もう一人の勇者   作:Katarina T

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IF 広がる不安(先生視点)

「ミレニアム全体が大停電!!!??」

 

モモイの絶叫が、スマホのライトでのみで照らされている、セミナー部室に響く。

無理もない、声こそ上げなかったが、私もモモイと同じくらいの衝撃を受けている。

 

 

あの後、ユウカとノアに助けられた私たちは、階段の入り口からセミナーの部室に移動し、そこでユウカから今ミレニアムで起こっている異常事態についての説明をきいていた。

 

「ええ、その通りよ。今、ミレニアム学区内の施設すべての電力が止まってしまっているのよ。おかげでパソコンや冷蔵庫みたいな電子機器はもちろん、エレベーターやモノレールみたいな電子制御されている機械も軒並み機能停止の事態になっているわ。」

 

「そんな……じゃあ、先週発売されたばかりのモソアソはどうすのさ!?まだトロコンしてないのに!?」

 

「いまの説明聞いて、最初に気にするのそこなの!?」

 

「ああ!!それに冷蔵庫が使えないってことは、中身のアイスも全部だめになっちゃうじゃん!?この前、内緒で買った私の新作ダッツフレーバーがーーー!!」

 

「なにそれお姉ちゃん!私聞いてないよ!!」

 

「ちょっと、私の話を聞きなさ「それよりも原稿のシナリオどーしよー!!確かまだ半分も終わってないよーー!締め切りまであと一週間もないのに~~!!」……。ああ、もう……っ。」

 

ユウカの説明を聞いてさわぎだしたモモイにユウカは頭を抱えてしまう。

まあ、モモイの気持ちも分からなくはない……。私もこんな場面に直面したら、コッソリ食べようと思ってた限定スイーツは無事かなとか、この後の仕事どうやってすればいいんだろうとかで、頭がいっぱいになるだろうし。

 

とは言え、さすがに話を進めた方がいいだろう。

 

“ミレニアム全体ってことは、停電しているのはミレニアムタワーだけじゃないの?”

 

「はい。停電範囲はこちらで把握している限りでもこのミレニアムタワーだけでなく、実習センターやモノレールセンター、購買付近も全ての電力が止まっています。」

 

「そ、そんな……そんなことあるはずないよ!だ、だってミレニアムには、独自の発電所があるはず!も、もし外との電力のやり取りに問題があったって、十分あそこだけで、電力を賄えるはずだし、それに、も、もしもの時の予備電源だって、各施設に設けられているはず、直ぐにでも復旧出来るはずだよ。」

 

ノアの説明に珍しくユズが、反論するように声を上げる。それだけ有り得ないということなのだろう。

かく言う私もユズと同じ意見だ。ここは、他の学区と比べても最新鋭の技術が集まっている近未来都市。そんな場所がおいそれとこの規模の停電なんて起こすはずが無いし、仮に起きたとしてもすぐに復旧できるようにしているはずだ。

 

ユズの言葉にハッとなって、先程まで騒いでいたモモイ達も解決策が見つかったと思い、騒ぐのを止めてユウカとノアの方を見る。

 

しかし、相変わらず二人の顔色は優れないでいる。

 

「勿論、それについては既に試してたわ。この停電騒ぎが起きて初めにね。……でも、無駄だった。どういう理屈なのか発電所で作られているはずの電力は、作った端から、まるで何かに吸い取られるように消失しちゃうし、予備電源に切り替えてもこっちも発電所同様に切り替えた途端、蓄積してた電力がゼロになって機能停止になっちゃう……はっきり言って、お手上げといってもいいわ。」

 

「う、うそ……そんな事って。」

 

「ちょっと!?ユウカはなんでそう落ち着いてるのさ!これってミレニアムの一大時じゃん!」

 

ユウカの言葉にユズは絶句してしまい、椅子に腰を降ろす。

それとは反対にモモイは、椅子から立ち上がりユウカに詰め寄っていく。

 

「落ち着てなんかの居ないわよ!……でも、現状ホントに打つ手がないの……。使えるのも今は手持ちのこのスマホだけ、調べようにもパソコン含めたコンピューターが機能してないんじゃどうすることもできないわ。」

 

「それに……実は、今起きている問題は電力が止まっているだけじゃないんです。」

 

“え?どういこと?”

 

ノアの発言に嫌な予感がする。背筋に冷たい冷や汗が流れるのを感じながら、私はノアの次の言葉を待った。

 

モモイ達も同様に不安そうにそのノアの方を向いている。

私たち全員の視線を受けたノアは、少しの間沈黙すると、やがて決心したように話し出した。

 

 

 

「今ミレニアム全体に、原因不明な未知の怪電波が発生しています。……そのせいで通信機器が全て使用不可能になり、外部との連絡が完全に断たれている状況です。」

 

 

それは、今の状況が私たちが想像していたものより、もっと深刻であると告げていた。

 

「「「…………。」」」

 

「…………??」

 

モモイ達は、あまりの状況に言葉もないのか、口を開けたまま固まってしまっている。

唯一アリスだけは、どいう事か分かっていない様子で首をかしげている。

 

「原因不明の怪電波……それで通信機器が使用不能……ですか。ええっと、それはつまり。」

 

「要するに私たちは、なんの補給もヒントも助けもなく、高難易度クエストにいきなり放り投げだされったってことよ。」

 

「なるほど……!アリス理解しました!……って、それは一大事です!急いでクエストを攻略しなくちゃいけません!」

 

「アリスちゃん、落ち着いてください。勿論、今打てる手は打っていますから。先生、今はネル先輩たちC&Cに各地の被害状況や原因の解明に動いて貰っています。なにか分かればすぐに報告が来るようになっています。ですから皆さん、今は一階でC&Cからの連絡を待ちましょう。」

 

“うん。ノアの言うとり、今はネルたちを信じよう。”

 

どうやら既に事態把握のためにネルたちが動いてくれているようだ。

ネル率いるC&Cは有事のさい、このミレニアムを守る頼もしいいメイド部隊だ。

彼女たちなら、今起こっている不可解な異常について、何か解決の糸口になってくれる情報を見つけ出してくれるに違いない。

 

私たちは、ユウカとノアが用意してたという、タワー一階にある臨時の対策本部へと移動することとなった。

 

「はぁー……はぁー……ようやく付いた~。」

「登るのもきついけど……降りるのも同じくらいきついね……。」

「ホントだよ、もう~~。ああ、部屋のベットで横になりたい……。」

 

モモイとミドリが口々にそうぼやいている。

うん、全くもって同意見だ。これは、今回のことが済んだら本当に体を動かそう。

 

そう私が心の中で決心を固め、目的地の教室へとついた時、その教室の扉がいきよい良く開き、一人の生徒が飛び込んできた。

 

「ユウカここに居た!大変!とんでもないことが……ってあれ、ご主人様だ!それにゲーム開発部の子たちも!ヤッホー、元気してる!」

 

現れたのはアッシュグレーの長髪にメイド服を身に着けた生徒。

 

先ほど話題に出ていた今調査の真っ最中であるはずのC&Cのコールサイン01、一ノ瀬アスナだ。

 

彼女は、慌てたように部屋に飛び込んできたか、私を見つけると彼女らしい天真爛漫な笑みを浮かべながら、こちらに手を振ってくる。

 

私は、うん元気だよーっと手を振りながら返していると、横からユウカが一度咳払いをしながら、アスナに問いかけた。

 

「今はそんなことしてる場合じゃありません!それでアスナ先輩、なにか分かったんですか?」

 

「あ、そうそう!忘れるところだった!取り敢えず見てもらった方が速いと思うから、皆外に来て!」

 

そうして急かすアスナに連れられて外に出た私たちが目にしたのは……。

 

「な、なにこれ……。」

 

「……空がうねってる。」

 

電灯も消えたミレニアム学区、そしてその空を分厚く黒い曇天が覆っている光景。

 

更にあり得ないことに、その曇天は普通の雲ではなく、まるで台風の目の様に一点から螺旋形に広がっており、一体の生物であるかのような不気味な動きでミレニアムの空に浮かんでいた。

 

“一体……なにが起こっているの?”

 

私の口からふとそんな言葉が零れ落ちた。

 

 

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