暴走していたガードロボットを蹴散らした少女たちは、その後少しデパート内で買い物を済ますと、適当に周辺を散策していた。
すると、サオリが何か思いだしたように何かを取り出した。
「そう言えば、昨日おばあさんからこれを頂いていたな。」
サオリが取り出したのは、水族館の無料チケットだった。
「それって水族館のチケットだよね?」
「ああ。どうやら知り合いから頂いたらしくてな、皆で行ってこいと渡された。」
「水族館って何ですか?」
少女は水族館がどういう所なのかわからないらしくあたまを傾げている。
「あれ?少女ちゃん、水族館知らないの?お魚がたっくさんいるとっても楽しい場所だよ。」
ユメの言葉に少女は目を輝かせ、ユメの手を引いていく。
「すごく楽しそうです。さっそく行きましょう。」
「うん。そうだね。ちょうどこの近くみたいだし、みんなで行こっか!」
「おばあさんからの厚意を無下にするわけにもいかないからな。」
少女たちが水族館に行こうとする中、シロコは少し表情を暗くしながら話し出す。
「……ん。それじゃあ私はこれで……楽しかった……またね。」
少女たちから、離れようとしたシロコの手を少女ががっしりと掴んだ。
「何言ってるんですか。当然シロコも一緒です。」
「ん。でも私の分のチケットはないよ。」
「そんなの向こうで用意すればいいよ!折角ここまで一緒だったんだから、一緒に水族館に行こうよ!」
「で、でもそこまで迷惑をかけるのは…」
「誰も迷惑だと思ってないさ…諦めてついてこい。」
「はい。そうです、諦めて一緒に来てください。」
遠慮気味なシロコを引き摺りながら、少女たちは水族館へと向かって行った。
「わぁぁぁぁ。すごいです。」
無事に水族館に入った少女は、水族館内に設置されてある巨大水槽の前で、先ほどよりも目を輝かせながら水槽内を凝視している。
「サオリ、ユメ、シロコ、魚が沢山です。」
「ああ……壮観だな…これだけの数を見ることができるとは……」
「うあぁスッゴイね!!」
「ん。本当にすごいね。」
どうやら、少女以外の子たちも初めてみる光景に見惚れているようで…若干口数も少なくなり、目の前の水槽を眺めている。
……その後も少女たちは水族館を見て回って行った。
「皆、見てください。あんなに大きな魚が泳いでいます。」
「あれは、何て言う魚なんだ。」
「確かクジラっていうんじゃなかったかな。」
「ん。あれを釣り上げるのは流石に難しい。」
「ここは、何だか暗いな。皆、足元に気を付けろ。」
「おお。この魚何だか変な顔をしています。」
「本当だ。何だかとぼけた顔してる!」
「ん。この魚も食べれるのかな。」
「ここにいる魚は、皆小さくて弱そうです。」
「ん。色んな種類の魚がいる。」
「本当に色も姿もまばらだな。………こんなにたくさんいるとは。」
「海の中って不思議だねぇ。」
「うわぁ……!この廊下全面水槽になってるよ皆!」
「はい。周りに魚の群れを確認しました。」
「少女ちゃん走ると危ないてっうぉ!な、何か平たいものが横切ったぞ!」
「ん。あれは確かエイって子だったはず。」
…………少女たちは水族館を思いっ切り楽しんでいるようだ。
「サオリ、これは何やらぬめッとします。」
「少女ちゃん…………これは本当に触って平気なのか?」
少女とサオリがふれあい水槽でナマコやヒトデを触ったり、持ち上げたりしている。
少し離れたベンチでは、ユメとシロコがはしゃぎ疲れたのか、休憩を取っていた。
「う、ううん……楽しいけど、少し疲れちゃったなあ…………シロコちゃんは、平気?」
「ん。全然平気、問題ない。」
「そっかあシロコちゃん体力あるなぁ。…………私はもうへとへとだよぉ……」
ユメが少し脱力するようにベンチに体を預けていると、シロコは視線を少し下げながら、ポツリと呟く。
「…………それにすごく楽しいから………」
「…………?シロコちゃん?」
シロコの雰囲気が変わったことが気になったユメは、シロコに視線を向けた。
シロコは相変わらず目線を下に向けたまま、何かを思い出しているようにジッとしている。
ユメはどうしたらいいかと頭を悩ませると………何やら思いついたのか、シロコの前に移動すると
「えいっ」
シロコをギュッと抱き締めた。
「………っん!?いきなり何?」
突然のことにシロコが驚いていると、ユメはシロコの頭を撫でながら、話し始めた。
「…………大丈夫だよ。シロコちゃん………」
「…………っ!?」
シロコの動きが固まり声が詰まる。
「私はシロコちゃんが何をしてしまったのかも……何に苦しんでいるのかも………何に迷っているのかも…………何も知らない
…………けど、今シロコちゃんが抱えてる“寂しさ”は、少しだけ分かるよ。
……………私もそうだったから…」
「えっ………」
ユメの言葉にシロコが驚く……無理もないだろう……今まで見てきたユメの姿からは、寂しさなど微塵も感じさせない………とても明るく暖かな姿だったのだから
「実はね……私には、自分の記憶がないの……」
「…………っ!?」
唐突に出された情報にシロコは先ほどとは別の意味で驚き、かたまってしまう。
ユメは、どこまでも優しい口調で話し続ける。
「記憶がないって分かった時ね……私はすっごく怖かったの。自分が誰なんだろうとか、何処から来たんだろうとか、頭の中ぐちゃぐちゃで……何だかこのまま消えて、なくなってしまいそうって思って……とっても怖くて、それ以上に……………この世界で、独りぼっちの気がして寂しかった………」
(……この世界で独りぼっち……………私と同じ…………)
「…………ん。じゃあどうして今は平気そうなの?」
シロコは知りたかった………そんなことがあったのにどうして今、そんなに笑顔で前を向くことが出来るのか
シロコの問にユメは微笑みながら応える。
「それはね………小さな“勇者”さんが、私の手を引っ張ってくれたからだよ。」
「勇者?」
「うん。寂しくて、どうしようもない時に、私の手を取ってくれた…………こうやって抱きしめて、私が今ここにいることを教えてくれた…………傍にいてくれたから、私はここに居ていいんだって思えたの……」
「………ん。その勇者ってもしかして………」
「うん。少女ちゃんだよ…………不思議な子だよね。私、いつも助けられてばっかりだよ。」
ユメはシロコを放すと手に持っていた袋から何かを取り出す。
「だから、シロコちゃんも大丈夫…………きっと、自分が居て良い意味を、見つけることが出来るから。」
ユメは、そう言って取り出した“碧色のマフラー”を、シロコの首に巻き付けた。
「はいっこれ!さっきの買ってきたんだ。最近寒くなって来たし、シロコちゃんに似合うと思ったからね。」
「…………っ」
目の前の人(ユメ)が、記憶の中の先輩と重なる。
「私は…………「ユメ、シロコ、そろそろ次へ行きましょう。」」
「あっうん。そうだね。いこっかシロコちゃん!」
「…………ん。分かった。」
シロコは、首のマフラーに触れながら、少女たちの方へと足を進めた。
(私が………居ても…………いいのかな…………)
誰のメモロビが見たい
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少女ちゃん
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梔子ユメ
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錠前サオリ
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砂狼シロコ(テラー)