「俺の先攻、ドロー!…カードを5枚セット!これでターンエンドだ。」
アキラ ライフ4000
手1 フィールド
魔法・罠 伏せ5
才魔 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
11度目のデュエル。
後攻の才魔は、矢薙アキラの伏せカードを睨む。
「私のターン、ドロー。」
「永続罠、苦悶様の土偶を発動!効果モンスター(岩石族・地・星7・攻0/守2500)となり、俺のモンスターゾーンに特殊召喚、表示形式は守備表示っ。」
蜘蛛のような土偶が現れ、ドシンと音を立てる。
永続罠カードでありながら、モンスターカードとして場に特殊召喚されるカード、通称【罠モンスター】
それがアキラの主力デッキだ。使い手は少なく、才魔自身このカード群を使うデュエリストは彼が初めてだった。
「…サイバー・ドラゴン・コアを召喚。」
「効果発動は?」
「…効果発動、デッキからサイバー・レヴシステムを手札に加える。」
「了承した。チェーンは…しない。」
その宣言を受けて、才魔は手札のカードを発動する。
「サイバー・レヴシステム発動!手札からサイバー・ドラゴンを特殊召喚!この特殊召喚にチェーンして、サイバー・ドラゴン・フィーアの効果発動!」
「手札から特殊召喚…これでサイバー・ドラゴンの攻撃力と守備力が500ポイントアップして2600…。よしっ!ここでチェーン発動。」
「何が、来る?」
「激流葬!これで盤面はリセットだぁ!」
大量の水が現れ、フィールドの土偶は土くれに変わり、ボロボロになって溶けて流されていく。
サイバー・ドラゴン・コアも、サイバー・ドラゴン・フィーアも紫電を迸らせながら崩壊、そのまま流されていく。
だが。
「サイバー・レヴシステムの効果で特殊召喚したサイバー・ドラゴンは効果では破壊されない!このままバトル!サイバー・ドラゴンでダイレクトアタック!」
「永続罠、深淵のスタングレイ発動!効果モンスター(雷族・光・星5・攻1900/守0)を守備表示で特殊召喚!」
アキラの場に、白い紋様が全身に描かれた大きなエイが出現。そのまま守備表示の体勢を取る。
「…バトル終了。ターンエンド。」
アキラ ライフ4000
手1 フィールド 深淵のスタングレイ
魔法・罠 伏せ2
才魔 ライフ4000
手2 フィールド サイバー・ドラゴン
魔法・罠
「俺のターン、ドロー!永続罠、シェイプシスター発動!通常モンスター(悪魔族・チューナー・地・星2・攻/守0)を俺のモンスターゾーンに特殊召喚!」
泥が地面からあふれ出し、ややあって女性の形を取る。
「レベルの合計は7、という事は」
「レベル5、光属性の深淵のスタングレイに、レベル2のシェイプシスターをチューニング!天上より我が呼びかけに応じて姿を現せ!トラップシンクロ!ライトロード・アーク ミカエル!」
二つの光の輪となったシェイプシスターを大きなエイが潜り抜けると、黄金の鎧を纏い、大剣を持った男が裁きの竜に乗って天空から舞い降りる。
永続罠でビートダウンするだけではなく、シンクロモンスターを活用する。
現れたシンクロモンスターを前に、才魔は歯噛みする。
その効果を彼女はすでに知っている。
「くっ…。」
「1000ライフを払い、効果発動!サイバー・ドラゴンを除外する」ライフ4000から3000
「まだだ!ダイレクトアタックを受けてもライフは1400残る!まだ打つ手は」
「永続罠、カース・オブ・スタチュー発動!効果モンスター(岩石族・闇・星4・攻1800/守1000)を攻撃表示で特殊召喚。」
獣を象った仮面に毛皮を羽織った人型の彫像が現れた事で、才魔から戦意が消滅する。
「バトルだ!カース・オブ・スタチューとライトロード・アーク ミカエルでダイレクトアタック!」
「きゃああああああっ!」ライフ4000から2200、2200から0
「俺の勝ちだな。やはり君とのデュエルは楽しい。」
「…私も楽しい。だが、これで負け越し、か。」
「またデュエルしようぜ!」
さらりと笑顔で言われた才魔は、少し反応してしまう。
絶世の美形というわけでは無いが、笑顔は素敵だと思うようになっていた。
「この後、噴水広場に行くんだけど、どうする?」
「行く。」
授業の事、噂話、最近のニュース。
たわいもない事を話しながら、二人は歩く。
「ところで、学割ってどうやったら使えるの?」
「それなら、また今度案内するけど…デュエルに勝たないと申請出来ないからなぁ…。」
「…どうして、学割の申請にデュエルが必要なのかしら。」
「少しでもデュエルの機会を増やして実力を底上げしたいらしい。過去のデュエリストのデータを元に作り上げられたAIが対戦相手として出てくる。」
「という事は、歴戦のデュエリストと戦えるってこと?」
「そういう事。まぁ、中には『誰?』となるデュエリストが出てくる事もあるけれど。」
噴水広場にて。
「…爺さん?」
「おお、遊星ちゃん!半年ぶりじゃなぁ~!」
思わぬ人物が来ていた事に、不動遊星は声をかける。
「今日は孫に会いに来たんじゃよ。」
「孫?!」
確かに、そういう年の人ではあるが。思わぬ言葉に遊星は目を軽く見開く。
「やっほー!爺ちゃん!」
「おお、アキラ!大きくなったのぉ!」
駆け寄ってきた少年と抱擁を交わす爺さんを見て、遊星はほほ笑む。
「それでアキラ、そっちの子は誰じゃ?」
「うん、才魔 詩織さん。」
「もしかして、彼女かい?」
「ま、まだそんな関係じゃ」
聞き捨てならないセリフに、才魔は思わず口を開く。
「まだ?」
「あ、いや、その…。」
「アキラのお爺さん。私とデュエルしてくれませんか?」
「ワシと?ふむ、良いぞ!遊星ちゃんも見てくれ、ワシの新しいデッキを!」
「爺さんの新しいデッキ…。そういう事なら、見せて貰う。」
「「デュエルッ!!」」
矢薙 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
才魔 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
「私の先攻、ドロー!サイバー・ヴァリーを召喚。カードを1枚伏せてターンエンド」
矢薙 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
才魔 ライフ4000
手4 フィールド サイバー・ヴァリー
魔法・罠 伏せ1
「わしのターン、ドロー!ぬっふふふ!見せてやるぞい!これは南米のベリーズにある、アクトゥン・トゥニチル・ムクナル洞窟で見つかった「クリスタルの乙女」と呼ばれる骸骨なのじゃ!」
骸骨が現れ、初見の才魔はアンデット族か?と推測する。
だがデュエルディスクに表示された種族は岩石族だった。
「相手の場にのみモンスターが存在する事で、手札から先史遺産クリスタル・ボーンを特殊召喚出来るのじゃ!この特殊召喚により、手札か墓地から同名カード以外の先史遺産モンスターを特殊召喚出来る、来てくれ!先史遺産マッドゴーレム・シャコウキ!」
奇妙な土偶が現れ、それを見たアキラが反応する。
「あれは、遮光器土偶?!細い眼のデザインが、まるでアラスカの民が日光から目を守るために使う「遮光器」に似ているからつけられたという…」
「その通りじゃ!ここでワシは手札の先史遺産クリスタル・スカルの効果発動!このカードを墓地に送り、デッキから同名カード以外の先史遺産モンスターを手札に加える!ワシは先史遺産ネブラ・ディスクを手札に加え、召喚!」
奇妙な円盤が出現する。
「これはドイツのネブラで発見された青銅製の円盤でな、約3600年前に作られた世界最古の天文盤であり、太陽暦と太陰暦を組み合わせたカレンダー!っとモンスター効果を発動するぞ!デッキから同名カード以外の「オーパーツ」カード1枚を手札に加える。ワシは先史遺産技術を手札に加える!」
「先史遺産技術…?」
「魔法カード、先史遺産技術を発動!ワシの墓地の「先史遺産」と名のついたモンスター1体を選択して発動!選択したモンスターをゲームから除外した後、ワシのデッキの上からカードを2枚確認し、その中から1枚を選んで手札に加え、残りのカードを墓地へ送るぞ。墓地のクリスタル・スカルを除外してカードを2枚捲り、先史遺産コロッサル・ヘッドを墓地に送る。」
「なるほど、手札交換カードね。」
「オーパーツと名の付く魔法カードを発動している事で、ワシは手札から先史遺産アステカ・マスク・ゴーレムを特殊召喚!これはメキシコのテオティワカン遺跡から出土した、ジャガーの仮面じゃ!」
「モンスターが4体…。」
「さて、ワシは先史遺産-ピラミッド・アイ・タブレットを発動するぞ!」
ウジャド眼が刻まれた石板が出現し、眼が発光する。
「これは南米で発見されたピラミッド型の石造工芸品での、これと関連する遺物は紫外線により発光する性質があって、眼が光るのじゃ!そうそう、ワシの場の先史遺産モンスターの攻撃力は800ポイントアップするぞ。」
「「…え?」」
途中の能書きはともかく、カード効果の宣言を聞いた才魔と遊星の声がハモる。
その直後、クリスタル・ボーンは青色のオーラを纏ってカタカタと笑い出し、マッドゴーレム・シャコウキは両手の武器を叩き合わせ、ネブラ・ディスクは緑色のオーラを吹き出しながら黄色い模様を激しく点滅させ、アステカ・マスク・ゴーレムが咆哮をあげ、攻撃力は増大する。
「さぁ、バトルじゃ!行け、先史遺産アステカ・マスク・ゴーレム!」
「サイバー・ヴァリーの効果発動!このカードを除外して、バトルフェイズを終了する!」
「な、なんとっ?!ターンエンドじゃ」
矢薙 ライフ4000
手2 フィールド クリスタル・ボーン マッドゴーレム・シャコウキ ネブラ・ディスク アステカ・マスク・ゴーレム
魔法・罠 先史遺産-ピラミッド・アイ・タブレット
才魔 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠 伏せ1
「私のターン、ドロー!サイバー・ドラゴン・ヘルツを召喚。そしてこのカードと場の機械族…ネブラ・ディスクを墓地に送り、キメラテック・フォートレス・ドラゴンを特殊召喚!」
「はえ?ゆ、融合を使わない融合?」
「墓地に送られたサイバー・ドラゴン・ヘルツの効果発動、デッキからサイバー・ドラゴンを手札に加える。魔法カード、アドバンス・ドローを発動、場のレベル8のキメラテック・フォートレス・ドラゴンを墓地に送り、カードを2枚ドロー!」
引いた2枚のカードの一枚を、才魔は即座に発動する。
「魔法カード、融合を発動!手札のサイバー・ドラゴン、ツヴァイ、ドライ、サイバー・ヴァリー、サイバー・ヴァリーを墓地に送り、キメラテック・オーバー・ドラゴンを特殊召喚!このカードの攻撃力は、融合素材にしたモンスターの数×800ポイントアップ!よって攻撃力は4000!」
「な、なんと?!」
「特殊召喚に成功した事で、キメラテック・オーバー・ドラゴン以外の私の場のカードは全て墓地に送られる。この効果にチェーンして罠発動!ピケルの魔法陣!このターン、私が受ける効果ダメージは0になる。」
万が一に備えて伏せたカードを発動する才魔。
「このカードは1度のバトルフェイズ中、融合素材にしたモンスターの数だけ相手モンスターに攻撃出来る!バトル、キメラテック・オーバー・ドラゴンで、クリスタル・ボーン、アステカ・マスク・ゴーレム、マッドゴーレム・シャコウキを攻撃!」
「ひょええええええっ!」ライフ4000から1900、1900から200、200から0
「爺さん、大丈夫か?」
「ああ、負けてしまった…。遊星ちゃん、あの日こういってくれたよなぁ。『デュエルは、カードに命を吹き込む。その命を吹き込むのが、デュエリストの役目』と。ワシはあの言葉を聞いてから、真剣にデュエルに向き合う事にした。そして手に入れたのがこのデッキなんじゃ。でも、やっぱりワシには…」
「そんなことはない。爺さんはちゃんとカードに、デュエルに向き合っていた。」
爺さんをなだめる遊星。事実、遊星自身もしばらく会っていないこの老人がここまでデュエルの腕を上げている事に驚いていた。
それは対峙した才魔も同様だ。以前の実力については不明だが、この老人が弱いとは到底思えなかった。
「見た事がないカードばかりだった。」
「そうじゃろうそうじゃろう!このカードはな、中東へ訪れた時に手に入れた物での…」
この後1時間にわたって、才魔とアキラは矢薙の爺さんがどこで何を手に入れたのかという冒険譚を聞かされるのだが、それはまた別の物語である…。
矢薙の爺さんに【先史遺産】を使わせてみました。この時代だとネブラディスクのカードパワーが高すぎる気がしますが。
次回はこの時間軸のジャックと、ARC-Vのユーゴとリンが出会う番外編をやります。