無自覚にミレニアム生を次々と行動不能に陥らせた少女とアリスは、未だアリスの案内によりミレニアムを練り歩いていた。
今日、本来なら少女がよく行く駄菓子屋やアビドスの紹介をしようと話していたのだが、昨日の少女の話を聞いてアリスは自分の仲間たちを少女に紹介したくてたまらなくなってしまったのだ。
そのため、急遽ミレニアムにやって来ることになった少女であったが、初めて見るはずなのに何処か懐かしく感じる景色に興奮しっぱなしで、アリスの話を喜んで聞いている。
そんな少女たちは、そのままの足でヴェリタスやエンジニア部のところにも赴き、順調に被害を拡大していった。
その後しばらくして、ようやく先生とゲーム開発部が少女達を見つけ出しゲーム開発部の部室まで連れ帰ることに成功した。
「はぁ…はぁ…ようやく見つけることが出来たよ………」
「取り敢えずこれで、これ以上被害が拡大することは防げるね………」
「う…うん。ダウンしていた皆も……復活してきてるみたい…………」
“それは良かったよ。…………さてと……アリス、少女ちゃんちょっとお話があります。”
「なんですか?先生?」
「私たち何かしましたか。」
先生はこの無邪気な二人に何とか無自覚光属性全体攻撃をやめさせるように説得することにした
しかし、何分やっていることも言ってることも相手を傷つけるものとは対極に位置する物の上、アリスも少女ちゃんも建前や大げさに言ってるわけでもなく、根っからの本心で言っているため、説得は困難を極めた。
何とか先生とゲーム開発部の辛抱強い説得のおかげで、一先ずアリスと少女は納得してくれた様だった。
そんな中、突然少女の周囲を飛行していた“アポカリプス”の一機から、音声が聞こえてきた。
『少女ちゃん……無事にアリスと会えたようね。』
「あれ。この声はあの時のドローンの人ですか。」
その声は先日少女に依頼をした人物の声であり、少女はそれに気が付くと嬉しそうな表情を浮かべた。
「うわ!?なに!?急に喋り始めた!?」
“この声って!?”
「リオ先輩です!」
突然声を発したことやその声の主がモモイたちのよく知る相手であったことにモモイ達ゲーム開発部と先生は驚いている。
謎の声の主……リオは、モモイ達の反応を一旦無視して、少女との会話を続ける。
「貴方はリオって言うんですね。やっと名前が分かって私嬉しいです。」
『少女ちゃん……秘密にしていてごめんなさい。それと改めて礼を言うわ。私の依頼を果たしてくれてありがとう。』
「あっリオが会って欲しいって言ってたのは、アリスお姉ちゃんのことだったんですね。ということは、ぱんぱかぱーん。依頼達成です。」
“ちょっと待って!依頼って何のことだい?”
先生が少女とリオの会話に割って入ってきた。
リオは先生に自分が以前、少女ちゃんにアリスに会って欲しいと依頼を出したこと、その報酬として“アポカリプス”を用意したことを伝えた。
話を聞いて先生やゲーム開発部の皆は依頼の内容は納得したが、また別の疑問が先生の中に湧いてきた。
“依頼のことは分かったけど……何で少女ちゃんとアリスを会わせようとしたんだい?”
『それは……彼女にしかできないことをやってもらうためよ。』
リオはそこで先生との会話を区切ると再び少女に話しかけた。
『少女ちゃん……貴方にもう一つ依頼があるの。』
リオは真剣な声で少女に依頼内容を話し出した。
『貴方はすでにこの“アポカリプス”の本当の役割を理解しているはず…………そしてあなた自身のことやアリスとの関係も恐らく………理解している。』
「…………………。」
少女は黙ってリオの会話を聞いている。
周りの皆も聞きたいことが山ほどあるが、それをグッと抑えてリオと少女を見守っている。
『だから少女ちゃん……貴方に「それ以上は大丈夫ですよリオ。」っ!?』
少女はリオの言葉を途中で中断させると、自信の籠った声で応えた。
「その依頼、任せてください!」
少女はそう言うとアリスの方を向いて問いかけてきた。
「アリスお姉ちゃん…………いえ、アリス……一度でいいです………私を信じてくれませんか?」
少女は碧色の瞳に強い意志を宿しながらアリスの方をジッと見つめる。
アリスは何が何だかサッパリ分からなかったが、少女が本気で自分に尋ねていることは伝わっていた。
それならば、アリスの答えは分かり切っている。
青色の瞳で少女を真っ直ぐに見てアリスは応える。
「もちろんです!私は少女ちゃんを信じます。」
「ありがとうございます。では早速始めます。」
少女がそう言うとリオの声が聞こえている一機以外のアポカリプスが動き出し、下面の部分が開きヘルメットのような形状になった。
「ふわっ!?」
そして少女ちゃんとアリスの頭に装着され、残った一機は“ロボのキーホルダー”を中に収納した。
「ちょっといきなり何なの!?」
『落ち着いて。大丈夫だから今は見守っていて。』
余りに突然のことにいよいよモモイが我慢できなくなって声を上げるが、それをリオが制止し、なんと先生もモモイの肩に手を置いて止めた。
「先生!」
“大丈夫……リオと少女ちゃんを信じよう。”
先生とゲーム開発部の皆が心配そうに見守る中、少女は静かにこう言った。
「………起動開始です。」
(ポ―――ンピピッピ)
少女の声に合わせてアポカリプスの先頭部が輝き、音声が鳴り響く。
…………そして
『CONNECT ON……DIVINGLINK START 』
その機械音声が鳴るのと同時に少女とアリスの意識が途絶えた。
少女とアリスは気が付くと、何処か見覚えのある廃墟の地下に立っていた。
「ここって…………」
「ここはアリスの深層意識の中です。」
アリスの疑問に少女が応える。
「あの“アポカリプス”には私の意識をアリスの意識内にダイブさせる機能があったんです。それを使って今私はここに来ています。」
「なるほど、それは分かりましたけど、ここで一体何をするんです?」
「…………それに応える前にアリスに言いたいことがあります。」
少女はアリスを今までで見せたことがないくらい優しい表情を浮かべて見つめている。
そしてゆっくりと口を開いた。
「私は貴方にずっとお礼が言いたかったんです。」
「私は目覚めたあの日、自分の名前も分からなくて…自分には何も無いと思っていました。」
「……でも、それは違いました。あの時私はとっくに貰っていたんです。とっても大切なものを……」
「それがあったから私は、素敵な人達…大好きな人達に出会うことができました。嬉しいことや楽しいことをいっぱい知ることができました。」
「全部貴方の……アリスのおかげなんです。貴方がアリスでいてくれたから、勇者であることを諦めないでいてくれたから…私は今幸せな毎日を過ごせているんです。」
「最初の頃はずっとアリスのことが羨ましかったんです。陽だまりの中にいる、私の居たい場所にいるアリスのことがずっと……でも、今なら私はハッキリとアリスに伝えられます!」
「ありがとうございます!!私に“感情“をくれて!!私にみんなと出会わせてくれて!!みんなの勇者になってくれて!!本当にありがとうございます!!!」
少女は満面の笑みを浮かべてアリスにお礼を述べた。
しかし、少女の言葉を聞いたアリスは、
「それは違います!」
「……えっ?」
そうハッキリと少女の言葉を否定した。
アリスは少女の瞳をしっかりと見つめながら話し出した。
「ユメ先輩やサオリ先輩、シロコ先輩たちの居場所を作ったのは貴方です!アリスじゃありません!」
「それに皆は貴方と一緒だからあんなに笑顔になれているんです!」
「アリスのおかげじゃなく、貴方自身の……今まで一生懸命頑張ってきた貴方の選択が幸せを掴んだんです。」
「それにアリスも貴方のおかげで、とっても素敵な人達に出会うことができて、楽しい思い出がいっぱい増えました!」
「……なにより、大切な妹が出来た事がアリスはとっても嬉しいんです。」
「だから……アリスも貴方に……少女ちゃんにお礼を言います。」
「ありがとうございます!!この世界に生まれてくれて!!諦めず頑張ってくれて!!アリスに出会ってくれて!!アリスは本当に嬉しいです!!!」
アリスも満面の笑みを浮かべて、少女にお礼を述べた。
(ツ――――…………)
アリスの言葉に少女の瞳から一粒の涙がこぼれ頬を伝った。
「………っ!」(グシッ!)
少女は流れた涙を拭うと、アリスに向かって手を伸ばす。
アリスは伸ばされた手をしっかりと掴んだ。
「起こしましょう!私とアリスで奇跡を!」
「はい!今のアリスと少女ちゃんに不可能はありません!」
少女二人は今本当の意味で互いを理解し、繋がった。
これからはじまるのは【名無しの少女】と【見習い勇者】が起こす
…………本当に小さな……奇跡の物語だ。