アビドス砂漠のど真ん中。
かつてキヴォトスでも珍しい巨大なオアシスがあり、多くのお祭りなどの催しが開催されていた場所。
今ではすっかりオアシスは干上がってしまい、すっかり見る影もなくなったそんな場所で、スコップやピッケルを持って地面を掘り進んでいる三人の少女の姿があった。
その三人とは、アビドス校の現生徒会、梔子ユメ。同じく生徒会所属、後輩の小鳥遊ホシノ。そしてその二人に拾われた謎多き少女、アリア。
三人は、この地に眠ると言われた秘宝を求めて、必死にツルハシとシャベルを振るう。
この先に絶対にお宝があると信じて!その希望を信じてただひたすらに掘り進める!
――――水着姿で!
「ちょっと待て!!!」
ホシノが持っていたツルハシを投げ捨てながら、我慢の限界が来たかのように絶叫する。
それに驚いたユメとアリアが目を丸くしながら、ホシノの方に視線を向けた。
「ひぃん!?ホシノちゃんいきなりどうしたの!」
「どうしたもこうしたもありません!なんでまた私たちは水着でこんな砂漠の真ん中を掘り返してるんですか!!」
アリアが生徒会室に本の山を作った数日後。三人はアリアが示した場所で仲良く穴掘りを開始していた。
いや、ホシノも穴を掘ること事態は、特別疑問に思っていない。なにせアリアが言うにはここに貴重な金属が使われた花火が埋まっているはずなので、それを発掘するための行為であることは理解している。
ホシノが頭を抱えている理由は、自身の格好についてだ。
今のホシノ達の格好は何故か全員学校指定の水着姿で頭に帽子を被っているという……はっきり言って砂漠の真ん中でするような格好ではなかった。
本来、水着なんて持ってないはずのアリアも、何故か胸にホシノと書かれた水着を着用しており、頭にはいったいどこから持ってきたのか、紺色のヘルメットを被っていた。
「アリアちゃん、そのヘルメットどこにあったの?」
「学校の倉庫を掃除してたらでてきました!これは年季があります!」
「というか、その水着私のですよね!なんでアリアが持ってるんですか!?しかも着てますし!」
「ロッカーの中にありましたよ!ユメが水着を着用して行くといってましたので、助かりました!」
「ああ、しまった。前回の時に持って帰るの忘れてそのままだった………。」
ホシノは過去の己の迂闊さを呪いながら、一度大きく息を吐くと、気を取り直して現状を確認するように話し出した。
「……ところで、本当にここに、希少金属が使われた花火が埋まってるんですか?」
「はい!間違いありません!本機の内部メモリーと収集したデータをまとめると、その花火を使用した可能性が最も高いのがこの場所という結果が出ているんです!」
「……そのデータ、どのくらい信用できるんですか?」
「さっぱり分かりません!」
「おいっ!?」
「ですが、こうしてユメとホシノと一緒に頑張れる時間は、本機にとって何より大切な宝物なので、全然問題ないです!」
「こっちは問題大ありですよ!ただでさえ、二回目ということで気乗りしませんのに、これで無駄骨だったらっと思うと…………。」
「まあまあ、まだここに無いって決まった訳じゃないんだし、せっかくアリアちゃんが調べてくれたんだから、もう少し頑張ろうよホシノちゃん。」
ユメがそう言いながら、ホシノを元気付けるように持っているシャベルを掲げて見せる。
アリアもユメの真似をするように両手にツルハシとシャベル両方を持って、せっせと誰よりも頑張って砂を掘っている。
(全く……。この二人は、相変わらず元気なんですから。)
と、思いながらも何だかんだホシノも二人と一緒に砂を掘り続けた。
朝から砂を掘り続け、もう直ぐお昼になりそうなころ。
ホシノとユメに疲労が見え隠れし始め、ユメがそろそろ諦めるべきかと声をかけようとした時、アリアがこの日一番の声を張り上げた。
「見つけました!!!」
「「――っ!?」」
ユメとホシノが勢い良くアリアの方を向くと、自身の身の丈程の大きさの丸い球を掲げ、はしゃぎながら二人を呼ぶアリアの姿があった。
「ええ!ホントにあったの!この大きいのが!」
「はい!間違いありません!本機の内部データにあった形状とバッチリ一致していますので!」
アリアが掲げている大きさから、少なくとも数十㎏は有りそうな重量を持っていることが予想され、仮にアリアの言うことが本当で、それが以前ユメが調べていたものと同様の場合…………。
―――ボンッ!!
ついに情報を処理しきれず、ユメの頭からそのような音がなると、頭のてっぺんから煙を上げて目を回してしまった。
「ほ、ホントのホントに!ええ、夢じゃなくて!夢じゃないよね!!いや、これはきっと夢なんだ!こんな都合のいい事あるはずないよ!アハハ……夢なんだーーー、夢なんだーーー空がきれいだなーー」
「お、落ち着いて下さい先輩!夢は貴方の名前………じゃなくて!戻って来てくださいユメ先輩!!」
「おおーー。ユメが悪い魔法使いに操られた村人みたいになってしまいました。一体、何が原因なんでしょうか?もしやどこかに不思議の国への扉があるんですか?」
「いきなり何訳の分からないこと言ってるんですか!?アリアもユメ先輩正気に戻すの手伝ってください!」
「はい、任せてください!こんな時は――――殴るのが一番です!」
「……は!?ちょっとまt「えい!」「ひぃん!?」……ああ。」
ホシノが止めるよりも早く、アリアのゲンコツがユメの頭にクリーンヒットしてしまい、ユメは砂の上に沈んだ。
アリアはユメが倒れた理由が分からず、不思議そうな表情でユメを眺めた。
ホシノは倒れてしまったユメと不思議そうに眺めているアリアを見ながら、大きく息を吸い込んだ。
「貴方たち…………、いい加減にしろーーー!!!!」
「うわーーん!ホシノがおかんむりです!本機何か間違えましたか!」
「ひぃん!?一体何が………ってホシノちゃん!なんでそんなに怒ってるの!?」
「うるさい!貴方たち二人とも、一回反省してください!!」
そこには、普段のアビドスの砂漠には似つかわしくない、騒々しくもどこか楽し気な光景が広がっていた。
なお後日今回持ち帰った花火に使われていた金属を調べたところ、間違いなく本物の稀少な鉱物であることが分かり、それによってアビドスが抱えていた借金の半分以上が無くなることになるのだが…………。それは今の彼女たちは知らないことだ。