もう一人の勇者   作:Katarina T

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IF??? 少女の始まり

この世界(キヴォトス)には多くの生徒が存在し、日々数多の青春の物語が紡がれている。

 

それこそとある勇者とその仲間たちが、素敵なハッピーエンドをつかみ取っているこの瞬間にもどこかで新たな物語が目覚めようとしているかもしれない。

 

 

 

―――これは、ほんの少しの偶然とちょっとした奇跡によって生み出された。

 

 

新しい物語だ。

 

 

□□□

 

アビドスでおよそ何十年ぶりにもなる『アビドス砂祭り』の開催されるその少し前。

 

市街地を中心に大勢の人が忙しく、しかしとても楽しそうな顔でアビドスを再び盛り上げようと、かつてのアビドスを取り戻そうと各地で動き回っているそんな一日。

 

そんな街の賑わいも届かないようなアビドス自治区の外れにあるとある一室で黙々と目の前の機械を操作している人物がいた。

 

「クククッ……まさかたった一度の戦闘だけでこれほどの有益なデータが入手できるとは。大変うれしい誤算ですね。」

 

そう一人呟く人物の名は黒服。

 

かつてアリアに行方不明になり危険な状態のユメを助けるために契約を持ち掛けてきた大人。

 

黒のスーツで身を包み除く肌であろう場所は墨の様に真っ黒で、一目で普通の人間でないと分かる容姿と雰囲気からにじみ出る胡散臭い印象通り、生徒を平気で実験材料にするいわゆる悪い大人の一人である。

 

しかし、彼は結ぶ契約には誠実であり、決して交わした契約を反故しない。

 

事実彼は、アリアと交わした契約通り、あれ以降ホシノを含め、アビドスに何の干渉もせずにいる。

アリアにおいても、あのセトの憤怒との戦いで一度アリアが死亡同然の状態になったことにより、契約が完遂という形で切れてしまっているため手を出すような事はしなかった。

 

そんなはっきり言って最早アビドスに留まる理由がないような彼が、一体何をしているのかというと……アリアの戦闘データの解析である。

 

 

黒服とアリアとの間で交わされた契約、アリアの戦闘データの提供であるが、契約して直ぐに先の事で契約が完遂してしまったため、黒服が入手できたのは結局あのセトの憤怒との一戦だけであった。

 

しかし、黒服の反応はガッカリしたようなものではなく、全く問題ありません、むしろお釣りがくるほどですと喜びに満ちていた。

 

「無名の司祭たちの技術……セトの憤怒とういう神の力……そして全ての祖でありマスターピースともいえるであろう彼女の力。それを余すことなく観測できました。……しかし、まさかあの場でセトの憤怒が顕現するとは、せいぜいカイザーの私兵との戦闘データくらいしか期待していませんでしたが、クククッ、まさかこれ程とは!クククッ!いけませんね、柄にもなく興奮していますね。」

 

そう言いながら笑いをこらえる姿は、未知を解明しようとする一人の探求者のようでもあり、新しいおもちゃを買って貰った子供のようでもあり、普段の彼を知るの者からすれば珍しい光景であろう。

 

………そんな彼の操作している端末の画面からピコン!と何かが反応したような音がなった。

 

黒服はその音が聞こえると、先ほどまでの高揚していた気分を一旦落ち着かせて、手元の端末を操作し始める。

直ぐに音の原因であろうものに行きつくと、顔に浮かぶ瞳のような白く発光する穴を細めながら、興味深そうに呟いた。

 

「……おや、これは……。………確認する必要がありそうですね。」

 

そう言うと黒服は立ち上がり、その部屋から出て行った。

 

 

 

―――そして、その数日後。黒服はとある場所で、それを見つけていた。

 

「……クックックッ、まさか本当に存在するとは。これには私も驚きが隠せませんね。」

 

…………いや、正確に言うなら、()()()()っと言った方がいいだろう。

 

「………見たところ、本機の方ではないようですね。バックアップのようなものでしょうか。」

 

黒服がそう言うと、目の前の存在が反応するように瞳を開け、黒服の顔をジッと見つめる。

 

「起動完了。………あなたは。」

 

「おや、目覚めましたか。何かトリガーとなる物でもあったのでしょうか。………まあそれは後でいいでしょう、先ずは自己紹介としましょうか。私は黒服と申します。」

 

黒服は紳士的に頭を下げる。

 

そんな黒服をたった今目覚めたように起き上がった存在、幼い見た目に身長以上に長い黒髪と複数の大きさの違う碧色の四角形が天使の輪のように集まり頭上に浮かんでいる少女は、自身の大きく丸い碧色の瞳を瞬かせながら見つめ続けていた。

 

「よろしくお願いします。『AL-2B』さん。」

 

 

 

 

―――今、新たな物語が始まろうとしていた。

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