遊戯王5D's~似非ペクトの果てに~   作:交響魔人

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黒薔薇の魔女とサイバー流

 マーカー付きなため、シティにも行けず、かといってサテライトまで落ちぶれるつもりは無い。

 そういった連中のたまり場、ダイモンエリア。

 

 

 故に、ここは何かしらの実験を行う上では最適な場所である。

 特にセキュリティ長官の弱みを握り、セキュリティの介入すら跳ねのける事が出来る組織にとっては。

 

 

 

 

『実施実験を始めます。』

 

 アルカディア・ムーブメントの制服に身を包んだ青年がそう告げ、トレーラーから仮面をつけた若い女が降り立つ。

 

 

 

 

 

 その日。依頼をこなし、コインランドリーにて洗濯した物を回収。帰宅しようとしていた才魔は咄嗟に地面に伏せる。

 

 数秒前に、彼女の体があったところを大きめの石が通過する!

 

 それだけでなく、ダイモンエリアのあちこちが崩れ落ちる!

 

 

「?!黒薔薇の、魔女!」

 

 

 才魔が振り返ると、白い仮面をつけた少女が立っている。

 別に依頼を受けたわけでもない。相手はダイモンエリアでも破壊工作を行っている危険人物。

 

 さきほどのブラック・ローズ・ドラゴンによる破壊工作の影響で、退路は断たれている。

 

 

「…デュエリストならカードで語ったらどう?それとも、デュエリストですら無いの?」

 

 軽い挑発。だが、デュエルモンスターズ至上主義の世界において、デュエリストに「デュエリストですらないのか?」という発言は侮辱に当たる。

 

 

「…構えろ。」

「前々から、ダイモンエリアで破壊工作をされて迷惑だったわ。今日で終わらせる!」

 

 

 

「「デュエルッ!!」」

 

 

アキ ライフ4000

手5 フィールド 

    魔法・罠 

才魔 ライフ4000

手5 フィールド 

    魔法・罠 

 

 

「私の先攻、ドロー!チューナーモンスター、夜薔薇の騎士を召喚。効果発動、手札からレベル4以下の植物族モンスターを特殊召喚。薔薇の妖精を特殊召喚!」

「レベルの合計は6…。」

「レベル3の植物族、薔薇の妖精に、レベル3の夜薔薇の騎士をチューニング!シンクロ召喚!ヘル・ブランブル!」

「シンクロモンスター…。」

 

 サイバー流に終焉を齎した、シンクロ召喚。

 シンクロ召喚が全盛の時代においてもサイバー流を使っている立場としては面白くない召喚法だ。

 

 

「フィールド魔法、ブラック・ガーデンを発動。」

「ブラック…ガーデン?」

 

 二人を茨の花園が覆いつくす!

 

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンド。」

 

 

アキ ライフ4000

手2 フィールド ヘル・ブランブル 

    魔法・罠 ブラック・ガーデン 伏せ1

才魔 ライフ4000

手5 フィールド 

    魔法・罠 

 

 

 才魔は相手の場をじっと見つめる。

 フィールド魔法は、普通ならメリットを付与する事が多い。

 だが、シンクロ召喚した後に発動したという事は…何かしらのデメリットを付与する効果だろう。

 

 

 

「私のターン、ドロー!魔法カード、撲滅の使徒を発動!その伏せカードを破壊してゲームから除外する!」

「…茨の壁が。」

 

 植物族モンスターが攻撃されれば発動する聖なるバリア-ミラーフォース-といった攻撃反応罠だったようだ。

 黒薔薇の魔女はデッキから2枚除外する。

 

「相手の場にのみモンスターが存在することで、サイバー・ドラゴンを特殊召喚!」

 

 漆黒のサイバー・ドラゴンが起動しようとするも、その直前にヘル・ブランブルから棘が才魔に向かって伸びてくる!

 

「?!」ライフ4000から3000

「ヘル・ブランブルの効果。互いに手札から植物族でないモンスターを召喚・特殊召喚する場合、1体につき1000のライフを払わねばならない。」

 

 

 サイコ・デュエリスト。

 デュエルのダメージが実体化する超能力者。

 戦闘及び効果ダメージ以外にも、ライフを払うだけでも影響を受ける。

 

 貫かれ、気力そのものが吸い取られる脱力感が才魔を襲う!

 

 

「…でも、召喚は無効にならない。」

「ブラック・ガーデンの効果発動。モンスターが召喚・特殊召喚された時、そのモンスターの攻撃力は半分になり、モンスターのコントローラーから見て相手フィールド上にローズ・トークンを攻撃表示で特殊召喚する。」

 

 サイバー・ドラゴンからエネルギーが奪われ、相手の場にトークンが花を咲かせる。

 黒光りする機体が金属音を立てながらその場に崩れ落ち、その眼前で一凛の薔薇が咲く。

 

 

「私は、サイバー・ドラゴン・ツヴァイを召喚…っつ!」ライフ3000から2000

「植物族でないなら、ヘル・ブランブルの効果でライフを払ってもらう。」

 

 さらにライフを削られるも、才魔は新たなモンスターを場に出す。

 

「ブラック・ガーデンの効果発動。私の場にローズ・トークンを特殊召喚。」

「…サイバー・ドラゴン・ツヴァイの効果発動、手札のパワー・ボンドを見せることで、カード名をサイバー・ドラゴンとして、扱う。そして魔法カード、パワー・ボンドを発動!」

「パワー・ボンド?」

 

 黒薔薇の魔女はそのカードを知らないらしく、首をかしげる。

 

「これは機械族専用の融合魔法…。場のサイバー・ドラゴン二体を墓地に送り…サイバー・ツイン・ドラゴンを融合召喚!」

 

 

 融合の渦に、二体のサイバー・ドラゴンが吸い込まれていく。

 変わって現れるのは、黒光りするサイバー・ツイン・ドラゴン!

 二つの首が、黒薔薇の魔女の前に立ちはだかる!

 

 

「攻撃力2800、だがブラック・ガーデンの前では。」

「パワー・ボンドにより特殊召喚したサイバー・ツイン・ドラゴンの攻撃力は元々の攻撃力分アップする。たとえ半減になろうと、攻撃力は2800!」

「?!」

 

 

 エネルギーを奪い取られても、サイバー・ツイン・ドラゴンは倒れこまない。

 戦意を高ぶらせ、眼前のモンスターを睨む。

 

「だが、ヘル・ブランブルを戦闘破壊されてもまだライフは残る。」

「サイバー・ツイン・ドラゴンは、一度のバトルフェイズ中、二回攻撃が可能。貴女の場には、攻撃力800のローズ・トークンが居る。」

「まさか?!」

「バトル!サイバー・ツイン・ドラゴンで、ローズ・トークンを攻撃!」

「くっ!」ライフ4000から2000

 

 

 火炎放射がローズ・トークンを焼き尽くし、その余波が黒薔薇の魔女を襲う!

 

「サイバー・ツイン・ドラゴンで、もう一体のローズ・トークンを」

 

 

 才魔はその攻撃宣言を最後まで行えなかった。

 ヘル・ブランブルの効果で払ったライフは2000ポイント。

 健康体であれば耐えられたかもしれないが、ダイモンエリアで何時全てを失うかもしれないという恐怖心の中、刹那的に生きていた体は健康とはいいがたく。

 

 その場に崩れ落ちる。

 

 

 

「これはっ?!」

『…時間切れです。撤退を。』

 

 

 実体化したソリッドビジョンの中、他のアルカディア・ムーブメントの職員に連れられて黒薔薇の魔女はその場を後にする。

 その場に残ったのは、倒れた才魔だけだった。

 

 

 

 

 

 数分後。

 

 

「…ボス、例の魔女が暴れたようです。どうにもセキュリティと連中はグルなようで。」

「いや、連中がセキュリティの弱みを握っているから手を出してこないという可能性もある。だが、どちらにせよ手出し出来ねぇな…。」

 

 

 ダイモンエリアを仕切っている男、近東(こんどう)は倒れているデュエリストに気づく。

 

 

「こいつは、あの時のデュエル屋?!」

「黒薔薇の魔女を倒せという依頼なんて出す奴はいないから…巻き込まれたか。」

「中々腕が立つようですが、黒薔薇の魔女が相手では…。」

「いや、そうでもないな。」

 

 近東は、才魔のデュエルディスクを見る。

 

「墓地にパワー・ボンド、場にサイバー・ツイン・ドラゴン。って事は攻撃力5600の二回攻撃可能な融合モンスターが場にいた。」

「という事は…!」

「勝っていた可能性があるな。だが、ダメージが実体化するデュエルだったから攻撃宣言が行えなかった。そんな所だろう。手当をするぞ。」

 

 

 

 

 

 同時刻。

 アルカディア・ムーブメントにて。

 

 

 仮面を外した美少女、十六夜アキは拳を握る。

 あのデュエル。対戦相手が倒れたから自分の勝ちという形になったが。

 

 対戦相手が倒れたのは、自分の忌むべき力による物。

 

 自己嫌悪とショックで頭がどうにかなりそうな苦悶を、彼女は抱いていた。

 体に取り付けられた装置からバイタルが測定されているが、数値には彼女の現状が芳しくない事を如実に示している。

 

 

 

「…十六夜が負けていたとは。」

「最後までたっていたのは十六夜様です。」

「だとしても、だ。少々、侮り過ぎていたな…。」

 

 

 そんなデータをチェックしていたアルカディア・ムーブメントの総帥、ディヴァインは口元を歪める。

 

 

「しばらく、ダイモンエリアでの実験は延期だ。」

「かしこまりました。」

 

 

 

 

 




 ダメージが実体化する特殊能力のせいで、周囲を傷つけて孤立してしまうのが初期のアキさんでしたが。
 「実質負けていたけど、忌まわしく思っていた能力のおかげで勝てた」場合、今まで以上に自己嫌悪に陥りそうです。
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