ガタン………ガタン………。
アリアは、目を覚ますとなぜか電車の中で、一人座席に座っていた。。
電車は既に発車しているらしく、車内では線路を走る車輪の音を響かせ、一定のリズムで揺れている。
「ここは………?本機は確か………。」
アリアは今の自分が置かれている状況が飲み込めない様子で、目をパチクリ、パチクリと瞬かせながら、電車内を見渡す。
「誰も……居ないんですか。」
見渡したところ、車内にはアリア以外の乗客の姿はなく、話し声どころか物音一つ聞こえて来なかった。
アリアは、これでじゃあこの電車がどこに言っているのかも確認できませんっと、困ってしまった。
それでも、別の車両には人がいるかもしれない、もしいなくても最悪運転手さんはいるだろうと考え、アリアは気持ちを切り替える。
「―――こんにちは、アリアさん。」
「………ふえ?」
アリアが取り敢えず運転席のある方に行くため、席から立ち上がろうとした時、アリアの反対側の席から声をかけられた。
アリアが声のした方を向くと、そこには先ほどまで居なかったピンク色と水色が混じった長髪をした白い服装の生徒が席に腰掛けて、アリアのことを見ていた。
「さ、さっきまで居なかったのに、突然現れました!いったいどこから……。もしや幽霊と呼ばれる存在でしょうか?」
「ふふ……、いえ、残念ながら私は幽霊ではありませんよ。私はただの学生です。……貴方に聞きたいことがあったので、この電車に乗っているんですよ。」
「??本機に聞きたいことですか?それは何ですか?」
「―――。アリアさん、貴方はなぜあの時……。セトの憤怒が現れた時、逃げるのではなく戦おうと思ったんですか?」
「??それは、あのままだと、ユメとホシノが危ないと思ったからです。二人のことを守るために戦いました。」
「その結果、貴方は、無名の原初の王女の力に耐え切れず、貴方のヘイローは壊れてしまいました。……貴方は犠牲になってしまったんです。後悔はしてないんですか。」
「……はい、もちろんです。後悔なんてするはずがありません。」
「貴方は、自分の体が負荷に耐えられないことが分かっていたはずです。それでも貴方は迷うことなく、力を使うことを選びました。……それは、なぜですか?」
「……本機にとって、ユメとホシノは大切な存在なんです。二人に生きて欲しい……それは本機の中で、自己の延命よりも優先しなくちゃいけないタスクなんです。……だから、本機は自分の決定に後悔していません!」
「……そうですか。では、これが最後の質問です。アリアさん……貴方は、何者ですか?」
「…………。そんなの決まっています。本機は、ユメとホシノ……二人の友達です!」
「ふふっ……、そうですか、ありがとうございます。その答えを聞けて、安心しました。」
アリアの反対に座る生徒が、ゆっくりと立ち上がると、アリアに向かって頭を下げてきた
「貴方を試すようなことをしてしまい、申し訳ありません。貴方の持つ力は、あの子たちとは比べ物にならないほど大きく、このキヴォトスの根底から覆しかねないモノであったので、貴方を見極めるため、このような手段を取ることになってしまいました。……ですが、どうやら私の心配は杞憂なものであったようですね。」
「ええっと……、本機は問題ないので、気にしないで下さい。……ところで、本機は、その~~この後どうなるんでしょうか?」
アリアは、戸惑った様子で目の前の生徒に質問する。
自分は本来なら機能が停止し、動かなくなっているはずの上、ここが何処だか検討もついて無いのだから、アリアの反応は妥当だと言える。
「心配しなくても大丈夫ですよ。ここは現実とは、少し違う場所。言ってみれば貴方の心の中の様な場所なんですから、貴方の体は今もちゃんと彼女たちの傍にありますよ。」
「そ、そうなんですか。」
「ええ、それに貴方はちゃんと彼女たちのところに帰る事が出来ますよ。」
「え、ど、どういうことですか!?」
アリアは目の前の生徒が言っている事が信じられないのか、目を丸くしながら目の前の生徒を見つめる。
アリアの様子を見て、楽しそうに微笑みながら、その生徒は懐から一枚の名札を取り出すとアリア手渡した。
「機械としての……このキヴォトスを破壊する無名の王女としての貴方は確かに死にました。
ですから、ここからはただのアビドスの学生の『アリア』として、貴方の青春を送って下さい。」
そう言うと、辺り一面が光輝き、アリアの視界を真っ白に染めた。
「願わくば、いつか来るあの人や貴方の妹達の力になってあげて下さいね。────優しい勇者さん。」
「………ア、……リア、…アリア!!」
再びアリアが、目を開けるとそこはさっきまでいた電車の中ではなく、アビドス砂漠であった。
目の前には、あそこにいた不思議な雰囲気の生徒ではなく、自分の友達のユメとホシノが心配そうな表情を浮かべて自分のことを見ていた。
「ホシノ……ユメ……。」
「アリア!気がつきましたか!」
「ふえええん!!アリアちゃん、良かったよ~~~~!!」
ユメが、感極まった様子でアリアに抱きついてくる。
「ユメちょっと苦しいです…。どうしたんですか?」
「だっで~~だっで~~。」
「貴方、急に倒れたんですよ!ヘイローが壊れたようにも見えましたし……アリア、体に不調はないですか。いえ、不調じゃなくても、ちょっとした違和感があれば言ってください。」
ホシノにそう言われ、アリアはユメに抱きつかれながら、身体の調子を確かめるように手足を動かしてみる。
「特におかしなところはありませんよ!本機、絶好調です!」
「……分かりました。ですが何か気になることがあれば直ぐに言ってください。」
「そ、ぞうだよ。アリアちゃん無理しちゃダメだからね!!」
「はい!ご心配おかけしました!本機はもう大丈夫です!!」
そう言うと、アリアは立ち上がると元気よくガッツポーズをとってみせる。
アリアの様子を見て、ユメとホシノもようやく緊張が解けたのか、肩の力を抜く。
この時、地面の下からゴゴゴ……という地鳴りが鳴り響く。
「ひ、ひぃん!ま、まだ、なにかくるの!?」
「ユメ先輩とアリアは私の後ろに下がっていて下さい!!」
「ホシノ!本機も「大人しく下がってください!!」……はい。」
そんなアリア達が警戒していく中、地鳴りの正体がアリア達の前に姿を現した。
ゴゴゴゴゴゴ…………、プッシャーーーーーー!!!!!
「な!?」
「ふえ!?」
「み、水です!?水が噴き出ました!!」
なんと音の正体は、アビドス砂漠の地下に流れていた地下水脈であり、アリアが開けた大穴から噴き出るように水柱が立ち昇った。
「うっわ~~~~!!すっごいよホシノちゃん、アリアちゃん!!ホントに地下水がドカー―ンって湧き出ちゃったよ!!」
「はい!本機もとっても驚いています!やりましたねユメ、ホシノ!!」
「二人共!そんな吞気なこと言っている場合ですか!!早く逃げないとあの水に巻き込まれますよ!!」
「「ふえ?」」
そんな事を言っていると、湧き出た地下水がまるで津波の様にアリア達に向かって迫って来た。
「「「う、うわ~~~~~~~!!!」」」
アリア達は三人一斉に迫りくる水から全力で逃げると、そのままアビドス校へと………普段の日常へと帰っていった。
その日からアビドスは大きな変化が起きた。
長年枯れていたオアシスの復活に加えて、ずっと頻発していた砂嵐が、あの日を境にどういう訳かぱったりと発生する事が無くなった。
アビドスが抱えていた借金もなぜか返済が完了している上、借主であるカイザーグループ自体が今回のユメの誘拐を皮切りに今までの不正取引などといった事が連邦生徒会により暴かれたせいで事業を縮小。
カイザーの手に渡っていたはずのアビドス自治区の所有権は剝奪され、その全ての所有権をアビドス校へと譲渡された。
このことにホシノは何か裏があるんじゃないかと警戒していたが、とある生徒曰く、
『大変、素敵な物語を見せて頂いたので………その鑑賞料といったところですよ。』
とのことらしい。
―――とにかく言える事があるのならば、アビドスの止まっていた時間が、今大きく動き出した。
滅茶苦茶、強引な上にご都合主義なやり方になってしまい申し訳ありません。
本来の構想では、アリアちゃんはこのまま目覚めることなく、本編と同じような流れにするつもりだったんですが………。
どうせなら、強引にでもハッピーエンドにしたいという作者の癖が出てしまいました。
ここまで読んでくれた人には申し訳ない気持ちがありますが、それでも楽しんで頂けたなら、本当に嬉しく思います。
まだ、もう少しアリアちゃんの物語は続きますので、お付き合いください。