少女がサオリの訓練を終えた翌日、少女たち三人はおばあさんから紹介して貰った工事のバイトにやって来ていた。
「よいっしょっと…ふうぅ資材運びって結構大変だね。」
「ああ。運ぶ物資が多いからな…ほらユメ、これを」
サオリはユメに水の入ったペットボトルを差し出した。
「最近は気温も下がったとはいえ、汗はかくだろう…こまめに水分はとっておいたほうがいい。」
「ありがとうサオリちゃん。」
ユメは受け取ったペットボトルから水を飲むと辺りを見回した。
「あれ?そういえば少女ちゃんは、何処に………ってええ!?」
ユメが見た方向には、先ほどユメたちが運んでいた量の軽く数倍は在るであろう資材を持ち上げ、いつもと変わらない足取りで歩く少女がいた。
少女も此方を見ていたユメたちに気づいたのか、一旦荷物を置いてユメたちの方にやって来ていた。
「ユメ。サオリ。二人ともお疲れ様です。」
「しょ、少女ちゃんすごい量だけど重くないの?」
「はい。私の筋力数値は既にカンストしていますから、あのくらい問題ありません。」
「そっかぁすごいなぁ。」
「あれだけの量を軽々と運ぶとは…流石だな。しかし水分補給は大事だ…ほら少女ちゃんも飲んでおけ。」
「わーい。補給支援、感謝です。」
少女もサオリから渡されたペットボトルから水を飲みながら、この後の作業について尋ねた。
「そういえば、この後は何をするんですか。」
「物質を運び終えたら、今度は支柱を入れるための土木作業がメインになってくるだろう。」
「まだまだ、大変そう…」
「はい。二人も頑張りましょう。これが終わったら私たちはまた一つレベルアップ出来ます。」
少女たちは、気合いを入れ直しこの後も作業を続けた。
………日が傾き始めた頃、ようやく作業が終わり、少女たちはロッカールームで帰宅する準備をしていた。
「二人ともお疲れ様です。無事にクエスト達成です。」
「少女ちゃんもお疲れさま。大活躍だったね!現場の人褒めてたよ!」
「ユメの言う通り…本当に見ていて驚かされる働きだった。」
二人が褒めてくれることが嬉しいのか、少女は胸を張っている。
「ふふん。私は毎日よく寝て、よく食べて日々レベルアップを重ねているのであのくらい余裕です。」
「…なるほど、体が基本と言うことか。」
「偉いなぁ少女ちゃんは、私も見習わないと!」
少女たちが普段の服装に着替え、荷物をまとめ終えるとサオリが同じく着替えをしている、一人の生徒にちらりと視線を向けた。
「…………うん?あれは………………」
「……?サオリどうしたんですか?」
少女とユメもサオリの視線の先にいる生徒に気づかれないように目を向ける。
「誰かな?もしかしてお友達?」
「…いや、話したこともない。ただバイト先でよく見かけることが多くてな。」
「へえぇ仕事熱心な子なんだね。」
「だろうな。今日も含めて、見かけたときは真面目に働いている。……ただ、私が言えたことではないが、いつも一人のようなんでな。少し気になってただけだ。」
「そうなんだ……なら今度見かけたら声かけてみようよ!っね少女ちゃん!……………少女ちゃん?」
ユメが返事のない少女の方を向くと………少女は先ほどまで生徒がいた場所を未だに見続けていた。
生徒は着替えを終えたのか、もうロッカールームにはいなかった。
ユメが少女の肩をゆすりながら再度話しかけてくる。
「少女ちゃんどうかしたの?」
「分かりません。…………ただ…さっきの人のことが気になるんです。」
「気になる…先ほどの生徒のことがか?」
「はい。上手く言葉にできませんが、何だかすごく気になるんです。」
「うーんそれなら尚のこと、今度会ったらおしゃべりしないとね!さっ今日はもう遅いし、帰ろっか。」
ユメがそう言い少女とサオリの背を押しながら家路についた。
…………家に帰ってからも少女はあの生徒のことが頭から離れずにいた。
ユメは、夕食の買い出しをしに行き、サオリは今回バイトを紹介して貰ったお礼と次回のバイトの予定の確認のために駄菓子屋へと行っており、自宅には少女一人だった。
いつもならどちらかについて、行くのだが…………どうやらそんな気分ではないらしい。
「どうしてあの人のことが……こんなに気になるのでしょう。」
少女は、一人呟くが………部屋の中は静まり返っていた。
何時の間にか、にぎやかになっていた部屋が静寂に包まれていることが余計に少女の気持ちを揺さぶり、居ても立っても居られず、外にくりだした。
…………それからしばらくの間、少女は目的もなくただ歩き続けた。
頭の中には………未だにあの時見た生徒の表情がこびりついていた。
「…………あれ?いつの間にかこんなところまで来ていました。」
少女は気づいたらブラックマーケットから少し外れたところにある開けた公園の前に来ていた。
そろそろ戻らないと、ユメやサオリに心配をかけてしまうと考え、来た道を戻ろうとしたところ公園のベンチに誰かが座っているのが見えた。
「っあ。あの人は……」
それは、バイト先で見かけた………少女がずっと気にしていた生徒だった。
少女はそのことに気づくと少し早足になりながら、生徒に近づいて話しかけた。
「こんばんわです。あの少しお話してもいいですか?」
「ん………こんばんわ。少しならいいけどあなたは?」
少女と、長い銀髪に水色の瞳に瞳孔の色が左右で違うオッドアイの、何処か大人の雰囲気を発している、頭に黒く輝くヘイローを浮かべた生徒との星空の下での語らいが始まった。