ホシノの手を引きながら、少女は新しく出来たフレンドが嬉しいのか、何時もより足取り軽く駄菓子屋を目指して歩いていた。
しかし、ホシノの方は若干気まずそうな顔をしていた。
「うへ~何だか気が重いよ~」
「どうしてですか。」
「いや、あんな風に飛び出して行っちゃったし……ユメ…さんにも失礼なことしちゃったからねぇ。」
「大丈夫です。皆心配そうでしたけど、話せばちゃんとわかってくれます。ユメだって気にしていません。もしもの時は私と一緒に謝りましょう。」
「うへ。少女ちゃんは頼りになるなぁ。うん、その時はお願いね。」
「そう言えば、少女ちゃんは何でおじさんと友達になろうと思ったの?」
ホシノが少女にそう問いかける。
思えば、少女とホシノが出会ってまだ一日も経っていない為、ホシノが疑問に思うのも当然のことだ。
しかし、少女にとっては……何にも不思議なことではないのだ。
「だってホシノは、とっても偉い人だったからです。」
「……??どういうこと?」
少女の言っている意味が分からず、ホシノは小首をかしげる。
少女は、ホシノと向き合って、続きを話し出した。
「だってホシノはずっとみんなのことを気にかけていました。戦闘のときも、みんなで話している時も、ずっとです。」
少女は本当に嬉しそうな笑顔を浮かべ、ホシノを見ている。
「ホシノは、仲間のことを誰よりも大切に思える…………そんなとっても偉い人です。だから私は、そんなホシノとフレンド登録が出来て、今本当に嬉しいんです。」
「…………うへぇ……。」
少女の真っ直ぐで純粋な好意に、ホシノの頬が赤みを帯びる。
正直なんとなく気になったから聞いただけであったのに、此処までハッキリ言葉にされるのは、反則じゃないかと、ホシノは赤くなった自身の頬を見られないように下を向きながら思っていた。
「ホシノ。どうかしたんですか。………もしかして、まだ好感度が足りませんでしたか。だったらいけません、これからホシノのいい所をもっと言って、好感度を上げなければいけません。」
「やめて!やめて!もう十分すぎるから!私の好感度は上がり切ってるから!」
少女がこれ以上何か言う前に、ホシノはいつものおじさんロールも忘れて、全力で止める。
実際さっきの路地裏でのやり取りで既にいっぱいいっぱいなのに、これ以上は別の意味で、皆に合わせる顔がなくなってしまう。
少女はホシノが何に慌てているのか、分からなかったが、一先ず元気であることは分かったため、再度手を繋ぎ、駄菓子屋へと向かった。
そうこう言っているうちに、駄菓子屋の前までやって来ると、普段と変わらず、少女は扉を開けた。
「皆さんただいま戻りました。ミッションコンプリートです。」
「しょ、少女ちゃん!?おじさんまだ、心の準備が!」
少女とホシノが駄菓子屋の中に入ると、中で待っていた、対策委員会の皆が一斉に其方に目を向けた。
「「「「ホシノ先輩!!!」」」」
全員がホシノの下に集まり、無事を確かめるように詰め寄っていく。
「もう!どこに行ってたのよ……心配したじゃない………」
「そうです。あんなホシノ先輩見たことがありませんでした………あの、大丈夫ですか?」
「ホシノ先輩………私たちに何か力に成れることはありませんか?私たちホシノ先輩を支えたいんです。」
「ん。ホシノ先輩はいっつも一人で抱え込みすぎ……少しは私たちのことを頼るべき。」
「うへ~ちょっとみんな待ってよ~そんないっぺんに言われたって、おじさん達困っちゃうよ~。ね、少女ちゃん…………あれ、少女ちゃん?」
ホシノが対策委員会の皆に詰め寄られていると、少女はこっそりと抜け出して、先生とおばあさんの方に退避していた。(なかなかちゃっかりしているなこの子)
そんなホシノの様子に先生は安堵の息をついていた。
(一時はどうなるかと思ったけど………どうやら本当に彼女たちは強いらしい。)
目の前で大勢の仲間にもみくちゃにされている生徒を見ながら、とび出していく前に談笑していた時と変わらない…………
…………いや、あの時よりもほんの少し明るくなったホシノの姿を先生はジッと見守る。
(それともこの子のおかげかな………)
先生は少女ちゃんの方を向き、自分の考えがあながち間違っていないと思っていた。
おばあさんも同じようで、少女を優しそうに見つめながら、一人話し出す。
「やれやれ………あたしも耄碌したもんさね。時間が必要だの、一人にした方がいいだの、適当なこと言って危うく取り返しのつかないことになっていたねぇ。」
「おばあさんどうしたんですか。」
少女がおばあさんの様子が心配なのか、おばあさんがいる方に近付いていく。
おばあさんは近寄ってきた少女の頭に手を置くと優しく撫で始めた。
「いや、大したことじゃないよ。ただお嬢ちゃん………今回はあんたの行動が一番正しかったってだけさ。」
「……?それは、クエストのMVPってことですか?」
“……うん、そうだよ。少女ちゃんが今回のクエストのMVPだよ。”
「わーい。やりました。ぱんぱかぱーんMVP達成でレベルアップです。」
先生とおばあさんに褒められて少女は飛び跳ねるように喜んでいると、ようやく解放されたホシノが若干疲れた様子で、少女の方へやって来た。
「うへ~少女ちゃん……おじさんおいてくなんてひどいよう。」
「あ、ホシノ、私今回のクエストでMVPだそうです。これでまた一つ強くなりました。」
「うみゅ?いったい何のことだか、おじさん分かんないんだけど?」
「とにかくとっても凄いということです。」
「そっか…………うん。少女ちゃんとってもすごかったよ……………………本当にありがとね。」
「えへへ。ホシノにも褒められました。私嬉しいです。」
そう言うと少女がホシノに抱き着き、ホシノもそれを受け入れる。
“何というか………急に仲良くなったね二人とも”
「はい。私とホシノは既にフレンド登録を完了した大切な友達です。」
「うへ~まあそういうことだね。」
先生の言葉に元気よく返事をする少女とホシノを先生が嬉しそうに見ていると…………
「えっと……ホシノちゃんで合ってるかな?」
「あ、ユメ………さん」
ユメがホシノに声をかけて来た。
ホシノは先程のこともあって、気まずそうに話し出した。
「え、えっと………さっきはごめんねぇ~。わたっ、おじさんってば、慌てちゃっててね!何か変なこと沢山言っちゃったけど、気にしないでいいからね!」
ホシノは必死に自分を取り繕ってユメに話しかける。
その姿に、少女が何か言おうとしたが、その前にユメが話し出した。
「
「…………えっ。」
ユメの言葉にホシノの目が見開かれる。
ユメは真っ直ぐホシノの方を見ながら、優しい笑みを浮かべて語りかける。
「正直に言うとね、私の記憶はまだ戻ってないんだ…………でも、ホシノちゃんに先輩って呼んでもらえた時…………すっごく懐かしくて、嬉しい気持ちで胸がいっぱいになったの。」
「…………………。」
「不思議だよね。何にも覚えてないはずなのに……私、今こうしてホシノちゃんと話しているだけで、どんどん胸がいっぱいになっていくの。………きっと私、ホシノちゃんの事がとっても大好きだったんじゃないかな。」
「………………ユメ……さん。………わたしは………わた、しも………。」
「だから私ね。もう一度、貴方を…………ホシノちゃんのことを大好きになりたい!もう一度ホシノちゃんと。ううん。みんなと一緒にたくさん素敵な思い出を作りたいんだ!」
「だからホシノちゃん、これからも私のこと”ユメ先輩”って呼んでくれないかな?」
「………はい。…………ユメ…………せんぱい………」
ホシノは、両目のオッドアイをにじませユメ先輩の名前を呼んだ。
そしてユメは先程よりももっと優しそうな、嬉しそうな笑顔を浮かべてこういった。
「うん!ありがとうホシノちゃん!」
「っ!?」(ガバッ)
ホシノはもう耐え切れなくなり、ユメに抱き着いた。
ユメはホシノの体を優しく抱きとめると、少女と同じようにゆっくり頭を撫で始めた。
「そう言えば聞いたよ、ホシノちゃん。すっごく頑張ってたんだってね。みんなが自慢の先輩だって褒めてたよ。」
「はい。ホシノはとってもすごくて偉い人です。」
「アハハ!本当にその通りだね!ねえ、ホシノちゃん
…………本当に今まで、よく頑張って偉かったね。」
「っうっく……ひっく…………ばい゙がんばっだん゙でず。わ゙だじとってもがん゙ばっだんでず。」
「うん。偉い……偉い………すごいよホシノちゃんは、
…………本当にありがとね。」
「うぅぅぅ、うわぁぁぁぁぁぁぁん。」
ホシノはユメに縋り付き涙を流し続ける。
そこにいたのは、
一人、孤独と責任感と戦いながら、後輩たちを守って来た、アビドス三年生の先輩じゃなく、
…………誰よりも褒めてもらいたかった人に、ようやく褒めて貰えた、ただの後輩の姿だった。
ホシノはしばらくの間ユメの胸で泣き続けた。
…………自分のやって来たことが無駄じゃないことを嚙み締めるように…………ただひたすら、涙を流し続けた。
…………ホシノはこの日…………ようやく自分のことを許すことが出来た。
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