もう一人の勇者   作:Katarina T

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IFアビドス 少女、救出成功………。

「──とは言ったものの、今の我々の技術では貴方の神秘に影響を与える手段が、残念ながらありません。」

 

アリアとの契約書を大事そうにデスクの中にしまいながら、黒服は非常に残念そうにそう言った。

 

「私としては、今すぐ、あなたの性能をじっくりと確認したいところですが、アリアさんと交わした契約、アビドス生徒会長、梔子ユメさんの救出への協力がある以上、そうも言ってられませんね。」

 

「そうです!ユメは!ユメはどこにいるんですか!危ないならすぐに助けに行かないといけません!」

 

アリアは焦った様子で、黒服へと詰め寄っていく。

黒服は、詰め寄るアリアを手で制しながら、デスクから取り出したタブレット端末のようなものを操作し始めた。

 

「アリアさん、まずは落ち着いて下さい。そう心配せずとも今すぐどうにかなるというわけでは無いので、大丈夫ですよ。カイザーもバカではありません。いくら衰退してるとは言え、学園として機能している生徒会長に直接手を下すとどうなるかくらい把握しているでしょうからね。……恐らくカイザーは梔子ユメさんを砂漠のどこかに放置して、衰退死させるつもりでしょう。そうすれば傍から見れば、あたかも砂漠で遭難した事故死に見えるでしょうからね。」

 

「そ、そんな――!そんなこと、絶対にさせません!!本機がユメを見つけます!!」

 

そう言い、アリアは部屋を飛び出して行こうとするが、それよりも早く黒服がアリアを止めた。

 

「お待ちください。貴方一人で探し回ったところで、この広い砂漠の中から梔子ユメさんの居場所見つけることは不可能です。」

 

「でも!?」

 

「居場所の方は、私が見つけましょう。私の持つ伝手を使えば、明日にでも見つけることは出来るでしょう。――その間アリアさんはこちらで休んでおいてください。居場所が分かり次第、貴方に連絡いたしますので。」

 

「ほ、本機にも、出来ることは――!」

 

「今の貴方に出来ることは、残念ながらありませんよ。―――ああ、それとこちらを身に付けておいて下さい。」

 

黒服は、アリアに契約書と一緒に出していた黒色の腕輪を手渡してきた。

アリアは腕輪を受け取ると、訝しげに眺めるつつ、言われた通りに自身の右腕に装着する。

 

「そちらの腕輪は、今の貴方の情報がリアルタイムで私の端末に転送される仕組みになっています。これによって貴方の現在位置はもちろん、貴方の戦闘データを取ることもできるというわけです。―――まあ、実験が出来ない間の仮のデータ収集といったところです。」

 

黒服は、そこまで言うと、――それでは、情報をお待ちください。と言いながら、その部屋から退出していった。

残されたアリアは、ユメのことが気掛かりになりつつも、自分一人で探し回ったところで意味がないと言う黒服の言い分が正しいと思い、ひたすらユメの無事を願いながら、部屋で待ち続けた。

 

 

 

 

 

――――その翌日。アリアは一睡もすることなく、部屋でずっとユメの無事を願い続けていた。

 

その部屋に昨日と同じ姿の黒服が昨日と同じ不気味な雰囲気を漂わせながら入ってきた。

 

「――おはようございますアリアさん。少しはお休みになれましたか。」

 

「いえ、あまり……。で、ですが、本機のコンディションには何の問題もありません!すぐにでも活動できます!」

 

「クックック……、それなら良かったです。なにせ、梔子ユメさんの居場所が分かったのですから。」

 

「!?本当ですか!」

 

黒服の言葉にアリアは俯いていた顔を上げると椅子から飛び上がった。

 

黒服は手に持っている端末をアリアに見せるように差し出すと、画面にはアビドスの地図が映っており、その地図のある一点を指さした。

 

その場所にアリアはすごく見覚えがあった、なにせそこはユメとホシノ、三人で初めて遊んだ場所であるったからだ。

 

「梔子ユメさんは現在、アビドス砂漠のオアシス跡地にいます。今から向かえば、まだ命に危険性はないでしょう。念のため、こちらに医療セットをご用意しておりますので、こちらをお持ちになってください。」

 

「黒服さん……。ありがとうございます!これで本機はユメを助けに行けます!」

 

アリアは黒服に一声お礼を言うと、黒服が用意した医療キットが入ったリュックを背負い、ユメがいるというオアシス跡地に向かうため、部屋を飛び出していった。

 

―――その部屋に一人残った黒服は、また端末を操作する。

 

「―――クックック。礼には及びませんよアリアさん。そう言う契約ですからね。………さて、貴方はこれから何を私達に見せてくれるのでしょうか。―――ええ、実に楽しみにしていますよ。」

 

その顔には、歪んだ微笑みが張り付いていた。

 

 

 

 

 

アリアは、先程まで黒服と話していたビルから外に出ると、UFGの起動力を活かして黒服から聞いた場所まで、最短距離で向かった。

 

本来であれば、電車やバスなどの乗り継ぎでかなりの時間がかかる距離であるが、UFGを使い建物から建物、時はそこらに転がっていた瓦礫や岩などを飛び移るように移動することで、一時間とかからずに目的地へと到着した。

 

「ユメ――――!!どこですかーーーーー!!どこにいるんですかーーーーーー!!!!」

 

アリアは、精一杯声を張り上げて、ユメを探し回った。

アリアの声が、砂一色の広い砂漠の中に響いていく。

 

すると、その声に反するように何か声のようなものがアリアの耳に聞こえてきた。

 

「―――ッ!…………。」

 

アリアはすぐさま耳にを澄まし、音が聞こえてくる方向を探った。

 

「―――リアちゃん…………アリアちゃん」

 

「こっちです!!」

 

先ほどよりもハッキリと聞えた声の方にアリアは走り出した。

 

 

 

 

アリアが向かった先はオアシス跡地のちょうど真ん中辺りであり、その場所にユメがボロボロの状態で倒れていた。

 

「ユメ!!!」

 

「アリア、ちゃん……。どうして………ここに……。」

 

「ユメを助けに来ました!!本機が来たからにはもう安心ですよ!!―――ユメ、ボロボロですね。手当てを開始するので、少し移動しましょう!!」

 

アリアは、倒れているユメをお姫様抱っこでかかえると、近くの陰になっている場所まで運ぶと、リュックからペットボトルの水を取り出すとユメに飲ませた。

 

ユメはゆっくりと水を飲みと、少しだけ元気が出てて来たのか、顔色が良くなってきた。

 

「――コク……。コク……。ぷっは~~。生き返ったよ~~。アリアちゃんありがとう!」

 

「いえ、ユメが無事で本当に良かったです!ですが、一体なにがあったんですか?」

 

「それが………私にもよく分からなくて…………。いつもの様に家に帰ってる途中で、なんか爆発が起こって気を失って……それで気が付いたらここにいて……イタッ!」

 

「大丈夫ですか!?今は動いちゃダメです!」

 

アリアは何が起こっているのか分からず、混乱しているユメをなだめつつ応急手当を済ませた。

 

「取り敢えず応急手当はしました。あとは校舎に戻ってからしましょう。きっとホシノも心配していますから。」

 

「あ、そうだね!ホシノちゃんにも迷惑かけちゃたよね!うぅぅ、心配させちゃったかな~~。」

 

「絶対に心配してますよ!早く戻ってホシノを安心させましょう!」

 

「そうだね。うん、アリアちゃんの言う通り、なにがなんだか分かんないけど、取り敢えずアビドス校に帰ろっか!」

 

「はい!アビドス校までは、本機がユメを運びます!ユメはゆっくり休んでください!」

 

「いやいや、流石にそれはアリアちゃんが大変だよ!大丈夫、少し痛いけど、歩くくらいなら出来るから。さ、一緒に帰ろう。」

 

「……そうですか。では、一緒に帰りましょう!」

 

そう言い、アリアとユメがアビドス校に帰るために歩き出した。

 

 

 

ピッシャー―――!!!

それと同時にアリア達の背後で、雷が落ちたような音と光が鳴り響いた。

そのすぐ後に強い衝撃が後ろの地面からアリア達に伝わってきた。

 

「きゃぁあああーーーーー!!!な、なに!?一体なにが起きたの!?」

 

「ユメ後ろです!!」

 

アリアがアイギスとUFGを握り、ユメとは反対方向を睨みながらそう叫んだ。

 

ユメがゆっくりとアリアが向いている方に視線を向けるとそこには……。

 

 

なに……あれ…………。

 

 

宙を浮く巨大な物体と雷で構成されたかのような色合いの手と翼を持つ異形の巨人、まるで神話にある神のような存在が、アリア達の目の前に顕現していた。

 

その胸にある目のような模様が、アリア達のことを映している。

 

―――それはまるで、決して逃がさないとでも言っているようだった。

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