ダーク・シグナーとの戦いはシグナーが勝ち、破滅は免れた。
その半年でネオ童実野シティは様変わりした。
ダイダロスブリッジでサテライトとシティは繋がり、地縛神による被害から復興が進んでいた。
良い変化もあれば、悪い変化もある。
「デュエルアカデミア、ネオドミノ学校で定員割れ?」
「ああ。かなり深刻なようだ。トップスの一部がネオドミノシティから離れた。理由は『サテライト地区の住民が行き来する事で治安の悪化が懸念され、不動産の価格が下落したから』だ。」
雑賀から話があるという事で呼び出された先で、出た話題。差別の撤廃が進むにつれて、それを受け入れられない差別思想の過激派は街を捨てた。
おそらく雑談だろうと軽く聞き流そうとしていた才魔だが。
「お前、ネオドミノ校に編入しないか?」
「私が?」
「かなり深刻な状況で、編入試験を突破出来るならサテライト地区の住民だろうと構わない、としている。学費については、成績優秀な特待生であれば免除するという。」
あの後もデュエル屋をやっていた才魔だが、需要もかなり冷え込んでおり、この半年は貯蓄を切り崩しながら過ごしていた。
デュエル屋でやっていけないなら、就職を考えていかねばならない。
この話をここで断るより…合格すれば編入、不合格なら縁がなかったと思えばいい。
編入試験会場にて。才魔はデュエルを見ていた。
「ボクは手札の女邪神ヌヴィアを墓地に送り、装備魔法、閃光の双剣-トライスを秒殺の暗殺者に装備!さらに流星の弓-シールも装備!これでダイレクトアタックが出来る!」
「手札を使い切った事で攻撃力は2000になった。だが、装備魔法のデメリットで攻撃力は1500ポイントもダウンした。二回の直接攻撃でライフを削り切るのは」
「罠発動!あまのじゃくの呪い!これで攻撃力は3500になる!バトルだ、秒殺の暗殺者でダイレクトアタック!」
「罠発動!聖なるバリア -ミラーフォース-!攻撃モンスターを破壊する!」
「ああああっ!そ、そんなっ!」
乏しいカードを集めて作り上げたであろうコンボを、一枚の罠であっさりと粉砕する試験官。
サテライトと、トップス。一つになったとはいえ、経済格差が無くなったわけでは無い。
バランスの取れたビートダウンに、どこまで食らいつけるか。それが焦点のようだ。
自分の番が来た。
「…才魔 詩織です。よろしくお願いします。」
「始めよう。」
「「デュエルッ!!」」
試験官 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
才魔 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
「先攻は貰う。ドロー。私は、レスキューキャットを召喚」
「レスキュー、キャット?!」
「おや、知らないのかね?」
そんなわけがない。サイバー流を終わらせたデュエリスト、猫崎俊二が愛用したモンスター。
セキュリティに支給される【特殊追跡デッキ】でも隊長格やエースに支給されるデッキは、このデッキだ。
セキュリティが使う場合、エクストラデッキのシンクロモンスターはゴヨウと名の付くシンクロモンスターに限定されている。
「効果発動、このカードを墓地に送り、デッキからX-セイバーエアベルンと素早いモモンガを守備表示で特殊召喚。レベル2の地属性、素早いモモンガに、レベル3の地属性、エアベルンをチューニング!シンクロ召喚!現れろ、ナチュル・ビースト!」
下級獣族を召喚するだけで、シンクロ召喚まで繋げていく。
思う所はあるが…シンクロ召喚実装の黎明期に、このカードの有用性を真っ先に見抜いた猫崎俊二の発想力はすさまじい物がある。
「カードを1枚伏せて、ターンエンド。」
試験官 ライフ4000
手4 フィールド ナチュル・ビースト
魔法・罠 伏せ1
才魔 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
「私のターン、ドロー。手札のサイバー・ファロスを捨てて、手札からサイバー・ドラゴン・ネクステアの効果発動。このカードを特殊召喚。特殊召喚に成功したネクステアの効果発動。墓地からサイバー・ファロスを守備表示で特殊召喚。」
「守りを固めた…。」
「サイバー・ファロスの効果発動。1ターンに1度、手札かフィールドから決められたモンスターを墓地に送り、融合召喚を行う。場のサイバー・ドラゴン扱いのネクステアと、手札のサイバー・ドラゴンを墓地に送り、サイバー・ツイン・ドラゴンを特殊召喚。」
「ならば罠発動、奈落の落とし穴。サイバー・ツイン・ドラゴンを破壊し、除外します。」
「私は、サイバー・ドラゴン・ドライを召喚、ここで手札からサイバー・ドラゴン・フィーアのモンスター効果発動。このカードを守備表示で特殊召喚。このカードが場にある限り、サイバー・ドラゴンの攻撃力と守備力は500ポイントアップ。」
「攻撃力2300?!」
「バトル。サイバー・ドラゴンとなったドライで、ナチュル・ビーストを攻撃。」
「ぐっ、だがライフは残る」ライフ4000から3900
「速攻魔法、サイバーロード・フュージョンを発動。場のサイバー・ドラゴン扱いのドライとフィーアをデッキに戻し、サイバー・ツイン・ドラゴンを特殊召喚。」
「ば、馬鹿な?!」
「サイバー・ツイン・ドラゴンは、一度のバトルフェイズで二回攻撃出来る。連続攻撃」
「うわあああああああっ!」ライフ3900から1100、1100から0
試験官は呆然と手札の巨大ネズミ、ライトロードハンター・ライコウ、エアーズロックサンライズ、精神操作を見つめる。
「…おめでとう。君の勝ちだ。」
「ありがとうございました。」
勝利を収めた物の、周りの視線は冷たい。
だが、わずかに。ほんの僅かに。好奇心や敬意のような物が含まれていた。
その夜。
ネオ童実野シティの一角で、一人のセキュリティ隊員がパトロールの準備を行っていた。
「準備はいい?デュエルチェイサー、猫崎(ねこざき)君。」
「はい、深影課長。夜な夜なDホイーラーを襲う犯罪者、必ず逮捕して見せます。」
「期待しているわ。」
猫崎 秀和(ねこざき ひでかず)は上司に一礼すると、デュエルチェイサーはハイウェイへ出る。
「ゴーストに敗北したDホイーラーのデュエルを分析した結果、シンクロモンスターを場に置いた状態でターンを渡すと大ダメージを受けて敗北している。となれば、ゴーストのデッキは、シンクロモンスターの攻撃力分のダメージを与えるか、コントロール奪取をするモンスターだと推測できる。」
そう思っている猫崎の後ろから、未登録の車両が接近する。
「…お前がゴーストか。」
「…セキュリティか。実験台にはちょうどいい。」
「黒幕は別にいるという事か。ならば、実行犯から対処する!いくぞ!」
「「デュエルッ!!」」
猫崎 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
ゴースト ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
「先攻は貰うぞ、セキュリティ!私のターン、ドロー!私はモンスターをセット。カードを1枚伏せてターンエンドだ。」
「まずは様子見といったところか…。」
猫崎 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
ゴースト ライフ4000
手4 フィールド セットモンスター
魔法・罠 伏せ1
「…私のターン、ドロー!私はレスキューキャットを召喚!」
「ククッ、レスキューキャットか。」
「効果発動!このカードを墓地に送り、デッキから異次元の狂獣とX-セイバーエアベルンを特殊召喚!覚悟しろ、ゴースト!レベル3の異次元の狂獣にレベル3の地属性エアベルンをチューニング!S召喚!現れろ、ゴヨウ・ガーディアン!」
セキュリティ関係者以外は使用を禁じられているシンクロモンスターを呼び出したが、ゴーストは全く怯まない。
「バトルだ、ゴヨウ・ガーディアンでセットモンスターを攻撃!」
「破壊されたキラー・トマトの効果発動。デッキからA・O・Jリバース・ブレイクを特殊召喚!」
「こちらもゴヨウ・ガーディアンの効果発動!バトルで破壊したキラー・トマトを私の場に守備表示で特殊召喚!」
「ほぅ?リクルーターをわざわざ奪うか。セキュリティにしては落ちこぼれのようだな。」
「カードを3枚伏せてターンエンド!」
猫崎 ライフ4000
手2 フィールド ゴヨウ・ガーディアン キラー・トマト
魔法・罠 伏せ3
ゴースト ライフ4000
手4 フィールド A・O・Jリバース・ブレイク
魔法・罠 伏せ1
「私のターン、ドロー!永続罠、DNA移植手術を発動!私は、光属性を宣言!ここで、リバース・ブレイクの効果発動!場に光属性モンスターが居れば、このカードを破壊する!」
「移植手術まで入れているという事は【A・O・J】か。リバース・ブレイクをわざわざ使っているという事は、普通の【A・O・J】とは一味違うようだな…。」
「私の場のモンスターが効果で破壊されたとき、このカードを特殊召喚出来る!出撃せよ、機皇帝ワイゼル!」
現れた白いボディの機械族。
「機皇帝…レベル1だが攻撃力2500?!これがお前の切り札か。」
「存分に味わえ!機皇帝の力を!ワイゼルの効果発動!お前のゴヨウ・ガーディアンを装備カードとして装備!その元々の攻撃力分、ワイゼルの攻撃力をアップする!シンクロ・アブソープション!」
伸びてきた白い触手に対し、猫崎は瞬時に対応する!
「罠発動!亜空間物質転送装置!ゴヨウ・ガーディアンを除外!これでそいつの効果は不発だ!」
「チッ、ならばバトル!機皇帝ワイゼルでキラー・トマトに攻撃!」
「罠発動!和睦の使者!これで私は戦闘ダメージを受けない!」
「防がれた、だと…。ええい、たかがセキュリティの分際で生意気な!カードを1枚伏せてターンエンド!」
「このエンドフェイズ、ゴヨウ・ガーディアンは帰還する!」
猫崎 ライフ4000
手2 フィールド ゴヨウ・ガーディアン キラー・トマト
魔法・罠 伏せ1
ゴースト ライフ4000
手4 フィールド 機皇帝ワイゼル
魔法・罠 DNA移植手術(光) 伏せ1
「私のターン、ドロー!キラー・トマトをリリース!サイバー・ドラゴンをアドバンス召喚!」
「?!さ、サイバー・ドラゴンだと!サイバー流は滅んだはずだ!?」
「私はリスペクト・デュエルなど掲げるつもりはない。犯人逮捕の為、使える物はすべて使う。それが私のデュエル!場のサイバー・ドラゴンと機械族の機皇帝ワイゼルを墓地に送り、キメラテック・フォートレス・ドラゴンを特殊召喚!」
「キサマッ!」
融合の渦が現れ、機皇帝ワイゼルは吸い込まれていく!
「バトルだ!ゴヨウ・ガーディアンでダイレクトアタック!」
「させるか!罠発動、威嚇する咆哮!これで攻撃宣言は」
「カウンター罠、ギャクタン!威嚇する咆哮の発動と効果を無効にして、デッキに戻す!」
「なんだと!ぐああああああああっ!」ライフ4000から1200
「キメラテック・フォートレス・ドラゴンで、ダイレクトアタック!」
「ギ、ガガガガガガ」ライフ0
ライフが尽きたゴーストのDホイールに置かれたデュエルディスクとカードがデッキケースに収納され、そのまま射出される。
その後、ゴーストは機能を停止し、大破する。
「…ロボット、か。それにしても、一体何が起きているというんだ…。」
この時、猫崎は遠く離れた地点にて、普通にストレート敗北を喫してプラシドが呆然としている事。
その近くでルチアーノとホセも想定外のセキュリティの強さに唖然としていた事を生涯知る事は無かった。
というわけで編入試験編と、新たなる脅威、セキュリティ勝利ルートでした。
猫崎 秀和
治安維持局のデュエルチェイサー。
前作主人公達の子孫であり、サイバー流のリスペクト・デュエルを継承する気は無いが、サイバー・ドラゴンとキメラテック・フォートレス・ドラゴンだけは使っている。
デュエル犯罪を取り締まるために、彼は使える物はすべて使う事にした。
仕事用の特殊追跡デッキも、普段使いのデッキも【猫シンクロ】を使用する。違いがあるとすれば、エクストラデッキの枠と一部の罠がギャクタンか魔宮の賄賂ぐらいでしかない。