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窓から漏れてくる光がまぶしくて紫桜は起きた。口の左側に違和感を感じるのできっと自分は涎を垂らしていたんだろうと思い、それから伸びをするも、大切なことに気付きあわてて飛び起きる。
時計はすでに12時を指している。
飛び起きた衝撃か12時という事実からの衝撃かクラクラする頭が飯をくれと叫んでいる。
机の上に置いてあったフルートのケースをひっつかむが、まだ寝間着姿なことを思い出してクローゼットの扉を破壊せんばかりに開けて適当な服を引っ張り出した。
そして着替え終わって下へ下りていくと大きな古ぼけた時計が12時15分を知らせる鐘を鳴らしていた。
鏡で確認すると服装も身だしなみも急いでいたわりには決まってると思ったのでそのままフルートのケースを肩にかけて、ピアノの鍵盤が描かれている鞄も持ったことを確認すると、そのまま弾丸のように飛び出していった。
(さすがに怒んないと思うんだけど・・・なんて言い訳しよう)
フルートの練習へ行くために家から続く急な坂道を、走るのは危ないので、歩きながら紫桜はずっと言い訳の文章を考えていた。紫桜は嘘がとても下手で、自覚もあったため、どうせなら素直に言った方がいいんじゃないかと考え始めた時だった。
下を向いて歩いていたとき、視界に変な・・・そう、トカゲの尻尾のような、しかしトカゲのより大きい尻尾が入ってきた。
紫桜は驚いて顔を上げ、横を振り向くと爬虫類のような大きな尻尾と翼をもつ青年がちょうどこちらを向いたところだった。
爬虫類のような青年の顔や腕には鱗のようなものがあり、手には水かきまでついていた。
その青年は焦ったような顔をししばらく慌てふためいたあと紫桜の手を強くつかんで、空に浮かびあがった。
高いところが苦手な紫桜は
「ちょっ無理無理無理!!!」
と泣き叫ぶも青年は雲を突っ切ってさらに高いところへと上昇していく。
青年に握られている腕が千切れそうだ。ものすごい速さの為紫桜の体は青年の後ろ側にまわり、フルートのケースはカタカタと音をたてる。
何も見たくない紫桜は目をぎゅっとつぶり、いろいろな早口言葉を心の中で復唱していた。
(かえるぴょこぴょこ3ぴょこぴょこ・・・)
しばらくすると青年も疲れたのかぐんぐん降下を始めた。しかしずいぶん高いところまで来たため下降はジェットコースターなんてただのおもちゃだと言わんばかりのスピードで下降していく。
もはや紫桜は口から魂をだしっぱなしでついに魂を操ることに成功しだした。が、怖いもんは怖い。ついに紫桜の手は青年の手から離れてしまい、紫桜は必死に青年の尻尾にしがみついた。雲一つない青空からは地上の様子がよく見えた。どうやら青年は深い森の中のちょうど真ん中にあるぽっかり空いたスペースに着地しようとしているようだった。
白鶯 紫桜(ハクオウ シオ)
一年前の夏休みに紫桜が遠くはなれた祖父母のいる老人ホームに滞在中、家が父のたばこで燃え、両親と兄一人を無くしてしまう。
祖父母が紫桜を引き取ろうとするも紫桜はあの家が好きだったので、祖父母は家を再建して紫桜を住まわせてくれた。
居間にある大きな時計は火事の時奇跡的に残っていたもの。おそらく時計のそばにあった大きなグランドピアノのおかげ。
紫桜はフルートだけじゃなくピアノと琴も弾けたが二つとも火事でなくした。