それは、茹だるほど太陽の日差しが強く蒸し暑い日、少女たちは何時もの様に駄菓子屋に向かって、ブラックマーケット内を歩いていた。
「うーん…何だか今日はいつにも増して暑いね。」
「もうじき夏本番になるからな。最近気温の上昇も著しい…屋外の活動には注意しなければ。」
「ん。でもアビドス砂漠よりも暑くないね。これならお仕事も問題なく出来る。」
「シロコちゃんって暑さに強いんだね。少女ちゃんは大丈夫?」
「はい。勿論へっちゃらです。この程度の暑さでスリップダメージを受けるほど私の熱耐性は低くありません。」
少女はそう言いながら元気よく飛び跳ねることで、自分が大丈夫であることをユメに伝えた。
「ふふッ少女ちゃんすっかり元気になったみたいだね。良かった~」
「…そうだな。この間シロコがミレニアムから連れ帰った時は大泣きして心配だったからな。」
「…ん。少女ちゃんその日から少し寂しそうにしてたし、私達のそばから離れなかったけど…もう大丈夫みたい。」
「心配かけてすみません。でも、私はもう大丈夫です。次会った時前よりももっともっとたくさん思い出を話すと決めましたから、下を向いている暇はありません。」
「少女ちゃんは本当に強い子だね!でも寂しいときくらい頼っていいんだよ!」
「はい。その時はまたユメの胸を貸して下さい。」
「ふへへ!うん、まっかせなっさーーい!」
ユメは少女に向かって胸を張って応えた。
少女は「流石ユメ。頼もしいです。」と言いながらユメを眺めている。
「二人共……はしゃぐのもいいが、さっさと来ないと置いてくぞ。」
「二人とも早く。」
「あっ!二人とも待ってよ~」
「待ってくださーい。」
少女とユメは先に行っていたサオリとシロコの後を急いで追っていった。
駄菓子屋に着いて直ぐ、おばあさんが少女に話しかけてきた。
「おや、お嬢ちゃんどうやら元気になったようだねぇ。」
「はい。今の私は絶好調です。心配かけてすいません。」
「なぁに気にしなさんな。お嬢ちゃんが元気になったんならそれが一番だからねぇ。……………あっそうそうお嬢ちゃんたちに渡して欲しいって送られてきたものがあるんだ。」
おばあちゃんがそう言うと一枚の封筒を少女に差し出した。
「??おばあさん、これは何ですか。」
「さてねぇ。何でも以前仕事でお世話になったお礼にぜひって一方的に渡していったんだよ。…………正直言って怪しいけど、渡さないのも何だかねぇ。」
少女は渡された封筒を開け中身を確認すると、そこには一枚のチケットが入っていた。
少女がチケットを不思議そうに眺めていると横からユメが話しかけてきた。
「うん?何を持ってるの少女ちゃん?」
「うーん。ユメこれ私達にって送られてきたみたいなんですけど…………何なんでしょう。」
「どれどれ……ってうえええええ!!」
少女はユメに送られてきたチケットを見せた途端ユメは驚いたように声を上げた。
「どうした!?何かあったのか!?」
「ん!?まさか敵襲!」
ユメの声にサオリとシロコが驚いたように少女達の方にやってきた。
ユメは何やら興奮したように少女の肩を揺さぶっている。
「少女ちゃん!これすっごい物だよ!やったね!」
「ユ、ユメ。落ち着いて下さい。一体何があったんですか。」
「これが落ち着いてらんないよ!あっサオリちゃん、シロコちゃん見て見てこれすっごい物貰っちゃったよ!」
「お、おう。取り敢えず私達にも分かるように説明してくれ………」
「ん。ユメ一旦落ち着くべき。少女ちゃんもおばあさんも混乱してる。」
シロコの言葉にユメはハッとして少女とおばあさんを見ると二人とも何が何だか分からない顔をしており、少女はユメが揺さぶっていたこともあって若干目を回していた。
そんな二人を見て「わぁ!ごめんなさい。嬉しくてつい……。」と謝りながら一先ず落ち着くように息を吐いた。
冷静になったユメが皆に見えるようにチケットを掲げながら説明を始めた。
「少女ちゃんこのチケットはねぇ………………なんとリゾート利用券なんだよ!」
「リゾート利用券ですか。」
「そう!綺麗なリゾートで思いっ切り羽根を伸ばせるとっても素敵な券なんだよ!」
「おお。何だか凄そうです。」
「凄いものなの!はぁ~~皆でゆっくりバカンスなんて、今からとっても楽しみだよぉ~」
「おお✨私も何だか楽しみになってきました✨」
少女とユメが盛り上がっていると、サオリが口をはさんできた。
「……。ユメ、少しそのチケット見せてくれないか。」
「えっ?うん………はいどうぞ。」
「ありがとう。……………やはりな。………ユメ、これはリゾート利用券じゃないぞ。」
「ひん!そうなの……」
「ああ……ほらここをよく見ろ。」
サオリはチケットの一文を指さしながら説明を続けた。
「ここには『チケットを所有する者にリゾート地を利用する権利を与えるものとする。当該地の状態については保証致しかねます』と書かれている。」
「ん。それってつまり………」
「…………はぁ、そういうことかい…………」
「えっ………皆どうしたの?」
「????」(こくん)
「……つまりだ。このチケットは“リゾート利用券”じゃなく、“リゾートの所有権”ということだ。」
そう、チケットの正体はリゾート地の所有権であり、リゾート地の施設を利用するためのものではない、ほぼ詐欺のようなチケットだったのだ。
当然そんなチケットの島にまともな施設などあるはずがない。
そのことをサオリとおばあさんから説明されたユメは、明らかに落ち込んだように肩を落とした。
しかし、少女だけは相も変わらず何処かワクワクしたような雰囲気で話し出した。
「おばあさん、さっきの話が本当ならリゾート地自体には行くことが出来るんですよね。」
「まあ、そうだと思うけどねぇ………」
「だったら私、皆で行きたいです。」
「なっ話を聞いていたのかい少女ちゃん!?行った所で楽しめるようなものなんて何もありゃしないよ。」
少女の言葉に驚きおばあさんは考えを改めさせようとしたが、少女は首を振りながら話し続けた。
「そんなことありません。ユメとサオリ、シロコの三人で行くのなら、そこがどんな所でもとっても素敵な冒険が出来ると思います。ですから私は行ってみたいです。」
「少女ちゃん……うん。その通りだね、皆で行けばきっと楽しいよ!」
「…偶にはサバイバル訓練というのも悪くないかもしれないな。」
「ん!何だか楽しみになってきた。早速準備する。」
どうやら少女たちパーティメンバーは全員行く気満々のようで、楽しげに持っていくものだとか、むこうでやりたい事だとか、移動手段をどうするだとかを話し合っている。
おばあさんはやれやれ…と呆れつつも何処か眩しい物を見るように微笑みを浮かべていた。
「何だか……怪しいことこの上ないけど……止めてもしょうがないみたいだしねぇ……どうせ行くならしっかり楽しんできな。」
「はい。もちろんです。目一杯楽しんで来ます。」
「おばあさん。お土産話楽しみにしててね!」
「はいはい……楽しみにしとくよ。……ところで一体何処にあるんだい、そのリゾート地ってのは?」
「……ああそう言えば、まだ確認していなかったな、ええっと……」
サオリがチケットに書かれていた地名を確認すると、横で見ていたシロコが書かれていた地名を読み上げた。
その場所とは……
「……ん。『ロスト・パラダイス・リゾート』。」