「私、起動完了です。シロコ、おはようございます。」
「……ん…。少女ちゃん…おはよう。」
皆と楽しくバカンスを満喫した次の日の朝、一緒に寝ていたシロコの腕の中より抜け出て、シロコと挨拶を交わした。
少女はそのままシロコと一緒に施設のロビーへと向かった。
「……少女ちゃんとシロコか、おはよう。」
「あ、お二人ともおはようございます~♪」
ロビーには、サオリとノノミが先に起床して、談笑しているようだった。
やって来た少女とシロコに気が付くと各々挨拶を交わした。
少女は今この場にいない人のことを二人に尋ねると、ノノミからアヤネがまだ寝ており、今セリカが起こしに行っていることと、先生とホシノとユメの三人が何故か昨日浜辺で寝てたらしく、今は帰って来たユメがシャワーを浴びており、先生とホシノは未だ浜辺にいることを伝えられた。
少女が三人が何をやっていたのか気になっているとサオリから、セリカがアヤネを連れてきたら、自分たちは昨日言っていたヘリの修理をしに行くから少女にホシノと先生の様子を見てきてほしいと依頼された。
少女はサオリの依頼を快く了承すると、用意されていた朝食を食べて浜辺の方に向かって行った。
少女が浜辺へと到着すると、既に目が覚めていたホシノが近くの木陰で、座って海を眺めているのが、目に入った。
「あっホシノ見つけました。おーいです。」
「少女ちゃん、し~だよ。」
少女は見つけたホシノの方に駆け寄りながら声をかけると、ホシノは口に人差し指を当てて静かにするように少女に言ってきた。
少女はホシノの行動に小首をかしげながら近づくとそこには……
「ホシノどうしたんですか。……あれ、先生。まだ寝てるんですか。」
「うん。昨日はちょっと遅かったから…まだぐっすり寝てるよ。だから静かにね。」
ホシノに膝枕をされながら、いつものどこか頼りになる大人の顔とは違い、気持ちよさそうに寝息を立てて眠っている先生がいた。
とても熟睡しているのか、先ほど少女は結構大声で声をかけたというのに一向に目覚める気配がない。
少女は何だか珍しい物でも見る様に先生の寝顔をのぞき込んでいると、ホシノから「こぉ~ら、ジロジロ見るのは失礼だよ~」と言われたので、先生から視線を外し、ホシノの隣に腰かけた。
「ホシノ昨日の夜が遅かったって聞きましたけど、何をしてたんですか。隠しイベントでしたら私も参加したかったです。」
「んにゃ、大した事はしてないよ~ただ……今回の旅行は楽しかったって話してたんだよ。」
「そうなんですか。私もこのイベントはとっても楽しかったです。初めてのフレンドとの合同クエストの連続で、私ずっとコンディションがキラキラ状態でした。」
「うへ~見てれば分かるよ~少女ちゃんずっと楽しそうだったもんねぇ。」
「はい。私とっても楽しいです。今だってホシノとこうしてお話出来てずっとずうぅぅぅーと楽しいんです。」
先生を起こさないように小声での会話ではあるが、少女は、太陽のように明るい笑顔を浮かべながら話しており、傍から見ても心の底からホシノと一緒にいることが嬉しい事がよく分かるようだった。
ホシノはそんな少女の真っ直ぐな思いをぶつけられて、若干顔を赤くしながら、「…うへ~///私もだよ、少女ちゃん。」と頬を掻いていた。
…………それから少女とホシノは寝ている先生を起こさないように、小さく談笑をしたり、海を眺めたりとのんびりとした時間を過ごしていると、時間がお昼近くになったころ先生が漸く目を覚ました。
「……おっ?先生起きた~」
「おお。先生がようやく目覚めの時ですか。」
“ホシノと少女ちゃん?………他の皆は?”
どうやら未だ完全に意識が覚醒してはいないらしく、ホシノの膝上で瞬きを繰り返している。
そんな先生に少女が近寄りながら、説明をし始めた。
「先生。現時刻はもうお昼時ですよ。皆はヘリの修理クエストの方に向かっているので、ここには私達だけですよ。先生のスタミナが残り少ないようだったので、ホシノの膝で回復してました。」
“……ホシノの膝の上?…………っ!?ご、ゴメン!ホシノ邪魔だったよね!?”
「うへぇそんなことないよ。私が勝手にやった事だから気にしないで。」
先生は慌ててホシノの膝から頭を上げると、少し深呼吸をして、寝ぼけていた頭を覚醒させ、再び少女とホシノの方を見て話しかけた。
“コホン……それで皆はヘリの修理に行っていることは、分かったけど………少女ちゃんは何をしてるんだい?”
「私ですか。私は先生とホシノの様子を確認するクエストを受注したので、ここに来ました。そして今はホシノと一緒に先生護衛任務の真っ最中です。」
「まあ、そういうことだよ先生ぇ。島の防御システムがあるとはいえ、何かあったら大変だからねぇ~私たちが守ってるってわけ。
……………それじゃあ、先生も起きたことだし、今度は私たちが寝る番だよねぇ。」
「え、護衛はいいんですか。」
「大丈夫。大丈夫。何かあったら先生が起こしてくれるから……ねっ先生。」
“う~ん護衛としてどうかと思うけど…分かった、何かあれば知らせるからゆっくりしてていいよ。”
「ほら~先生もこう言ってくれてるんだし、適度に休憩をとるのも大事だからねぇ、私とのんびりお昼寝タイムとしようよ~」
「うーん……そうですね。では私はスタミナ回復行動に移ります。」
少女はそう言うと、被っていた帽子を顔に乗せて日光を防ぎながら、ホシノの傍に寝そべった。
ホシノもサングラスを掛けて、少女の手を握りながら砂浜に寝そべって昼寝の体制に移った。
少女たちがいる場所がちょうど木々によって日陰になっており、海風がよく通るため、夏の浜辺だと言うのに気温はそこまで高くなく、お昼寝には丁度良い空間になっていた。
少女とホシノが心地よい日差しを浴びながら、気持ちよく寝息を立てていると、
ヴゥーーーーーーーーーー!!!ヴゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!
突然島中から警報が鳴り響いた。
“……………?”
「んにゃ。敵襲ですか。」
「ふえぇ~せっかく気持ちよく寝ていたのになんなのさ~」
その警報音に先生とお昼寝中だった少女とホシノは、砂浜から何が起こっているのか確認した。
するとそこには、
ズドーン!!ズドーン!!!
ブオォォォォォン!!
(ドガガガガガ!!)
島のあちこちから大砲や機関銃が飛び出して、海上で走行している何かに向かって砲撃している姿があった。
砲撃されている船のようなものからも、お返しとばかりに弾幕の嵐が発射されているため、そこは先ほどまでののんびりしたバカンスがウソのような戦場になっていた。
「うへっいったい何がどうなってるのさぁ~」
“どうやら緊急事態のようだけど………”
「あっ、見て下さい。あのこっちに向かって来ている船の先頭に誰か立っています。」
少女が指さす方に先生とホシノが視線を向けると、確かにこちらに向かってくるホバークラフトと、
「嗚呼……………やっとお会いできました!そこにいらっしゃったのですね、先生!!
このワカモが、あなた様をお迎えに上がりました!今しばらくの辛抱ですよ!」
水着姿で意味不明なことを言っている、テンションが高いワカモの姿があった。
「……………わお。」
“……………。どうしようこれ。”
先生とホシノはこの様な展開に完全に置いてけぼりになって固まっていた。
……だが、少女は固まるどころか、寧ろやる気をみなぎらせたような雰囲気を出しながら二人に話しかけた。
「これは、もう完全にイベント戦ですよ。この時のために蓄えていた力、今こそ発揮するときです。」
少女は、UFGを構えて、アポカリプスを展開するとホシノに向かって手を差し伸べた。
「さあ!行きますよ!ホシノ!」
“え、いや少女ちゃん。ちょっと待ってここは一先ず皆と合流した方が…”
「絶対いやです!折角の皆とのバカンスを邪魔される訳にはいきません!」
先生が少女を落ち着かせようと声を掛けるが少女は断固として、それを拒否した。
それも当然のことだろう少女にとって今回のバカンスは文字通り生まれて初めてのものであり、本当に特別な時間であるのだ。
少女からしたら一分一秒だって無駄にはしたくない為、さっさとかたづけてしまいたいと思っている。
………そしてそれはこの場にいるもう一人の生徒だって同じ事だった。
「………そうだね。折角のバカンスなんだし、このまま邪魔されるのはちょっと困るね。」
ホシノは愛用のショットガンを構えながら少女の手を取ると向かってくるホバークラフトを見据えた。
ホシノだって少女と同じ気持ちだ。
昨夜、先生とユメと話したようにホシノにとって大切な先輩と後輩、初めて出来た友達と過ごしたバカンスは今の学生生活の中で一番楽しい時間だった。
そんなバカンスを、誰よりも一番楽しんでいたホシノにとって、よく分からない理由で邪魔をされるのは、我慢できない事であった。
“……え、ホシノさん、少女さん………あの~。”
「先生は危ないから、避難しててよ。ここは私たちで十分だよ。」
「ええ。先生は私たちを信じて下がっていて下さい。」
………先生が心配しているのは、きっと君たちの事ではないと思うのだが、
いつになくやる気をみなぎらせている二人に先生は、何かヤバイと思い声を掛けるが、
少女とホシノはそんな先生の言葉を無視して、一度互いに顔を見合わせ好戦的な笑みを浮かべた後、少女がホシノを構えUFGでホバークラフトに二人揃って突っ込んでいった。
「戦闘開始です!一緒に行きますよホシノ!」
「今回はちょっぉと本気で行こうか……………遅れないでね少女ちゃん!」
ドおおおおおおおおん!!!
少女とホシノ………色々な意味で最強タッグの二人が突っ込んでいくのと同時に有り得ないくらい大きな爆発音が鳴り響いた。
先生は最早どうしようもないといった…ある種、諦めに近い感情を抱きながらホバークラフトを眺めていた。
“どうか被害が小さく済みますように……”
いるかも分からない神様へ先生は心の中で祈りを捧げていた。
……………なお、先生はやはり神などいないことを、数分後決着がついた頃に突き付けられるのであった。
え、襲って来たヘルメット団やワカモはどうなったかって、
…………………………まあ、うん。取り敢えず、ヘルメット団の子たちは泣いていいと思うよ………
………それ以外は、
………ご想像にお任せします。