ヒフミと別れて早くも数日が経ったころ少女は、
「ぱんぱかぱーん。お使いクエスト成功です。おばあさん。」
「はいはい。いつもお疲れさま。今日も元気だねぇ。」
「はい。私のステータスはオールグリーン、絶好調です。」
あの駄菓子屋のおばあさんの下でお世話になっていた。
あの日少女が、ヒフミと別れ一人夜のブラックマーケットを歩いていると、
「なんだい。あの子と一緒に帰ったんじゃないのかい。」
「………ッ!?」
少女はいきなり声を掛けられたことに驚き、声の方を向くとそこには、駄菓子屋にいた猫のおばあさんが立っていた。
「こんなところをまだうろついているなんてねぇ。まだ探索クエスト中かい?」
「あ、いえ、その…………」
「………ふむ。まぁ詳しいことはあとにして、付いて来なさい。」
「…………え?」
「その様子だと行くところもないんだろう。だったらよっていきなさいな。今日はもう夜も遅いしねぇ。」
おばあさんの質問に少女が答えを詰まらすと、何かを察したように、一息つくと少女に声を掛けながら歩き出した。
少女もおばあさんの後をトテトテとついていく。
そんなこんなで、その日はおばあさんの家に厄介になり、それ以降はおばあさんに紹介して貰ったボロアパートに寝泊まりをしつつ、時折おばあさんの駄菓子屋のお手伝いや、お使いなどをして過ごしていた。
おばあさんは、どうやらブラックマーケット内でも顔が利くらしく、少女が拾ってきた銃火器を買い取ってくれる人や賞金首を引き渡す人などを少女に紹介してくれた。(何者だよ……この人)
「あの?どうしておばあさんは、こんなに優しくしてくれるんですか?」
少女がおばあさんにそう問いかけると、おばあさんは何でもないように語った。
「別に優しくしてるつもりはないよ。ここには仕事を頼んでもまともにやってくれる子がすくなくてねぇ。…………その点お嬢ちゃんは、素直だし、仕事もちゃんとやってくれる。わたしゃあそれ相応の成果を与えているだけさねぇ。」
「……?つまり、私がきちんとクエストを成功しているということですか?」
「あぁ……そういうことさね。」
「わーい。クエスト達成で経験値ザクザクです。」
というようなやり取りもあり、少女もおばあさんのことが、気に入ったのか一日に一回は、駄菓子屋に顔を見せている。
そんなある日、おばあさんは少女に問いかける。
「“友達”のことは、いいのかい?」
「………っ!?」
実は、ここに来たのは、少女だけではなく、ヒフミもだった。
ヒフミは、少女と再び会うため、最後に立ち寄った駄菓子屋に少女の行方の手がかりがないか、先生とゲーム開発部のメンバーとやって来ていたのである。
しかし、おばあさんは、"何も知らない"と答えていた。
他ならない少女自身から口止めされていたのである。
「私は…………まだ、怖いです…………」
少女が思い出すのは、あの“桃色の輪っかを浮かべた女の子”と出会った時のこと……
あの時、痛みで混乱していたとはいえ、一瞬でも本気で目の前の女の子を■■そうとした事実、それに加え以前大切な仲間を傷つけてしまった記憶…………その二つの記憶が、友達と再会させるのをためらわせる。
…………もしかしたら、今度こそ本当に…………
…………もしかしたら、また…………
ヒフミに自分の名前を聞かれたときに、思い出してしまった。
依然として、自分がまだ何者でもないという事実……
それはつまり…少女が彼女たちを傷つける存在になってしまう…そんな最悪な可能性(シナリオ)があることを指していた。
だからこそ、少女は自分が何者なのかを必死に探している。
それは傷つけたくないからなのか、はたまた…………傷つきたくないからなのかは、少女にも分からない。
「ふむ……………まあ、決めるのはあんた自身だからねぇ。あんまりごちゃごちゃ言わないけどね。一つだけ言っとくよ………」
「あんまりあの子たちを舐めない方がいいよ。」
いまだ悩んでいる、迷子の少女に向かって、小さくそれでもハッキリと告げた。