姿の変わったアリアとセトの憤怒は、相手の一挙手一投足を見逃さないように互いににらみ合っている。
アリアはもちろん、セトの憤怒までも目の前の存在が自分を脅かす存在であることを理解しているかのように、ユメとホシノのことを無視して、アリアに明確な敵意を向けている。
サー―――………、バチバチッ………。
さっきまでとは違い、風音とセトの憤怒が起こす帯電音のみが響く。
そんな戦場で、王女と神の戦いが始まった。
ピッシャー―――!!
先に仕掛けたのはセトの憤怒。自身の周囲に無数の落雷を発生させると、アリア目掛けて落雷を落した。
無数の落雷がアリアに襲い掛かる。喰らえばただではすまない威力を持っていることだろう。
しかし、アリアはその場から動く気配がない。
そして落雷が直撃する瞬間、アリアが落雷が落ちてくる方向に手をかざすと、黒い膜のようなものがアリアを包むように出現し、落ちてくる全ての落雷防いだ。
「―――多次元領域の演算処理を完了。―――敵の攻撃の無力化に成功。―――次の目標を敵の排除に選定。―――実行します。」
アリアは、アイギスの標準をセトの憤怒に向けて構えると、レーザーを乱射した。
ド―――ン!!!ド―――ン!!!ド―――ン!!!
そのレーザー一発一発が、先程までアリアが打っていた時とは比べものにならない威力になっており、セトの憤怒に直撃するたび、大きな爆発を引き起こす。
ピッシャー―――!!
しかし、そんなレーザーの雨を受けてもなお、セトの憤怒は、大したダメージを負っている様子はなく、むしろ辺りに帯電している雷が大きくなったように感じられた。
「現在の攻撃手段では、ダメージを与えるのは困難………。――――敵の情報を修正。攻撃手段の再検討を開始。」
アリアは攻撃が無駄だとわかると、一旦、セトの憤怒から距離をとろうとした。
しかし、セトの憤怒がそれ阻むようにアリアの周囲に落雷を発生させる。
まるで雷で出来た檻のように絶えず、アリアを囲むように落雷が発生したため、アリアは身動きが出来なくなってしまう。
アリアが動きを止めたことをお確認すると、セトの憤怒はアリア目掛けて雷で構成された巨大な手で殴り付けた。
アリアは咄嗟に先ほどの黒い膜を出現させ攻撃を防ぐが、衝撃により後退させられる。
「―――ッ、衝撃吸収、失敗。―――多次元領域の観測が不完全であることを確認。」
アリアが体制を立て直しながらセトの憤怒を見ると、セトの憤怒は、中心部が膨れ上がるくらいのエネルギーを貯めていた。
「――内包するエネルギー量、増加中。―――脅威レベル上昇。――エネルギー放出時の周囲への被害………甚大。」
あの攻撃を許せば、アリアだけなく下にいるユメとホシノにまで被害が及ぶことを察知したアリアは、絶対に阻止すため、対策を考える。
………その時、アリアは一つ、大きな反応が近くにあることを受信した。
「――反応検知、データベース照合。――当反応をDECAGRAMMATON、第三セフィラ・ビナー(BINAH)のモノであることを確認。――――。―――ビナーの指揮権の入手に成功。―――攻撃命令発信。対象、眼前の敵。―――排除せよ!」
アリアがそう言うと、地面が揺れ、地中より巨大な蛇のような機械が姿を現した。
その機械仕掛けの蛇、ビナーは現れるのと同時に、エネルギーを貯めているセトの憤怒に向かって体当たりをした。
ピシャー―――………。
ビナーの体当たりをもろに喰らったセトの憤怒は体制を崩してしまう。
そこに追い打ちとばかりにビナーは、長い体を捻らせセトの憤怒にぶつけるとそのまま地面へと叩き付け、そこに側面からミサイルを発射し、動きを封じる。
「対象の行動力の低下を確認。―――今が好機と判断。――対象を排除します。」
アリアは今がチャンスとばかりにセトの憤怒の真上まで急いで飛び上がる。
それに追従するようにビナーがアリアの真横まで自身の体を伸ばす。
「――プロトコルATLAHASIS実行!――
アリアがビナーに向かって手をかざすと、ビナーの体に亀裂が入り、そのまま崩れてしまう。
そして崩れたビナーの体が再度形を形成していく。
その見た目は、さながら全長数十mにもなる巨大な十字架、中心部には髑髏骸骨を模した銃把があり、下より伸びる砲身が、真下にいるセトの憤怒を捉えている。
アリアはその銃把に手を添えながら、最後の攻撃をセトの憤怒へと狙いを定まる。
セトの憤怒も最後の力を振り絞るようにエネルギーをチャージしアリアのことを見据える。
互いが最初と同じように睨み合いの構図になった――――次の瞬間!
「本機は………絶対に失ったりしません!!
光―――――――よ!!!!!!」
ピッシャー―――!!!!!!!!
特大の光線とレーザーが衝突し、周囲に撃破が走る。
互い全力で放った一撃は、初めは拮抗していたが、徐々にアリアの光線がセトの憤怒のレーザーを押していき、競り勝った!
そしてのそのままの勢いで、光線がセトの憤怒に向かって行く。
絶望の過去も……。不安な今も……。正しい未来も……。そのすべてを知ったことか!となぎ払うように光が雷の怪物を飲み込んでいった。
チュッドオオオオォォォォーーーーーン!!!!!!!
ひときわ大きな爆発音ろ眩い光が辺り一帯を包み込んだ。
やがて、徐々に光が収まると、いつもと変わらない砂漠の風景に戻ってく。
先程までの戦いなど無かったのようにあの化け物は消え失せており、代わり怪物が居たであろう場所に強大な穴が開いていた。
周囲の空間も元に戻り、明るい日差しが差し込んできた。
「終わった………んですか………。」
少し離れた場所でアリアの戦闘を見ていたホシノは、呆気にとられながら、そう言う。
その顔はポカーンと口を半開きしたような状態で固まっており、普段の彼女であれば、決してしないくらい間抜けなものになっていた。
しかし、無理もないであろう。さきの戦闘はあまりに現実離れしたようなことの連続であり、あまりの情報量に最早なにがなんだか分かんないと脳が悲鳴を上げている。
「アリアちゃん…………。アリアちゃんは!?」
そんな半分現実逃避していたホシノは、ユメの悲鳴のような声で正気に戻った。
そうだ、アリアはどうなった?――無事なのか。それとも――っ。
「っ、アリア!」
ホシノはふと横切った嫌な想像を振り払うようにアリアが戦って居た場所へと走り出した。
ユメもホシノちゃん!待ってよーーっと言いながら、ホシノの後に続いた。
「アリア!どこにいるんですか!無事なら返事してください!!」
「アリアちゃーーん!!どこーーー!返事してーー!!」
ホシノとユメは大声を上げながら、アリアを探していると、アリアが開けた大穴のすぐ近くで立っているアリアの姿が見えた。
アリアの姿は先ほどと同じ黒いドレス姿であったが、二人に気が付くと、いつもの様に
明るい笑顔を浮かべて二人の方に振り向いた。
「あっホシノちゃん!!あそこ!!あそこにアリアちゃんが居る!!おおーーい!アリアちゃーーん!!」
ユメはアリアの姿を見つけると嬉しそうに手を振りながら、駆け出そうとしたが、直ぐに砂に足を取られて転んでしまっていた。
ホシノはそんな先輩に呆れながらも、アリアが無事なことに安堵し、口元に笑みを浮かべた。
「何やってるんですか、ユメ先輩。もう少し周りを注意してください。アリア、貴方もあまり心配をかけない、で…………アリア?」
ホシノは何も言わないアリアが気になり、アリアの方に視線を戻した時。
―――――――ピキッ
そんな音と共にアリアのヘイローに亀裂が入ると、アリアは人形の様に力なくその場に倒れた。
「アリア!!!」
セトの憤怒も倒したし、ユメ先輩の死亡フラグもへし折ったし、ついでにビナーまで処理出来た。
ハッピーエンドだな!よし!!