少女が初めてのパーティーメンバーをゲットして、早くも数日が経過していた。
少女は、ブラックマーケット内の自分の拠点であるボロアパートの一室で、誰かに起こされ目を覚ました。
「“少女ちゃん”、そろそろ起きて!」
「ふあぁぁ………ユメ、おはようございます。」
それは、少女の仲間である梔子ユメであった。
この数日のうちに、ユメの怪我はすっかり良くなっており、今は少女と同じ部屋で一緒に生活をしていた。
ユメに起こされた少女は、寝ぼけ眼をこすりながら朝の支度をしていく。
「あ、髪がボサボサだよ。梳いてあげるからこっち座って。」
「はぁい。ありがとぅ…ございます……ユメ…」(コクリコクリ)
少女は、今だ目が覚めていないのか、ユメの膝の上に座りながらふねをこいでいた。
ユメはそんな少女の長くきれいな黒髪を櫛で梳きながら、話しかける。
「…ねぇ、やっぱりもうちょっとちゃんとした呼び名を決めようよ。流石に“少女ちゃん”はちょっと………」
「………?ダメなんですか。」
「ダメって訳じゃないけど、あまりにもあんまりなような気がして…………」
ユメと一緒に行動する時、少女に未だ名前がないことが問題になった。
何故なら、ユメが少女のことをどう呼べばいいのか分からなかったのだ。
そもそも少女は、ここ最近ブラックマーケットに来ており、名前で呼び合うような、親密な関係になった人物はいない。
ほぼ毎朝顔を合わせているおばあさんは、少女のことを“お嬢ちゃん”と呼ぶので今まで名前が無くても困ることがなかったため、呼び名がないことを今まで対して気にしていなかったのだ。
それに気づいた少女たちは、頭を悩ませて、おばあさんに相談してみた。
「うーん………なるほどねぇ。」
「何かいい案は無いでしょうか?流石に呼び名がないと不便ですので。」
少女たちの話を聞いたおばあさんは、真剣に考えるように腕を組ながら答える。
「本当なら、さっさと名前を決めちまうのが一番なんだけどねぇ。そんな簡単に決めていいものじゃないし…………取り敢えず“少女ちゃん”とでも呼んでおきなさいな。」
「うえぇっそんな適当な!」
…………前言撤回、やっぱり真剣じゃなかったかもしれない。
おばあさんのあんまりな提案にユメが抗議するように声を上げる。
「あくまで、名前を決めるまでの仮さね。名前がない以上取り敢えずでも呼び名は必要だろう。それに分かりやすくていいじゃないか。」
「はい。私も問題なしです。今の私は名前が設定されていない少女なので、ピッタリだと思います。」
「だけどいくら何でも“少女ちゃん”は、ちょっと………」
「だったら、お前さんが付けて上げれば、いいんじゃないかい。」
「えっ!?」
「そうです。ユメの意見も聞かせて下さい。」
少女は、大きく眩しい瞳でユメを見た。どうやらユメがどんな名前を付けるのか気になっている様子だ。
突然ふられたことや少女の様子に戸惑いながらもユメは応える。
「えっと、じゃ、じゃあタマちゃんとか………」
……………………空気が凍った。
「あんた、ペットの猫じゃないんだから………」
「はい。ユメはネーミングセンス皆無です。」
「ひぃぃん………(涙声)」
そんなことがあり、取り敢えず少女の呼び名が決まるまで“少女ちゃん”と呼ぶようになった。
「ですが、ユメのセンスだとまた酷い呼び名になります。」
「ううん………そんなことないよう。そうだね……例えば、げれげれちゃん何てどうかな。」
「却下します。」
「ひぃん…………」
そんなこんなで、朝の支度を終えた二人は、アパートから出てブラックマーケットを練り歩く。
「ねえ、やっぱりこれって着けてなきゃいけないのかな?」
「おばあさんは、その方が安全だって言ってました。」
少女たちはそれぞれ黄緑色のヘルメットを着用していた。
それは、おばあさんからブラックマーケットにいると、いつ誰の恨みを買うか分からないから、顔だけでも隠しておきなと、渡されたものであり、普通のヘルメットよりも頑丈な作りをしていた。
「うん……安全のためなら仕方ないね!それで今日は、どうするの?」
「特に決めていませんが………もしやユメに何か妙案が。」
「ふっふっふ………そのまさかだよ。じゃーーん見てこれ!」
ユメは一枚のポスターを少女に見せつけて来た。
「おばあさんから聞いたんだけど、ここで凄いイベントが開催されるんだって!」
「大型イベントですか。」
ユメの言葉に少女が興味深そうに反応する。
「うん!そうだよ!とっても人が集まるイベントだから、そこならもしかしたら何か手掛かりが見つかるかもしれないし、何よりとっても楽しそうだよ!」
「はい。大型イベントは、通常より報酬が豪華になること間違いなしです。」
「じゃあさっそく、レッツゴーだよ!!」
「はい。全速前進です!」
少女とユメは楽しそうに、駆け出していく。
「ところでユメ。イベントが開催されるのは、どこなんですか?」
「あ!ごめんごめん。そう言えば教えてなかったね。開催場所は、
…………オペラハウスだよ!」
ねえ、ツッコミ役がいないよこのパーティー……