「ここは‥‥どこ。」
薄暗い廃墟地下の廊下を歩きながら少女はポツリとつぶやいた。
廊下をの壁は年季の入った様子で苔むしており、所々ヒビが入っている個所もある。
今すぐにでも崩れそうなそこは、放置されて久しく、誰もが忘れられてしまった場所になっていた。
当然そんな所では、少女のつぶやきに返事を返してくれる者など居るはずなく、少女の声は空しく廊下に反響し、消えていった。
そのことに特別思うこともないのか、少女は再び前を向き特に目的地もなく歩き始める。
ひた、ひた、と素足で歩く少女の小さな足音が、静まり返った廊下に異様に大きく鳴り響く。
少女は無表情のまま、ほんの少しだけ視線を下に向けながら暗い廊下を歩き続けた。
────どれだけそうして歩いていただろう。
少女が目覚めて数時間、だたひたすら前に前に歩き続けていた少女ではあるが、一向に周りの景色は変わることなく廃墟の廊下が広がっていた。
「‥‥‥‥。」
少女もいい加減疲れてきたのか、それとも歩くことに飽きたのか、もしくは何かに気が付いたのか、それまで動かしていた足をピタリと止めると、廊下の奥の方‥‥‥ちょうど曲がり角になっている場所を眺め始めた。
するとまるで待ち伏せでもしていたかのように、ぬるりと廊下の角から何かが姿を現した。
「□□‥‥□□」
それはボロボロのオートマタであり片腕に自身と同じくボロボロのマシンガンを握りながら、ギィ‥‥ギィ‥‥と錆びついた機械音を鳴らし、ふらふらと少女に歩み寄っている。
オートマタは何か話している様子であったが、音声機能が故障しているのか少女には言っている内容が理解できず、首をかしげている。
そんな少女の様子を気にすることなく、オートマタは少女との距離が十分に縮まったところで、持っていたシンガンを少女に向けて発砲し始めた。
「!?」
少女は、咄嗟に体を捻って放たれた銃弾を避けると、すぐに体制を立て直し身をかがめるとオートマタに向かって駆け出した。
「□□□!」
オートマタがまた少女にむけてシンガンを打とうと構えるが、それが撃ちだされるよりも早く少女がオートマタに肉薄するとがら空きの懐に拳を叩き込んだ。
「──っ」
少女の放った拳には、見た目からは想像できないほどの威力を持っており、簡単にオートマタを吹き飛ばし廃墟の壁へと叩きつけた。
その際、叩き付けられた衝撃のせいかオートマタが持っていたマシンガンがその手を離れて、廃墟の床へと転がった。
少女は、転がったマシンガンを素早く拾い上げると未だ壁に寄りかかっているオートマタに向けて構える。
まるで初めから使い方を熟知しているかのような慣れた動きで、冷静に照準を壁に叩きつけたオートマタに合わせると、少女は引き金を引いた。
(ドガガガガ!!)
(ピー……ガシャン………)
マシンガンの銃弾の雨を浴びたロボットは、体のいたるところから火花を散らしながら倒れ込むと、それ以降動く様子もなく停止した。
少女は倒れたオートマタのすぐそばまで移動すると、手に持っているマシンガンの先でちょんちょんと小突いて本当に動かなくなったのか確認した。
そして本当に壊れてもう動くことがないことを確認すると、オートマタの所持品からマシンガンの予備弾を回収した。
………一通り物色を済ませると、頭の中から不思議な感覚が湧いてきた。
少女は、突如湧いてきた感覚に従うようにマシンガンを持っていない方の手を上げ、自然に頭に湧いてきた言葉を紡いだ。
「……ぱんぱかぱーん、ろぼっとへいをたおした。……わたしはあたらしく、はがねのつるぎをてにいれた。」
言った本人でさえ何故このようなことをしたのか、そもそも言葉の意味すら分かっていないのか、少女は小首をかしげながらも胸の内に小さくも確かな達成感を感じ口元をほのかに緩ませた。
新たな装備を得て、若干気分が高揚したのか、先ほどよりも足取りが軽くなった少女は、再び廃墟の廊下を歩きだした。
しかし、歩き出したところであることに気付いた。
少女は先ほどのオートマタから入手した呼び弾を握りしめている右手に視線を向ける。
「……て……ふさがってる。」
そう、少女が目覚めた時は衣類を身に着けておらず、現在も裸の状態であるため、銃と弾薬をそのまま素手で持つしかないのある。
少女も流石に持ち運びが不便であり、先ほどのような咄嗟の戦闘になった際、邪魔になると感じたのか、どうしようかと頭をひねりながら辺りを見回した。
しかし、ここは廃墟、それも少女は知らないが地下深くの空間、そんな場所に都合よく衣類やカバンのようなものがあるわけもなく、少女は途方に暮れてるようにきょろきょろと辺りを見まわしながら再度廊下を歩き続ける。
その様に少女が廃墟の部屋を見て回っていると、偶々覗いた部屋の隅に以前ここにいた誰かが使っていたのかボロボロになったベッドを見つけた。
ベッド本体はかなり老朽化が進んでおり、寝っ転がっただけで壊れてしまいそうではあったが、幸いにもシーツは汚れてはいるが、虫食いなどの損傷は少なかった。
少女はベッドからシーツを剥がすと、手ごろな大きさに破き手に持っていた予備弾を包んだ後、自分の肩に掛けるようにシーツの端を結んだ。
また、残ったシーツを自身の体にマントのように巻き付けた。
傍から見たら完全にてるてる坊主の見た目になった少女は、これで準備万端とでもいうように満足そうに(表情は変わってないが)顔を上げると今度こそ廃墟の廊下を歩き出した。