もう一人の勇者   作:Katarina T

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なんか急に降ってきたので……


IFアビドス編
IFアビドス 少女、アビドスの目覚め


―――これはとある世界線の話。

 

何気ない日常の一幕に起きた出来事。

 

 

アビドス学区のとある一画。

 

アビドス学区内で人が生活する地域から離れ、ビルではなくクレーンや大きな煙突がそびえ立つ、所謂工業地区と言えるような場合。

かつては多くの人が汗を流しながら、日々の生活の為に働いていたであろうその場所は、砂嵐の影響でその多くが砂に覆われてしまい、今ではもう見る影もなく寂れてしまっていた。

 

そんな本来立ち入る人などいないような場所に二人の生徒がやって来ていた。

 

「………ユメ先輩。本当にここにお宝なんてあるんですか?」

 

一人はピンクのショートカットで小柄な生徒、小鳥遊ホシノ。彼女は自身の黄色と青色のオッドアイを細め、訝しげに前を歩いているもう一人を見つめている。

 

「だ、大丈夫だよホシノちゃん!地図は間違いなく、ここを指してるんだから!」

 

もう一人は長い緑髪に大きなアホ毛が特徴の

 

どことなく緩い雰囲気を纏っている生徒、梔子ユメ。彼女は額に若干の冷汗をにじませながらも手に持っている一枚の紙をほらっ!と言いながら自身満々にホシノに向けて広げる。

広げられた紙は、どうやらアビドス学区全体の地図であるらしく、ユメの言う通りユメとホシノがいる工業地区に×印が描かれている。

 

「確かに、この地図にある×印の場所は間違いなくここみたいですけど……。そもそもこの地図が宝の地図だっていう可能性は低いんじゃあ……。」

 

「そ、それはその~……。でも、ホシノちゃんだって、私が地図を見せたら目を輝かせてたじゃんか~~。」

 

「そ、それはユメ先輩が、来て早々に宝の地図見つけたよーー!これで借金返済間違いなし!なんていうからっ!」

 

「それに生徒会室の片付けの最中に見つかったってことは、少なくともアビドス生徒会に関わる何かがここにある可能性は高いんじゃないかな。」

 

「まあ、それは確かにそうですけど……。」

 

ユメの言い分に幾分か納得がいったのか、ホシノは先ほどまでより表情を崩してユメの方を見る。

 

ユメは、「でしょ!でしょ!それにせっかくここまで来たんだから奥まで行ってみようよ!」と言いながらドンドン廃墟の奥へと歩を進めていく。

 

そんなユメを若干呆れるような視線で見ながら、「全く……しょうがないですね。ユメ先輩一人で行かないで下さい。」とため息交じりではあるが、どこか楽しそうにホシノはユメの後を追いかけて行った。

 

 

 

 

 

そうしてなんだかんだ二人が廃墟の中を手当たり次第に探索していき、早くも数時間が経過したころ。

二人は廃墟地下に広がる廊下の先で大きな扉を発見していた。

 

「ホシノちゃん、この扉なんだろう?なんか、他の部屋と雰囲気違う気がするけど。」

 

「……確かにここの扉だけ妙にしっかりした造りですね。見たところ破損もしてないみたいですし……よっぽどこの部屋には、大事なものがあるんでしょうか。」

 

「もしかして、お宝とか!?」

 

「いや、そんなゲームじゃないんですから……。とは言え、この扉そう簡単に開きそうにないですよ。」

 

「そっか~~。流石にそんな上手い話はないよね~~。でも、やっぱり中が気になるね。どうにかして開かないかな。」

 

ユメは残念な雰囲気を隠しもせず、名残惜しいそうに扉の方に近づいていく。

 

そんなユメをしり目に、バカなこと言ってないでそろそろ帰りますよっと、ホシノは来た道を引き返そうと踵を返した。

 

 

 

その時、ユメが扉に手をかけた瞬間、扉がギギギ……っと音をたてながら、開き始めた。

 

「ユメ先輩!?一体なにをしたんですか!」

 

「ひぃん!そんなこと言ったって、ただ扉に触っただけだよ~。」

 

ユメとは突然動き出した扉に驚き肩をはねさせながら離れ、ホシノはユメを庇いながら自身の持っているショットガンを構えると扉の向こうの様子を伺った。

 

そうして二人が、扉を注視している中、……ドシン。という音と共に扉が完全に開き、中の様子があらわになった。

 

「開いちゃった……ね。」

 

「そうですね。取り敢えずなにかが飛び出してくることがなくて、安心しました。……全く、ユメ先輩はもう少し慎重に行動してください。」

 

「ひぃん……。ごめんね、ホシノちゃん。次からはちゃんと気を付け………え?あれって。」

 

そう言うと何かに気が付いたユメが走って扉の先に広がる部屋の中に走って行ってしまう。

ホシノは、言ってる傍から!っと口調を荒げながら、ユメの後を追うように部屋に入っていくと、部屋の中央に先に入ったユメが立っており、ホシノに向かって手招きしていた。

 

「ホシノちゃん!ホシノちゃん!こっち!こっちに来て!」

 

「いったいどうしたって言うんですか。また何か変なものでも見つけました?」

 

「そうじゃないよ!人だよ人!女の子が倒れてるの!!」

 

「え!どういうことですか!?」

 

ユメの言葉にこんな場所に人がいることに驚いたホシノは、急いでユメの下までいくと、そこには白い椅子のような台座に一糸まとわぬ姿の女の子がユメの言う通り確かにそこにいた。

 

「ね!?女の子でしょ!なんでこんなところに!しかも裸で!?本当にどういうこと!!?」

 

「……ユメ先輩。気持ちは分かりますけど、少し落ち着いて下さい。これじゃあ一向に何も分かりません。」

 

「そ、そうだねホシノちゃん。こんな時こそ冷静に!だよね。……それよりこの子大丈夫かな?もしかして……。」

 

ホシノの言葉に幾分か冷静さを取り戻したユメが心配そうに台座の上にいる女の子の方を向いた。

こんな場所でしかも台座の上に寝かされているとしたら、もしかするとっと嫌な想像がユメの脳裏に浮かんできた。

 

ホシノはそんなユメを気にかけつつ女の子の様子を確認する。

 

「……見たところ、外傷の類はありません。……ただ、眠っているというよりは、電源が入っていない機械のように感じますが。」

 

「う、うぅーん……。確かにホシノちゃんの言う通り、眠ってるって感じじゃないね。なんだかデパートのマネキンみたい。」

 

近づいて観察して見ても一向に反応を示さない女の子にユメは好奇心が湧いたのか、その肌を触ってみる。

 

「うわ~~!お肌モチモチで柔らかい!この子、本当に生きてないのかな?……ん?」

 

女の子の腕を触っていたユメが、何かに気付いたのか、台座の側面を覗き込んだ。

 

「ユメ先輩、なにか見つけたんですか?」

 

「うん。ここに何か……文字みたいなものが掘ってある。」

 

ホシノもユメと同じように台座の側面を覗き込むと、大文字のアルファベットで、

 

“AL-OE”と刻まれていた。

 

「ええっと……これ、なんて読むんだろう……。AL-OE…。ア、アロエ……かな。」

 

「いや、そんな訳ありませんよ。そんな観葉植物みたいな名前。ほら見てください、この文字よく見ると字体からOじゃなくて0ですよ。つまり“AL-0E”って読むじゃないですか。」

 

「え、ほんとだ!」

 

ホシノの言い分にユメが改めて文字をよく見ると、確かに刻まれた文字はAL-0Eと書かれており、ユメは、納得するように頷きながら改めて女の子の方を向いた。

 

「AL-0E…それがこの子の名前かな?」

 

「恐らくは……台座が示しているのが彼女の事ならそうだと思います。」

 

「そっか……。取り敢えずこのままじゃ流石に可哀そうだし、風邪ひいちゃうと大変だから、ひとまず私の上着でも着せてあげよっか!」

 

同じ女性として裸のままにしておくのも気が引けるユメは、自身の羽織っていた上着を女の子に着せて上げた。

ホシノも流石にこのまま裸で放置する事には思うことがあるようなのか、ユメの行動に対して何か言うことはなく、上着を着せるのを手伝った。

 

ユメはぶかぶかではあったが、一様裸ではなくなった女の子を見て、ふーっと息を吐いて満足げに頷いていた。

一方、ホシノは着替えさせている間も女の子は、微動だにしない様子に人間そっくりとは言え、やっぱりただの機械なのかと思い初めていた。

 

ホシノは改めて目の前の女の子を観察するように目を向ける。

 

女の子の見た目は自分と同じくらいの身長で、少女と言っていい年齢ぐらいであり、少女の白い肌とは真逆の長い真っ黒な黒髪が特徴的だった。

 

服を着せた事により、本当にただ眠っているだけに思える目の前の少女をどうしようかとユメとホシノが頭を悩ませていると、突然―――ピピッピっという電子音が鳴り響いた。

 

「え!な、なにこの電子音!?いきなり聞こえてきたけど、私また何かやっちゃった!?」

「落ち着いて下さいユメ先輩。……どうやらこの電子音、彼女から聞こえているみたいです。」

 

慌てるユメをなだめながら、ホシノが耳をすませて電子音の発生源を探ると、台座で寝ている少女より、その音が聞こえてきていることを感じ取った。

 

ユメとホシノが互いに少女の方に視線を向けると、その視線に応えるように少女から電子音声が発せられてきた。

 

『状態の変化、および外部からの接触を感知。休眠状態を解除します――』

 

その音声を皮切りに今まで動かなかった少女の瞳が、少しずつ開いていき、奥から深い紺色の瞳が覗かせた。

それと同時に少女の頭に瞳と同じ紺色で大きなの異なる複数の長方形が互いに集まり、まるで天使の輪っかの様に浮かんでいる。

まるで自分達にもあるヘイローのようだなっとホシノが感じていると、少女はゆっくりと体を起こし自分たちの方に視線を向けてきた。

ユメは突然起き上がった少女に呆気にとられているのか、ぽけ~っと眺めていおり、ホシノは警戒心剝き出しにショットガンを油断なく少女にむけて構える。

 

そんな真逆な反応を見せる二人の様子を気にしていないように、二人に向かって少女は口を開いた。

 

「……ゲンザイの状況を把握――ナン航。会話を試みマス。……説明をお願いデキますか?」

 

少女の口調は、機械的であり、あまり感情のこもっていない様に感じる。

 

そのような淡々とした口調にユメが慌てたように答える。

 

「えっええっと!?私は梔子ユメって言って、アビドスの生徒会長で!ああ、こっちの可愛い子はホシノちゃんって言って、すっごく頼りになる自慢の後輩で!えっと、ここには生徒会室にあった地図を頼りに来ただけで、決してやましい目的があったわけじゃなくて!ええっとそれから、それから……。と、とにかく私たちは怪しい者じゃありません!!」

 

「いや、そんな言い方だと余計に怪しいですから、それに怪しいのはどう見ても向こうの方ですし、ユメ先輩は少し黙っててください。」

 

「ひぃん……。そんな~~。」

 

落ち込んでいるユメをほっといて、ホシノは目の前の少女に相対する。

少なくともこちらに敵意をむけてくる様子は、今のところないようすだが、油断せず直ぐにでも反撃できるようにショットガンの引き金に指をかけながら、少女に話しかけた。

 

「……ここは、アビドスでもう使われなくなった工場の跡地、普段なら誰も立ち入ることがない場所……。そんな場所で寝ていた貴方は一体何者ですか?説明をお願いします。」

 

質問と同時にホシノはショットガンの銃口を向けて、あんに噓は許さないという意志を少女に伝える。

それに対して、少女は動揺すること無く、ホシノを見ながら口を開く。

 

「本機の自我、キオク、目的ハ消失状態でアルことを確認――データがありません。」

 

「ええ!?それってつまり―――記憶がないってこと!?」

 

「肯定。本機の内部データには、メモリーが見受けられません。」

 

帰ってきた答えが自分は記憶喪失であるということにホシノは呆気にとられ、ユメは驚いたように声を上げると心配そうな表情で少女に駆け寄った。

 

「あ、ちょっと先輩!迂闊に近づいたら危険ですよ!」

 

「だってこんな場所で一人でいた上に記憶が無いなんて、ほっとけないよ!」

 

「だとしても危険すぎます!いきなり攻撃してきたらどうするんですか!?」

 

「否定。ゲンザイ接触対象に遭遇時、本機の敵対意思ハ発動しません。」

 

「ほら、ホシノちゃん!この子も攻撃する気はないって!」

 

「そんな簡単に信じないで下さい!」

 

そんなかみ合っているのか、いないのか分からない問答を三人で繰り返していると、ユメがヨシっ!と少女の手を握りながら、ホシノの方を向いた。

 

「ホシノちゃん!私、決めたよ!」

 

「……何と無く察しが付きますし、嫌な予感がしますが、一応聞いておきます……。一体何を決めたんですか?」

 

「それは――この子をうちにアビドスに連れて帰る!!」

 

「正気ですかユメ先輩!?」

 

「…………??」

 

ユメの言葉にホシノは声を荒げて、少女は何が起きているのか分からない様子で、首をかしげている。

そんな二人を無視してユメはむんっと胸を張りながら答える。

 

「もちろんだよ!この子をこんな場所に置いていけるわけないし、記憶が無いなんてほっとけないよ!!」

 

「だとしても私たちには関係ない事でしょう!自分たちの事でも手一杯なのにこんな得体の知れない奴のことなんて気にしてられませんよ!」

 

そう言うホシノの言い分は最もなことである。

 

彼女たちアビドスには多額の借金があり、それの返済に日夜苦しんでいる。

その上、原因不明の砂嵐によりアビドスは衰退。ドンドン学区内から人が去っていき、今ではアビドス高等学校はユメとホシノの二人きり。

正直、学校としての体裁を保つことすら危うい状況。

 

そんな状況でこれ以上ないくらい怪しく間違いなく厄介ごとの種になるであろう少女がアビドスに来ることは、ホシノには許容できなかった。

 

「……それでもだよホシノちゃん。」

 

そんなことは、ユメにだって分かっている。今のアビドスに余裕がないことも他人のことなんて、自分たちが気にしてられるような状況じゃないことも、ちゃんと分かっている。

 

―――――それでも。

 

「それでも、私はこの子を見捨てられない。ここで見捨てちゃったらきっと――ううん絶対に後悔するから。」

 

そう告げるユメの瞳には、強い意志が宿っていた。

 

あの時、初めて会った時から変わらない、緩そうで決して折れない強い意志を。

 

こうなった先輩は、自分ではどうすることもできないことをホシノは短い付き合いでもよく知っていた。

 

――――故に

 

「うっ!―――――は~~~。分かりましたよ。」

 

「ホシノちゃん?」

 

「どうせ言っても聞かないでしょう……。その子をアビドスに連れていきましょう。」

 

「―――!!ありがとうホシノちゃん!!」

 

ホシノは自分が折れることにしそう言うと、隣の少女に視線を向けた。

 

「言っておきますけど、不審な行動をとったら、その時は容赦なく打ちますからね。」

 

「承認及び肯定。本機ハ敵対行動をとるつもりはアリマせん。」

 

「ならいいですよ。ああ、あとその喋り方聞きづらいので、なんとかしてください。」

 

「承認。速ヤカに言語ショウガイの回復を実行。」

 

「えへへ、これから賑やかになりそうだね!」

 

そういいながら、ユメは少女とホシノ、二人の手を握りながら、嬉しそうに歩き出した。

 

「そういえば、貴方の名前ちゃんと聞いてなかったね。なんていうの?」

 

「――言語の能力の回復完了。及びデータ検出。本機に特定の名称は付与されてません。」

 

「えっと……つまり?」

 

「名前が無い。もしくは思い出せないって事でしょう。……まあ、記憶喪失みたいですし当然と言えば、当然なんでしょうか?」

 

「ひぃん、これから一緒にいるのにそれじゃあ不便だね。」

 

「あの台座にあったAL-0Eが名前じゃないんですか?」

 

「それだとなんか機械っぽいし、可愛くないよ~~~。」

 

そう言う問題ですかっと呆れるホシノを無視して、ユメが頭を悩ませてると、やがて何かを思いていたような顔をした。

 

「”アリア”。アリアちゃん何てどうかな!」

 

「いいと思いますけど、どういう経緯なんですか?」

 

「え、うーーんと……何と無く……かな?」

 

「そんな適当な……。」

 

「アリア……本機の名称、”アリア”。確認をお願いします。」

 

「ほ、ほら、この子も気に入ってくれてるみたいだしさ!」

 

「貴方もそれでいいんですか……。まあ構いませんけど。」

 

「よし!それじゃあアリアちゃん!ようこそアビドスへ!」

 

ここからアビドスと少女たちの運命が大きく変わっていく。

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