もう一人の勇者   作:Katarina T

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本編
少女の目覚め、物語の始まり(プロローグ)


(ピピ――――ピピピ――――)

 

学園都市キヴォトスにある三大校の一校、技術と探求が盛んな学園であるミレニアムサイエンススクール。

その学区内のとある廃墟の薄暗い地下深くで、突如小さな電子音が鳴り響いた。

 

『AL-1Sに重大な異常を確認……AL-1Sの活動続行が困難と判断……AL-2Bの休眠状態を解除します』

 

電子音と共に発せられた機械音声がその様な言葉を告げると同時に、一人の少女が目を覚ました。

 

「………。」

 

少女の見た目は幼く、自身の身長以上に長く綺麗な黒髪、頭の上には複数の大きさがバラバラな碧色の長方形や正方形が集まり、まるで天使の輪っかのように薄く光りながら浮かんでいる。

 

少女は、自身の大きく丸い碧色の瞳を数度瞬かせると、自身のいる部屋をゆっくりと見回した。

 

そこはボロボロな廃墟の一室であり、壁のいたるところにひび割れが入り、地面には苔や雑草が芽吹き、半ば自然の一部と化していた。

 

以前は人の出入りがあったであろうことが予想できるような機械類などの痕跡もあるが、今のそこは完全に人の気配はなく、まるで人々の記憶から忘れられたような物静かで寂しい空間であった。

 

少女は一通り自身のいる場所を把握すると、少し下を向きながら消え入りそうな小さな声でポツリと呟いた。

 

「わ…た…し…は…………。」

 

少女の言葉はそこで切れてしまい、それ以降の言葉が続かない。

まるで自分が何者なのか分からないかのように、続く言葉を発することなく、それでも何か続けようとしているのか、唇を震えさせ固まってしまう。

少女は暫くの間そのまま続く言葉を探したが、結局言葉を見つけることが出来なかったのか、そのまま口を噤んだ。

 

少女はゆっくりとうつむいていた顔を上ると、自分が寝ていた椅子のような台座から降りて廃墟の床に立ち上がった。

 

特にふらつく事なく立ち上がった少女は、もう一度自身の周囲を見回し、自身が眠っていた空間を観察する。

 

目に見える周囲には、自身が寝ていた台座の他は先ほど見た時と同じく壊れた端末や千切れたコードのような物しかなかった。

 

しかし壁の一角、少女が寝ていた場所の正面に大きな扉が少女の瞳に映り込んだ。

 

(ペタ…ペタ…ペタ…ペタ…)

 

少女は冷たい廃墟の床を素足でゆっくり歩き、この空間唯一の出入り口である扉の前へと向かった。

その扉は大きく頑丈な作りをしており、傍から見ると開けることは困難であるという印象を抱かせる物であった。

しかし、少女が扉に手を当てると、それに反応するように扉がひとりでに動いた。

 

(ギィィィィィィガッシャン)

 

余程長い間稼働してなかったのか重い音を鳴らしながら扉は開き切るとそれ以降動かなくなった。

 

(ペタ…ペタ…ペタ…ペタ…)

 

少女は一歩一歩廃墟の廊下を歩く。自分がいた楽園(空虚で冷たい空間)より未知の世界へ行くために。

自分が何者なのか、何のために生まれたのか、これから何処に向かえばよいのか………

多くの疑問や自身ですら理解できていない”胸の内にある何か”を抱えながら、それでもまるで何かに突き動かされるかのように少女はゆっくりと進んでいく。

 

「………わたしは……なに?」

 

不意にこぼしたその疑問の答えを探すために………

 

これは、本来なら決して目覚める(紡がれる)ことの無かった、もう一人の少女(勇者)の物語。

 

 

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