「おらっ!この中にいるんだろ!開けろ!こんなドアハンマーでぶっ壊してやる!」
「出てこい!街を襲った責任者出てこい!とっちめてやる!!」
そこには地獄がありました。
「ゴーレム共を囲め囲め!囲んで縛って引きずり倒せ!倒れた所をハンマーで叩けっ!」
「下じゃ散々可愛がってくれやがって!テメーらで鬱憤晴らしてやる!」
これじゃあどっちが侵略者か分からねーよ…。
既に多くのゴーレム達が、駆け出しの多いはずのこの街の冒険者達に破壊されている。
攻略の邪魔にならないようにするためか、甲鈑の隅にはゴーレムだったものであろう金属の残骸が、山のように積み上げられていた。
本当に、 どう見てもこちらが侵略者です…。
「おい!こっちにゃ誰もいねー!」
「ダメだ、こっちもハズレだ!なんもねーぞ!」
どうやら、要塞は物凄いスピードで攻略されているらしい。
あちこちのドアから顔を出した冒険者たちが、口々にその成果を叫んでいる。
しかしどうやら、状況は芳しくないようだ。
どこも成果がないらしい。
これならまだ俺たちにも仕事はあるかと思った矢先…。
「デカイのがいやがった…!誰か応援を頼む
…。ありゃ、俺らじゃ無理だ…」
かなりの強敵だったのか、その冒険者は身体中傷だらけで、動けなくなった仲間を背負っている。
その尋常ならざる様子から周囲の冒険者がたじろぐ中、アクアがヒールをかけて冒険者達を癒していた。
「カズマ」
「おう。上がってから出番がないんだ。ここいらで一発かますとするか!」
めぐみんがあれだけ頑張ったんだ。ここで何もしなければ男が廃るというものだろう。
俺の言葉にダクネスとウィズが頷くと、前衛のダクネスが率先して冒険者が出てきたドアに入ってい…あれアクアは?
「私は外で待ってるわ!これは怖いからじゃない、みんなを信じてるからなの!大丈夫、みんななら何があってもやりきれ…」
「お前も一緒に行くんだよ!!!ほら、ダクネスが先行してったんだから覚悟決めて行くぞ!!」
いやいやと叫ぶアクアを連れ、俺たちはダクネスの後を追い、要塞の中へ入っていった。
なんでうちのパーティーは最後まで締まらないんだ…っ!
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ダクネスを先頭に俺たちはデストロイヤーの内部へ進む。
どれだけ奥にきたのだろう。要塞の中心とも言えるような巨大な広場のような場所に、そいつはいた。
100年以上経ってなお色褪せない黄金のボディ。
縦向きの巨大な翼と、この世界に場違いな光線銃を携えた。
左肩に「千」と描かれた巨大なロボット…
おい。
「どう見ても◯式なんですけど」
眼前に広がる巨大ロボットに絶句している俺をよそに、アクアが呑気そうにつぶやいた。
「おいカズマ!こいつはすごいな!こんな巨大なゴーレムは初めて見たぞ!一体どれだけ重い攻撃を繰り出すのか…!辛抱たまらん、もう前に出ていいか!?」
ああもう!なんでこの世界はつっこみどころしかないやつばっか出てくるんだっ!
「支援魔法受けてからにしろ!アクア、全体に支援魔法を頼む!そのあとは全体の補助だ!ダクネス、あのデカさの攻撃は流石の俺も死ぬ!防御はお前に任せるぞ!ただあの手に持ってる武器から出る攻撃だけは気をつけろ!ウィズはダクネスの援護を頼む!俺は隙をついて攻撃を仕掛ける!相手の動きが未知数だから、随時指示を飛ばすが、基本自己判断で行動してくれ!頼むぞ!」
「任せろ!」
「わかりました!」
「任せなさいな!『パワード』『プロテクト』『レジスト』『ヘイスト』『スピードアゲイン』『ブレッシング』!」
「さあ、どんな攻撃を繰り出してくれるのか…見せてみるがいい!『デコイ』!」
アクアの支援魔法を受けると同時、待ってましたとばかりにダクネスが駆け出した。
ダクネスがゴーレムの近くに踏み入ったと同時に、100年以上要塞を守護するゴーレムは、侵入者を排除すべく動き出した。
「ーーーーーー!!!!!」
剣と魔法の世界には異質すぎる、ゴリゴリSFな体から起動音を立てながら、その手に持つ銃をダクネスに向ける。
その引き金に指をかけると、緑色の光線が銃の先から迸り…。
やっぱり撃つってか!?しかも実弾じゃなくてビーム!?
仕組みはどうだとか、どうやってアレを再現したのだとか気になることはたくさんあるが、そんな雑念はあとだ!
「あれはマズイ!避けろダクネス!」
「む、むう。承知した」
少し残念そうな様子を見せたダクネスだが、俺の指示通りなんとかギリギリビームをかわす。
空を切ったビームは、そのまま直線上に動き、壁に激突する…と思いきや、そのまま壁を貫通して大穴を開けた。
「な、なんて威力だ…。壁が蒸発したように溶けているぞ」
ビームが開けた穴は、超高熱にさらされ、ドロドロに溶けている。
製作者はマジで何考えてんだ!?こんな屋内でなんでこんなもん置いてるんだよ!
「あの光線からは魔法的な力が感じられません!リフレクトといった反射魔法は使えないと考えてください!」
ビームを見たウィズが、分析したのかその特性を知らせてくれる。
「ウィズ!俺があのビーム◯イフルをなんとかする!その隙に火力をぶち込んでくれ!ダクネスはウィズを守れ!アクア!俺がダメージを受けたら回復を頼む!」
全員が頷くのを見て、俺は行動に出る。
あのデカさじゃ『スティール』が使えない。
なら、直接破壊するまで!
「修行の成果を見せてやる!加速刻印『アクセラレーション』!『セイクリッド・ライトセイバー』!」
俺はルーンナイトの加速スキルを使い、速度を上げてゴーレムの目前まで走り、ブラックオーガロードとの戦いで得た新たなスキルの中で最も攻撃力の高い『セイクリッド・ライトセイバー』を刀に纏い、ゴーレムに斬りかかる。
相手の装甲がどれだけ硬いか未知数な中、装甲への攻撃は悪手だ。
だから狙うのは手首!
「オラァッッッ!!!」
「ーーーーーー!!!!!」
加速状態の俺の動きに追いつけず、ゴーレムは対応が間に合わず、そのまま手首を切り落とされる。
攻撃手段を潰せた!
「『カースド・ライトニング』!!」
右手首を斬り飛ばされたことで生まれた隙をついたウィズの魔法が、ゴーレムの胸部に突き刺さる。
さすがは不死の王にして魔王軍幹部。俺の魔法よりも2倍以上威力のある稲妻は、ゴーレムの分厚い装甲を貫通し、その胸元に風穴を開けた。
「油断するな!まだ動く可能性がある!『ライトニングストライク』!!!」
ダメおしと言わんばかりに、胸に穴が空いて動かなくなったゴーレムに、上空から稲妻を落とす。
落雷による衝撃でゴーレムは足を崩し、轟音を盾ながら床に倒れ伏す。
これだけの相手だ、これでも足りない可能性があるし更に炸裂魔法で…。
「お、おい待てカズマ。このゴーレムはもう動いていない。これ以上は魔力の無駄使いだろう」
「え?」
ダクネスに言われて攻撃の手を止めると、そこには倒れたままのゴーレムの姿があった。
どうやら機能を停止したらしい。
見た目に反してそんなに強くなかったのか?
思ってたより簡単に倒せて、呆気に取られていると、それを察したのかダクネスが呆れたような目線を向けてくる。
「お前の攻撃で弱ったところに、ウィズの魔法が直撃したのだ。普通それだけの攻撃を受ければ倒されると思うぞ?まあ、警戒を怠らないのは良いことだが、もう少し自分の力を信じていいのではないか」
ダクネスがそう言うと、同意するかのように周りの奴らが頷いている…って、
「お前らいつの間に」
そこにはいついたのか、お馴染みのテイラーたちが姿が。
その他にも、いつの間に来ていたのか多くの冒険者達が部屋に入ってきており、奥にあるドアの破壊を試みているなど周囲を散策していた。
「轟音がしたからな。少しでも助力しようと駆けつけたんだが…」
「どうやら杞憂だったみたいだねえ。それにしても、まさかこーんなデッカイやつを倒して拍子抜けした顔するなんてさ」
「外での戦闘といい今回といい、大金星じゃねーか!パーティー組んだ時から思ってたけど、やっぱお前とんでもねーな!」
「おいカズマ~、多分お前報酬も高いだろうし、またギルドで驕れってくれよ~!」
テイラー達含め、他にも沢山の冒険者が称えてくれる。
おっと、賞賛の嵐じゃないですか。
なんか一人変なのが混じっていたが、大勢から認められるのは悪くない。
いや、とても気分がいい!!!
というか待て、これはあれか?
言ってもいい流れじゃないか!?
異世界に転生したら言いたいセリフランキング第一位のあのセリフを!
今までチートがあったのにパッとしなかったせいで言えなかったあれを、いう時じゃないか!?
「おれ、なんかやったちゃいまし…「ドォン!!!!!!!」」
「開いたぞーっ!」
「突入だー!テメエら行くぞー!」
どうやら奥のドアを破壊したらしい、何人もの冒険者達が、要塞の奥に突入していった。
すると今までどこにいたのか、アクアがチョロチョロと駆け寄ってきて。
「ちょっとカズマ!私の超スゴイ魔法と支援のお陰で、罠をパパーって解除して、あの鋼鉄の扉をこじ開けさせてやったわ!あんな頑丈に閉じていたんですもの!きっと仲にはお宝があるわよ!ほら、カズマさん急いで!皆に盗られる前に私達も……どしたの?」
お宝の言葉に反応したがめついアクセルの冒険者達は、我先にと扉の奥に駆けていき、部屋には俺達4人だけが残ったのだった。
ほらこんなもん。
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大広間の奥にあった扉の奥。
この要塞の中心部であろう場所に足を進めると、そこには先ほどまでの雰囲気はどこへやら、一様に沈んだ表情を見せる冒険者達の姿があった。
…一体どうしたんだ?
「…カズマ。みろよこれを」
そう言ってきたのは、部屋の中央にいたダスト。
そのダストも、何だか寂しげな浮かない顔をしている。
みれば、何かを指さしている。
…それは、白骨化した人の骨。
この機動要塞を乗っ取った研究者は、ゴーレムに囲まれたこの要塞内で、寂しげに部屋の中央に腰掛けていた。
俺は隣にいるアクアに目配せをすると、アクアは静かに首を振った。
「すでに成仏しているわね。アンデッド化どころか、未練の欠片もないぐらいにそれはもうスッキリと」
……。
スッキリと?
「いや、未練ぐらいあるだろ。これ、どう考えても一人寂しく死んでいった、みたいな…」
その俺の言葉に、アクアが何かを見つけた様だ。
それは、机の上に乱雑につまれた書類に埋もれた一冊の手記。
アクアがそれを手に取ると、みんな、空気を察して推し黙った。
冒険者達が見守る中、鳴り響くのは機械的な警告の声。
そんな中、アクアが手記を読み上げる——
「——⚪︎月×日。国の王様が無茶言い出した。こんな予算で機動兵器を作れという。無茶だ。それを抗議しても聞く耳持たない。泣いて謝ったり、拝み倒してみたがダメみたいだった。どうやら隣国の剣聖が魔王の幹部にやられたことで焦っているらしい。辞めさせて下さいと言っても辞職願を受理されない。バカになったフリしてパンツ一枚で走り回ってみたが、部下の女研究者に早くそれも脱げよと言われた。この国はもうダメかもしれない」
…思わず、皆んなの視線が白骨化した骨に集まった。
「——⚪︎月×日。設計図の期限が今日までだ。どうしよう、まだ白紙ですとか今更言えない。だってヤケクソになって報酬の前金、もう全部飲みに使っちゃった。どうしようと白紙の設計図を前に悩んでいると、突然髪の上に俺の嫌いな蜘蛛がでた。悲鳴を上げながら手近にあった物で叩き潰した。叩き潰してしまった。用紙の上に。……このご時世、こんな上質な紙は大変高価なのに、弁償しろとか言われても金が無い。知るか。もうこのまま出しちまえ」
…えっと。
微妙な空気になってきた中、アクアが尚も手記を読む。
「——⚪︎月×日。あの設計図が予想外に好評だ。それ蜘蛛叩いた汁ですけど。そんな物よく触れますねなんて絶対言えない。ていうか、ドンドン計画が進んでいる。どうしよう。俺のやった事って蜘蛛を一匹退治しただけ。でもこんな俺が所長です。ひゃっほう!」
…アクアが適当に作ってるんじゃないだろうなと疑いたくなったが、読み上げるアクアはいたって真剣そのものの表情だ。
「——⚪︎月×日。外郭だけ作らせられたと思ったら、どんどん勝手にできていく。これ、俺いらなかったじゃん。何なの?もういいや、勝手にしてくれ。俺は俺らしく好きに生きる。…動力源をどうこう言われたけど知るか。俺最初から無理って言ったじゃん。永遠に燃え続けると言われている伝説の鉱石、コロナタイトでも持って来いと言ってやった」
……。
「——⚪︎月×日。マジで持ってきちゃったよ、本当に持って来ちゃったの?え、これで動かなかったら死刑じゃないの?動いてください、お願いします!」
俺たちの視線が気になるのか。
「——⚪︎月×日。明日が機動実験と言われたが、正直俺何もしてねえ。やったのはクモ叩いたのと、外郭作って魔法を無効にする結界貼っただけ。この椅子にふんぞり返っていられるのも今日までか…。そう思うと無性に腹が立ってきた。もういい、飲もう。今日は最後の晩餐だ。思いっきり飲もう!この機動兵器の中には、今日誰も残っていない。どれだけ飲んで馬鹿騒ぎしても咎められることはないだろう。あ、そうだ!魔王軍との戦争に使うからとか言って没収予定のゴーレムもこっちに配置するか。最高傑作のお気に入りだからな、最後くらいは手元に置きたい」
「アクアが手記を読み上げながら、俺たちの視線に軽く怯えている。
「——⚪︎月×日。目が覚めたら、なんか酷い揺れだった。何だろう。何だろうこれ。俺どれだけ飲んだ。覚えてない。いや、昨日の記憶がない。あるのは、俺の百式モドキをここにセッティングして、動力源のある中枢部分に行ってコロナタイトに向かって説教してた所までしか覚えていない。いや待てよ。その後、お前に根性焼きしてやるとか言ってコロナタイトに煙草の火を…」
読み上げながら、アクアはとうとうこちらに目を向けなくなり。
「——⚪︎月×日。現状を把握。終わった、現在只今暴走中。国滅んじまったよやっべー!国滅んだやっべー!あ、でもなんかスッキリした!満足だ!あとはもう、ここで余生を過ごそう。だって、降りられないしな。止められないしな。これ作ったやつ、絶対バカだろー!……おっと、これ作った責任者、俺でした」
これで最後まで読み上げたのだろう。困った顔で、アクアが言った。
「…お、終わり」
「「「舐めんな!!」」」
アクア、ウィズ、ダクネス以外が見事にハモった。
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「これがコロナタイトか」
そこは先ほどの部屋の更に奥、機動要塞の中枢部。
大人数で行ってもしょうがないと皆に任され、俺とアクア、ウィズとダクネスの四人で入った部屋の中だった。
部屋の中央には、鉄格子で囲まれた小さな石、コロナタイトの姿がある。
—-その希少な鉱石は、鉄格子に囲まれ、燃える様な赤い光を放ち続けていた。
…なるほど、攻め込まれた時用の最後の砦か。
「この邪魔な鉄格子は取り除くぞ。…『ルーン・オブ・セイバー』!」
コロナタイトを囲む鉄格子を斬り刻むと、支えが消えたことによってその鉱石はコロコロとウィズの足元に転がった。
「マズイですね、時間がないですよ。そろそろボンッていきそうです。これ、どうしましょうか…」
悩むウィズの足元では、コロナタイトがどんどんその輝きを増していた。
コロナタイトを取り除いたからか、機械的なあの警告の声も止んでいる。
ううむ、こいつはどうしたものか…。このレベルの要塞を百年単位で動かしていた超パワーだ。こんなものどうやって処理すればいいんだ?
「取り敢えず、氷漬けにしてみます。『カースド・クリスタルプリズン』!」
ウィズが足元に転がるコロナタイトに対し、氷の最上級魔法を放つ。
赤々と輝くコロナタイトは、分厚い氷に閉ざされるが、その内包する熱量からすぐに自身を閉じ込める氷を溶かしてしまう。
「む、ウィズの魔法でもダメなのか」
魔王軍の幹部でリッチーなウィズの魔法でも処理は難しいらしい。
他に、これほどの要塞を動かす、燃え盛る石をどうにかできるのは……
そう、困った時の神頼み!
「おいアクア、お前これを封印とかできないか?良くあるだろ、女神が悪しき力を封印するとか何とか!」
「よくあるけど!そういうのは悪しき力限定でしょ!これはただの石なんだから封印なんてできないわよ!?ちょっとウィズ、あんた何とかできないの!?」
「あ、アクア。確かに緊急事態ではあるがそれはあんまりではないか…?」
無理難題を、日頃付け狙っていたリッチーにあっさりと押し付けた自称何とか。
だが、無理ですと言うかと思ったウィズは…。
「で、できないことはないですが…」
言い終わる前に、ダクネスがウィズに掴み掛かった。
「できるのか!?頼む!この街のためにも協力を…!」
「そ、そうしたいのは山々なんですが!この方法には問題が…」
「全責任は私が取ろう!いち早くこの爆弾の対処を…」
「ちょ、落ち着け!まず話を聞け!」
「っ〜!!」
暴走を始めたダクネスの頭を刀の鞘で叩くと、痛かったのか涙目になり、頭を抱えてしゃがみ込んだ。
「街を守りたくて焦るのもわかるが一旦話を聞こうぜ?…で、問題ってのは何だなんだウィズ」
「そ、その。対処方法というのがコロナタイトをテレポートさせるってものなのですが、私のテレポートの転送先は、アクセルの街と国境沿いの森林とダンジョンなんです…」
そうか、テレポート!盲点だった。
「国境沿いの森林とやらに送ればいいんじゃないの?」
「そ、それが、私転送先に登録している森林は、大精霊が棲家にしている場所で…。大精霊が爆発に巻き込まれては、世界のバランスが…!」
え、まってあそこってそんなん住んでたのか!?
衝撃の事実に慄いていると、今度はダクネスが。
「ダンジョンとやらに送るのはダメなのか?」
「えっと、ダンジョンの方は、魔法の素材集めにちょくちょく利用していた、世界最大のダンジョンで…。今では、ダンジョンを名物とした一台観光街ができていまして…!」
「なんて迷惑な話なんだよ!おいヤバいぞ!石が赤を通り越して、白く輝き出してるんだけど!」
言いながら俺はカースド・クリスタルプリズンをかけてコロナタイトを冷やし続けた。
「い、一応一つだけ手があるんです!ランダムテレポートと呼ばれるもので、転送先を指定しないで飛ばす物です!ただ、これは本当にどこに転送されるか分からないので、転送先が山や海なら良いのですが、下手をすれば人が密集している場所に送られる事も…!」
ウィズが眉根を寄せながら、泣きそうな声で言ってくる。
ランダムテレポート?
「ぬ、確かにそれは大きなリスクが…」
「嫌、大丈夫だ!世の中ってのは広いんだ!人のいる場所に転送されるよりも、無人の場所に送られる可能性の方が、ずっと確率は高いはずだ!テレポートは俺がやってやる!大丈夫、全責任は俺がとる!こう見えても俺は運がいいんだからな!」
俺の言葉に驚いたようにこちらをみるダクネスだが、どうしようもないこの状況に首を縦に降らざるを得ないようで、呆れたように、
「カズマが全責任をとる必要はない。最悪の場合、私も責任を取ろう」
「おいおい…。まあいいか、やるぞ」
俺の言葉に全員が頷くのをみて、、声高に魔法を唱えた。
「『テレポート』ーッ!」
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「ど、どう?コロナタイトはどこに行ったの?この近くじゃないでしょうね!?」
アクアの言葉に、俺たちは顔を見合わせる。
兎にも角にも、まずはここから出る事だ。
俺たちが部屋から出ると、他の冒険者たちが甲板状のゴーレムを軒並み倒し、機動要塞の警報も止んだことから、引き上げに掛かっていた。
みんなが続々とロープを伝って降りる中、そこに残されていたのは俺たちのみとなっている。
見れば、あの研究者の骨も地上に下され、木箱に収められていた。
きっと、街の墓地にでも埋葬されるのだろう。
俺たちも降りると、めぐみんの下へ向かった。俺は木陰で休んでいためぐみんを背中におぶると、すっかり戦勝ムードで浮かれる冒険者達。
しかしなぜだろうか、アクアじゃないが、何か嫌な予感がする。
「カズマ、ダクネスが…」
背中にいるめぐみんに言われるまま、俺は視線を動かすと、そこには浮かれている冒険者たちとは裏腹に、未だ険しい顔で機動要塞を睨んでいるダクネスの姿が。
「ダクネス…」
「カズマ、やはりお前も感じるか?私の強敵を嗅ぎつける嗅覚が、まだ香ばしい危険の香りを嗅ぎ取っている。…あれはまだ、終わってない!」
ダクネスの言葉に反応するかの様に、機動要塞そのものが、振動音と共に震え出した。
「どうなってんの?さっきコロナタイトってのは取り除いたはずでしょう!?」
俺たちだけでなく、冒険者たちも異変に気づいたらしく、彼らは慌ててデストロイヤーから距離を取る。
「ど、どうしましょう!これまで内部に溜まっていた熱が、外に漏れ出そうとしているんです!デストロイヤーの前面部に、爆裂魔法の余波でできた大きな亀裂が見えるでしょう!?あそこから熱が漏れ出しています!このままでは、あそこから街めがけて…!」
「聞きたくない聞きたくない!カズマさーん!カズマさーん!!早く、早く何とかしてえーっ!!」
ウィズの言葉をアクアが遮り、無茶な要求をふっかけてきた。
俺の魔力残量的に爆裂魔法は無理だ。
「ウィズ!爆裂魔法はうてるか!?」
「ゴーレムとの戦いとさっきのランダムテレポートのせいで少しだけ足りないんです!だ、誰か私に魔力を…!」
後ろに控える冒険者たちにとんでもないことを言い出そうとするウィズの口を慌てて塞ぐ。
「おいウィズ!他の冒険者はお前がドレインできるってことは知らないんだぞ!リッチーだってバレたらどうする気だよ!人間の俺がリッチーのスキルを使う分には調べられてもまだ良いが、ウィズが人間かどうかを調べられたら一発だろうが!」
ウィズの魔力残量的に爆裂魔法は打てない、が。
逆に、爆裂魔法ならアレを何とかできるということだ。
「で、でも!魔力を吸える私しか、アレを止めることは…!」
「俺も使える。考えがあるんだ。あとはこっちに任せとけ」
俺はそう言ってウィズを後ろに下げると、特大の魔力を持っている自称何とかに視線を向ける。
「ねえダクネス、いつまでも頑固なこと言ってないで早く逃げましょう!遠くに逃げるの!そして一からやり直しましょう!」
「おいそこの自称何とか。ちょっと来い」
「ちょ、ちょっと何すんのよ。今カズマに構ってる暇はないの。いっそこのままあああああああああああああーっ!?」
俺の不意打ちのドレインタッチに、アクアが抵抗する間も無く悲鳴を上げた。
こいつどんだけ魔力あるんだよ、このスキル食らってまだ余裕そうとかどうなってんだ?
「ちょっとヒキニート!この非常事態に何すんのよ!」
「非常事態だからだよ!今からお前の魔力を使って爆裂魔法を撃つ!わかったらその大量の魔力をよこせ!」
俺のドレインタッチを受けてワアワアと騒いでいるアクアを尻目に、背中にいるめぐみんに。
「おいめぐみん。俺、コロナタイト飛ばして終りってことにすげー違和感があったんだよやっぱり、俺達の締めくくりはお前しかいないと思ってたからさ」
そう尋ねると、一連の流れから俺が何を言いたいのか察したのか、めぐみんは一瞬目を細めたあと、紅に瞳を輝かせると。
「めぐみんの爆裂魔法は、あのデカブツを破壊できるか?」
「任せてください!」
満面の笑みで、俺の背中から降り立った。
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「ねえわかってる!?吸いすぎないでね?吸い過ぎないでね!?」
「分かってる分かってる、宴会芸の神様の前振りなんだろ?大丈夫、俺に任せておけ!」
「ちっがうわよこのクソニート!芸人みたいなノリで言ってるんじゃないわよ!」
アクアが俺の前に正座し、いつでも魔力を吸われる体勢に。
その隣では、めぐみんがデストロイヤーに杖を向け、いつでも魔法を放てる様に構えていた。
ドレインタッチは皮膚の薄い場所や心臓に近い部位で吸うとより効率的に吸収できる。
俺は二人の首根っこを手で掴み、魔力の輸送を行う。
「おお、ヤバイ、ヤバイです。これはヤバイですよ!これは過去最大級の爆裂魔法が放てそうです!」
「ねえめぐみん、まだかしら!もう、結構な量を吸われていると思うんですけど!」
アクアの言う通り、既にめぐみんの小さな体には、とてつもない量の魔力が注ぎ込まれていた。
流石は腐っても女神である。
アクアの魔力はどれだけ吸っても、底が見える気配がない。
「もうちょい!もうちょいいけます!あっ、ヤバイかも…ヤバイです…!」
「おい、ヤバイって何だよ!容量超えたらどうなるんだ、破裂とかしないだろうな!」
物騒な事を口走り始めためぐみんが、左目の眼帯をむしり取ると、杖を構えて魔法を唱える。
既に聞き慣れた爆裂魔法の詠唱が、冒険者たちが遠巻きに見守る中に響き渡った。
「この一撃を持って、この戦いの幕引きとしましょう!行きますよ!最高の仲間が信じてくれる、我が究極の爆裂魔法!」
めぐみんの杖先が、熱を吹き出し、今にも弾け飛びそうなデストロイヤーの大きな裂け目に向けられる。
——紅い瞳を輝かせ、負けず嫌いの天才アークウィザードが、張り裂けんばかりの声で、魔法を唱えた。
「『エクスプロージョン』——-ッッッ!!!
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「あーあ、街の外壁すら壊せてないじゃん。使えねー」
巨大な爆発の余韻からか、私の肌を爆風が撫でる。
隣ではその様子を見ていた同僚が、目論みを全て外されたことに悪感情を出しながら愚痴をボヤいている。
アレを傀儡にするのも、進路を変えてアクセルを破壊するのも失敗して憤っているのだろう。
「ていうか、なんだよあの爆発は。ウィズのやつがいるったって、3発だぞ…?………駆け出しの街だよな?やっぱりあの計画を早めるべきか…?」
同僚が水晶に映る、爆発の様子を見てボヤいている。
どうやら同僚は、駆け出し冒険者の街に爆裂魔法なんて強力なものを使える存在がいることに気づき、焦燥感に駆られているらしい。
それはそうだ。誰だってあんなものを見たら危険視する。
「アタシの使い魔じゃこの距離が関の山…まずは調査が必要だな。……癪だがあのクソ悪魔に頼るしかないか」
だが、私はそれよりも、別のものを凝視していた。
かの地を見る私の瞳に映るのは、爆発を引き起こした少女でも、見覚えのある青髪の少女でもない。緑のマントをまとった、この世界では珍しい、黒目黒髪の少年を…。
「おい、そろそろ撤収するぞ。早いとこ情報を魔王にくれてやらねーと」
「…わかった」
足速に馬車に乗った同僚を追い、私は彼の姿に後ろ髪を引かれながら、この地を後にした。
いつかまた会いに来るから、それまで死んじゃダメだよ。
カズマ。
よりみち4で世界観が広がって設定に苦しんでいる作者です。
でも書きたい内容があるのでもう少し頑張ります。
よりみち、最高でしたね。
まだ買ってない人、読んでない人はこんなん読んでないで買ってください。そして読んでください。作者は電車の中で読んで腹がねじ切れるかと思いました(バカ)
矛盾回避の設定
今作においてデストロイヤーが冬将軍イベント(冬突入)前に襲撃に来たのは、どこかの幹部がデストロイヤーの傀儡化を図るも失敗し、せめて進路を変えてやらんと足掻いた結果です。
生活が忙しいため投稿頻度は相変わらず長いとは思いますので、気長に待っていただけると幸いです。