「全くも~~~っ、元気がいいのは良いことだけど、二人ともやりすぎだよ!」
プンプンっという擬音が聞こえてきそうなくらい頬を膨らましているユメの前には、申し訳なさそうに頬を掻いてるホシノと、怒られている原因が分かっておらず首をかしげているアリアの二人が正座していた。
普段のホシノがユメを叱ることが多いことを知っている人が見れば、今の生徒会室の光景は珍しいなあと思うであろう。
「すいませんでした……。軽く体を動かすつもりだったんですが……、なんか次第に楽しくなってきて。」
「本機もです!本機もホシノと遊ぶのとっても楽しかったです!」
「いちいち言わなくていいですから!?」
「もう……。二人とも私の話ちゃんと聞いてる?―――とにかく、やりすぎはダメ!校舎は大事にしないとだし!なにより怪我したら大変なんだからね!!」
一通り注意はしたと判断したユメは、二人を解放すると、自分の机の中を漁り出した。
「グラウンドは後で本機が直しておきますね!前よりもっときれいにして見せますので、楽しみにしててください!」
「いや、私が直しますよ。元々は私が誘ったのが原因ですから。」
「それなら、二人で直しましょう!二人でやれば効率は二倍になります!時間の有効活用です!」
「それ、使い方間違ってますよ。……でも、そう言ってくれるならお願いします。………………あと、ありがとうございます。」
「えへへ~~。どういたしましてっです!」
「うんうん。二人共、仲良しさんだね~~~。二人がこんなに仲良くなることができて、私も嬉しいよ~~~。」
「余計なお世話ですよ!というか、ユメ先輩さっきからなに探してるんですか?」
「ふっふっふ……。それはねぇ……。じゃーーーん!!」
ユメは一枚のポスターをアリア達の前に掲げて見せた。
「ホシノちゃんアリアちゃん見て見てーー!アビドス砂祭りの昔のポスター!やっと手に入れたよー!」
ユメが取り出したポスターには砂漠の風景にヤシの木やオアシスのような湖がデザインされており、中央に大きく正三角形のアビドスの校章と『アビドス砂祭り』と記載されていた。
「この時はまだ、オアシスが湖みたいに広がってたんだよねー。」
「おお!すっごく楽しそうですね!」
「うん!すっごく素敵だったと思うなー。もし何か奇跡が起きたら、またこの頃みたいに人がたくさん集まって、そしたらね――――」
アリアとユメがポスターを眺めながら、楽しそうにアビドス砂祭りについての話題で盛り上がっている。
しかし、ホシノはそんな二人を呆れたように眺めていた。
「なにを探してるのかと思えば……奇跡なんてそう簡単に起きるわけありませんよ。」
「ふえ?」
「ホシノ?」
二人がホシノの方に視線を向けると、ホシノが興味なさげに話し出した。
「こんな砂漠のド真ん中に、大勢の人なんてくるはずないですよ。所詮、夢物語でしかありませんよ。」
「うえぇ、だってホシノちゃーん……。」
ホシノは切り捨てるようにそう言うと、ため息をつきながら椅子に腰かける。
ユメも先ほどまでの元気が無くなり何も言わずに、若干申し訳なさそうな顔でホシノの方を見る。ユメ自身、奇跡が起きたらなどと言っている時点で、ホシノと同意見であるから。
しかし、アリアはユメからポスターを受け取ると、ホシノの前まで移動した。
「ホシノはやりたくないんですか。砂祭りとっても楽しそうですよ!」
そう言いながら、ホシノの目の前にポスターを見せつける。
ホシノは鬱陶しそうにアリアの方を向いた。
「……だから、そんなのは夢物がtっ、」
ホシノの言葉が途中で詰まってしまう。なぜなら、ホシノを見ているアリアの瞳があまりに純粋で真っ直ぐで希望に満ちているようにキラキラとしていたからだ。
流石にこれには勝てないと踏んで、なにか諦めたように、はーーっと息をはいた。
「……別にやりたくない訳じゃありませんよ。ただ現実的に私たちだけじゃ、人手が足りな過ぎて無理ですよ。」
「そうなんですか?」
「当たり前です。それに人手不足を抜きにしても、このお祭りの開催場所のオアシスは干上がってます。開催したくても出来ませんよ。」
「そうですか……。残念です……。」
ホシノに説明されたアリアが落ち込んだように肩を落としてしまう。
そんなアリアを見て、ホシノは……ですが、っと小さな声で呟いた。
「……ですが、もし本当にこの時みたいに人が集まってくれたら……私も嬉しいですよ。」
普段であれば、決して口にしないようなことを言い、ホシノは若干気恥ずかしさを感じている。
そんなホシノをアリアとユメがジッと見つめていた。
「ホシノ……。」
「ホシノちゃん……。」
「な、なんですか!二人して!なにニヤついてこっち見てるんですか!!」
「だって、ねえ~~。」
「はい!ホシノはやっぱり素直じゃありません!」
「ふふっそうかもね。でも、そこがホシノちゃんの可愛いところだよ。」
「はい!本機も理解しています!ホシノはとっても可愛くて優しいです!」
「だよねだよね!さっきみたいに私たちを気遣ってくれるところとか、ほんとホシノちゃん優しいよね!」
「本機知ってます!ホシノのような人のことをツンデレって言うんですよね!」
「ああ、なるほどホシノちゃんはツンデレさんだったのか~~。」
「はい、ホシノはツンデレです!!」
「だあああーーー!!人がせっかく励まそうと思ったのに!!こんのアホ先輩とポンコツロボがっ!上等です!ケンカなら買ってあげますから覚悟してください!!」
ホシノは顔を真っ赤にしながら、ショットガンを二人に構えた。
ユメとアリアはヤバイと思い、二人して逃げるように生徒会室から飛び出した。
「不味いです!ホシノが凶暴化してしまいました!鬼みたいです!」
「ひぃん!ゴメンよー!ホシノちゃん!調子に乗って言い過ぎたことは謝るから許してよぉーーー!」
「絶対に許しません!!人のことツンデレ扱いしてーーーっ、大人しく蜂の巣になってください!!」
そこからホシノの怒りが収まるまでの数十分間、アリアとユメは怒りのまま暴れる暁のホルスから逃げ続けることになった。
因みにアビドス砂祭りのポスターは、頭にたんこぶをつけたユメが生徒会室の壁に綺麗に飾った。