「うーん……またダメか。」
あの後、また実験を再開した少女達であったが、結果は芳しくないようだった。
「これで、もう10回以上、日も暮れてきましたし、そろそろ限界でしょうか。」
ポニーテールの生徒が疲れの籠った声で白衣の生徒に話しかける。
確かにポニーテールの生徒の言う通り、空は薄っすらと赤みを帯びており、夕暮れが近いことを感じさせている。
白衣の生徒が自身のスマホの画面を見ると、時刻は6時を過ぎたあたり、いくら夏先で日が長くなっているとは言え、もうすぐ日は完全に落ち、夜の帳が落ちることになる。
そうなるとこんな電灯もまともにない廃墟区内は、真っ暗になってしまい、手持ちのライトだけではとてもではないが実験を続けることは不可能であろう。
白衣の生徒もそれが分かっているのか、ぐぬぬ…ッと、残念そうにうなってはいるがポニーテールの生徒の意見に肯定するように首を縦に振った。
他の二人の生徒も気落ちしたように肩を落としているが、それでも現状解決策が浮かばないことは事実であるため、諦めたように息をはいている。
「……いえ、まだです。」
そんなもう諦めようとする空気を壊すように、小さくではあるがそれでもはっきりとした声が、その場に響いた。
「君は……。」
「まだ、じかんはのこっています。これでおわりになんかしたくないです。」
その声の主、少女はやる気の籠った瞳で、周りの生徒にぐるりと見ると、端末を操作し始めた。
「ちょっと待ってください。気持ちはわかりますけど、もうこんな時間ですし、これ以上続けても同じような結果になるだけですよ。ここは一度学校に戻って失敗の原因を考えたのち、もう一度検証した方がいいと思います。」
少女の後ろからそのように声が掛かるが、少女は一切手を止めることなく端末を操作している。
「いままでのどうさちゅう、いっかしょ、ほんのいっしゅんですが、ずれがおきているきかんがあります。」
「「「「え!?」」」」
少女の言葉に驚いたように全員が捜査しているモニターを見る。
その画面には今までの10回以上繰り返してきた実験結果のデータが表示されており、少女はその一か所を指さした。
「これは……確かに設計段階では、想定していない数値だが……。」
「はい、本当に一瞬ですが、数値に乱れが出ていますね。」
「うーん……しかし、なぜ今までこれに気付かなかったんだ?異常検出のため機関は創造していたであろう。」
「おそらく、あまりに短時間で発生しているので、探知できなかったんじゃないかと……。私たちも確信をもって見てようやく気が付ける値ですし。」
そう大人びた生徒の言うように、少女が指摘した数値の異常は本当に一瞬であり、それも普通ならば誤作動とも思われないような微弱な異常値でしかなく、生徒達が見落としてしまうのも無理のない物であった。
「ですが、今これが分かっても、今からこの機関を調整して実験準備をするなら間違いなく日が暮れてしまいますね。」
「そうですねぇ……。できたとしても一発勝負になりますし、やっぱり明日に回した方が賢明ですかね。」
ポニーテールの生徒と大人びた生徒の二人がそう言い、眼帯の生徒も言葉には出さないが二人に同意するように首を振っている。
流石の少女も本来部外者である自分が、これ以上言ってもいいのか分からず、下を向いて端末から手を離そうとした時。
「………いいや、このまま実験を続行する!」
「「「「部長!!」」」
「――ッ!?」
四人が驚いたように白衣の生徒の方を向いた。
白衣の生徒は全員の視線を受けながら、最初に出会った時と同じような自信の籠った笑みを浮かべながら、声を上げた。
「はっはっはっ!!この私としたことが、多少上手くいかない結果が続いたくらいで、弱気に」なってしまっていたらしいな!副部長!さっき時間があまり無いと言ったが、まだ一回やるくらいの時間は残っているんだろう!!」
「えっ?はい、確かに調整したあと、一回だけでしたら可能ですけど。」
「ならば良し!!その一回で、成功させればいいだけだ!!各部員、準備を始めろ!!」
「「「はい!」」」
白衣の生徒の掛け声に合わせて、他の生徒たちは準備を開始する。
一人は、機械のプログラムの調整を
一人は、誤差が生じていた機関の配線の組み換えを
一人は、全体の安定性を上げるための演算処理を
皆が一丸となって、作業を進めていく。
白衣の生徒は、その作業が開始された様子を一瞥すると、少女の下に向かった。
「君がくれたこのラストチャンス!絶対に無駄にはせんよ!!さあ、最後のもうひと踏ん張りとしようじゃないか!」
「……。はい、わたしもさいごまで、このクエスト、やりとげてみせます!」
少女もどこか気合の籠った瞳をしながら、再度端末を操作し始める。
その後少しして、実験の準備が完了した。
少女を含めた全員が、固唾をのんで実験の開始を見守っている。
そんな中白衣の生徒が、実験開始のボタンに手をかける。
「いいか、泣いても笑っても、これがラストチャンスだ。いくぞ!!」
そして、実験が開始した。
その結果は…………
「部長……。これって!」
「ああ!成功だ!!」
機械は特に異常もなく稼働しており、モニターには今までとは違い、正常な数値を示していた。
「やったーーー!!」
「はぁ~~やりましたね、部長。」
「なんとか成功できて、ホッとしましたよ。」
三人の生徒が互いに実験の成功を喜びあっている。
そんな三人を少女はただ黙って眺めていた。
そんな少女に後ろから肩を叩きながら声が掛かる。
「何をボ――ッとしてるんだい!」
「……!」
少女が驚き声のした方向に視線を向けると、そこには予想通り白衣の生徒が笑いながら立っていた。
「せっかく成功したんだぞ!君も皆と一緒にはしゃいでもいいんだぞ!!」
「……いいんですか。わたしも。」
少女はどこか申し訳なさそうに肩を落としながら、そのように言う。
それは本来なら部外者であることに対して思うことがあるのか、はたまた何か違う理由故なのか、今の少女には検討も付かないが、とにかく少女は自分はあの中で一緒に喜び合っていいのか疑問を感じていた。
そんな少女の様子に気付いていなのか、何を言っているのか分からないのか、白衣の生徒は当たり前のように少女に話しかける。
「なにを言っているだい!君のおかげでこの結果を掴むことが出来たんだぞ!」
「――!」
「何を気にしているのか知らないが、気にせず混ざるといいんだよ!!ほら、いくぞ!!」
少女の手を取って白衣の生徒が、騒いでいる三人の下に駆け寄っていく。
二人を加えて更に騒がしくなった笑い声が、すっかり暗くなった廃墟区内に響いていた。