もう一人の勇者   作:Katarina T

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IFアビドス 少女の模擬戦

アリアがアビドスの生徒会室に戻ると、ホシノが一人書類仕事をこなしていた。

 

「アリア、戻って来てたんですか。」

 

アリアがやって来た気配を察知したホシノは、手元の書類から目を離し、入り口にいるアリアに視線を向ける。

 

「はい!本機ただいま戻りました!物資の調達はばっちりです!」

 

「そうですか、お疲れ様です。……ずいぶんと時間がかかっていますが……また、頼まれごとですか?」

 

「その通りです!本日も本機はめいっぱい活躍してきました!」

 

「……全く、よく飽きませんね、貴方は。」

 

やや呆れながらそう言うと、ホシノはぐぐーーっと肩のコリをほぐすように体を伸ばした。

アリアがそんなホシノの様子を見て、傍に駆け寄って、ホシノの顔を覗き込んだ。

 

「んんん?ホシノお疲れですか?疲れたのなら本機がマッサージしてホシノを癒してあげますよ!」

 

「い、いえ、結構です!単に座りっぱなしで体が硬くなってただけなので。」

 

「そうですか、わかりました……。……でも、無理は禁物ですよ!本機にできることがあれば、何なりとお申し付けてください!」

 

アリアはふんっふんっと両手を握りながら、やる気満々というような具合にホシノを凝視している。

どうやら何か用事を言わない限り、その場から動く気はないようだ。

 

とは言え、今日すべき書類は全て片付いており、アリアに頼むような仕事は特にないため、どうしようかとホシノは考えた。

 

アリアに今日の仕事はもう無いことを伝えて大人しく休んでもらおうか。……いや、この手助け大好きロボット娘がそんな簡単に納得するはずがありません。

ならば、明日の仕事を前倒しで終わらせるか。……でも、今からやると中途半端なところまでしか終わらないか。……ううーーん。

 

ホシノがその様に悩んでいると、そうです。と何か思いついたような表情を浮かべる。

 

「アリア。仕事の手伝いというわけではないですが、少しいいですか?」

 

ホシノは椅子から立ち上がると、何故か壁に立てかけていた自分の銃を握り、調子を確かめた。

 

「長時間、ずっと座っての作業でしたので、軽く体を動かしたいと思っていたんですよ。……暇でしたら、模擬戦に付き合って下さい。」

 

ホシノは銃の調子が問題ないことを確認すると、訓練用のゴム弾を手に取りながら、アリアをグラウンドに誘った。

 

「はい!もちろん構いませんよ!」

 

それに対し、アリアは迷うことなくグラウンドに向かって走り出して行った。

 

 

 

 

 

 

アビドス校のグラウンド。

 

校門から入って直ぐに拡がるその場所は、アビドス本館よりも広い大きさの敷地であり、所々にサバイバルゲームで置かれているバリケードが設置されている。

 

そんなグラウンドの左端には、ホシノが愛銃である『Eye of Horus』を構えて立っている。

ホシノは、防弾チョッキとサイドアームである拳銃まで装備し、いつでも動けるように軽くストレッチをしていた。

 

その反対の右端では、アリアが立っており、その手には、あの廃墟で見つけた傘型のAR銃、『アイギス』(アリア命名)が握られている。

その表情には、先ほどと同じようなやる気が満ちているが、どこか真剣みを帯びていた。

 

 

『いいですか、もうすぐ学校のチャイムがなるので、それを合図に開始しますよ。勝敗は()()()()()()降参あるいは、相手の動きを完全に制止させた場合で決着ですからね。』

 

「はい!本機了解しました!全力を尽くします!」

 

『ええ。こちらも負けるつもりはありませんよ。』

 

そう通信機越しに会話を終えると、二人は開始の合図を静かに待った。

 

―――そして。

 

ゴー――――ン……。

 

開催を告げる時計の音が鳴り響き、二人は同時に互いに向かって駆け出した。

 

 

最初に仕掛けたのは、ホシノからだ。

 

ホシノは突っ込んでくるアリアに向かって、ショットガンを連射する。

 

ショットガンの弾は、発射地点から離れるほど広範囲に弾がばら撒かれ避けて通ることが不可能になり、アリアは進行を停止し、ほぼ条件反射に近い動作で近くのバリケードへと避難する。

 

ホシノはアリアが隠れたバリケードに意識を集中させながら、アリアの動きを阻害するようにショットガンを撃ち込んでいく。

その行動は攻撃というよりはアリアを自分に近づけさせないことがメインであった。

 

アリアの怪力は、ホシノもよく知っている。

この数か月間何度か目にする機会はあったし、アリアも特別隠しているわけじゃなく、寧ろその怪力を活かして大量の荷物を一気に運ぶ姿がよく見られている。

最初見た時は見た目とのギャップで一々驚いていたが、流石に今では見慣れたものだが、その怪力は闘いの中では脅威だ。

仮にホシノがアリアの手の届く距離まで接近を許したら、武術とか技とか関係なく、無理やりホシノを押さえつけ、勝負はついてしまう事だろう。

ホシノもそれが分かっているからこそ、本来ショットガンの射程である接近戦を捨て、距離を取って動きの阻害に徹している。

 

しかし、アリアは何も近接しかできないわけではない。

 

アリアは、ホシノの銃撃の隙間を縫ううように、ショットガンからの攻撃が来なくなった瞬間、自身の持っているARを乱射する。

 

「くっ」

 

アリアの反撃にホシノもバリケードに身を隠す。

流石に狙いを定める余裕はなかったようで、アリアのARはホシノに当たることは無かったが、隙を作るには十分だ。

 

アリアは隠れていたバリケードから身を出すと、急いでUFGを起動して今度はホシノから距離を取った。

さっきの攻防で闇雲に近づくことは出来ないと踏んだようで、アリアは接近して捕獲から、ARによる中距離からの銃撃に作戦を切り替えた。

 

アリアは、十分に距離を離すと、さっきのお返しとばかりにホシノが隠れているバリケード付近めがけてARを発射する。

 

ドガガガッ!!

 

その銃撃をバリケードで防ぎつつ、ホシノは作戦を考える。

 

アリアの狙いは恐らく、ホシノがバリケードの外に出て自分に接近してくることだろう。

 

この状況化でホシノが勝つには、自分のショットガンが最大の威力を発揮でき、尚且つアリアの手が届かない距離で戦うしかない。

ホシノだって、普通ならそう考える。

しかし、アリアにはあのUFGがある。光のワイヤーによる高速移動は直線状にしか移動できないにせよ厄介だ。仮にホシノが近づこうものならUFGを使い一気に距離を詰められるのが落ちだろう。

 

「……だったら、敢えてそれを逆手にとりますか。」

 

ホシノは一瞬の隙を着いてバリケードから出ると、持ち前の素早い身のこなしで、一気にアリアとの距離を詰める。

 

アリアはARで近づいてくるホシノを迎撃しようとするが、ホシノが上手くバリケードを経由しながら移動しているため、正確に狙いが定められず、アリアの攻撃はホシノを捉えることが出来ない。

 

そうして、アリアが手間取っていると、ホシノが遂にショットガンの有効射程距離、約50m付近にまで近づいてきた。

 

ならばと、アリアはARでの攻撃を諦め、UFGを使ってホシノとの距離を詰めようとする。

 

――――しかし、その前にホシノが投げた煙幕がアリアとホシノを包み込んだ。

 

「―――ッ!?」

 

UFGを発射しようとするアリアの手が思わず止まる。

なぜなら、UFGは一直線にしか進めない性質上、障害物の有無など移動先の地形を確認をしなければならない。いくら先ほどまで見ていた景色とはいえ、いきなり視界を奪われたことでアリアの判断に一瞬の迷いが生じてしまった。

 

そして、その隙をホシノが見逃すわけがない。

 

「――これで、終わりです。」

 

十分に接近したホシノの『Eye of Horus』から自身の神秘を乗せた渾身の弾幕が発射された。

 

ドガ―――ン!!

 

絶対にショットガンからなるはずないような音と共にアリアがいた付近で爆発が起きる。

いくら訓練用の非殺傷弾と言えど、まともに当たれば戦闘不能は確実だと思われる威力を持っていると感じさせる。

 

ホシノもアリアが避ける隙は無く、勝敗は決まったと感じていた。

 

「ふう……。危ないところでした。」

 

だが、煙が晴れた時、アリアは特にダメージを負っている様子はなく、変わらずそこに立っていた。

その理由は、手元で広げられているアイギスを見てホシノは直ぐに察した。

 

アイギスの特徴は、普通のARとしての機能の他に傘のような外見そのままに広げることができ、まるで盾のように攻撃を防ぐことが出来る。

 

「相変わらず、ふざけた見た目の割に厄介な性能してますねっ。」

 

「今度は、本機の番です!」

 

そう言うと、アイギスの銃口にエネルギーが溜まっていく。

 

不味いと思ったホシノが咄嗟にその場から離脱するのと同時、アイギスから先ほどまでとは比べものにならない、完全にレーザーであろう攻撃が発射された。

 

ドゴー―――ン!!

 

先ほどのホシノと変わらないくらい爆発をおこすアリアの攻撃を間一髪で避けることができたホシノは、額に若干の汗をにじませ、少し楽しそうに好戦的な笑みを浮かべた。

 

「全く、いつも思いますけど、どういう原理何ですかそれ。」

 

「ううん……。外してしまいました。本機の弾道予測を修正……。次は当てますよホシノ!」

 

「……ふんッ!こっちのセリフです!次は防御する暇は与えませんよ!」

 

二人の模擬戦はその後も更に激しさを増していき、全く決着がつかず長時間続くことになった。

 

 

 

――――そして。用事があって、市街地に出かけていたユメが帰って来ると、そこには。

 

「ひぃん!!なにこれーーーーー!!!」

 

二人の戦闘余波でバリケードもほとんどが半壊し、ボコボコになったグラウンドがあった。

 

そのあまりに酷い光景を見て絶叫したユメは、原因であろう二人をとっちめるべく、急いで教室に向かって行くのであった。

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