少女たちはその後も作業を進めていき、予定よりも早く施設の片づけや修理を終わらせることが出来た。
「ふっうぅーーん(グィーー)これで大体終わったかなサオリちゃん?」
「ああ。これだけやっておけば、問題無いだろう。」
「ですね。これなら十分快適に過ごすことが出来ると思います。」
「ぱんぱかぱーん。第一イベントミッション無事にクリアです。皆お疲れ様です。」
「うへへ、少女ちゃんもお疲れ様~よく働いてて私関心しちゃったよ~」
「ええ☆とっても頑張ってましたよ〜偉い偉い。」(頭なでなで)
「ふにゃ~気持ちいいです。」(撫でられ中)
「それにしても……私たちのホテルも片付けたら案外綺麗になったわね。」
“皆が頑張ったおかげだよ。”
先生はそうセリカに応えながら、改めて建物の中を見渡した。
部屋の内装は、来た時とは見違えるほど綺麗になっており、天井にあった壊れて使えなくなっていた電灯も新しいものに付け替えられ、柔らかな光を放ち室内を照らしている。
確かにこれなら楽しいバカンスを過ごすには十分だろうと先生は満足そうに笑みを浮かべた。
その様に先生が考えていると、アヤネがサオリに向かって話しかけてきた。
「あっ!そう言えばサオリさん、先ほど、ヘリの修理に使えそうなものがあった部屋って何処にありますか?私も何があるか確認しておきたいです。」
「はい。私も何があるか気になります。第一ミッションも終わりましたし、皆で探索に行きましょう。」
「ふふ♪何だか宝探しみたいで面白そうですね!折角ですし行ってみましょう!」
「分かった…では案内するから、皆付いてきてくれ……」
少女たちはサオリの案内のもと、リゾートの制御室へと移動した。
セリカは何だかバカンスに来たのに全然休めないことに少し不満げではあったが、サオリやアヤネから動力源の確保は重要であることやこれが終わればゆっくりとできると言われ、渋々納得し先生は苦笑いを浮かべながらセリカの機嫌を良くしようと頑張っていた。
その他のメンツは相変わらず楽しそうにしており、少女とユメが興味深そうに辺りの機器や置かれてあった物を物色したりしているのをホシノが危険がないように見守りつつ、時折二人に引きずられるように連れられて行き、ノノミはそんな三人をいつもより数割増しの笑顔を浮かべながら見ていると、やっぱり二人に巻き込まれる形で探索に加えられていた。
そのように廊下を歩いていると、目的地の制御室と書かれた札が扉にかかっている部屋までやって来た。
サオリが「この部屋だ。」と言いながら扉を開けると、中にはモニターや操作を行う為の電子端末が多く設置されていた。
アヤネは、部屋に入ると何かを思いついたのか目についた端末を操作し始めた。
「アヤネちゃん何やってるの?」
「セリカちゃん、ええっとね、この部屋が扉に書かれていた通り制御室なら、もしかしたらこの島の電力の復旧なんかが出来るんじゃないかなって。
……ほら、動かない機械とか照明があったでしょう。ここからならその機械も動かせると思ってね。」
セリカがアヤネの言葉に頷きながら納得している横で、アヤネは手際よく端末を操作していく。
すると、ある一つの文字が目に留まった。
「……ん?これって一体?……『リゾート防御システム』??」
「それってこの島の防衛設備じゃない!」
アヤネが見つけたものは、どうやらこのリゾート地にもともと備わっていた防衛設備のようで、起動させることができれば、侵入者の排除をして貰えるため、これまで襲われたヘルメット団のような連中に自分たちのバカンスが邪魔されなくなるだろう。
そのように考えたセリカは意気揚々とアヤネに話しかけた。
「すごい!こんなのが在ったんだ!これさえ使えばもう私たちの邪魔されずに安全に過ごせるわね!」
「うふふ、そうですね☆アヤネちゃん、起動することは出来そうですか?」
「あ……はい。今やってみますね。」
アヤネが端末を操作し、順調に『リゾート防御システム』を起動していく。
すると起動できたのか画面にシステムメッセージが表示された。
〈……ピッピッピ…………『リゾート防御システム』起動……〉
〈これより島内の防衛のため……スキャンを開始……〉
「うん?これってリゾート全体をスキャンしてるんでしょうか?」
「言い分からしてそのようだが……」
〈……スキャン完了……島内に許可のない人員を多数確認……〉
「わぁ~なんだか凄いね!」
「うえ?許可のない人員…?」
〈捕獲のため……自衛防衛機を多数……投入します…〉
「「「「“……え?”」」」」
「「あっ………」」
ブーーーッ!!ブーーーッ!!!
瞬間空間内に警報が鳴り響き、起動停止していた警備ロボットが動き出し、少女たちに襲い掛かってこようとしていた。
「ちょっと!待ってどういう事!何で私たちが襲われるわけ!ちゃんとチケットは持っているのに!」
「まぁチケットはありますけど、私たち警備ロボットの認証手続きとかしてるわけじゃないですしねぇ……」
「サっサオリちゃんすごい数のロボットがこっち来てるよ!」
「とにかく迎撃するぞ!アヤネは私たちが相手してる間に認証手続きを済ましてくれ!」
「は、はい!」
“皆くるよ!”
先生がそう言うのと同時に警備ロボットが少女たちに向かって攻撃を開始……
〈……認証完了……対象者数名の島内での権限を確認……警戒を解除します〉
することなく、警備ロボットは構えていた武装を下すと、その場を離れリゾート地の巡回に向かった。
「な、何が起こったんだ……」
「さあ……って少女ちゃんいつの間に!」
アヤネの声の方に全員が視線を向けるといつの間にか少女がアヤネの隣へ移動しており、端末を操作していた。
まさか……と皆が思う中代表して先生が少女に問いかけた。
“少女ちゃん……まさかあの一瞬で私たちの認証手続きをしたの?”
先生の言葉に不思議そうに首を傾げながら少女は何事もないように応えた。
「いえ、認証手続きではなく、防衛装置含めたこの島の全権限と主導権を私に移動させました。これでもう安心です。」
少女の言葉にその場にいる全員が啞然としてしまった。
それはそうだろう……先ほどの言葉が真実ならば、この少女は使われなくなって大分経っているとはいえ、たった数秒、しかも一台の端末だけでこの島を完全に支配したと言っているのだから……
……そしてそれは、このインターネットなどのインフラが溢れている現代においてこの少女はほぼ無敵の力を持っていることに他ならない。
先生は改めてリオが言っていた少女ちゃんの正体に納得せざるを得なかったし、何も知らない周りの皆はただただその事実を受け入れるしかなかった。
(“もし少女ちゃんが本気でキヴォトスを滅ぼそうとしていた場合、一体どれだけの……………いや、何を考えているんだ私は”)
先生は一瞬でも頭をよぎった考えを振り払う。
(“先生である自分が生徒のことを信じないでどうする!何より少女ちゃんがそんなことするわけがない!”)
そう自分に叱咤し先生は目の前の少女を見る。
少女はいつも通りの笑みを浮かべながら、皆とこれからどうするのか話し合っていた。
…………実際、先生の予想は的外れではない。
…………確かにこの物語は勇者の物語かもしれない。
…………しかし何か一つでも違えば……
…………ほんの少しの掛け違いできっと全く違った物語に………
…………大切な物など何もない………全てを羨み憎み……
…………ただ壊すだけの………救いのない
…………それこそ魔王の物語になっていたかもしれない。
まあ、それは今の少女には関係ない事だ。
そんなあり得たかもしれない物語など、今の彼女たちには不要な物だ……
そう言う意味では、先生の不安は全く無駄なものであろう。
何せ今のこれは、紛れもない勇者の……いや【少女】の物語なのだから……………