とある一般人のお話   作:小説大工の源三

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とある一般人のお話

 最初に失恋したのはいつだろうか……

 ああ、中学三年の頃か。

 思い出すだけでも青いと思う。

 席が隣になった、一目惚れ、そんな小さな理由で好意を抱き、いつしか恋に発展していった。

 2年かかって熟した好意を伝えたが、結果は無残にも散った。これが初恋ではないが、実らないものは実らない。

 それもそうだ。アピールと言ってもしたとも言えないものばかりだったのだから。

 その後は普通に高校へ進学。同じ中学の連中もバラバラに進学していった。

 その失恋から恋はしないと決めた。

 自分自身ボッチという存在になりやすいような人間だったのはよく理解している。周りに合わせるのが苦手だったり、趣味が合わなかったり色々だ。

 それでも同じ小学から中学に進学するのでボッチにはならなかった。

 そんな些細なことでボッチになるが、高校ともなればそれが顕著になる。

 進学した高校は色んな中学から入学した学生ばかりで、すぐにこそグループは作られなかったが、二週間もすれば一定のグループが形成されていった。

 やはり高校でも私はボッチだった。

 それでも部活には入った。

 入部したのは演劇部。ボッチとは縁遠いような部活だ。

 中学の文化祭で最後に発表した劇。それで笑いを取ることがとても楽しかったからという理由だ。

 一年も経てば流石にボッチ体質の私と言えども一人は友人はできた。

 同じ趣味を持つ人間が他にいない筈がない。それに部活でも友人はできた。

 二年目、自分自身惚れっぽい性格なのか、ちょっとでも何か思えば好きになりそうだった。

 だがまぁ、好きという種子が恋という若葉に芽生えることはなかった。

 モテるような人間じゃない上に、それに根暗だ。どうせ告白してもフラれる。

 そんなマイナス思考が好き(種子)を発芽させなかった。

 こんな人間性でよく中学最後の文化祭で笑いをとることができたと自分でも思う。

 この頃になれば部活の友人とも連絡を取るようになっていった。

 さらに一年が経過して無事卒業し、就職も決まり。新しい生活が始まる。

 それでも部活の友人との連絡の取り合いは続いていた。

 

 

─────────────────────────

 

 

 

 そんな冬の事だった。

 連絡を取り合っていた友人と二週間ほどやり取りをしていなかった頃だ。

 突然、恋人ができたと連絡が入った。

 あまりにも寝耳に水だったものだから私の思考が一時的に止まってしまった。

 だがすぐに『おめでとう』と返信をした。

 友人は『ありがとう』と返信する。

 そうしてその日の連絡の取り合いは終わった。

 仕事も終わり家に帰り、夕食を取り、風呂に入り、ベッドに横になると、その報告を思い出し、胸が痛くなった。

 

 ああ……またか……

 

 だがこれは失恋じゃない。いつのまにか蒔かれていた種子(好意)はいつの間にか発芽()して、無残にも散っていった。告白(花を咲かせる事なく)散ってしまったのだから。

 だって思いも伝えてすらいないのに失恋と呼ぶには余りにも烏滸がましいでしょ?

 心の表面ではその友人の恋路に祝福しつつも、それを持って行った見知らぬ人に奥底で嫉妬して、表面と奥底の間で悔しさを抱いた。

 今度こそ芽を出さない(恋はしない)と考えながら次の日の仕事に備えて眠りつくのだった。

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