「はぁ………。はぁ…………。ユメ先輩……、アリア…………。一体どこに行ったんですか……。」
アビドス砂漠のとある一角でホシノは、何かから駆り立てるようにやみくもにさまよっていた。
ホシノの目的は、昨日かか突然連絡の取れなくなったユメ先輩とアリアの捜索だ。
昨日、どれだけ待っても二人は学校に姿を見せることはなく、連絡も一向に取れない。
これは只事じゃないと直感的に悟ったホシノは、昨日からほぼ休みなく二人のことを探し回っていた。
だがこの時は、ホシノはまだ今ほど焦ってはいなかった。
どうせ、またユメ先輩が悪徳商法に引っかかってしまっただけだろうとか、いつものアリアのおせっかいで、誰かの厄介事を片付けるのに夢中で連絡を取ることを忘れてしまっているだけだろうとか、そのように考えていた。
しかし、市街地でいくら探そうとユメ先輩とアリアの居る場所の情報が一向に分からず、ホシノの中の不安感が徐々に搔き立てられていった。
結局、昨日は市街地でも二人の行方が分からないことが判明しただけであり、翌日の朝になってもユメ先輩とアリアは戻ってこず、行方も分からないままであった。
今朝ホシノは、市街地では手掛かりが無いのであれば、まさか砂漠地帯に行ったのではと考え、大急ぎで準備を整えアビドス砂漠で捜索を開始し、今に至っている。
そんな一向に何も分からず、ホシノが焦燥感に駆られている時、一台のドローンがホシノ前に飛んできた。
「クックック・・・・・・・お久しぶりです、小鳥遊ホシノさん。」
「っ!?お前は黒服―――っ」
ドローンから聞こえてきた声にホシノは警戒心を高めて、いつでも撃てるようにショットガンを構える。
「おやおや………。物騒ですね。そんなに警戒なさらずとも、私はあなた方に危害を加えるつもりはありませんよ。」
「…………。今度は何の用だか知らないけど、今はお前に構っている暇はない。」
「ええ、そうでしょうね。なにせ大切な先輩とご友人が居なくなってしまったんですから。」
「――っ!!黒服!!お前何か知っているのか!!まさか、私がダメだったからユメ先輩とアリアになにかしたのか!!答えろ!!!」
「クックック………。残念ながら梔子ユメさんの失踪に関して私は無関係ですよ。」
「そんなこと信じられるか!!」
「まあ、私としてはそれでも構いませんが。私にも契約がありますので………お二人にお会いしたいのでしたら、今あなたの携帯に送った位置情報の場所に向かって下さい。お二人はそこにいますので……。」
「誰が……お前の言う事なんて――っ」
「クックック、行くか行かないかは貴女の判断に任せますが……行かなかったら、貴方は一生後悔することになりますよ。―――では、私はこれで。」
「ま、待て!!!」
ホシノが止める暇もないドローンは空高く飛んで行ってしまった。
直後にホシノが持っているスマホから通知音がなる。
ホシノが確認して見ると、黒服の言っていたアビドス砂漠のオアシス跡地までの位置情報が入っていた。
「―――クソっ!」
罠かも知れない、ホシノにとって黒服という人物は絶対に信用できない怪しすぎる大人だ。
しかし、今のホシノにはこの場所に行くという選択肢しか残されていなかった。
それと同時刻。アリアと話していたビルの一室で、黒服は通話を終えた携帯を懐にしまうと、手に持っていたタブレット端末に視線を戻す。
「クックック……。まさか、セトの憤怒が顕現するとは……。あの生徒会長の神秘に反応したのでしょうか。――いえ、いくらあの生徒会長の神秘がかの神に由来しているモノと言えど、セトのふ憤怒が呼応するような神秘量ではないはず。ならばこれは一体…………。まるで狂った歯車を整えるかのような、本来あるべき正しいレールの戻すような、そんな意志を感じますね。……クックック、実に面白い。さて、この後どのような結末にたどり着くのか、とくと見せて頂きましょう。」
そして、セトの憤怒と対峙しているアリアとユメの周囲はいつの間にか二本のオベリスクが立ち、辺りには砂が吹きすさんでいた。
「ユメ!少しジッとしていてください!!」
「ふえ!?アリアちゃん何を、ってきゃぁあああーーー!!」
アリアは背負っていたリュックをその場に捨てると、ユメを抱え上げてUFGでその場から直ぐに離脱した。
ピッッシャーーーーー!!
そのすぐ後、さっきまでアリア達が居た場所に電撃が直撃し、地面が爆発する。
直撃してはいないが、その爆風と衝撃波がアリア達の皮膚をチリチリと焦がすよな感覚をアリア達に味合わせた。
「ひぃん!?なんて威力!ていうかあれって一体なんなの!アビドスにあんな化け物がいるなんて!?」
「本機のデータにも該当する情報がありません。一体あの存在は――っ、」
アリア達がセトの憤怒について考えようとするが、そんな暇はないとばかりにセトの憤怒は中心部にある瞳のような箇所にエネルギーをため、周囲一帯に解き放った。
バチバチと言う衝撃波がアリア達に迫る。
アリアはアイギスを展開し、何とかその衝撃波から自分とユメを守るが衝撃に耐え切れずに吹き飛ばされた。
「くっ――うう……。」
「アリアちゃん!!このーー!!」
ユメはホルスターから拳銃を抜くと、セトの憤怒に向かって発砲、吹き飛ばされたアリアもすぐに体制を立て直し、アイギスのチャージを開始した。
「ユメ、伏せてください!!――さっきのお返しです!!」
アリアはそう言うと、同時にチャージしていたエネルギーを解放し、セトの憤怒に向けてビームを放った。
チュッドーー―ン!!
アリアの放った攻撃は見事セトの憤怒に直撃し、大きな爆発を起こした。
「やった!流石アリアちゃん!これで倒せたかな?」
「……いえ、まだです。」
アリアの言う通り爆発の煙が晴れると、先ほど変わらぬセトの憤怒がそこにいた。
その姿からほとんどダメージを受けている様子が感じられなかった。
「うそ……。今の効いてないの……。」
「その様……ですね。」
アリア達はセトの憤怒の様子に驚愕したように言葉を失う。
これはアリア達は知らない事だが、セトの憤怒はスキル『黎明を喰らう暴風』で敵の使うEXスキルのダメージを大きく減らすことがことが出来る。
よってアリアのチャージ攻撃では、いくら撃っても大したダメージにはならない。
つまり状況は絶望的にアリア達が不利である。
呆然とするアリア達に向かって、再びセトの憤怒が力を貯め始めた。
アリアとユメは次にくる攻撃に備えるよに盾とアイギスを展開し構えた。
そして、セトの憤怒の攻撃で先程までより強い電撃がアリア達を襲う、
「ユメ先輩――!!アリア――!!」
ドガ―――ン!!
よりも前に横から攻撃ががセトの憤怒に直撃した。
ピッシャーーー!!
セトの憤怒はその攻撃によって体制を崩し、そのおかげで攻撃は明後日の方向に飛んで行った。
アリア達が驚いて、攻撃を行ったであろう方向に目を向けると、そこにはホシノがショットガンを抱えながらこちらに向かっている姿があった。
「「ホシノ(ちゃん)!!」」
「二人共、無事でしたか……良かった……。」
二人と合流したホシノは安堵の息を吐きながら、胸を撫で下ろした。
アリアとユメもホシノが来てくれたことに驚いているが、同時に嬉しそうに笑みを浮かべる。
「ホシノちゃん!どうしてここに!」
「どうしてって……急に二人が居なくなったから探しまわってたんですよ!全くいきなり居なくなったりしないでください。―――心配したじゃないですか……。」
「ホシノちゃん――。ゴメンね、心配させちゃって。」
「本機も反省します。すいませんでしたホシノ。」
「全く、後で二人には説教と溜まっている業務を片付けて貰いますから、覚悟しておいてください。…………にしてもあれは一体なんですか。」
ホシノは、体制を立て直して今にも攻撃を再開しそうなセトの憤怒を見ながら、額に冷や汗を流す。
さっきの攻撃でもほとんどダメージを負った様子のない、セトの憤怒は再びエネルギーを貯め始める。
「……二人共、ここは私が食い止めますので、出来るだけ遠くに逃げてください。」
「――っ、」
「っ!!?なに言ってるのホシノちゃん!!そんなことできるわけないよ!!」
「あいつから逃げるためには、ここで誰かがあいつを抑えてなきゃいけません!」
「だったら、私が足止めするよ!!私はタンクだし、なによりホシノちゃんの先輩なんだから!!」
「そんなボロボロの状態で何言ってるんですか!!ユメ先輩より私のほうが強いのは知っているでしょう!!私なら隙を見て離脱することも出来ます!」
「だからってホシノちゃん一人を置き去りなんて私には出来ない!!」
「出来なくてもやらなきゃいけなんです!!ここで三人仲良く全滅するより、一人を犠牲にしてでも生き残って、連邦生徒会にあいつに対する対策を貰って下さい!あんなのがこのアビドスに居るんじゃ復興なんて夢のまた夢なんですから!」
「でも!それならホシノちゃんが!!」
「貴方はアビドスの生徒会長なんです!!その肩にはアビドスを背負った責任があります!だからユメ先輩は生き残らなきゃダメなんです!!」
「っ!?それでも……それでも私は――っ、」
ユメとホシノ、互いが一向に譲らない言い争いを繰り広げている様子を見ながら、アリアは一人今の状況も忘れ、思考の海に入っている。
どうすれば、二人を助けることが出来るんですか……。
自分がおとりになればっという考えが浮かんだが、すぐに消した。そんな事を言っても目の前の二人が納得するはずがないだろうから。
ならば、三人で逃げるというは……。無理だ。あの電撃をかいくぐりながら無事に逃げおおせる訳がない。
ならば……ここで、倒すしかない。……でも、どうやって?
アリアはぐるぐると思考の渦に吞みこまれていく。
ユメもホシノも両方失いたくない。アビドスのため、あんな化け物を野放しにするわけにはいかない。
どうすればいい……。どうすればこの状況を変えることが出来る。
そんな思考の渦の中にのみ込まれている時、突如、何か薄っすらとした記憶をアリアは思い出した。
―――それは、ユメたちと出会う前の記憶。
自分が寝ていたあの廃墟で、誰かが眠っている自分に語りかけてくる。
「貴方には力があります。―――それをどう使うかはあなた次第です。―――貴方の選んだ選択……見させていただきますよ。」
「―――いつか、貴方が何者なのか……。その答えを私に教えてくださいね……。」
水色とピンク色が混じったような長髪の女性がそう呟くと同時にアリアは現実へと戻った。
「――そうです……。これなら」
その記憶と共に得られた確かな核心と共に。
アリアはUFGを使い、未だ言い争っているユメとホシノを追い抜き、セトの憤怒の目の前に移動する。
「もう時間がありません!!いい加減に―――っアリア!」
「アリアちゃん!?危ないから戻って!」
アリアが移動したことに驚いた二人が急いでアリアを連れ戻そうと、声を掛ける。
しかし、焦っている二人とは対照的にアリアは落ちた声で語りかける。
「大丈夫です……。二人共……。ここは、本機が何とかして見せます。」
アリアは、荒れ狂うセトの憤怒と対峙する。
セトの憤怒は目の前の存在を排除するため、貯めたエネルギーを一気に放出しする。
大きなエネルギーをもったレーザーがアリアに迫る。
「「アリア(ちゃん)!!!」」
ユメとホシノが叫ぶようにアリアの名を呼んだ。あれを喰らえばただではすまないことを確信できたからだ。
しかし、アリアはそれに対し、全く慌てるそぶりも見せず、………ただ一声呟いた。
「……セーフティ解除、起動開始。」
その瞬間、アリアに向かっていた光線がかき消される。
「「………は?」」
なにが起こったのか、分からず呆然とするユメとホシノ。
セトの憤怒ですら、自分の攻撃が突如無力化されたことに動揺してるのか動きを止める。
そんなこの場に居るものすべてが、困惑している中、張本人であるアリアだけが変わらずに行動を続ける。
「本機内のすべての権限の稼働を確認。」
「Divi:Sion Systemの全権限を掌握。……プロトコルATLAHASIS、実行に問題なし。」
「名も無き原初の王女、AL-0Eが命じる……今、ここに新た聖域を創造せよ―――!!」
その声と共にアリアを中心として発せられた光が一瞬辺りを包んだ。
あまりの光量にユメとホシノはつい目をつぶってしまう。
そして再度目を開けると、そこには―――
黒いドレスに身を包み、瞳が青と赤のオッドアイになったアリアが、宙に浮かびセトの憤怒と対峙している姿があった。