少女たちとは違い、正式に依頼を受けた錠前サオリは、警戒するように少女二人に目を向ける。
「…ん?どうした…お前たちの名前を聞かせて、くれないのか?」
ユメは、サオリから出ている雰囲気に呑まれ、若干言葉を詰まらせてしまう。
しかし、少女は気にした様子もなく、サオリに話しかけた。
「おお。そのただならぬ風格……そなた相当長く戦い続けた歴戦の戦士と見える。」
「ほう…一目見ただけで、私の素性を当てて来るとは…なるほど、噂どおりただ者では、ないと言うことか。」
「ふっふっふ。戦士どのに私の名前を教えて差し上げたいが、あいにく今の私に名乗ることのできる名はない。よって私のことは気軽に少女ちゃんとでも呼びたまえ。」
「えっと…少女ちゃん急にどうしたの…?」
「名がないとはいったいどういう………はっ!?そうか!」
突然妙な口調で話し出した少女に困惑するユメを差し置いて、サオリは少女が言った内容にはっとなり、言葉を続けた。
「この業界で、安易に自分の情報を明かすなど、愚の骨頂…それも今初めて会ったばかりで、互いが信じられるか分からないのであればより警戒を持って自身の情報は管理しなければならないと……そう言うことだな、賞金稼ぎ。」
「えっ!そうだったの少女ちゃん?」
サオリは、一人で勝手に納得すると、関心するように少女を見ると、手を差し伸べてきた。
「まさか出会ってそうそうに教えられることになるとは…ずいぶん頼もしいな……改めて、今回はよろしく頼む賞金稼ぎ、いや少女ちゃん。」
「ええ。お互いにベストを尽くそうぞ。」
「えっと……取り敢えずよろしくってことでいいのかな?」
少女とサオリの噛み合っているようで、何一つ噛み合ってない会話を聞き、ユメは言ってることが何一つ理解できなかったが取り敢えずは険悪な雰囲気ではないため、まあ、大丈夫だよね!と深く考えず流してしまう。
「話は済んだようだな…では、もうすぐボスが会場に到着する。お前たちは、指定された部屋で待機し、指示を待て。」
「あぁそうか…ではまた後で、少女ちゃんたち頼りにしている。」
少女とユメは、部屋を後にし、自分たちの待機する場所へと案内された。
案内の途中でギャング少女が話し始めた。
「既に知っているとは思うが、今回お前たちに護衛して貰う御方は、我々ギャング連合のトップ「ドン・アランチーノ」様だ。あの方は我々組織には居なくてはならない御方なのだが、いかんせん名が売れ過ぎていてな。妬んで、ボスを拐おうとするバカが現れることがあってな。おまけに今回はボスを狙っているという情報がいくつも入ってきている。」
「ええ!それなら何でオペラハウスに来るの!隠れてたほうがいいよ!?」
「私もそう思うんだが…ボスは面子を大事にする御方だ。他の勢力に舐められることがないように、何が起きようとスケジュール通りにことを進めるだろうな」
「ふむ。彼には、彼なりの事情があるということだな。」
「ああ、そう言うことだ。基本的ボスの周囲は我々が固めている。だからお前たちには、有事の際ボスの安全を確保して貰うことになる。」
「ふむ。まかせたまえ、依頼はしっかりと遂行して見せよう。」
「期待している……と、ここがお前たちが待機する部屋だ。それでは、よろしく頼む。」
少女とユメは、案内された部屋に備えられた椅子にそれぞれ腰掛けると、ユメは先ほどから気になっていたことを少女に問いかけた。
「ねぇ少女ちゃん。さっきから、どうして変な口調で話してるの?」
「はい。これは私のもう一つの顔……つまり裏モードです。おばあさんからこの業界では、舐められたらいけないと聞いたので、頑張って考えました。」
「へえ、偉いね少女ちゃん。とってもカッコ良かったよ!」
「へへへ。褒めて貰えて嬉しいです。」
ユメは少女の頭を優しく撫でながら褒めており、少女は嬉しそうに笑いながら、ユメに頭を差し出す。
その様にしばらく用意された部屋で、楽しそうに談笑していると、突然銃撃音と爆発音が部屋の外より聞こえてきた。
するとあらかじめ渡されていたトランシーバーより、通信が入ってきた。
「こちらサオリだ。現在依頼人を護衛しながら、地下駐車場まで移動中…応援を頼む」
「ああ…私だ…状況は理解した。これより我等も赴こうぞ歴戦の戦士よ。地下に降りる階段付近で合流するとしよう。」
「了解した。此方もそちらに移動する。」
通信が切れると、少女とユメは各々の武器を担ぎ、ヘルメットを装着した。
「じゃあ、いこうか!少女ちゃん!」
「はい。これより護衛クエストを開始します。」