「まさか、こんなに早くここに戻って来ることになるとは、思いませんでしたね。」
廃墟地下の廊下を進みながら、ホシノがそのように独り言を漏らす。
その声には若干の面倒くさい様子が見え隠れしており、ホシノがあまり乗り気でないことが伺えた。
「あはは……。確かに私も戻ってくるのが速いとは思うけど……でも、アリアちゃんの記憶の手がかりになるのは、アリアちゃんがここで寝ていたここくらいしか思いつかなかったんだよ~~。」
「……確かに、他に手がかりもありませんからね。……とは言え、この廃墟内はあの時、散々調べまわりましたが、得にこれと言って気になる場所はありませんでしたよ。」
「ううんーー……。とりあえず、アリアちゃんが寝てていた部屋に行ってみようよ!あの時は、アリアちゃんに気を取られて、部屋の中まで見なかったし。」
「そうですね。私も中は軽く見ただけなので、何があったかまでは記憶にないので、ユメ先輩の意見に賛成です。」
「うん、ありがとうホシノちゃん!アリアちゃんもそれでいいかな?」
「肯定。情報が乏しい本機よりもこの場所に詳しい二人の意見に従います。」
「よーーしっ!それじゃあ、レッツゴー!!」
そう意気込むユメを先頭に一同は廃墟地下の廊下を進んで行くと、場所が分かっているからか、十分とかからず、目的の部屋までたどり着いた。
途中、ユメが廃墟の廊下で迷ってしまい、軽くパニックになるというアクシデントもあったが、いつものことであるので、得に問題になることはなかった。
「そんな訳で着きましたけど……改めて見てもどこもボロボロですね。」
ホシノの言う通り、この廃墟は何時から放置されていたのか、どの部屋も砂やほこりまみれであり、一部壁には亀裂が入っていたりと相当長い年月ここに人が出入りしてい居ないことがうかがえた。
そしてそれはアリアが寝てい居た部屋も同様であり、床には何かのコードや機材の残骸が砂と埃に埋まっており、壁や天井も整備をされていないためか亀裂こそ入ってないが、所々表面が崩れていた。
「う、うん。ホシノちゃんの言う通り、昨日は感じなかったけど、改めて見返すとなんか今にも崩れそうな……。」
「まあ、使わなわれなくなった場所なんてこんなもんですよ。誰からも見捨てられて最後には忘れられて崩れ去るだけです……。今のアビドスの様に……。」
「…………。さて、ここがアリアちゃんを見つけた場所なんだけど……。どうかな、なにか思い出すことはないかな?」
ユメは、何かを誤魔化すように努めて明るい声でアリアに訪ねてきた。
訪ねられたアリアは、ユメの意図を読み取ったのか、はたまた本当に気にしていないのか、特に様子を変えることなく、自分が眠っていたという部屋をぐるりと見回すと、何か気になる物でも見つけたのか部屋の奥に向かって行った。
「あ、アリアちゃんどうしたの?」
「ん?何か見つけたんですか?」
部屋の中を見渡していたユメとホシノもアリアの様子に気付き、彼女の下までいくと、アリアの前に壁に面して設置してあった一台のパソコンのような装着が設置されており、操作盤であろう台の上にキャリーバッグほどの大きさのケースが一つ置かれていた。
アリア達は、そのケースが何なのか気になっていたんか興味深そうに観察する。
ケースの外見は薄いグレー一色であり特に装飾のようなものは見られず、周りと同様に長年放置されていたためか砂と埃まみれで汚れている。しかし、ケース事態は特に破損している様子は見られず頑丈な作りをしていることが伺えた。
一通りケースを見おえると、ユメがこれ何が入ってるのかな?といい好奇心に任せてケースの蓋を開けようとする。
「ふぬぬっ!っはぁーー……。このケースの蓋ビクともしないよ。」
「え?でも、見たところ鍵のようなものはついてないみたいですけど……。先輩、ちょっと代わって下さい。」
ユメと代わりホシノもケースの蓋を開けようと力を籠めるが、どれだけ力を入れても蓋はビクともしなかった。
「……駄目ですね。全然開きそうにありません。」
「ええ!?ホシノちゃんでも無理なの?ホントに!?」
「いやそこまで驚かなくても……。別に私力持ちって訳じゃないんですけど……。おそらく長年放置されたせいで中がさびてるんじゃないですか。もしくは蓋の中が歪んんでるとか。」
「そっか~~。じゃあ中身を見ることは難しそうだね。」
「どうしてもというなら、壊すしかありませんね。まあ、中身が無事の保証はありませんけど……(ベキッ)……うへ?」
ホシノがユメとそのようなやり取りをしていると、何かがひしゃげるような音が聞こえてきた。
驚いて二人が音のなったであろうケースの方に視線を向けると、いつ間にかアリアがケースの前に戻っていた。
しかも驚くべきことに先ほどまでどれだけ力を入れてもビクともしなかったケースの蓋が開いており、アリアが中に入っているものを凝視していた。
「わ~~すっごいアリアちゃん!よく開けられたね!ねえねえ、何が入ってたの!?」
「いえ、あの開けられたっていうか……思いっきり蓋がひしゃげてるんですけど……スルーして良いんですか、これ……。」
ホシノが一体どんな馬鹿力してたらこんなにできるんだ……。と、ひしゃげて最早蓋としての役目を果たせなくなった塊を見ながら思っていると、アリアがケーブルの中から一丁の銃と傘のようなものを取り出していた。
「??何かなこれ?拳銃と……傘?これが入ってたの?」
「肯定。ケース内に保管されていた品はこの二つだけです。」
「そうなんだ~。これ、見たこともない銃だけど、何ていう銃なのかな?ホシノちゃん分かる?」
「いきなり言われても……私もこんな形の拳銃、見たことありませんよ。」
ホシノは改めて少女が持っている銃のようなものをよく見てみる。
見た目は真っ白に紺色の入った拳銃。一見するとどこにでも有りそうな普通の拳銃であるが、弾丸を装填するための機能が無い事やグリップの部分が普通の拳銃よりも握りやすいように加工されているなどの違いが見受けられる。
少なくとも、ホシノのサブアームである拳銃とは似ても似つかないデザインあった。
「U…F…G……。」
「ふえ?アリアちゃんその銃が何なのか分かるの!?」
ホシノが一人考え込んでいるとアリアがそのようなことを口にした。
ユメが驚いたようにアリアに詰め寄ると、アリアは手に持っている銃のグリップの下を指差した。
「ここに記載があります。」
「あ、ホントだ。UFGって書いてある……。それがこの銃の名前かな?」
「肯定。この銃の名称はUFGであると断定。また先の問いに対し回答します。このUFGの使用方法について本機は熟知しています。」
「は!?そ、そうなんですか!?」
アリアが名前だけでなく、使い方まで分かると言い出し、今度はホシノが驚いた様子でアリアに詰め寄る。
アリアは詰め寄ってきたホシノを見ると、何故かUFGを持っていない方の腕を使いホシノを抱きしめてきた。
「……は!?ちょ、ちょっといきなり何するんですか!?」
「説明より実際に体験した方が情報伝達が速いと判断しました。しっかり捕まっていてください。」
「はい!?言ってる意味が分かりません!とにかく離れくだい!!」
ホシノは離すようにようにアリアに言うが、アリアはホシノの言うことを無視してUFGの銃口を天井に向けると、
「……行きます。」
「はい!?行くってどこに……って、うわ!?」
アリアがホシノを抱きしめたままUFGの引き金を引くと、バシュッン!!という何かが発射された音が鳴ったかと思うと次の瞬間アリアとホシノが空間に浮かび上がった。
「ひぃん!?ホシノちゃんとアリアちゃんが……と、飛んでる!!?」
「はい。これがUFG……光のワイヤーを射出することで三次元の移動を可能にできる移動補助ユニットです。」
「ちょっと!これすごく揺れてますよ!早く降ろしてください!!」
「……?分かりました。」
アリアがUFGの引き金を再度操作すると、ゆっくりとアリアとホシノが下がっていき、二人を地面に降ろした。
「いきなり何するんですか!?」
「??ホシノがUFGの機能を知りたがっていたので、実際に体感して貰うのが速いと判断しました。」
「それならまず私の許可を貰ってからにしてください!何の説明もなくやられてビックリしたじゃないですか!」
「ま、まあまあホシノちゃん。アリアちゃんは悪気が合ってやったことじゃないんだから……。それにしてもそのUFGってすごいね!なんか移動とか便利そう!私もやってみたい!」
ユメがホシノをなだめてつつ、目を輝かせながらUFGを見ると、アリアがユメにUFGを手渡してきた。
ユメは手渡されたUFGとアリアの顔を交互に見ながら興奮気味にアリアに問いかける。
「え!い、いいの!使ってみても!?」
「本機は特に問題ありません。どうぞ使って下さい。」
「やったーー!ありがとうアリアちゃん!」
そう言い、確か行きたい方向に向かって引き金を引けばいいんだよね!っとアリアに使い方の確認を取りながらUFGを天井に構えて、引き金を引いた。
しかし、UFGはなんの反応もめることなく、ユメは困惑したような表情を浮かべる。
「あ、あれ?何も起こらないよ……。使い方を間違えちゃったかな?」
「否定。使用方法に不備は見当たりません。おかしいですね。」
「ううーん……。アリアちゃんが寝ていたここに保管されてて、アリアちゃんには使えて私は無理ってことは……もしかして、アリアちゃんにしか使えないってこと……かな。」
「本機のデータには、UFGの使用方法は存在していますが、それ以上のことは記録されてません。」
「そっか~~、アリアちゃんにも分かんないか。まあ、アリアちゃんには使えるんならこれはアリアちゃんが持っておくべきだね。ホシノちゃんもそう思うよね。」
「私も異論はありませんよ。正直言って私はあの宙を浮く感覚は苦手なので…………。それよりさっき貴方が出してたあの傘みたいのはなんです?」
ホシノは先ほどいきなり浮かせられたせいでUFGに苦手意識を持ってしまったのか、少し強引に話題を変えてきた。
少女はUFGを台座に置くと、UFGと一緒にケースから取り出しだ傘のようなものを手に取った。
その外見は、一見すると傘に見えるが、本来持ち手がある部分にライフルのグリップとストックさらには引き金まで付けられており、明らかに普通の傘では内容だった。
「これ………先端が銃口になってますが……もしかして、この見た目で銃なんですか?」
「へえ~~銃なんだこれ!なんか可愛い見た目してるね!私も小さいとき傘を銃や剣に見立てて遊んだりしてたよ~~。」
「いや、そんな事誰も聞いてないんですけど……。アリア、もしかしてこれも使うことが出来るんですか?」
「肯定。本機は問題なくこの銃を使用できます。」
「ああ、やっぱり銃なんですねそれ……。だったら、これも貴方が持っていてください。少なからず自衛出来る手段はあった方がいいでしょうし。」
「了解しました。本機この二つの武装を装備します。」
アリアは、いそいそとケースに入っていたUFG専用のホルスター着きのベルトを自身の腰に巻くとホルスターにUFGをしまい、傘のような銃はしまう方法が思いつかないらしく、そのまま手に持った。
ホシノがそんなアリアの様子を見ていると横にユメが優しく微笑みながらやって来た。
「やっぱりなんだかんだ言って、ホシノちゃんもアリアちゃんのことが心配だったんだね。」
「は、はあ!?い、一体なんでそうなるんですか!?」
「だってさっきアリアちゃんに自衛できる手段が見つかった時のホシノちゃんなんだか安心したような表情してたもん。」
「な……っ、そ、そんな顔してません!絶対に!」
「ええ!絶対にしてたよさっき!嬉しそうに笑ってたもん!」
「笑ってません!!ったくいきなり何言いだすんですかこの先輩は!!」
「ユメ、ホシノ、本機の準備、完了しました。」
二人のやり取りの間に準備を終わらせたアリアが、二人に話しかけると、ユメが先ほどの会話をアリアにもしようとするのをホシノが強制的に黙らせるという……おかしなやり取りを繰り広げ初めてしまい、アリアはそんな二人を不思議そうに見ながら首をかしげていた