「アリア……これは貴方が?」
ホシノは呟くようにそう言うと、声をかけてきたアリアに目を向ける。
その顔には、まさか……。という疑念が籠っていた。
それもそのはず、ホシノはこの生徒会室に来る途中の廊下も綺麗になっていたことを思い出し、もしかしたらこの校舎中を掃除されていると考えていた。
しかし、その場合たった一人で、ここまで校舎を綺麗にするためには、かなりの時間がかかる作業であり、それこそ自分たちが帰ったあとから今までずっと掃除していないと足りないくらいの作業量である。
昨日会ったばかりで、アリア自身のためとはいえほぼ無理矢理連れてこられたようなもののはず、少なくとも目の前の少女がそんなことをする理由など、欠片もないしメリットもないはずだ、とホシノは考えているが、同時にじゃあなんでここまで校舎が綺麗になっているのかについての回答を出すことが出来ないため、疑念と不信がごちゃ混ぜになった表情を浮かべていた。
そんなホシノと何も言わないアリアとの間に微妙な空気が漂っていた時、ホシノの疑念を吹き飛ばすよな声が廊下に響いてきた。
「うわ~~!なにこれっ!なんだかいつもより学校が綺麗になってる気がする!すっごい、廊下が光ってる!」
「朝からテンション高いですね……。」
声の正体はユメであったようで、綺麗になった校舎に驚きながらアリア達の居る方に歩いて来た。
「ユメ先輩おはようございます。」
「ユメ、おはようございます。」
「あ、ホシノちゃん、アリアちゃん、おはよ~~~!ねえねえ、見てよこれ!校舎だけじゃなくて、校門やグラウンドまで綺麗になってるよ!!私こんに綺麗な学校、見たことないよ!」
「……そうですね。私も初めて見ましたよ砂に覆われてない校舎は。」
「だよね!だよね!いったい何が……って!アリアちゃんその格好……。もしかして、アリアちゃんが掃除してくれたの!ひとりで!?」
興奮していたからか、今までアリアの姿が目に入ってないユメだったが、アリアに話しかけようとしたところで、その格好に気が付きホシノと同じようにアリアが掃除したという考えが頭に浮かんだ。
ホシノは何も言わずに静かにアリアの方に視線を向け、返答を待った。
しかし、アリアはユメの言葉に特に返答することなく、代わりにユメの方に近づくとその顔をジッと見つめ始めた。
二人の身長差からアリアがユメを見上げるような形になっていおり、その姿はなにやら観察でもしているようだった。
「え、え~~っと、アリアちゃんどうしたの?私の顔になにかついてる?」
アリアの行動の意図が分からず、ユメが困惑した様子でアリアのことを見ていると、ユメから目を離すことなく、アリアは問いかけるように話し出した。
「問。………どうですか。」
「ふえ?どうって……なにが?」
「……提示情報が不足していました。……再度、問いかけます。校舎内の清掃は約70%完了し、昨日より清潔な空間を確保できます。ですので…………もう、元気は出ましたか。」
「え、それってどういう。――――ぁ。」
ユメは質問の意図が分からず、戸惑うように視線を揺らしていたが、アリアの言っていた言葉から、ふと昨日の出来事が脳裏をよぎった。
『あはは……びっくりしちゃったよね。……うん、この学校も前まではここまで砂まみれじゃなかったんだけど……今は、ちょっとね。』
それは、何気なくこぼした、本当に小さな不満からでた弱さだった。
初めてこの学校に来てくれた子に他の学校と違って、綺麗な校舎を見せることができないという少しの悔しさと申し訳なさから、ふと口から零れ落ちたモノ。
そんな小さなこと普通なら気にしない、というか言ったユメ本人だって忘れていたくらいだ。
まさか、そんなこと―――。
「―――もしかして、私のため……なの?私が昨日、前はもっと砂まみれじゃなかったって言ったから、だから貴方は……。」
「??肯定。本機のデータ内にはデータが不足していたため、実行による対応を選択しました。……再度確認します。元気はでましたか?」
「――っ!うん、もちろんだよ!ありがとねアリアちゃん!」
ユメは嬉しそうにアリアを抱き着くと、うへへ♪と言いながらそのまま抱きしめた。
そんな二人を傍で見ていたホシノは、驚いた表情で固まってアリアのことを見ていた。
まさか本当にそんな理由で、一人で掃除をしていたことに、そんな自分には何の得にもならないようなことを目の前の少女は行ったことに、昨日会ったばかりの人のために。
ホシノは、理解出来ないアリアの行動に驚きを隠しきれずにいた。
い、いえ、もしかしたら、こうしてこちらを油断させようとしているのかもしれません。
……というか、そうじゃなきゃ一晩中掃除するなんて有り得ません。
そうホシノが一人で考えを巡らせているところに、ユメから解放されたアリアが昨日と同じようにホシノの前で立ち止まった。
「……なんですか、また昨日みたいに褒めてほしいんですか?」
「否定。本機はホシノのことが知りたいです。」
「私のこと?」
「……新たに入力したデータに他人と仲良くなるためには互いのことを良く知ることが重要。という内容がありました。ですから、早速実行に移そうと考えます。」
「入力したデータって、どこからそんなことを。」
「掃除中に入力したこの本からです。興味深い内容でした。」
アリアは懐から一冊の本を取り出し、見せつけるように突き出してきた。
その本の表紙には『これさえ読めば貴方も完璧会長!連邦生徒会長さえ超える、立派な会長になるために重要な7つのコツ!!』と書かれていた。
「……ん?ひぃん!!そ、それ私のーーーー!?」
「え、まさかユメ先輩こんなの読んでたんですか。こんな胡散臭いものを……。」
ユメが慌ててアリアから本を取り上げるのをホシノは呆れを通り越して、最早引いた目で見ていた。
「そ、それはその~~……。だって、生徒会長って何やったいいか分かんないし、ホシノちゃんみたいな立派な後輩が出来たから、私ももっとしっかりしなきゃって思って……。」
「だとしても、もう少しマシなタイトルの物を買って下さいよ!明らかに騙されてますよ!」
「ひぃん……。そんな~~。」
そうホシノに言われて落ち込んでしまうユメであったが、思わぬことに横にいたアリアが、そんな事ありませんよ。と、助け船を出してきた。
「……どういう意味ですか。」
「その本の内容は、全体的に良く書かれていました。基本にしっかり抑えてあり、重要な内容は伝わりやすいように纏められていました。――少なくとも適当に書かれた内容ではないと判断します。」
「アリアちゃん!そうだよね、うんこの本はちゃんと生徒会長になるために必要なことが書かれた凄い本なんだよ!」
「……それにしては、ユメ先輩に成長が見られないのですが。」
「ちょっとホシノちゃん!?」
「それは、読み手の理解力不足。もといポンコツであることが原因だと予測します。」
「なるほど……それなら確かに納得です。」
「アリアちゃんまで!?ひぃん……二人して酷いよ~~~。」
アリアとホシノが若干打ち解け合っている横で、ユメは何故か飛んできた流れ弾に撃沈し、綺麗になった廊下に膝をついてしまっていた。
「……そいう言えば、ユメ先輩今日はいつもより登校が速いような気がしますね。」
「うん、そうだよ。一人にしちゃったアリアちゃんのことが心配だったし、行きたいところもあったからね。」
「行きたいところ、ですか。……問。その場所とはどこのことですか。」
アリアとホシノ、二人の視線を向けられたユメは、バックから一枚の
「それはもちろん!アリアちゃんが居た、あの廃墟にだよ!」