アリアたちが砂漠での宝探しを終えて、早くも数ヶ月が経過した。
その間、ユメとホシノ、二人の青春に変わったことは特に無い。借金が半分以上減ったとはいえ、残りの借金も膨大であり、借金返済のことはまだまだ考えて行かなければならないし、突然やってくる砂嵐は相変わらずアビドスを襲いつつげており、人口は減り続けていた。
彼女たちの青春は未だ砂に覆われたままであり、未だ何一つ解決していない。
しかし、そんな砂に覆われた日常でも小さな変化は確かにあった。
その変化とは…………勿論、アリアのことだ。
当初は目覚めたばかりで、外の世界のことを何も知らず、時折常識外れの行動を繰り返しては、ユメやホシノそして市街地に住む住民たちを驚かせてしまっていたアリアも、今ではすっかりアビドスになじむことができ、アビドスの一員になっていた。
とは言え、なじんだといってもアリアの言動事態は対して変わっておらず、単にホシノを筆頭に回りが諦めただけとも言えるが、そこは重要でないのでスルーするとしよう。
とにかく、ユメとホシノだけだったアビドスの青春にアリアという存在が加わって、ほんの少しだけ彼女たちの青春が賑やかなものになったことは事実である。
そして、変化があったのは何もアビドス高校だけではない。
アリアは、校舎の修理に使う備品を買いにアビドスの市街地にやって来ていた。
すると、
「おう!嬢ちゃん!今日も元気そうだな!」
「あら、アリアちゃん。こんにちは昨日はウチの雨戸を直してくれてありがとね~。」
「お?アリアちゃん今日もどこか行くのかい?元気なのはいいが、遅くまで出歩いて迷子になるじゃねえぞ!」
「おや?お出かけかい、砂嵐には気を付けるんだよ。」
このように道行く人は次々とアリアに話しかけてくる。
それに対してアリアは満面の笑みを浮かべながら、一人一人にちゃんと反応を返しながら、手を振っている。
皆の様からアリアが町の住民から大変気に入られているのは明らかであり、まるで幼い時からこの地で過ごしていた住民のようであった。
なぜ、アリアがこうも人々に受け入れられているのか、それはこの数か月間、アリアがやって来た行動が起因している。
「アリアちゃん、ちょっといいかい?」
アリアが市街地の大通りから商店街のエリアを散策を変えた頃、後ろから声をかけられた。
アリアが振り返るとそこには一人のロボットのおばあさんがアリアに向かって手を振りながら立っており、どうやらアリアになにか用事があるようだ。
「あ!図書館の管理人さんが出現しました!こんにちはです!」
「ふふ……。こんにちは。よく図書館に来てくれてありがとね~~」
アリアの言う通り、このおばあさんは、アリアがよく出入りしている図書館の館長さんであり、ほぼ毎日のように図書館に出入りしているアリアとは顔を合わせる機会が多く、今ではユメとホシノの次にアリアのことを理解してくれる人物である。
そんなおばあさんのもとにアリアは笑顔を浮かべて近寄っていく。
「管理人さん!本機になにか用事ですか?」
「ああ、実はねぇ、こないだの砂嵐の影響か、ウチの空調設備がどこかおかしくなっちゃったみたいでね。………すまないけど、また修理お願いできるかい?」
「はい!もちろん大丈夫です!本機に任せてください!」
「そうかい。そう言ってもらえると助かるよ~~。いつも本当にありがとうね。」
「いえ!こちらこそ、いつも沢山の本を読ませてくれて本機とっても感謝しています!それでは早速図書館に行きましょう!!」
善は急げです!と言いながら、アリアは嫌な顔一つしないどころか、逆に笑顔をより一層輝かせて依頼を受けると、おばあさんと共にアリアは図書館へ修理に向かって行った。
アリアがこのように何かを頼まれることは、実は初めてではない。
この数か月間、アリアはアビドス校でユメとホシノ過ごしたり図書館で本を読む以外の時間は、アビドスの市街地を探索しこのような頼み事や悩み事を解決し続けた。
それこそ暇さえあれば、市街地へ出向き、その街並みを覚えたり、そこで住んでいる人に話しかけ困っていることがないか聞いたりする毎日であった。
もちろん最初の内は誰からも相手にされず、話しかけても無視をされてばかりであった。
しかし、アリアは無視されたことに何とも思ってないのか、しつこいくらい住民たちに関わろうとした。
そんな風に話しかけ無視される日々を過ごしていたある日、商店街の一角でヘルメット団と不良とのいざこざがあった。
そのいざこざは少人数の小さい規模であったが、ここはキヴォトス。そんな小さなケンカですら平気で銃を乱射するどこかの世紀末な世界もビックリな治安をしてる場所だ。
当然そのいざこざにも銃が使われ、商店街にも小さくない被害が出そうになった。
そこに偶然来ていたアリアが、あっという間にヘルメット団と不良たちを無力化すると、いざこざによって壊れた機械の修理や道路や壁の舗装を自分からやり始めた。
今まで、面倒であり関わろうとせず、ずっと話しかけられても無視していたはずの少女。
その子がなぜ自分たちの住んでいる場所を守ってくれたのか、なぜ誰に頼まれてもいないのにこの場所の為に動いてくれているのか、その場にいた誰にも分からず、ただ呆然と目の前の少女のことを見ていた。
そんなアリアは、周りの様子など気にも留めず、以前から本を読んで蓄えた知識と持ち前の手際のよさであっという間に作業を終えると、何事もなかったように……いや、いい仕事したというような満足げな笑顔を浮かべてそこから立ち去ろうとする。
その時、一人の住人が思わずといった様子でアリアに声をかけてきた。
『なあ!なんでアンタは……そんなに笑ってられるんだ……。』
その言葉には、アリアに対する疑問以外にも何か別の感情も籠ってるような、……こんな砂まみれでこの場所には輝かしい未来なんてない。とどこか諦めや後悔を含んでいる、そんな声であった。
それに対し、アリアは真っ直ぐな瞳で話しかけてきた住民の方を向いた。
「笑っていられる理由ですか?そんなの簡単ですよ!」
「だって私はこの場所が―――アビドスが大好きだからです!!」
アリアはそう言うと、それではまた!と言いながら相変わらず楽しそうにその場から去って行った。
「……そっか……。アビドスが好き……か。俺たちもそうだったんだよな」
それからだ……。それから少しずつではあるが、アリアの声に反応を返してくれるひとが増えていった。
初めは挨拶を返してもらい、徐々にその日あった出来事や他の地区の噂話に花を咲かせるなど
そんな会話を住民たちと出来るようになっていった。
そんな会話の中でふと、家で使っている家具が壊れて困っているという話を聞き、アリアは持ち前の技術であっという間に家具を修復すると、そこから噂が広がり、アリアはよく修理などの困りごとを相談され、解決するようになった。
そんな努力によってアリアは、住民たちと打ち解けることが出来たのである。
アリアは図書館の修理を終えてアビドスに帰る道中もたくさんの人に話しかけ、そして話しかけられた。
そこは、ほんの少しだけ、以前のアビドスの様に人々の笑い声で賑わっていた。