「デュエルアカデミア本校の留学生?」
「短期で来ている。というのも、連戦連勝で本校生は誰もデュエルを挑まなくなって月一試験は筆記だけで実技は免除。半年近くデュエルしていないらしい。」
「それは…。」
辛いだろう。挑まれないなら挑めばいいという話ではない。
やる気のない相手に挑んだ所で、魂をぶつけ合えるデュエルなど出来ないからだ。
とはいえ、関わる事は無いだろう。この時、才魔はそう判断していた。
「少しいいか?」
聞きなれない声に、才魔が顔を上げると亜麻色のストレートヘアーに、蒼い瞳の少女が居た。
小柄で肉付きは良くないが、栄養失調という訳ではない。華奢という点ならばそのままモデルにもなれるだろう。
その瞳に宿る闘志は何処までも真っすぐに才魔を見つめている。
「私は海馬 蒼乃(かいば あおの)。」
「才魔 詩織。要件は?」
「デュエルだ。」
「そういう事なら受けて立つ。」
事情は聞かない。大方、遠慮されて遠巻きにされているのだろう。
才魔自身、関わりにならないだろうと思っていたのだから。
噂の留学生がデュエルをするという事で、それなりにギャラリーが集まる。
「「デュエルッ!!」」
蒼乃 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
才魔 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
「先攻は貰うぞ、ドロー!私は魔法カード、竜の霊廟を発動!デッキからドラゴン族モンスターを墓地へ送る!墓地へ送るのは通常モンスター、青眼の白龍ことジブリール!」
「?!」
周囲のギャラリーが一斉に息をのむ。
才魔とて、そのデッキと戦うのは初めてだ。
「ここで霊廟の追加効果が発動っ!墓地へ送ったのがドラゴン族の通常モンスターならば、さらにデッキからドラゴン族を墓地へ送れる!伝説の白石を墓地へ!墓地へ送られた伝説の白石の効果発動!デッキから青眼の白龍を手札に加える!青き眼の乙女を召喚!カードを1枚伏せ、ターンエンドだ」
蒼乃 ライフ4000
手4 フィールド 青き眼の乙女
魔法・罠 伏せ1
才魔 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
「私のターン、ドロー!サイバー・ドラゴン・ドライを召喚!」
「サイバー・ドラゴン…か。サイバー流とは予想外だ。」
デュエルアカデミア本校で席巻していたサイバー流。
その興亡については授業でも取り扱われる内容であり、蒼乃は当然把握していた。
似非ペクトという思想はともかく、組織を大きくした経営手腕と実績は評価している。
「バトル、サイバー・ドラゴン・ドライで青き眼の乙女を攻撃!」
「攻撃対象になった青き眼の乙女の効果発動!その攻撃を無効にする!さらにっ!このカードの表示形式を変更し、デッキ・手札・墓地から青眼の白龍を特殊召喚!デッキより現れろ、アズラエル!」
場に伝説の龍が現れると、咆哮を上げる!
その威風、威圧は紛れもなく本物。
それにしても。青眼の白龍にそれぞれ名前を付けているようだ。
「カードを1枚伏せる。ターンエンドだ」
蒼乃 ライフ4000
手4 フィールド 青き眼の乙女 青眼の白龍
魔法・罠 伏せ1
才魔 ライフ4000
手4 フィールド サイバー・ドラゴン・ドライ
魔法・罠 伏せ1
「私のターン、ドロー!永続罠発動!竜魂の城!墓地のドラゴン族モンスターを1枚除外することで、モンスター1体の攻撃力を700ポイントアップする!伝説の白石を除外し、青き眼の乙女の攻撃力を700ポイントアップ!ここで効果の対象になった青き眼の乙女の効果発動!カード効果の対象になった時、デッキ・手札・墓地から『青眼の白龍』を特殊召喚するっ!手札より、イブリースを特殊召喚!」
「攻撃対象だけでなく、効果の対象でも発動するか。」
二体の青眼の白龍を前に、才魔は分析する。
「バトルだ!行け、イブリース!サイバー・ドラゴン・ドライを破壊しろ!滅びのバーストストリーム!」
「リバースカードオープン!速攻魔法、リミッター解除!機械族の攻撃力を2倍にする!」
「くっ、攻撃力3600…」ライフ4000から3400
青眼の白龍を撃破されたが、蒼乃はさほどショックを受けない。
このリアクションの薄さは才魔にとってはやや意外ではある。
「メインフェイズ2に入る。私は、レベル8の通常モンスター、アズラエルに、レベル1の青き眼の乙女をチューニング!至高なる龍よ、我が領域に降臨し、堅牢な力を示せ!シンクロ召喚!Lv9!蒼眼の銀龍!」
青眼の白龍のステータスを反転させたシンクロモンスターが現れ、守備表示で主人を守る。
「青眼の白龍のシンクロモンスター?!」
「正確には異なるが…このカードを最も使いこなせるデッキは、【青眼の白龍】だけだっ!効果発動!このカードが特殊召喚に成功した時、私の場のドラゴン族は次の相手ターン終了時までカード効果の対象にならず、カード効果では破壊されない!1枚カードを伏せて、ターンエンドだ!」
蒼乃 ライフ3400
手3 フィールド 蒼眼の銀龍
魔法・罠 竜魂の城 伏せ1
才魔 ライフ4000
手4 フィールド
魔法・罠
「私のターン、ドロー!永続魔法、機械仕掛けの夜-クロック・ワーク・ナイト-を発動!場の全てのモンスターは機械族となる。」
「リバースカードオープン!速攻魔法、サイクロン!機械仕掛けの夜を破壊する!」
即座に対応され、才魔は僅かに目を細める。
「種族変更カードは何かしらのコンボに繋がることが多い。起点で潰させて貰う。」
「墓地の機械仕掛けの夜-クロック・ワーク・ナイト-を除外し、手札を1枚捨てて効果発動。デッキから地属性・機械族を手札に加える。サイバー・ドラゴン・ヘルツを捨てて、デッキから速攻のかかしを手札に加える。墓地へ送られたサイバー・ドラゴン・ヘルツの効果発動、デッキからサイバー・ドラゴンを手札に加える!ターンエンド!これで、蒼眼の銀龍の効果は終了する。」
「そうだな。だが、蒼眼の銀龍にはまだ効果がある。」
「何?」
蒼乃 ライフ3400
手3 フィールド 蒼眼の銀龍
魔法・罠 竜魂の城
才魔 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
「私のターン、ドロー!スタンバイフェイズに蒼眼の銀龍の効果発動!墓地の通常モンスターを特殊召喚する!蘇れ!アズラエル!」
蒼眼の銀龍が高らかに吠えると、その闘気に触発された青眼の白龍が呼応するように咆哮を上げ、場に舞い戻る!
「?!青眼の白龍がノーコストで蘇る、だと?」
「さて、一気に勝負をつけたいところだが…速攻のかかしを手札に加えられた以上、このターンでの決着は不可能。バトル!アズラエルでダイレクトアタック!」
「きゃっ!」ライフ4000から1000
速攻のかかしを使うと思っていた蒼乃は蒼い瞳をやや見開く。
「使わない、だと?」
蒼乃はやや落胆する。
何せ、本校のデュエリストは「青眼の白龍」を前にすると迫力に怖気づいてしまい、まともなプレイングが出来なくなり、一方的に終わってしまう。
アドバンス召喚した時に効果が発動する「帝モンスター」をアドバンスセットする、チューナーと非チューナーでシンクロモンスターをわざわざ守備表示で出し、盤面のモンスターを減らす。
同じか、このデュエリストも。
「…バトルフェイズは終了かしら?」
「まだ終わってはいない。速攻魔法、銀龍の咆哮を発動!墓地からドラゴン族の通常モンスターを特殊召喚!蘇れ、イブリース!」
「?!」
「イブリースでダイレクトアタック!サレンダーするぐらいなら、このダイレクトアタックを受けて散るがいい!」
「速攻のかかしを手札から捨てて効果発動!バトルフェイズを終了する!」
「なるほど、臆したのではなくあえて受けたわけか。いいぞ!私はこれでターンエンドだ。」
蒼乃 ライフ3400
手3 フィールド 蒼眼の銀龍 青眼の白龍 青眼の白龍
魔法・罠 竜魂の城
才魔 ライフ1000
手4 フィールド
魔法・罠
「私のターン、ドロー!サイバー・ドラゴン・フィーアを召喚!魔法カード、パワー・ボンドを発動!」
「パワー・ボンド、機械族のキラーカードかっ!」
「場のサイバー・ドラゴン扱いのフィーアと、手札のサイバー・ドラゴンを墓地に送り、サイバー・ツイン・ドラゴンを融合召喚!」
「攻撃力2800だが、パワー・ボンドの効果は元々の攻撃力分攻撃力をアップする効果…。攻撃力は5600になる。」
「バトル!サイバー・ツイン・ドラゴンは一度のバトルフェイズで二回攻撃可能!サイバー・ツイン・ドラゴンで、青眼の白龍を攻撃!」
「くっ…」ライフ3400から800
竜魂の城で青眼の白龍を除外して攻撃力をアップさせても、ライフは守り切れない。
「サイバー・ツイン・ドラゴンで、青眼の白龍を攻撃!」
「私の負け、か」ライフ0
悔しさに口元をギュッと噛みしめていた蒼乃はややあって顔を上げる。
「良いデュエルだった。」
「こちらこそ、良い経験が出来た。」
「融合召喚、か。」
「青眼の白龍なら、融合召喚が主軸だと思っていたが。」
「時代は変わった。新しい流れに乗れなければ道はないと思っていたが…過去も受け入れつつ未来へ向かうべきなのだろうな。」
「あの、次。俺とデュエルしない?」
「アキラ?」
割って入ったのは、矢薙 アキラだ。
「構わない。早速始めるとしよう!」
罠モンスターを多用する、一風変わった戦術にやや苦戦する蒼乃。
盤面を切り崩そうとするが、それを罠カードを駆使して躱し、ついにシンクロ召喚を行うアキラ。
「ライトロード・アーク ミカエルの効果発動!1000ポイントのライフを支払い、蒼眼の銀龍をゲームから除外する!」
「き、きっさまぁああああああっ!」
激昂っぷりに、才魔は「青眼の白龍」ではなく、あれがエースにして愛するモンスターなのだという事を理解する。
まったく、ドラゴン使いは偏屈な連中ばかりだ。
その点、サイバー・ドラゴンは機械族だから問題ない。
「手加減はしない、バトルだ!」
「戯け!リバースカードオープン!サイクロン!対象は竜魂の城!砕け散れえっ!」
「ええっ?!どうしちゃった…」
すると、異次元への穴があき、そこから蒼眼の銀龍が再び降り立つ!
「竜魂の城がフィールドから墓地へ送られた時、除外されているドラゴン族を場に戻すことが出来るっ!」
「シンクロ召喚成功時、では無いから効果も使える、と。参ったな、ターンエンド。」
「私のターン、ドロー!スタンバイフェイズ、蒼眼の銀龍の効果により、ジブリールを特殊召喚!メインフェイズに入り、蒼眼の銀龍を攻撃表示に変更!バトルだ!ジブリールで、その天使を攻撃する!」
「うぉおおっ?!」ライフ1400から1000
「トドメだっ!蒼眼の銀龍でダイレクトアタック!」
「っつ、ここまで、か。」ライフ0
デュエルに負けはしたが、アキラは満足げにしている。きっと、伝説のカードと戦えたからだろう、と才魔は推測する。
「負けたかぁ。だけど、良いデュエルだ。」
「珍しいデッキだった。永続罠をあそこまで多用するとは。」
「こういうデッキの方が性に合う。君だって、蒼眼の銀龍には随分と思い入れがあるみたいだし。」
「私が初めてシンクロ召喚したモンスターだからな。」
「なるほどね。蒼眼の銀龍の効果を最大限発揮できるのが青眼の白龍だから使っているわけか。」
「お前は、青眼の白龍では無くて。」
「デュエリストなら、デュエル中はレアカードよりも対戦相手本人に向き合うべきだろ?」
…と思っていたのだが。どうやら腕の立つデュエリストと戦えた事自体が良い経験になったと思っているようだ。
まだまだ、アキラへの理解が足りない。そう才魔は考えた。