「ううーん。アリアちゃんが使える銃が見つかったのは良かったけど……肝心の記憶の手がかりになりそうなものは見つからないね。」
ユメが気落ちしたような声でそう言いながら、がっくりと肩を落としている。
どうやら本人は結構自信のあった考えだったようで、それなのに当てが外れたことに落ち込んでいるようだった。
「まあ、無駄骨じゃなかっただけ良かったじゃないですか。」
落ち込んでいるユメの様子を見てホシノが励ますように声をかけている。
アリアもユメのことを励まそうとしているのか、ポンポンっとユメの背中を叩いている。
「ううぅ……。二人とも優しい……。うん、そうだよねホシノちゃんの言う通り、全くの無駄じゃなかったんだし、アリアちゃんの記憶の手がかりだって、いつか見つかるよね。」
そんな二人の優しさに元気が出たのか、先程までの落ち込んでいた様子からいつもの元気な姿へと戻っていった。
ホシノもユメの元気が案外直ぐに戻ったことにやれやれと呆れていたが、その口角は少し上がっているようだった。
アリアはユメが元気になったことがわかると、ケースの置かれていた台に手を伸ばした。
その台には、何かの操作盤のようであり、多くのボタンやレバーが付いていた。
パッと見ただけでもボタンの種類は数多くありどれが何のボタンなのか分からない上に長い間放置された影響で近くに記載されていた文字もすっかりかすれて読めなくなっていたため、この台を操作することは難しく、少なくとも今すぐに操作方法を理解することは不可能であることが伺えた。
しかし、アリアが少しの間、台の上に手を置いて何か考えるように瞳を閉じていたかと思うと、すぐ横の壁に取付けらていたディスプレイが光り出した。
「うわ!?ホシノちゃんなんか動き出したよ!?」
「今度は一体何しようとしてるんですか貴方は!」
急に光ったディスプレイにこの日何度目か分からない驚いた声を上げるユメとホシノ。
ユメは今度は何かな~~っと相変わらず能天気そうにこの後起きることを楽しみにしているが、ホシノはアリアが来てからの非日常にいい加減、一度アリアに常識を叩き込んだ方がいいのではないかと割と本気で考えていた。
そんなホシノ様子など露知らず、アリアは閉じていた瞳を開けると、まるでマニュアルでも読みながら操作しているかのようなた、どたどしい手つきで目の前の台を操作し始めた。
すると、横のディスプレイから機械音が聞こえてきた。
≪ザ……ザザッ……試作、機……AL-0Eの接触を……か、かく、確認……ザ、ザザザ……。ようこそ、お越し……くださいました……王、女よ…………なにかお探し、ですか。ザザ……≫
その音声は所々にノイズが入り、とても聞き取りずらくなっていた。
しかし、それでも何とか理解できる内容から、この声の主はアリアのことを知っていると確信したユメが、いの一番に反応した。
「アリアちゃんのこと、何か知ってるの!だったら、教えてください!アリアちゃん自分のこと何も知らないみたいで……私ほっとけないの!」
≪……王女以外の………音声を……認識。ザッザザ……王女の関係者と判断。……質問を承諾。……か、回答致します。…………現在、AL-0Eの……実、験…………データは全て削除され、ています………。内部にも関、連する……データが残っていません。≫
「……え?つまり、それって……。」
「……この機械の言うことが正しいのなら、アリアについての記録は、もうどこにもないってことみたいですね……。」
「そ、そんな……。」
ユメが信じられないといった表情を浮かべながら、画面の文字を見る。
そこに映し出されたのは、アリアにとって残酷すぎる内容であり、ユメは信じたくない気持ちでいっぱいになってしまい、遂にはその場にへたり込んでしまった。
さすがのホシノもこの事実にどう声をかけていいのか分からなくなり、顔を歪ませながら、へたり込むだユメを見ながらどうしようかと頭を悩ませていた。
すると、台を操作していたアリアが、ユメの前ま近づくとそっと肩に手を置きながらユメの顔を覗き込んだ。
「……ユメ、大丈夫ですか?」
「アリアちゃん……。……ゴメンね。記憶の手がかり、きっとあるって言ったのに……。」
ユメが申し訳なさそうにアリアに声を掛ける。そこには、無責任にも目の前の少女に希望を持たせてしまった事への自責念が籠っていた。
しかし、アリアは心底不思議そうな顔をしながら、ユメに話しかける。
「疑問。なぜユメは本機に謝っているのですか?」
「え?だ、だってせっかくアリアちゃんの記憶の手がかりが見つかったと思ったのに、それはもう無いなんて言われて……アリアちゃんだって、自分のこと何にも残って無いなんて悲しいでしょ。」
「否定。本機は悲しんでいません。」
「え?」
ユメは俯いていた顔を上げ、アリアの顔を見ると、確かにアリアの表情に悲しみなんて籠っておらず、先程までと同様の真っ直ぐな瞳と目が合った。
「……再度、返答します。本機は悲しくなんてありません。現在、本機が抱いているデータを言語化するのであれば………おそらく嬉しいという言葉が適切と判断します。」
「嬉しい……って、なんでそうなるんですかっ……。貴方、自分の状況分かってるんですか!?」
今まで黙っていたホシノが我慢の限界と言ったように未だユメの肩に手を添えているアリアに向かってそう言ってきた。
ホシノは昨日出会ったばかりな上に絶対普通の生徒とは違う何か秘密があるアリアのことは怪しいとは思っていたが、短いながらその行動を見て、非常識で世間知らずではあるがその行動には、悪意のようなものがないことを感じ、少しではあるが信用してもいいんじゃないかと思い始めていた。
だからこそ、その人物の記録がないって言われたときは少し動揺したし、ほんの少しだが悲しくもなった。
それなのに件の人物が一切気にしてないどころか、嬉しいなどと言っているのだから、声を荒げてしまうのも無理のない事なのかもしれない。
アリアは、ユメからホシノの方に視線を変えるとか分からぬ平坦な口調で、しかしどこか気持ちの籠った声で話始める。
「……本機はユメとホシノが起こさなければ、恐らくこの場で眠り続けていたと思われます。いえ、本来であればそれが正常であり、そうでなければならないのかもしれません。……しかし、二人が本機を目覚めさせてくれたお陰で、外の世界を見ることが出来ました。……
「…………。……そうですか。心配して損しました。」
「??ホシノ、少し顔が赤いような気がします。体温が向上している可能性がありますが、大丈夫ですか?」
「―――っ!?見るな!何でもありません!大丈夫ですからこっちを見るな!」
「ふわーーーん!アリアちゃん!私もアリアちゃん会えてとっても嬉しいよおおお!!うえーーん!」
「??ユメ、何故泣いているのですか?辛い事でもありましたか?」
「そんな訳ないよ~~~!心配してくれてありがとう~~!」
ホシノは完全にそっぽを向いてこちらに目を合わせなくなくなり、ユメはアリアに抱き着きながら大泣きしている。≪…………。≫………あと、ディスプレイの機械音声はこの間ずっとほっとかれている。
そんな中、アリアはユメに抱き着かれ身動きが取れなくなってしまったたので、取り敢えず抱き着いているユメの頭をなでるのであった。
やべぇ………話が進まねぇ…………。