もう一人の勇者   作:Katarina T

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少女、帰ります。

少女はリオと報酬の話を終えると、満足そうに頷きながらゲーム開発部の方へと視線を向けた。

 

「これで私に課せられていたミッションは全てコンプリートしました。ここからは交流イベントで好感度上昇を量ります。ですので今から皆で遊びましょう。」

 

「はい!でしたら先ずはこの新作のFPSをやりましょう!最大4人のチーム戦も出来ますから交流イベントにはピッタリです!」

 

少女の言葉にいち早く反応したアリスがテキパキと準備を始め出した。

 

少女はアリスのゲーム開始の為の準備を手伝い、残りのメンバーは各々お菓子やジュースなどを準備していく。

 

……その様に皆で協力してあっという間に準備を終えると、そのままゲーム大会を始めようとしていた。

 

そんなゲーム開発部とそして傍で見守っていた先生を横目にリオが少女に話しかけてきた。

 

『それじゃあ私はそろそろお暇させてもらうわ。』

 

「あれ、リオは参加しないんですか。」

 

『ええ。貴方の報酬を果たす為にも色々と準備を済まさないといけないもの。』

 

「そうですか。それは…残念です…」

 

少女も自分の報酬の為の行動である為これ以上の我が儘は困らせるだけと思い若干落ち込みつつ諦めた。

 

『……そんな顔をしなくていいわ。明日には私はミレニアムに戻るから……会おうと思えば何時でも会うことが出来るわ。』

 

「…はい、そうですね。今度は通信越しじゃなく会ってたくさん話しましょう。私、楽しみにしています。」

 

『……何時でも来て頂戴……歓迎するから……それじゃあまた会いましょう。』

 

そう言うとアポカリプスからの通信が切れた。

 

すると、リオとの通信が切れたことに気が付いたアリスが少女に詰め寄って来た。

 

「あれ!リオ会長もう通信切っちゃったんですか!アリスまだまだ話したいことが残ってましたのに、会話イベントの延長を要求します!」

 

【……私も結局お礼を言いそびれてしまいました。】

 

「うーん。そう言ってもこっちから通信を行うことは無理みたいです。」

 

「むうぅぅぅ!」

 

「あ、アリスお姉ちゃん大丈夫です。リオは明日ミレニアムに戻って来るって言ってましたから、交流イベントは明日行えるはずです。」

 

【そうですよ、アリス姉さん。何も焦る必要はないじゃないですか。】

 

少女の言葉にアリスは不満そうに頬を膨らませてしまったが、何とか少女とケイの言葉で落ち着いたようだ。

 

「もうなにやってんの!こっちはとっくに準備万端だよ!」

 

「アリスちゃんも少女ちゃんもケイちゃんもほらっ、こっちに来て座って。」

 

「お菓子やジュースも……たくさんっ用意したよぉ……」

 

「はい。今行きます。ほらっ行きましょう、アリスお姉ちゃん、ケイ。」

 

「はい!勿論です!」

 

【……フフッ、あんまりはしゃぎ過ぎないようにしてくださいね。姉さん達。】

 

少女とアリスは仲間の声に誘われて、新たな仲間と共に日常に戻っていく。

 

その光景を眩しそうに眺めていた先生もまた、勇者に誘われてパーティーへと合流していった。

 

 

 

……そこから数時間があっという間に経ち、外が段々と薄暗くなってきた。

 

モモイとミドリ、ユズの三人は、はしゃぎ疲れて眠ってしまっており、起きているのは少女とアリスとケイ、そして先生だけであった。

 

そんな四人の後ろ…部室の扉付近で突如黒い靄のようなものが発生し、そこからシロコが現れた。

 

「ん。少女ちゃん、迎えに来たよ。」

 

「あっシロコです。お迎え感謝です。」

 

少女がシロコの方に走り寄って行こうとした時、少女の手をアリスが掴んで止めた。

 

「アリスお姉ちゃん。」

 

「……少女ちゃん………行っちゃうんですか?」

 

【少女姉さん………私達を置いて何処に行こうと言うんですか?】

 

アリスと意外にもケイも少女と別れることを嫌がっていた。

 

そんな二人を見ながら少女は迷うことなくこう言った。

 

「はい。私はパーティメンバーが待っているので、帰らないといけません。」

 

実際少女だって離れることは凄くつらい。

 

この場所のことだって、とっても気に入っているため、まだまだここに居たい気持ちはある。

 

しかし、少女はちゃんと決めていた。自分が帰るべき場所がどこなのかを。

 

「この場所は本当に楽しくて、幸せで胸がいっぱいになるくらいいい場所でした。私も出来る事ならもっとここに居たいです。」

 

【でしたら……なぜ?】

 

「……私にはもう仲間が出来ましたから、その仲間の下こそが私の居るべき場所…………帰る場所なんです。」

 

少女の顔をアリスはジッと見つめている。

 

少女はアリスとケイに伝わるようにハッキリとした声で言う。

 

「以前シロコに言ったんです。私のパーティに途中退場も離別イベントも起こさないって、ですから………私は仲間が待っている所に帰ります。」

 

「………………分かりました。寂しいですけど、仲間が待っているのならしょうがありません。」

 

【アリス姉さん…………いいんですか?】

 

「……はい!アリスはお姉ちゃんですから、妹の選択を尊重しなくちゃいけません。ですから…………今日はこれで、お別れです。」

 

【……………………………アリス姉さんがそう言うなら仕方ありません。それに少女姉さんも止めて聞くようではありませんから。】

 

「………ありがとうです。二人とも。」

 

少女は最後にアリスをギュッと抱きしめると、「大好きです。アリス、ケイ。」と言い、アリスとケイも少女を抱きしめ返し「私も大好きです。少女ちゃん。」【当然私もですよ。私の大切な少女姉さん。】と返した。

 

少しして、少女はアリスとケイを離すと、今度こそシロコの下に向かい共に仲間の居る場所へと帰って行った。

 

「それじゃあ、また会いましょう!さようならです!」

 

寂しさを感じさせない笑顔を浮かべながら……

 

 

 

 

少女が帰って行った部屋でアリスは少女が居た自身の隣をボーっと眺めていた。

 

そんなアリスに先生が声を掛けてくる。

 

“大丈夫かいアリス………”

 

「あっ先生。はい。アリスは勿論元気いっぱい、ステータス快調です。」

 

“そうかい………寂しくないかい?”

 

「…………寂しいですけどアリスはお姉ちゃんなので、へっちゃらです。それにケイだっているんですから、そんなこと言ってられません。」

 

アリスは気合いを入れるように握りこぶしを作って腕を振っている。

 

先生はそんなアリスの頭に優しく手を置いて語りかける。

 

“……うん、アリスはとっても強いいいお姉ちゃんだね。……………でもね、どんなに強い人でもお姉ちゃんでも、寂しいときくらい泣いていいんじゃないかな……………”

 

先生の言葉にアリスの瞳が大きく開かれ、視界が緩んでいく。

 

「…………………いいんですか?………アリス勇者でお姉ちゃんなのに…………」

 

“もちろん…………別れが辛いことに勇者も姉も関係ないよ。”

 

先生はそう言うとゆっくりとアリスの頭を撫で始めた。

 

アリスは先生の言葉に遂に我慢出来なくなったのか、大粒の涙を流し始めた。

 

「うぅっうわーーーーーーーん!アリスやっぱり寂しいです!うわーーーーーーーん!!」(ボロボロ)

 

「んにゃ!?な、なに!?ってアリスどうしたの!?」

 

「先生!アリスちゃんどうしてそんなに泣いてるんですか!?」

 

「ぅぅ……アリスちゃん……何があったかわかんないけど……大丈夫だよ。」

 

アリスの泣き声に、寝ていたゲーム開発部の皆が起きて先生と一緒に泣いているアリスを慰める。

 

いつだって別れは辛い…………それでも勇者は一人じゃない、仲間と共に寂しさを乗り越えて歩んでいくだろう。

 

 

………………いつの日か再会した時、笑顔で会えるように。

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