もう一人の勇者   作:Katarina T

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IF 圧倒的な脅威

「アリス!!先生、アリスが飲み込まれちゃったよ!はやく助けにいかないと!?」

 

アリスが黒い球体の中に飲み込まれいった様子を見ていたモモイが、焦せった様子で先生に呼びかける。

モモイの声に少しアリスが飲み込まれて放心状態だったミドリとユズもハッと我に返り、自身の銃を構えなおす。

当然、先生だってモモイと同じく今すぐアリスを何とかして助け出したい。

しかし、今も目の前にいるオートマタの集団をどうにかしないとアリスを助けるどころか、あの球体に近づくことすら出来ない。

 

(“そもそも、どうしてアリスを連れ去る必要が……あの時聞こえてきた声が幻聴じゃないとすると、偶然アリスが狙われたって可能性は低い。……もしかしてアリスが以前アトラ・ハシースの箱舟のバリアを破ったこと知って、警戒していたから………。いや待って、その前にアリスに起きていたあの頭痛は今の状況に関係する事なの?――ううぅ、ダメだ!情報が足りなさすぎる!それに今はそれよりもアリスを助けることが重要だ!”)

 

先生は改めて戦場を見渡して、突破口を探ろうと頭を回す。

 

(“どこもかしこもオートマタでいっぱい。あれから数は増え続けているみたいだ。……でもどういう訳かオートマタ達は、ことらの行動を邪魔しようすることはあっても攻撃しようとはしてこない。というか、銃や盾みたいな武装をしていない。ただ自分たちの体で私たち前に立ちふさがるだけ……一体、何がしたいの?”)

 

先生はオートマタ達の不思議な行動に疑問を抱き、迂闊に指示を出せずに頭を悩ませてしまう。

 

まあ、先生が疑問に思うのも当然のことだろう。

 

今、先生たちは大量のオートマタ達に囲まれている状況であり、どれだけ壊しても動き続ける耐久性とその場で無尽蔵に造られる数の多さによって完全に押されている。

 

しかし、今なお先生たちは誰一人として、戦闘不能になるどころか怪我一つ負ってない。

それは、先生の言うようにオートマタが一切の攻撃を行ってこない為である。

これは、暴走したAMASも同様に備え付けられている武装を使うそぶりを一切みせず、ただアスナたちを中心部から遠ざけようと、その物量で廃墟区外方向に押し出している。

 

一方、ネルたちの方では、アビ・エシュフが機能停止になってしまいこのままでは戦闘続行が困難と判断したトキがアビ・エシュフをその場で武装を解除し、自身が持っているアサルトライフル『シークレットタイム』で戦闘を続行しているが、中々数を減らせずにいる。

 

………だが、ネルは違った。

 

「オラオラオラァ!!邪魔すんじゃねぇよ!!!」

 

持ち前の戦闘センスとツイン・ドラゴンの火力で、オートマタ達を破壊して、その際一時的にできたオートマタ達の隙間に小柄な体躯を滑り込ませることで、中央にある球体へと向かっていく。

 

「チビ!いま助けてやっから、待ってろよ!」

 

そうして数分も掛からぬうちにネルは球体の傍まで行くと、そのままの勢いで迷うことなく球体の中に飛びこもうとする。

 

ガキンッ!

 

「――っな!?」

 

……しかし、ネルが球体の中に入ろうとした時、なにか硬い壁のようなものにぶつかったような音と共にネルが球体より弾かれる。

 

「どういうこった!?入れねぇぞ!」

 

その後も何度が入ろうと突撃するが、何度やっても先ほどと同じように弾かれてしまう。

 

「クッソ!だったらッ!」

 

ネルは、普通では入れないと悟るとツイン・ドラゴンを球体に向かって構える。

どうやら見えない壁があって、入れないと判断し、壁を壊して中に入ろうと考えているようだ。

 

だが、ネルが銃を撃つよりも早く、………またさっきと同じように、大地が揺れ始めた。

 

「うわっ!?これって、さっきと同じ地震!」

 

「ううん違う、お姉ちゃんこの地震さっきよりも大きいよ!」

 

「きゃっ!こんなに揺れてると、立ってられないよ……。」

 

ミドリの言うように明らかに先ほどの地震よりも揺れの大きさが強くなっており、その揺れの大きさは、先生やゲーム開発部はもちろん、C&Cまでもがまともに立てないくらい大きな揺れにが起こっている。

 

“う、今度は一体何が。………………は。”

 

先生が揺れ中でも何とかして、生徒の安全を確保しようと球体の方を見た時、思わず口を開けて固まってしまう。

 

いや、固まっているのは先生だけでない、ゲーム開発部もC&Cもこの戦場にいる全員が、呆然として固まってしまった。

 

 

ゴ……ゴ……ゴ……ゴ……

 

 

そのように音を鳴らしながら、それは廃墟区の中央に立ち上がった。

 

それは、ミレニアムにある高層ビルがまるで子供が遊ぶおもちゃの見えるくらい、圧倒的な大きさを持った一体のロボット。

先ほどの揺れの正体は、このロボットが動いたことによって起きたものであった。

 

そのロボットは、周りにある瓦礫や鉄骨を滅茶苦茶に組み合わせて造られており、一見すると直ぐにでも崩れそうな見た目をしているが、そのロボットから漏れだす存在感がそんな甘えた考えを吹き飛ばす。

 

全長にして、約100mはくだらないと思えるほど巨大なロボット。

 

突如現れたそれは、目の前で固まっている先生たちを一瞥する事もなく、あの黒い球体を掴み上げると、なんと自身の胸の中に入れ込んでしまった。

まるで、誰にも邪魔はさせない。この中に手出しすることは許さない。そんな意志を感じる。

 

この状況に目の前の先生は…………

 

 

“…………みんな、ここは一度引こう……。”

 

 

…………撤退という判断を下した。

 

「そ、そんな!?じゃあ、アリスはどうするの!」

 

モモイが驚いたように先生の方を向く。その表情からも納得がいってないことが明白であった。

………しかし、先生の様子を見て、モモイの声を詰まらせた。

 

泣いていたのである。先生が。何も出来ない己の不甲斐なさに一筋の涙が頬をつたっていた。

手は血が出るほどに拳を握りしめており、どれだけ先生が悔しがっているのかモモイは察して、何も言うことが出来なくなった。

 

先生だって、アリスのことが心配だ。

しかし、いま何の策もない状態で戦い続けたら、生徒達にどれほど危険な目に遭ってしまうか先生は考えた。

 

考えて、考えて………考えぬいた答えが、撤退という決断だった。

 

先生は戦う力を持たない。故に危険な場面に立たされるのは、まだ子供の本来なら大人が守ってあげるべき、生徒だ。

 

(“……私は、大人のカード?がなきゃ……こんなにも無力なのか。”)

 

 

 

先生とゲーム開発部、C&Cは仲間が囚われているのに何も出来きない己の不甲斐なさを呪いながら、廃墟区からミレニアムタワーに戻っていった。

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