無事に実験を終えた少女たちは、廃墟区内よりミレニアム校と生徒たちの居住地とを繋ぐモノレールステーション前までやって来ていた。
「いやはや今回も見事、大成功であったな!!さっすが大天才である私だ!!」
「全く、調子がいいんですから……。大体、途中まで失敗ばっかりだったじゃないですか。」
「あーはっはっはっ!失敗無くして成功なしだよ副部長!たとえ何度失敗しようとも、最後に結果を残すのがこの私!めげない、しょげない、諦めないってね!」
「ククク……ッ。流石は我と契約者を結びし者。そのどこまでも足掻くその姿……。滑稽でありながらどこか称賛せざるを得ないと感じさせる……。実に面白く毎日退屈させぬな。」
「ふっふっふ。相変わらず面白い人ですね。私、部長のそういうところは好感が持てますよ。」
「おおっ!流石は親愛なる部員たちだ!理解を持ってくれてとても嬉しいぞ!どうだ副部長!やはり私の考えは間違ってないみたいだぞ!」
「はいはい、分かりましたから。あまり調子に乗りすぎないで下さいね。今はまだ正常に動作できただけで、明日から安定性の向上やよりエネルギー充填の効率性を上げる方法を探さなきゃいけないんですから。まだまだ先は長いですよ。」
「まっそれもそうだな!明日からもまた頑張るとするか~~~。」
そんな会話をしすると、白衣の生徒は少女の方に視線を向けて話しかけた。
「とは言え、今日無事に実験が成功したのは、紛れもなく君の活躍あってのものだ!こんな長い時間まで付き合わせてしまってすまなかった。そして最後まで協力してくれたことに私から精一杯の礼を言わせて欲しい、本当にありがとう!」
そう言いつつ右手を上げる白衣の生徒をいつもの様にぽけ~~っと眺めつつ、少女も目の前の生徒をまねるように自身の右手を上げた。
白衣の生徒は少女の右手を掴み握手を交わすと満足そうに笑顔を見せる。
他の三人もそんな二人の様子を微笑ましそうに見守っていた。
「本当にここまで付き合って頂いてありがとうございました。こんなに長い時間拘束してしまいとても申し訳ありません………でも、なんだか貴方と過ごす時間とても楽しかったです。」
「ふんっこの我からしたらたいしたことないが、貴様も多少優秀な存在であるようではないか。此度の礼にまた我らの運命が気まぐれに交差した時は、この我が力存分に見せてくれようぞ!」
「私はまだあなたと会ってそんなに経ってないので、なんだか物足りないですね……そうです!これから私と少しいい所にお、で、か、け、致しませんか!!決して悪いようには致しませんよ!!」
「身内から犯罪者を出すわけには、行かないので却下です。正直、あなたとの関りが薄いことに安堵していますよ。」
「そんな~~~、副部長さん、ひどいですよ……。」
三人のそんな会話を少女は、どこか眩しい物を見るように眺め、知らず知らずのうちに口元に笑みを浮かべている。
いま少女が何を考えているのかは分からないが、少女にとって今の時間がとても楽しいと感じられていることは、その表情から読み取ることは容易にできるであろう。
それほどまでに今の少女の表情は、彼女たちと出会った時より格段に豊かになって来ていた。
そんな少女のようすに気が付いたのか、白衣の生徒は一層笑みを深めると、何かに気付いたようにそう言えばっと、声をあげてきた。
「実験のことで頭が一杯で、君のことを聞いていなかったね!」
「…………!」
白衣の生徒の言葉に少女の目がハッと見開かれる。
「あら?部長さんたちのお知り合いじゃなかったんですか?私はてっきり部長のご友人の方だとばっかり。」
「いや~実は彼女とは今朝あったばかりでね。まだまともに自己紹介もしてなかったんだ!」
「なぬっそうだったのか!?わ、私が来た時には一緒にいたから、てっきり知り合いなんだと……。」
「いや、貴方には来た時に説明したはずなんですけど……。そう言えばお化けと勘違いしたせいで慌てていてこちらの話全く聞いていませんでしたね。……それはそうと、私も忘れてしまっていましたね……。」
「あーはははっ。副部長も偶にはうっかりすることがあるんだな!……さて、では改めて。」
白衣の生徒は一度コホンと咳払いすると、自身の胸に手をやりながら自信の籠った声で話始める。
「我々は!このミレニアムサイエンススクールにおいて、まだ見ぬエネルギーの発見、実用化を目指すこの時代の先を行く集団!!新エネルギー開発部だ!!」
ここが夜の駅前ということも忘れて、バー―ン!!と効果音でも鳴りそうなくらい、白衣の生徒は大声で名乗りを上げた。
そのままの勢いで、自分たちの名前や普段どんなことをしているのかなど、身振り手振りで白衣の生徒は説明をしていくが………少女の耳には何一つ届いていなかった。
「……さて、私たちのことはこれくらいにして、そろそろ君のことも教えてくれないか?」
余りに自分達の説明に気合を込めたのか、若干息を上げながら白衣の生徒は、にこやかに少女に問いかける。
そこには当然ながら悪意など、欠片もなく、純粋にここまで一緒にいた少女のことを知りたいという思いだけであった。
他の三人も同様に先程まで楽しげに会話していた時と同じ雰囲気を持って、少女の方を見て耳を傾けている。
そんな傍から見れば楽しげの空間の中、少女は何かを言うでもなく、瞳を揺らしながらただ固まっていた。
「うん?どうかしたのかね?」
白衣の生徒が、なにも答えない少女に不思議に思ったのか声を掛けるが、少女はとして何も言うこともなく瞳を揺らす。
いいや違う、少女は何も言わないんじゃない。…………何を言えばいいのか分からないのである。
何しろ少女が目覚めてから、数日しか経過しておらず、経験したこともまだまだ少ない。
その上、他者とのかかわりも彼女たち意外とは全く無い。
そんな少女が、はっきり自分が何者であるかの回答を出すことは不可能である。
過去に強烈な何かを揺さぶられる人物との出会いがあれば、また結果は変わるのであろうが、残念ながら今の少女にはそんな出会いは訪れていなかった。
なにも話さない少女と新エネルギー開発部員との間にどこか気まずい空気が立ち込め始めた。。
これは不味いと思い、白衣の生徒はどうしようかと頭を悩ませているその時、5人に……いや、正確には少女に離し掛けてくる声が聞こえてきた。
「あっ
「おっ本当だ。
それは帰宅途中の二人のミレニアム生徒であった。
二人の生徒は、少女たちの方に進むと、親しげに少女に話けてくた。
「今日はどうしたの?また勇者修行?」
「あんまり遅くまで、やってるとユウカに怒られるよ~~。というか新エネがこんな時間に外にいるの珍しいね~~。」
突然、話しかけてきた二人の生徒に少女は、なにも返すことが出来ず、混乱したように戸惑っている。
代わりとばかりにポニーテールの生徒が、声を掛ける。
「この子のことご存じなんですか?」
「え?知ってるってアリスちゃんのこと?当然でしょ。」
「そうそう。よくクエストとか勇者修行とかで、ミレニアムのあちこちに出歩いているゲーム開発部の子だよ。」
「結構な有名人だと思うだけど、知らなかったの?」
不思議そうな目を向けられたポニーテールの生徒は、少し頭を捻ると何かを思い出したかのように顔を上げた。
「ああ……そう言えばそんな子がいるって、話題になっていたような気が…………」
「今まで、あの機械の開発に忙しくて全然外に出ていませんでしたから、知らなくても仕方ないですね。」
「なるほどね~。それはお疲れさんだね~。」
「まあ、私たちも人の言えないくらい、いま大変だけどね。あっ、そろそろ行かなくっちゃ!またね、アリスちゃん!」
「じゃあね~~。アリスちゃん気を付けて帰ってね~。」
そう言いつつ二人の生徒が走って駅に入っていく。
二人が去った後、白衣の生徒は少女に向き直り、ゆっくりと話しかける。
「………君は、
少女の瞳が先ほどよりも大きく揺れる。
心臓なんてないはずの少女の胸が、ドクンッドクンッと慌ただしくなっているようにざわついていく。
違う!といいたい…………。人違いと否定したい…………。
私はアリスじゃなくて…………私は――――――っ。
…………私は、だれなんだ?
グルグルと少女の頭の中で何かが反響する。
視界の先には先程まで、楽しそうに談笑していた新エネルギー開発部の面々が心配そうに自分を見ている。
短い時間ではあったが、過ごした時間が楽しかったのは、きっと少女も同じ。
そんな時間をくれた人々が、今自分のせいで笑顔を無くし、心配をかけてしまっている。
それは嫌だと思い、どうすればいいと、どうしようと、少女は考える。
考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、考えて、
名前も無い少女は……………………
「はい!私は
―――――――ウソをついた。